予兆!! ◆SXmcM2fBg6

PREV:招待!!


        ○ ○ ○


 カオスが無数の火球を連続して放てば、ウェザーは周囲に暴風を展開しそれを弾き落とす。
 ウェザーが不可視のカマイタチを放てば、カオスは刃の如き両翼を以ってそれを切り裂く。

 そんな、千日手にも等しい攻防を繰り広げながら、ウェザーは周囲に己が能力を波及させていった。
 気付かれぬよう慎重に、されど可能な限り迅速に。
 セルメダルが尽きる前に、一息に決着を付けるために。

「クスクス……楽しいね。おねぇさまたち以外にも、こんなにすごい人がいたんだ」
「ほほう。君には姉がいるのですか。それはぜひ紹介して欲しいですねぇ」
「OKだよ。でも―――私に勝てたらね!」
「それはなんとも、手厳しいですね!」

 カオスが放った一際大きい炎弾を、ウェザーは纏う風を全開にして加速し回避する。
 そして纏った風を一気に圧縮し、暴風の鉄鎚としてカオスへと解き放つ。

 ウェザーの体は風を解き放った事で浮力を失うが、直前の加速による対空によってカオスへと接近する。
 対するカオスは当然の様に暴風を回避するが、その隙を狙われウェザーマインで片足を拘束される。
 そのままウェザーはロープアクションの様に空中を遊泳し、拘束を解くと同時に再び暴風を纏う。
 そしてカオスへと向けて、決め手となる言葉を口にした。

「ですがよろしいので?
 今頃君のお気に入りの志筑仁美は、どうなっているでしょうね」
「へ? おねぇちゃん?」

 その言葉に釣られ、カオスが意識を地上へと向ける。
 瞬間、ウェザーは周囲へと広げていた力を発現させ、

 ―――直後、カオスは灼熱の炎を伴った竜巻に飲み込まれた。


 ……風を主体とする現象には、幾つかの種類がある。
 突風、竜巻、カマイタチ、吹雪、そして―――火災旋風だ。
 火災旋風とは、都市部での地震や山火事など、広範囲の火災によって発生する現象の事だ。
 この炎を伴う竜巻は時として、鉄の沸点をも超える超々高温に達する事さえある。

 そして現在、ウェザーとカオスが交戦していた空の下。仁美と龍之介がいる地上では、一軒の家屋が炎を上げていた。
 通常、たった一軒の火災で火災旋風が起こる事はまずない。しかしそこでウェザーの能力の真骨頂だ。
 ウェザーは戦いの最中に、燃え上がる家を中心に風を集めて上昇気流を作り、徐々に火災旋風が発生する土壌を作り上げた。
 そしてカオスが彼の言葉に気を取られた隙に、一気に大気を収束。強大な火災旋風を発生させた。
 更にそこから、気象を操るウェザーの能力で増幅・制御し、カオスをその内側へと飲み込んだのだ。

 地上にいる龍之介に被害が及ばないようコントロールするのは骨が折れたが、その分威力は絶大だ。
 もはや生み出したウェザー自身でさえ、まともに受ければただでは済まないだろう。
 余程炎に特化しているか、対抗できる能力がなければ生き残る事は難しい。

 その勝利の確信と共に、龍之介の待つ地上へと降下し始める。
 地上では今頃、龍之介が志筑仁美を始末している筈だ。
 ドーピングコンソメスープによる怪力に加え、リュウガのカードデッキも貸し与えているのだ。
 それらにインビジブルメモリの透明化を合わせれば、あの少女が余程特異な支給品を持っていない限り負ける要素はない。
 あとは力尽きたカオスから彼女の“力”の根源を吸収すれば、それで全てが終わる。
 ――――その筈だった。

「クスクス……クスクスクス…………」

 不意に聞こえた笑い声に、この上ない程に背筋が凍った。
 即座に自らが作り上げた火災旋風の、カオスがいる辺りを確認する。
 直後、少女を飲み込んでいた炎の竜巻は、熱風を吐きだして四散した。
 そして舞い散る火の粉の中、体のあちこちを焦げ付かせながらも、五体満足でカオスは健在だった。

