夜の町。
踏切で立ち止まったOLにアリエナイザーが触手を伸ばした。
OLは金網に叩き付けられ、息絶えた。
その首に白い花が咲き、すぐに青く染まった。
アリエナイザーがその花を取り、去って行く。
ナレーター「この事件は若い女性の突然死として処理され、デカベースには報告されなかった。しかし、これはこの後起こる悲劇の序章だったのである……。」
デカベース。
スーツを着込んだホージーが鼻歌を歌いながら、階段を下りていく。
ホージー「OK.うーん、パーフェクト」
セン「何回ってんの?」
ホージー「気にするなセンちゃん。グットラック」
セン「はぁ・・・」
センがデカルームに入った。
セン「うーん」
バン「どうしたんだ、センちゃん」
セン「いや、今夜非番のホージーがやけにめかし込んで、メッチャクッチャ、ウキウキで出かけて行ったんだよね」
ジャスミン「めかし込んで、ウキウキ_」
バン・ウメコ「「怪しい」」
ウメコ「はっ!ボス、恐らく背後に女性の存在が!」
バン「相棒の野郎~~~ボス、すぐに調査しましょう!」
ドギー「ハッハッハ、バカ」
テツ「どんな人なんでしょうか?美人ですかね?」
バン「まっ、俺の彼女よりは落ちるだろうけおdな」
テツ「え、先輩いるんですか?」
バン「ん・・・いないけど・・・」
ドギー「しかし彼女までゲットとは、ホージーのヤツ、やっぱり最高に乗ってるな」
ジャスミン「やっぱりとは?」
ドギー「実はあいつは今、特キョウ昇進試験に挑戦中なんだ」
バン「本当すか!?」
ドギー「ああ、第4次試験までパーフェクトでクリアして、最終の実地試験を残るのみになっている」
ウメコ「全然知らなかった」
ジャスミン「憧れの、金バッチ」
テツ「専門クラスにも入らず、通常の任務をこなしながら、あのすさまじい量の勉強をするなんて・・・」
ジャスミン「ナンセンス?」
テツ「いえ、マーベラス。凄いです」
ドギー「励ましてくれる人の存在が大きいのかもれしんな」
バン「く~どんな子なんよ~~~たくぅ!」
バンがセンにヘッドロックをかける。
とあるバーで、マイク星人の女性のテレサが歌っていた。
歌い終わったテレサに客たちが拍手を送る。
その中にホージーもいた。
ホージー「胸に染みたぜ、テレサ。君の歌は聞く度に良くなる」
テレサ「ありがとう。宝児さんはどう?試験の調子」
ホージー「勿論、パーフェクトで最終段階さ。次の事件を本部が決めた条件の中で解決すればいい。どんな事件が起きるか分からないけど、俺は絶対に合格する自信がある」
テレサ「そうね、宝児さんなら・・・」
テレサが咳き込んだ。
ホージー「大丈夫か、テレサ?」
テレサ「・・・ムセちゃった。地球のお酒は私にはキツイんだもん」
そこへ、テレサの弟のクロードが来た。
テレサ「クロード」
ホージー「やぁ、久しぶり」
クロード「・・・帰ろう姉さん。無理して働かなくてもいいって言っただろ!」
テレサ「無理なんてしてない!私は好きなの!」
テレサがホージーの方を一瞬向く。
テレサ「・・・・歌う事が」
クロード「今夜はなるべく早く帰ってこいよ、姉さん」
クロードはホージーを一瞥してから、出ていった。
ホージー「どうも嫌われてるな」
テレサ「ごめんなさい。親を亡くして、姉弟二人きりで苦労してきたから、あまり人を信じられないみたいなの。本当は優しい子なんだけど・・・」
ホージー「分かってるさ。君の弟だからな」
公園。アリエナイザーが女性を襲った所に、一般警官2人が来た。
警官「そこで何をしている!」
アリエナイザーは警官達の方を向く。
警官「「うわーーー!!」」
ホージーはテレサをアパートに送った。
テレサ「いつも送ってくれてありがとう。じゃあ」
ホージー「テレサ・・・」
テレサ「ごめんなさい、やっぱり私・・・」
ホージー「地球人じゃないから、マイク星人だから気にしてるのか?」
テレサ「そうじゃない。そうじゃないけど・・・」
ホージー「だったら・・・」
ホージーのSPライセンスに通信が入った。
ドギー「ポイント347にアリエナイザーが現れた。OLを殺害した上、職質の警官2名に重傷を負わせ逃走中だ。ホージー、非番の所悪いが急行してくれ」
ホージー「ロジャー。また連絡する」
ホージーが現場に向かった。
地下駐車場に逃げ込んだアリエナイザーをホージー以外のデカレンジャーを追う。
グリーン「フォーメーションR2行きますか!」
レッド「よっしゃ!相棒の代わりは、お前だ、後輩!」
ブレイク「ロジャー!」
