ウルトラマンギンガの最終回

前回までのあらすじ

美鈴の父・石動誠一郎は、謎の敵に心の闇に付け込まれ、傀儡となってギンガを苦しめたが、最後には正気を取り戻し、愛する娘ために戦い抜いた。

☆   ☆   ☆

誠一郎「ごめんな。いつの間にかお父さん、美鈴のことより仕事のことだけ考えてた。その結果、取り返しのつかないことを……」

美鈴「けど、戦ってくれたんでしょ?私のために……お父さん、戦ってくれた」

誠一郎「美鈴……」

美鈴「ありがとう……!」

ヒカル「おい、見ろよ!」

校門をくぐり、大勢の人々がやって来る。歓喜するヒカル、健太、千草たち。

千草「やったぁ!結界が解けたんだ!」



☆きみの未来☆



ヒカル「あの集まった人たちって……」

ホツマが、謎の敵の呪縛の解けた白井校長を連れてやって来る。

ホツマ「この学校の、卒業生だよ。ね、白井先生?」
白井「えぇ…… でも、どうして?」

「急に小学校が見えなくなっちゃって、ずっと心配してたんです!」
「みんな無事だったんですね!」
「私たちの大事な母校もね!」

白井「みなさん……こんなにも、想ってくれていたなんて……!」

千草「わ、ケータイ繋がる!」
健太「マジ!?」

不法投棄業者の山田と木村、暴走ライダーの矢神、学校を焼こうとしたユウカなど、心の闇を利用されて怪獣化し、ギンガに助けられた者たちもいる。

山田「良かったよ、無事で」
ヒカル「あんたら!?」
山田「俺らは今ボランティアで、この辺りのゴミ拾いをやってんだ」
木村「先輩、小学校のときは植物学者になって、この町を花でいっぱいにするって言ってたらしいっス」
矢神「俺は、バイクで世界一周するって決めた。その報告だ」
ユウカ「私はね、ファッションデザイナーになりたかったの。だから今はこっちの実家で勉強中で、そしたら学校が……」
健太「そ、そうなんですか!?」

ギャンブルがらみで引退した柿崎の旧友の元プロボクサー、大里。

大里「太一。俺ぁ、賭博事件なんかに関るんじゃなかったよ……」
柿崎「もういいって。剛ちゃんの気持ちはわかってる。立ち上がって前へ進めよ!マッドドック大里!」
大里「……そうだな」

降星小の解体を考えていた建築業者の黒木と桑原。

黒木「桑原。この学校のこと、もう一度考え直すわよ」
桑原「残す方向ですか? 了解です!」

美鈴「お父さん、お母さんに逢いに行こうよ。心配してるよ」
誠一郎「あぁ、そうだな」

ヒカル「みんな……いい顔してんじゃん!」

柿崎「じゃあ皆さん、帰りましょう!」

「はい!」
「やっと外に出れるぞ~!」
「よっしゃ!久しぶりにコンビニ行くか!」



皆が安堵し、笑顔で帰途に就こうとしたそのとき。

突如闇のオーラが一同を包み、次々に倒れてしまう。

美鈴「お父さん!?」
タロウ「これは…!?」

呪縛から解放されたはずの白井校長の手に、ダークスパークが握られている。

ヒカル「白井校長!?」

白井「あ、あ!?あ……!?」

ホツマ「まだ、終わってはいなかったか……!!」

ホツマも倒れる。

ヒカル「じいちゃん!?」

ダークルギエル!

ダークスパークの放つ闇の中から、ウルトラマンたちよりもはるかに巨大な暗黒の巨人、ダークルギエルが出現する。

「あの暗黒の巨人は!?」

タロウの脳裏に、かつてウルトラマンたちとすべての怪獣たちがスパークドールに変えられた戦い、ダークスパークウォーズの光景が浮かび上がる。

タロウ「思い出したぞ!ヤツこそが、すべての元凶……!」


「我が名は、ルギエル──ダークルギエル。

愚かなる生命体、人間よ。キサマらの時間は、我が力によって止まる」


ダークルギエルの放った光線で、校舎が砕け散る。

ヒカル「やめろおおおお!!」

ウルトライブ!ウルトラマンギンガ!