「バ、バカな! まさかこれほどの……ッ!」
「本当にすごいね、おじさん。丸焦げにされたのなんて初めて……!
 OK……OKだよ! でも……今度は私の番だよ!!」
「ッッ…………!!」

 カオスがその両手を構え、今までにない規模で黒炎を収束させていく。
 そして同時に、無数の火球を止めどなく放つことでウェザーの行動を制限する。
 対するウェザーは牽制の火球を防がざるを得ず、故にその全力を以って暴風を発生させる。
 ウェザーの周囲に渦巻く暴風は、カオスの放つ火球を打ち払いながらその規模を大きくする。

「さぁ……これに耐えられる!?」
「オオ…………ッッ!!」

 そしてカオスの手から放たれる黒炎の閃光。
 ウェザーはそれに対抗するため、高めに高めた暴風を解き放つ。
 両者の一撃は互いの中央でぶつかり合い、激しい爆音を響かせる。
 だが、勝ったのはカオスの一撃。黒光は威力を減衰させながらもウェザーへと迫る。
 しかし、自らの一撃が敵わぬと予測していたウェザーは、纏っていた風を解放し、自分自身を弾き飛ばす。
 それによりカオスの減衰した一撃は、ウェザーの身体を掠めるだけに終わった。

 だが、カオスの攻撃がそれで終わった訳ではなかった。

「まだ終わりじゃないよ……!」
「このッ………!」

 カオスは自分がされたお返しの様に、回避の隙を突いてウェザーへと急接近する。
 それに気付いたウェザーは、咄嗟に発生させた暴風で迎撃を試みる。
 しかしカオスはその暴風をあっさりと吹き散らし、その刃の様な羽をウェザーへと突き刺した。

「グッ、ォオ………ッッ!」

 咄嗟に両腕で受け止めたものの、羽の刃先はウェザーの腹部に突き刺さっている。
 重要な内臓器官は無事だが、致命傷には変わりがなかった。
 そんなウェザーに、カオスが笑い声と共に話しかける。

「ねぇ……おじさんの「愛」は、食べる事なんだよね?」
「なに……を―――っ」
「私ね、もっと「愛」を知って、もっと大きくなりたいの」
「ま、まさか……私を食べる気ですか………!?」
「クスクスクス………!」

 正解、と言わんばかりに深くなる少女の笑みに、ウェザーは戦慄する。

「だから――――いただきます」

 直後、ウェザーは腹部に突き刺さった羽から、己の“力”が吸収されて――否、食べられていることを実感した。

「グ、ヌオォオオ………!!」
 どうにか突き刺さった羽を抜き取ろうと、ウェザーは両腕に力を籠める。
 だが、それをさせまいとカオスの細腕が、ウェザーの首を掴んで締めあげる。

「だめ、逃がさない……」
「ク、ウウウ………ッ!」

 その少女のモノとは思えぬ怪力に、両腕の力が緩む。
 更にそれを後押しするように、ウェザーへの変身が解けた。

「ば……かな………!」

 メモリは体外に排出されていない。
 それなのに変身が解けたという事は、体内でメモリブレイクされたという事だ。
 つまりは、ウェザーメモリの能力が、ほとんどまったく残っていないという事に他ならない。
 その事実に深紅郎は、今まで築き上げてきた物が崩れる様な、心に穴が開いた様な喪失感を覚えた。

 だが、カオスの“食事”はまだ終わっていない。
 カオスは深紅郎の命さえも吸収し、己が糧とするつもりなのだ。
 見れば、少女の身体にあった傷が、修復されていくではないか。
 おそらく、吸収した力を自分の物へと変えていっているのだろう。