そこへデカブルーが来た。
ブルー「遅れてすまん」
レッド「ずるいぞ相棒!俺に断りもわく彼女なんか作って!特キョウ試験の事も内緒にしやがって」
ブルー「無駄口叩くな!アリエナイザーは何処だ?」
ピンク「この地下駐車場の何処かに潜伏中よ」
ブルー「OK、SWATモードだ!」
レッドたち「「「「ロジャー!」」」」
ブルー「スワットモードオン!」
デカブレイク以外の5人のデカレンジャーがスワットモードに強化変身した。
ブルー「熱感知システムオン!」
デカブルーの熱感知システムが車の影に隠れたアリエナイザーを見つけた。
ブルー「止まれ!止まらないと撃つぞ!」
アリエナイザーが逃げ出し、デカブルーがディーリボルバーを撃ち、その一発がアリエナイザーの左手に当たった。
ブルー「動くな」
アリエナイザー「うわぁ!」
アリエナイザーが触手を地面に叩き付け、その火花に紛れて姿を消した。
レッド「逃げられたか!」
翌日、デカベース。
ドギー「司法解剖の結果、被害者の女性からはある特定の栄養素だけが完全に抜き取られていた」
ジャスミン「特定の栄養素だけが」
ドギー「ああ、実は数日前にも同じ所見の被害者がいた事が判明した」
ホージー「と言うことは、同一犯か」
そこへSPD長官、ヌマ・Oからの通信が入った。
ヌマO「特キョウ候補生戸増宝児」
ホージー「長官!」
ヌマO「報告と同様の事件が7つの惑星において数十件発生してる事が判明し、本件は広域指定事件になった。そこで君に特キョウ試験の最終課題を与える。この事件を48時間以内に解決せよ」
ホージー「ロジャー!最善を尽くします!」
ウメコ「ホージーさんなら、チョチョイのチョイだよね!」
ホージーが端末を操作し、検索を始めた。
バン「特キョウになって、別の星に配属されちゃうのは寂しいけど、皆応援してってから!頑張れよ相棒!」
ホージー「サンキュ、だが相棒って呼ぶな」
そこへ、スワンからの通信が入った。
スワン「ドゥギー、現場の遺留品から大分絞り込めてきたわ。犯人はマイク星人の男性よ」
ホージーのキーボードを叩く手が止まった。
ホージー「マイク星人・・・」
ドギー「どうしたホージー?心当たりがあるのか?」
ホージー「いえ・・・」
アパートでテレサが歌っていたが、咳き込んでしまう。
そこに傷ついたクロードが帰ってきた。
テレサ「クロード!?どうしたの?」
クロード「何でもないよ・・・姉さん、それより休んでなきゃダメじゃないか!」
テレサ「大丈夫よ、少し位」
クロード「あまり無理するなよ・・・」
テレサ「この星でも見つかったの、その花」
クロードはあの青い花を持っていた。
テレサ「それを摘むために何かに危ない事してるんじゃないの?」
クロード「心配性だな姉さんは・・・谷間に咲いていたのを摘んできただけだよ。それより、今度こそ・・・」
クロードは青い花から摂ったエキスを調査した。
クロード「すごい!今までの星で採取したエキスに比べて、劇的な変化だ!
これなら姉さんの病気もすぐに治るよ!」
テレサ「本当に!?」
クロード「後少し、この花を集めれば・・・」
テレサ「じゃあ私、本気になってもいいの!?」
クロード「・・・あの刑事のことか・・・」
アパートの扉がノックされた。
クロード「俺が出るよ」
来たのはホージーだった。
クロード「姉に何か用ですか?」
ホージー「君に聞きたい事があるんだ」
ホージーはクロードを外に連れ出した。
クロード「何ですか?」
ホージーがクロードの右腕を掴み、袖をまくり上げると、
昨日のアリエナイザーと同じ箇所に包帯が巻かれていた。
ホージー「これは俺から受けた傷だ」
クロード「だったら・・・だったらどうだって言うんだ!」
ホージー「重要参考人として、連行する事になる」
クロード「両親をスペースシップの事故で亡くしてから、姉さんはいつも自分を犠牲にして俺を守ってくれたよ・・・
どんなに辛くてもきっといつか、幸せになれるから頑張ろう・・・ってね。俺は努力して異例の速さで医者になった。やっと俺達にも幸せが来たと思った・・・
でもその矢先に・・・!姉さんは幼い俺を養うために危険な放射線が出ていると噂だった鉱山惑星ガイガミラで働いて・・・。そして・・・
姉さんは元気そうに見えるけど、このまま放っておいたら後僅かしか生きられないんだ!!」
ホージー「テレサが・・・・・・!?」
クロード「俺はあの花を青く咲かせる物質が特効薬になる事を突き止めた。