ヒカルはギンガに変身するが、ダークルギエルに蹴り飛ばされ、あっという間にダウンしてしまう。

ヒカル「ぐわっ!」
ルギエル「ウルトラマンギンガ──我はずっと待っていた。長き眠りから目覚め、キサマを倒すこのときを!」

ギンガのカラータイマーが点滅を始める。

タロウ「もうタイムリミット!?」
友也「ジャンナインが使えたら、僕が……!!」

友也も倒れる。

美鈴「友也くん!?」

ルギエルはギンガを一方的に痛めつける。ギンガの反撃はまったく通用しない。

校舎も次々に破壊されてゆく。

健太「学校が!?俺たちの学校……ッ」

健太も倒れる。

美鈴「健太!?」
千草「壊れてく……何も……かも……」

千草も倒れる。

美鈴「千草!?」

ルギエル「人間ども!お前たちのおかげで、我は復活したのだ。
絶望と恐怖で闇に染まった、そのマイナスエネルギーをエサにして!」

白井「あ、あ、ああああああああ!!」

白井校長のダークスパークから溢れた闇が、ルギエルへと注がれる。
対するギンガはガクリと膝をつき、動けずにいる。

ヒカル「力が……どんどん……抜けてく……ッ」

美鈴「立って!立って、ヒカル君!お願い!」

美鈴も、タロウのスパークドールを握ったまま倒れる。

タロウ「美鈴!?目を覚ませ!」
ヒカル「美鈴!?うぅッ……」

ルギエル「ムダだ──ギンガ」

ついにギンガは倒れ、カラータイマーから光が消えた。

タロウ「ギンガ!?ヒカル!?」

ルギエル「聞け、ウルトラマンタロウ。惨めな人形よ。ここにいる人間どもの絶望をすべて吸い取った。次はこの星、すべての人間の時間を止めてやる。フハハハハ!!」

ルギエルの手にしたダークスパークから、闇の波動が空へと広がってゆく。


「なぜです……!?教えてください、父よ、母よ!

なぜ、私にだけ心を残したのです!?

こんな残酷な結末を、見届けさせるためですか!?

すべてが終わろうとしているとき、何ひとつできないのなら、なぜ!!?」


絶望の淵に立たされたタロウのもとに、ウルトラの父と母の声が届いた。



父『それは、お前がウルトラマンだからだ』



母『人々の希望を、力に変えて戦うのです』



タロウ「人々の……希望……?」



廃墟同然と化した校舎、ボロボロになった校歌のボード──

倒れている卒業生たちが次々に、弱々しい声で校歌を歌い始めた。

タロウ「この歌は……?」

闇の波動が消え始める。

ルギエル「なっ…何ィ!?」

倒れたままの健太も、千草も、美鈴も、そしてヒカルも、校歌を口ずさむ。
白井校長は壮絶な痛みに耐えながら、ダークスパークの闇を必死に抑えようとしている。

白井「もう……利用させない…!!私の心も!!私の、生徒たちの心も…!!!」

ホツマ「白井先生!やっぱりあなたは……強い人だ…!!」

ルギエル「黙れ、黙れ、黙れッ!!人間ごときがア!!」

なおも校歌を歌い続ける卒業生たち。

ルギエル「もうこいつの闇など要らぬ。我は完全に復活した!フハハハハッ!!」


ルギエル!!お前が何を壊そうが!何を奪おうが!人間は立ち上がる。何度も、何度でも!!


白井校長の手に、ギンガスパークの分身・ギンガライトスパークが現れる。


ウルトラマンが人間を救うのではない!人間と力を合わせ、戦ってきたのだ!!


健太にも、美鈴にも、友也の手にも、ギンガライトスパークが現れる。

ルギエル「何…!?」

校歌を口ずさみながら、倒れていた皆が立ち上がる。

すべての手に、ギンガライトスパークが握られていた。


ルギエル「こんな……バカな!?」



「かけがえのない友たちよ!!戦おう!!


私と共に!!!」



宙に舞い上がったタロウに、全員のライトスパークが集まり、ライブサインに次々と突き当てられ、そして──


「タロオオオオオオオ!!!!!」


ついにタロウは元の姿を取り戻し、ルギエルにスワローキックをお見舞いする。

ヒカル「タロウ……!?」

ルギエル「クッ!」

反撃をものともせず、パンチとキックの猛連撃をぶちかまし、ルギエルを怯ませる。

ルギエル「おのれ……!また人形にしてやる!」

タロウ「ストリウム光線ッ!!!」

ダークスパークから放たれた闇の波動と、タロウのストリウム光線が激突する。

タロウ「負けぬ!私は今、やっと理解した。

ギンガ、君は未来から来たウルトラマンなのだな!?