 ――――そうして深紅郎は悟った。
 このカオスという少女は、自身が夢見た“進化”の権化に他ならないと。

 ならば、ウェザーと共にこの少女の一部となるのも素晴らしいかもしれない。
 そんな諦念を懐きかけた、その時だった。

「先生――――!!」

 カオスが、不意に現れた黒い竜に弾き飛ばされた。
 同時に深紅郎の身体も解放され、地上に落ち湯より早く引き返してきた黒龍に受け止められる。
 黒龍はそのまま、カオスには目もくれず飛び去って行った。

「ごはん……逃げられちゃった」

 それを見届けたカオスは、それを追い駆けず、地上へと降りていく。
 見れば地上は、ウェザーの生み出した火災旋風により火の手が広がっている。
 こんな場所に仁美を置き去りにすれば、彼女が死んでしまう事は一目瞭然だったからだ。


        ○ ○ ○


 その戦いを、神社の境内から眺める一人の男がいた。
 男の名は、葛西善二郎。彼は橋田至を殺害して家屋に火を付けた後、辺りを警戒しながらここまで来たのだ。

「火火火、絶景絶景。実に景気良く燃やしてるねぇ。
 こりゃあ、おじさんのお株が取られちまったかな?」

 境内から見える景色では、真っ赤な火災旋風が渦を巻いて空へと奔っている。
 あの位置は自分が火を放った家の位置だから、とっとと逃げて正解だったらしいと葛西は安心する。
 あんな事が出来る人間と真正面からやりあって生き延びられるほど、善二郎は人間を止めるつもりはない。

「火災の手品師としちゃあ、これを見て張りきんない訳にはいかねぇよな。
 つっても、やっぱ基本は逃げるんだけどな。火火火」

 殺し合いにおいて最適な生き延びる手段は、そもそも他者と遭遇しない事だ。
 なぜなら、そもそも誰にも会わなければ、誰にも襲われないからだ。
 だがそれは、残念ながら勝利を意味するものではない。特に今回の陣営戦では、それが顕著だ。
 例えどれだけ生き延びた所で、自分の所属する陣営がなくなれば、即ち自分の敗北=死亡となるからだ。

 となれば必要なのは、いかにして手早く他の陣営を潰すか、という事になる。
 他の陣営を潰すと言っても、極論すればやる事は同じだ。
 要はその陣営のリーダーを潰せばいいのだ。

 しかし善二郎には、人外を殺す様な能力はないし、彼自身も持つ気はない。
 なぜなら「人間の限界を超えない」というのが彼の美学だからだ。

「とりあえず、また別のヤツを探して、情報集めでもしようかね」

 だが善二郎にその力がないのなら、力のある奴に殺してもらえばいいだけだ。
 その為には力のある奴と渡りを付け、リーダーの位置情報を入手する必要がある。
 それさえ出来れば、あとは逃げても問題無しだ。

 情報収集には、話の解るヤツが望ましい。
 あのライダースーツや糞餓鬼の様なヒーロー気取りでもなく、どっかの怪盗みたいな自分の目的が第一な奴でもない、ちゃんと“大人”な対応をしてくれる人間だ。

「果たしているかねぇ、そんな“大人”は。
 まあ何にしても、動かなきゃ何にもわからんわな、火火火」

 ふざけた様に笑いながら、善二郎は燃え盛る風景に背を向ける。
 このまま南へ向かうか、別の方角へ向かうべきか思案し、

「ッ…………!?」

 ゾクリと背筋に走った悪寒に、咄嗟に背後へと振り返る。
 そして見えたモノは、あれほど激しかった火災旋風が、今まさに四散する光景だった。
 それは決して自然消滅ではなく、内側から何かに吹き飛ばされた消え方だ。
 その想像を超えた現象を前に、善二郎は思わず咥えていた煙草を落とす。
 炎の手品師を辞任する善二郎でも、あんなぶっ飛んだ消化は出来ない。

