少女「そっちはどう?」 少年「七匹、楽勝楽勝。まあここの魔獣じゃあ相手にならんよなぁ」 そう言う二人の前に、黒い犬の姿をした魔獣が、大勢倒されていた。 少年(少し前まではどこにでもいる普通の高校生だったのに―――) (普通だと思っていたら、異世界ではチートでした) &bold(){プロローグ} 高校生達が野球をしていて、短髪の少年、貴史が球を打った。 男子「よっしゃー追加点だ!」 女子「きゃああああ!貴史―――!」 貴史「ぬああ!太一がいるとこ打っちまった!」 太一「へっへっへ!悪いな貴史!」 黒髪の少年、太一が貴史の打球をキャッチした。 審判「スリーアウトチェ―ンジ!」 貴史「あちゃー・・」 貴史「太一テメェやってくれんじゃねえか!」 太一「いい当たりだったぞ貴史。だがあんなんで俺を抜こうなんざ・・・」 「三ヶ月早い!」 貴史「ビミュー!超ビミョー!三ヶ月って締まらねえな!」 太一(小学生の頃から仲のいい友人、小野寺貴史。小学生の頃は野球に打ち込み、中学からは空手に目覚めた野球少年。無駄にさわやかにイケメンで、高校入学早々にして既に二人に告白されているという強い男) 凜「何じゃれあってんの。貴史強気攻め、太一強気受けだなんてまた噂されてもしらないわよ」 少女、凜がその場に来た。 太一「お、凜か。テニスだったんだろ?やっつけてきたのか?」 凜「授業なのに本気でやらないよ」 太一「そりゃそうか。お前チートだもんな」 凜「チートゆーな!」 太一(吾妻凜、小さい頃からテニスに打ち込みジュニアでは全国区の実力者である。それでいて、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる、モデル体型の美少女だ) (かくいう俺、西村太一は―――モテない男子代表。運動神経とセンスはいいらしいが、面倒くさがりの帰宅部だ。そんな俺の悩みらしい悩みといえば・・・) 「噂っつたら凜と貴史の方が注目されてるみたいじゃねーか。お前たちに囲まれてると経済格差に匹敵するルックス格差を感じざるをえないぜ。あの二人は付き合ってるんですか、ってちょいちょい呼び出されては質問される俺の身にもなってみろよ」 貴史「なっ!付き合って・・・って」 凜「何よそれ、誰がそんな噂を・・・」 太一(・・・・この二人、まったく進展ないみたいだがな) 貴史「こら太一!とっとと行くぞ!ゲーセンが埋まっちまうだろ!」 太一「おう!わりぃ!」 凜「もう・・・・」 太一(俺たちが暮らしている街はそこそこ都会。物は溢れていて不便はない。高校に上がってから友達も増え、ますます楽しくなる日々。退屈する日もあるっちゃあるが、こんな日常は悪くない―――) 太一達が横断歩道を渡ろうとした時、凄い勢いの自転車が突っ込んできた。 太一「凜!危ねえ!」 凜「えっ?」 太一が凜を抱き寄せて、自転車から助けた。 太一「馬鹿野郎!気を付けろ!」 「ったく・・・・・大丈夫か?」 凜「あ、うん・・・・ありがと、太一・・・」 太一「おうっ、気にすんな」 貴史「まったく乱暴な運転しやがって!二人とも大丈夫か?」 太一「ああ、問題ないぜ!」 貴史「くっ羨ましい・・・俺が太一になれたらなぁ・・・」 太一「おいおい、学年でモテランキングトップスリーに入っている奴が何言ってやがる」 凜「た、太一―――」 凜と太一の足下に魔法陣が浮かび、二人を光が包んでいく。 太一「なっ、何だ・・・!?」 周りの人達がざわめく。 凜「太一ッ!」 貴史「太一!凜!その光から離れろっ!!」 太一と凜が光の中に消えていった―――― 太一(平和な世界が―――俺の大好きな日常が、唐突に終わりを迎えることになんて、想像もしていなかった―――) 次の瞬間、凜と太一は草原の上にいた。 太一(一体何が起こった・・・?) 「凜・・・・?」 凜が顔を赤らめて、太一を突き飛ばした。 凜「何どさくさに紛れて抱きついてるのっ!」 太一「理不尽ッ!イテテ・・・はっ」 (・・・何?なんだこれは。俺達はほんの数分前までアスファルトの上にいたと言うのに・・・) 太一と凜がいたのは、見渡すばかりの草原であった。 (続く)