だからヒカルを選んだ!

ヒカル!お前のまっすぐ前に進む力こそが、希望なのだ!!

これを受け取れぇ!!!」

タロウがギンガのカラータイマーに、エネルギーを注ぎ込む。その隙に、ダークルギエルの攻撃がタロウに直撃。


「うぐぅッ…ヒカルゥ…!!


未来を、つかめえええ!!!!!」


タロウは光の粒と砕け散り、ヒカルの眼前で消滅した。

ヒカル「タロおおおおお!!」

ルギエル「ハハハハハ!!我に刃向かうなど愚かなり。フハハハハッ!!」



ヒカル「……笑ってんじゃねぇよ……てめぇなんかに、俺たちの未来、止めさせてたまるかああああ!!


行くぜ、ギンガ!!!



力強く立ち上がったギンガが、全身に光を漲らせ、ダークルギエルと同じサイズまで巨大化を遂げる。
ギンガスパークは光を放ち、三ツ叉の巨槍ギンガスパークランスへと変化した。

ルギエルもダークスパークを槍に変え、激突。
二人はそのまま飛び上がり、大気圏を突破し、戦場を月面へと移す。

ルギエル「止めてやる!!すべての命、すべての時間を!!」

ヒカル「止まるのは、お前のその、歪んだ野望だッ!!」

激しい剣戟の末、二本の槍は宙を舞い、地面に突き刺さる。
身軽になった二人は、体一つで殴り合う。

ヒカル「これで決めてやる。はああああああ!!!」
ルギエル「いいだろう……!!!」


「ギンガエスペシャリイイイイイ!!!!!」


最強必殺光線同士の正面激突。

激しい押し合いの末、ギンガの光線がルギエルの光線を押し切り、ルギエルに直撃!


「なぜだ……ッ!?

グワアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!


断末魔の絶叫と共に、ルギエルは爆散。

ダークスパークも消滅し、戦いはギンガの勝利に終わった。



☆   ☆   ☆



降星小学校の残骸から、無数の光がゆっくりと空へ昇っていく。

白井「勝ったのですね……」
ホツマ「はい。呪いが解けて、怪獣たちが喜び勇んで、宇宙に帰って行ってるんです…!」

タロウ「ヒカル。…別れのときだ」

ヒカル「…だな。ありがとう、タロウ」

タロウ「あぁ…キミはよくやった。キミたちに出会えてよかった。さようなら…」

ドールに戻ったタロウも光に包まれ、他のドールたちと一緒に空へと昇ってゆく。

空中にはジャンスターも舞っている。
ガンパッドに「GOODBYE FRIEND」の文字が浮かびあがり、友也はかすかに微笑んだ。


地上に降り立ったギンガが、ヒカルたちを見下ろす。

ギンガ「ヒカル……」

ヒカル「ギンガ……」

ギンガ「私は宇宙に旅立つが、君は、この星をもっと冒険しろ。それが終わったら、また会おう」

ヒカル「……おう!」

ギンガ「未来は、変えることができる。いいようにも、悪いようにも。それを成すのは、君たちだ」

ヒカルたちが力強く頷く。

ギンガ「さらばだ。……ありがとう」

ギンガも光に包まれ、空へ昇ってゆく。ヒカルたちは大きく手を振って見送った。

「さようなら─!」
「さようなら──ッ!」


全てのスパークドールズが空の彼方へと飛び去り、視界から消える。

健太「さよなら……」

千草「さよなら……」

友也「グッバイ、フレンド……」

美鈴「さよなら……」


ヒカル「ありがとう。──ギンガ!」


ヒカルと美鈴が、美鈴と千草が、千草と健太が手を取り合う。そして友也の手をヒカルが握る。

友也「ちょっ、なにやってるんですか!?」
ヒカル「みんな手ぇつないでるだろ?」
友也「僕はいいですよ。僕は遠慮しておきますっ」
健太「友也可愛いい~!」

ヒカルたちは友也をムリやり巻き込んだまま、輪になってはしゃぎ回った。



☆   ☆   ☆



人は誰でも経験する。運命の出会い、運命の別れ……



そしてまた始まる。明日という未来が!



(終)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2021年09月02日 21:13