「…………コイツぁヤベェな」

 そう呟きながら、落とした煙草を始末して、新しい煙草に火を付けて咥える。
 乖離剣を使えばどうにかなるかもしれないが、そもそも使う必要のある状況には身を置きたくない。
 基本事項は生存延命。生きる為には時として危険に身を置く必要があるのは承知だが、可能な限り御免被る。

「小火小火せずに、さっさと逃げるか」

 気を落ちつけるように紫煙を吐きながら、善二郎はエアを肩に担ぐ。
 未だに奔り続ける悪寒は、ここが、というより、自分が危険だと教えている。
 ならば今すぐ逃げるべきだと結論し、逃げる方向を直感で決定して、再び街が燃える光景に背を向けた。


【一日目-午後】
【C-5/神社】

【葛西善二郎@魔人探偵脳噛ネウロ】
【所属】赤
【状態】健康、悪寒
【首輪】所持メダル170(増加中):貯蓄メダル0
【コア】ゴリラ×1
【装備】乖離剣エア、炎の燃料(残量95%)
【道具】基本支給品一式+一人分の食料、愛用の煙草「じOKER」×十カートン+マッチ五箱、@魔人探偵脳噛ネウロ、スタングレネード×九個@現実、《剥離剤(リムーバー)》@インフィニット・ストラトス
【思考・状況】
基本:人間として生き延びる。そのために自陣営の勝利も視野に入れて逃げもするし殺しもする。
 1.悪寒からとっとと逃げる。死にたくねぇ。
 2.殺せる連中は殺せるうちに殺しておくか。
 3.鴻上ファウンデーション、ライドベンダー、ね。
【備考】
※参戦時期は不明です。
※ライダースーツの男(後藤慎太郎)の名前を知りません。
※シックスの関与もあると考えています。
※「生き延びること」が欲望であるため、生存に繋がる行動(強力な武器を手に入れる、敵対者を減らす等)をとる度にメダルが増加していきます。
※何処へ向かったかは、後の書き手にお任せします。


        ○ ○ ○


 カオスが仁美を見つけるのに、そう時間はかからなかった。
 周囲の家屋は、火災旋風の影響でその殆どが火に包まれている。
 だがその中で、彼女のいた場所だけが不自然に火の手を逃れていたのだ。
 それはウェザーが、龍之介を巻き込まぬようにと配慮した名残だった。

「おねぇちゃん、大丈夫?」
「ええ、大丈夫ですわ。
 少しびっくりしましたけど、何の問題もありません」

 カオスの心配そうな声に、仁美はしっかりとした足取りで立ち上がることで答える。
 その言葉通りに大丈夫そうな様子を見て、カオスはようやく安心した。

 仁美が今も生きているのは、深紅郎の危機を見た龍之介が、脇目も振らずに助けに向かったからだ。
 つまり仁美は、間接的にだがカオスに助けられたとも言えるだろう。

「カオスさんの方こそ大丈夫でしたか? お洋服が焦げてますけど」
「うん、平気だよ」
 服はあちこち焦げてしまったが、ウェザーから受けた傷はほとんど治った。
 彼を食べ尽くす事は出来なかったため、完全には回復していないが、吸収した能力も含めれば十分だろう。

「そうですか……あら? バックに穴があいてますわ」
「あ……ほんとだ……」
 言われて見てみれば、仁美の言う通りデイバックには穴が開いていた。
 穴の縁が焦げている事から、炎に巻かれた時にいっしょに焼け焦げたのだろう。

「カオスさん。何か、落としたりはしてませんか?」
「えっと………“がいあめもり”が失くなってる」
「まぁ、あれを失くされたんですの。
 困りましたわ。この状況では、探すに探せませんし」

 どうやら、空いた穴から支給品を一つ失くしてしまったらしい。
 だがそれを探そうにも辺りは火の海で、支給品自体が無事とも思えない。

「仕方がありませんわ。今回は諦める事にしましょう」
「うん……」
 カオスは仁美の言葉に頷きながらも、せっかくの支給品を紛失した事に若干落ち込む。
 幸いもう一つのデイバックは無事だったので、残った支給品をそちらへと移していく。