そして、あちこちの星で人体実験を繰り返した結果、やっとこの星の若い女の体に最適の物質を見つけた。
何と言われようと俺は姉さんを助ける!俺がやるしかないんだ!」
クロードが走り去っていくが、ホージーは追えなかった。
クロードが駐輪場に向かった。そこへ、若い女性が来た。
クロードがアリエナイザーの姿に変化し、女性を襲おうとしたがその女性に男の子が駆け寄ってきた。
弟「姉ちゃん!」
姉「あー、ゆうすけ、また紐取れてる」
テレサ「クロードったら」
テレサとの日々が頭によぎったクロードは動きを止めたが、姉がクロードに気付き、悲鳴を上げた。
姉「きゃーーーー!」
クロードが逃げだした。
ホージーがテレサのアパートのドアノブに手をかける。
躊躇いながらもドアを開けようとした所でSPライセンスに通信が入った。
ドギー「ホージー、ポイント315に逃走中のアリエナイザーが現れた。
若い女性を殺害しようとして未遂のまま逃走中だ。
市民の安全のため、一刻も早くヤツを発見するんだ!」
テレサとホージーの写真立てが倒れた。
ホージーがSPライセンスのチェンジスイッチを入れた。
事情を知らないバン達は意気揚々とデカベースから出動していく。
バン「いいかみんな!この事件は相棒の特キョウ昇格テストだ!援護はいいけど絶対ドドメの所で出しゃばるなよ!」
セン「そっくりそのまま、その言葉、バンに返すよ」
テツ「そうそう、先輩が一番危ないんですから」
バン「何でだよ!」
ジャスミン「全く自覚なし」
バン「おっしゃ!」
ウメコ「とにかくレッツゴー!」
テレサがアパートを出てバーに向かおうとした所で、雨が降り出した。
クロードが地下道に入り、再度アリエナイザーの姿になり、女性を襲おうとした。
そこにデカブルーが来た。
ブルー「待て!」
デカブルーがクロードにSPライセンスを突き付けーー
テレサが横断歩道を渡ろうとした時、歩行者信号の青信号が点滅していたが、やがて赤信号に変わった。
これは、ジャッジメントタイムによりクロードにデリート許可が下された事を示唆していた・・・。
クロード「俺が居なくなれば・・・姉さんは死ぬんだぞ!それでもいいのか!?」
ブルー「俺は・・・デカなんだ・・・」
クロード「姉さんを好きだって言うのは・・・嘘だったんだな!!」
ブルー「嘘じゃない・・・愛してる」
デカブルーがディースナイパーを向ける。
クロードが地下道の出口へ逃げだす。
女子高生たち「「「キャーー!」」」
クロード「くっ!」
クロードがそこに居た女子高生たちを襲おうとしたが、
その前にデカブルーがディースナイパーを撃ちーー。
テレサが人混みに気付き、その中に入っていく。
そこには射殺されたクロードの亡骸があった。
テレサ「クロード・・・・クロード!!クロード!クロード!・・・・」
クロードの亡骸に駈け寄り慟哭するテレサの前にデカブルーが来た。
テレサはその事情を察し、無理に笑顔を作った。
残るデカレンジャーが駆けつけた時には、雨の中、クロードの亡骸の傍で泣き続けるテレサと立ち尽くすホージーがいた・・・・・。
後日、デカベースにて。
バン「辞退したんですか、相棒。特キョウになるの・・・」
ドギー「ああ」
ウメコ「あんなに憧れていた特キョウの試験に合格したのにだったのに・・・」
ジャスミン「その後、彼女は?」
セン「行方不明だそうだ」
スワン「あの後、メディカルセンターに運ばれた彼女の体は回復に向かってたわ」
テツ「クロードの治療がそれなりに効を奏したんでしょうか」
スワン「それよりも、地球に来た彼女に生きたいという思いを強くさせる何かがあったんじゃないかしら・・・」
墓地に喪服を着たホージーが来た。
そこで、尼になったテレサとすれ違った。
二人はしばらく見つめ合ったが、テレサは一礼してから何も言わずに立ち去っていた。
ホージーも墓場から去って行った・・・・。
そして、いつものナレーターによる締めは行われなかった…。
ミニコーナー(ED「ミッドナイト・デカレンジャー」内に流れるコーナーで、前回(Episode.36)にてスワンが緊急変身したデカスワンについて)
ジャスミン「スワンさんの華麗な変身! デカスワン!」
ウメコ「かっこいい~、すっごーい! 流石スワンさん! これからは一緒に戦いましょうね!」
スワン「駄目よ!あたし、4年に一度しか変身できない主義なの!」
ジャスミン「オリンピックヒロイン!?」
ウメコ「ああっ!?」
最終更新:2024年07月28日 01:49