「それにしても、井坂さん達は行ってしまわれたのですね。残念ですわ」

 その様子を見ながら、仁美はそう、心底残念そうに呟いた。
 ようやく見つけた“素晴らしい世界”への招待客を、二人もお招き出来なかったのだ。
 これでは先に旅立ってもらった青髭さんに、寂しい思いをさせてしまう。
 だが仁美は、あっさりと気持ちを切り替えた。

「けど落ち込んではいられませんわ。お招きする方は他にもいらっしゃるんですもの。
 井坂さん達は、またお会いした時にお招きする事にしましょう」
「そうだね、おねぇちゃん。次をがんばろう」

 カオスもそう励ましながら、仁美の手を取って繋ぐ。
 周囲の火事は既にウェザーの制御化にはなく、火の手は徐々に広がっている
 そして普通の人間には火事が危険だということぐらい、カオスだって知っている。
 今はまだ大丈夫だが、仁美の為にも、早くここを離れるべきだろう。

 そう思いながら仁美の手を引いた、その時だった。
 ふとカオスの視界に、あるものが映った。

「おねぇちゃん、それ」
 仁美の額から、血が一筋垂れて来たのだ。
 よく見れば、繋いだ左手の手首にも切り傷がある。
 こちらは流血こそ既に止まっているが、傷はまだ生々しい。

「あら? これは……血、ですわね。
 ……まあ大丈夫ですね。すぐに止まりますわ」
 おそらく黒龍の尾に叩かれた時か、壁に叩きつけられた時にでも切ったのだろう。
 仁美はそう思いながら、垂れてきた血を拭って、たいした事ではない様に言った。

「でも………」
「もう、カオスさんたら。本当に大丈夫ですわ。
 それよりも、早く次の招待客を見つけましょう」
「……うん……」

 仁美のその言葉に、カオスは渋々頷く。
 左手首の事もあり、仁美は全然大丈夫には見えない。
 けど彼女が大丈夫というのなら、きっと大丈夫なのだろう。
 そう無理矢理に納得させたのだ。

「ではカオスさん。方位磁針はどちらを刺してますか?」
「えっと………あっちの方」

 カオスが指差した方角は、南方。
 そしてそちら側には、仁美が持っていた螺湮城教本よりも、桁違いに強い魔力を内包する物があった。
 それは即ち、葛西善二郎の持つ宝具――乖離剣エアだ。
 魔力針は針を固定させていた魔道書が離れた事により、今度は乖離剣の内包する魔力を捉えたのだ。

「そうですか。ではあちらへと向かう事にしましょう」

 そう言って仁美は、カオスの手を取って歩き出した。
 カオスは手を引かれながらも、仁美を心配そうに見上げる。

 仁美は自身の怪我を全く気に留めていない。
 怪我をしたら痛い筈なのに、全然平気な顔をしている。
 もしかしたら大きな怪我をしても、大丈夫と笑うかもしれない。

「………………」

 仁美は言った。
 傍にいられると温かくて、傍にいられないと痛い。それが「愛」だって。
 なら怪我をして痛くなるのは、傍にいられなくなるから?
 仁美が怪我をしたら、仁美の傍にいられなくなるの?

「ッ―――、いた……い………?」

 不意に、動力炉が痛くなった様な気がした。
 身体をスキャンしても、動力炉に異常はない。
 なら今のは、きっとただの気のせいだろう。

 ただ、仁美の傍にいられないのは嫌だな、と。
 そう、なんとなく思った。


【一日目-午後】
【B-5/エリア南部】

【志筑仁美@魔法少女まどか☆マギカ】
【所属】緑
【状態】全身打ち身(中度)、左手首に切り傷、カオスへの強い期待、“魔女のくちづけ”
【首輪】180枚:0枚
【装備】江崎志帆のナイフ@魔人探偵脳噛ネウロ
【道具】基本支給品×2、洗剤二本(混ぜるな危険)@魔法少女まどか☆マギカ、ランダム支給品1~5(仁美+キャスター
【思考・状況】
基本:みんなと“素晴らしい世界”へ旅に出る。
 0.魔力針の指した南へ向かう。
 1.カオスさんと一緒に、カオスさんの「愛」の形を探す。
 2.知り合いを探す。
 3.カオスさんやジャンヌさん達を儀式に招待する。
 4.井坂さん達をお招き出来なくて残念。今度会ったら改めて招待する。
 5.カオスさんが大きくなるのがとても楽しみ。
 6.思考:1~を終えたら、みんなと“素晴らしい世界”へ旅に出る
【備考】
※“魔女のくちづけ”により、死に対する忌避感がありません。
 またどのような状況・形であれ、思考が現在の基本思考(死への方向性)に帰結します。


【カオス@そらのおとしもの】
【所属】青
【状態】ダメージ(小)、成長中、服が焦げている
【首輪】210枚:0枚
【装備】上靴(少し焦げた)@そらのおとしもの、魔力針@Fate/zero
【道具】基本支給品×2、トライアルメモリ@仮面ライダーW、ランダム支給品1~4(カオス+至郎田)
【思考・状況】
基本:このゲームを楽しむ。
 0.動力炉が、痛い………?
 1.仁美と一緒に、自分だけの「愛」の形を探す。
 2.温かいのが、「愛」?
 3.「心」ってなんだろう?
 4.仁美は本当に大丈夫なのかな………。
 5.もっと「愛」の事を知って、仁美みたいに大きくなりたい!
 6.おじさん(井坂)の「愛」は食べる事。
【備考】
※参加時期は45話後です。
※制限の影響で「Pandora」の機能が通常より落ちています。
至郎田正影を吸収しました。
※ドーピングコンソメスープの影響で、身長が少しずつ伸びています。
 今後どんなペースで成長していくかは、後続の書き手さんにお任せします。
※ウェザーメモリを吸収しました。
※魔力針は現在、乖離剣エアの魔力を捉えています。


        ○ ○ ○


 戦いのあった場所からそれほど離れていない民家。
 火災旋風によって広がった火事からギリギリ離れた場所にある衛宮邸に、深紅郎と龍之介はいた。

「先生、大丈夫……じゃないよね、どう見ても」
「ええ……残念ながら、その通りですね」

 腹部を抑える深紅郎の手の隙間からは、血が未だに流れ出てくる。
 数多くの人間を殺戮してきた龍之介には、それが危険な状態だとすぐに解った。

「どうにかして早く止血しないと。
 ……ええっと、針と糸と、あとなんだっけ?」

 だが殺した経験はあれど、生かした経験は殆どないため、咄嗟に適切な対処が思い浮かばない。
 キャスターと共に作り上げてきた生きたオブジェは、キャスターの魔術によって無理矢理に生かしていたので、なおさらだ。
 そうやって慌てる龍之介に、深紅郎は優しく声を掛ける。

「龍之介君。落ちついて、そんなに慌てる必要はありません」
「え? で、でもその出血じゃ」
「ドーパント専門とはいえ、これでも医者です。今一番最適な方法は心得ていますよ」

 そう言うと深紅郎は、デイバックから一本のアンプルを取りだした。

「先生、それって」
「よく見ててください、龍之介君。人体の神秘というものを―――!」

 深紅郎は取り出したアンプル――ドーピングコンソメスープを、躊躇なく己が肉体へと食べさせた。
 直後、血管が浮かび上がり、皮膚は黒ずみ、筋肉が盛り上がっていく。
 その一度は自分も経験した肉体の進化に、龍之介は眼を見開いて驚嘆した。

「コフゥ~…………どうです龍之介君。この人体の神秘は」

 深紅郎はそう言って立ち上がり、血で赤く染まった腹部を軽く叩いて示す。
 見れば、止まる気配の全くなかった血が、ピタリと止まっていたのだ。
 なんと深紅郎は、隆々と盛り上がった筋肉のみで、傷口を完全に塞いでみせたのだ。

「―――く―――COOLッ! すげぇよ、マジですげぇ! 超COOLだよ先生!
 人間ってそんな事出来んのかよ! 最高だよドーピングコンソメスープ!」
「ええ、そうですね。
 ……………………」

 人間の可能性を垣間見た龍之介は、際限なくテンションを上げていく。
 だがそれを見詰めながらも、深紅郎は気分が盛り上がらずにいた。
 その理由はただ一つ。ウェザーメモリを失ったからだ。

 ウェザーメモリは言わば、深紅郎の獲得してきた“力”の結晶だ。
 それを失ったという事は、今までの努力が無駄になったに等しい。
 これでは、龍之介の持つインビジブルメモリを完成させる意味もない。

 そんな風にテンションが下がり始めた、その時だった。
 コン、という音が深紅郎の耳に入ってきた。
 一体何の音かと目を向けると、信じられないモノがそこにはあった。

「こ――これは………!」

 深紅郎はすぐに音のした場所――縁側に跳び出し、ソレを手に取った。
 それは仮面ライダーたちの使う物に酷似した、「W」の文字が刻まれた銀色のガイアメモリだった。

 そう。それこそが、カオスが失くした支給品だったのだ。
 T2ガイアメモリには、己を最も適性の高い人間の元へと導く力がある。
 その力に導かれたT2ウェザーメモリは、彼女のデイバックに空いた穴から零れ落ち、深紅郎の元へと辿り着いたのだ。


「先生? 一体どうしたの?」
「まさか……いや、しかし………。
 いえ………いずれにしても、試せば判る事です」

 深紅郎はT2ガイアメモリを知らない。故に戸惑いを隠せないでいた。
 だがそのガイアメモリが何であれ、ウェザーメモリと酷似しているのは間違いない。
 ならば何を躊躇う必要があるのか。正体がわからないなら、試せばいいだけではないか。
 そう決断して心の葛藤を振り払い、恐る恐るメモリを起動させる。

《――WEATHER――》
「お――おお………!」

 するとメモリはひとりでに浮遊し、深紅郎の体内へと挿入された。
 それと同時に、この上なく慣れ親しんだ力が、今まで以上の質で体内を満たしていく。
 そして深紅郎の肉体は、ドーピングコンソメスープによって強化された肉体をそのままに、ウェザー・ドーパントへと変身した。

「――――く」
「せ、先生……?」

 ウェザーへと変身した深紅郎は、声を漏らして肩を振るわせる。
 龍之介が躊躇いがちに声を掛けるが、聞こえてないのか、答えはない。

「………ああ、私は何を落ち込んでいたのか。どうして諦める必要があったのでしょう。
 そうです。失ったというのなら、また手に入れればいいだけの事ではないですか!」

 その身に満ちる感情は、歓喜。
 抑えきれぬほどの喜びが、彼の心を満たしていた。
 その様子にはもう、落ち込んだ様子は微塵もない。

「龍之介君! さぁ、食事にしましょう!
 栄養をしっかりと摂り、失った体力を回復するのです!」
「う、うん、わかった。すぐに用意するよ」

 急なテンションの変化に困惑しながらも、龍之介は言われた通りに深紅郎のデイバックから材料を取り出していく。
 その様子を尻目に、変身を解除した深紅郎は火事によって赤く染まる空へと目を向ける。

「待っていなさい。貴女が“進化”の権化であろうと関係ない。
 今度は逆に、私の方が喰らい尽くしてみせましょう!」

 そう、更なる“進化”への決意を懐いて。


 一方龍之介は、深紅郎のテンションに置き去りにされたことで、ある事を思い出していた。

「旦那、大丈夫……だよな」

 キャスターがあの魔道書を、簡単に他人に貸し与えるとは思えない。
 ならあの少女と何かあったと考えるのが道理だ。
 まさか殺された、なんてことはないと思うが、心配にはなる。

 それにもう一つ気付いた事があった。
 いつの間にか首輪のランプが、白から紫に代わっていたのだ。
 つまりこれは、白陣営のリーダーが倒された、という事だろう。
 だがこの事については、キャスターと敵対せずに済んで良かったと切り捨てる。

「なんか、疲れたな……」

 ドーピングコンソメスープの影響か、妙に疲れている。
 なら少しでも体力を回復させるために、深紅郎の言う通り食事をして体力を回復させよう。
 そして早く旦那と合流して、魔道書を届けてあげよう。

 龍之介はそう決めて、大量に料理を作り続けた。


【一日目-午後】
【B-5/衛宮邸】

井坂深紅郎@仮面ライダーW】
【所属】無
【状態】ダメージ(小)、腹部に重度の刺し傷(筋肉で止血)、筋肉モリモリ、興奮状態
【首輪】45枚(増加中):0枚
【装備】T2ウェザーメモリ@仮面ライダーW
【道具】基本支給品(食料なし)、ドーピングコンソメスープの入った注射器(残り三本)&ドーピングコンソメスープのレシピ@魔人探偵脳噛ネウロ、大量の食料
【思考・状況】
基本:インビジブルメモリを食らう。そのために龍之介を保護する。
 0.ひとまず食事をして、失った体力を回復する。
 1.インビジブルメモリを完成させる。
 2.次こそは“進化”の権化であるカオスを喰らって見せる。
 3.ドーピングコンソメスープとリュウガのカードデッキに興味。龍之介でその効果を実験する。
 4.コアメダルや魔術といった、未知の力に興味。
 5.この世界にある、人体を進化させる為の秘宝を全て知りたい。
【備考】
※詳しい参戦時期は、後の書き手さんに任せます。
※ウェザーメモリに掛けられた制限を大体把握しました。
※ウェザーメモリの残骸が体内に残留しています。
 それによってどのような影響があるかは、後の書き手に任せます。
※ドーピングコンソメスープを摂取したことにより、筋肉モリモリになりました。


雨生龍之介@Fate/zero】
【所属】無
【状態】疲労(小)
【首輪】100枚:0枚
【コア】コブラ
【装備】カードデッキ(リュウガ)@仮面ライダーディケイド、サバイバルナイフ@Fate/zero、インビジブルメモリ@仮面ライダーW
【道具】基本支給品一式、ブラーンギー@仮面ライダーOOO、螺湮城教本@Fate/zero
【思考・状況】
基本:このCOOLな状況を楽しむ。
 0.とりあえず言われた通り、食事の準備をする。
 1.しばらくはインビジブルメモリで遊ぶ。
 2.井坂深紅郎と行動する。
 3.早く「旦那」と合流したい。
 4. 旦那に一体何があったんだろう。
【備考】
※インビジブルメモリのメダル消費は透明化中のみです。
※インビジブルメモリは体内でロックされています。死亡、または仮死状態にならない限り排出されません。
※雨竜龍之介はインビジブルメモリの過剰適合者です。そのためメモリが体内にある限り、生命力が大きく消費され続けます。


【共通事項】
※ウェザーの発生させた火災旋風の影響で、エリア【B-5】南部の火事が燃え広がりました。
 具体的にどの程度燃え広がったかは、後の書き手にお任せします。



048:Oの喪失/失われた日々 投下順 050:醒めない夢(前編)
047:Aの策略/増幅する悪意 時系列順 050:醒めない夢(前編)
046:成長!! カオス 054:愛の炎
志筑仁美
040:深紅郎動く! 龍之介改造計画! 井坂深紅郞 062:さらばAライダー/愛よファラウェイ
雨生龍之介
022:橋田イタルの悪運 葛西善二郎 054:愛の炎



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最終更新:2012年10月21日 15:18