闘将!!拉麺男の第1話

拉麺男(ラーメンマン)誕生!!の巻

日本の空手、韓国のテコンドー、タイのキックボクシング(ムエタイ)など、世界のあらゆる武術、武道の源流が一四〇〇年の歴史をもつ中国拳法にあるといわれている。
その中国拳法の総本山が中国河南省の嵩山少林寺である。
この崇山の一角には英雄面山とよばれる高峰がそびえ、
岩壁には中国拳法史上の最強の四人の達人の顔がきざまれている。
今日はこの4人の中でも最強とうわさのたかいラーメンマンの修業時代にスポットをあてて話をすすめていきたいとおもう。

それはむかしむかしのおはなし。その頃の中国は山賊や馬賊とよばれる強盗団が横行していた。とあるこの村にも、蛇五、蛇六、蛇九の三兄弟ひきいる悪名たかき毒蛇党(コブラとう)とよばれる馬賊が猛威をふるっていた。

村人「ああ・・・毒蛇党だ・・・」

長男蛇五(ジャンゴ)、性格はいつも冷静で氷のよな男。剣の達人。

蛇六「ケケケ――――」
次男蛇六(ジャム)、性格ははげしく短気。クンフーの達人

蛇九「うお~~~!!」
三男蛇九(ジャンク)、性格は乱暴で一度狂いだすと手がつけられない。

そんな毒蛇三兄弟が次々と村人を殺していく。

蛇五「ホーレホレ、金めのものはみんなだせ」
蛇九「ゲヘヘヘ・・・はやくだした方が身のためだぜ!」

ソーメンマン「その必要はないぞ、みんな」
村人「ソ・・・ソーメンマンさん、あんた・・・」
蛇六「ん?なんだおめぇは拳法でおれたちにたちむかおーってのか。こいつは・・・おもしれぇ」
「よ―――し、ためしたい秘技もあることだし、やったろうじゃねえか!!」

蛇六がソーメンマンに向かっていく。
その様を、ソーメンマンの息子のラーメンマンが見守っていた。
しかし、蛇六とソーメンマンの間に蛇九が立ちふさがった。
ソーメンマン「ああ・・・こ・・・これでは蛇六の動きがみえん・・・ひ・・・左か、それとも右か・・・」

蛇六「秘技幻惑夢壁(げんわくむへき)!!」
蛇六が蛇九の肩を跳び越えた。
ソーメンマン「ああ、上から・・・」

蛇六「うりゃあ~~~~~~っ!!」
蛇六の蹴りがソーメンマンの腹を貫いた。

ラーメンマンが飛び出し、倒れたソーメンマンの元に駈け寄った。
ラーメンマン「お、おとうさん、死んじゃやだ――――!!」
蛇六「ケッ・・・くちほどにもねぇやっ!」
ラーメンマン「くっそ―――っ!!」
ラーメンマンが蛇六に飛びかかった。
蛇六「うわ・・・」
「そらとうちゃんの所へおくってやるぜ!」
しかし、ラーメンマンは崖の下に放り投げられた。

蛇五「よ―――し、次の村へいくぞ!」
党員たち「「「おお」」」」
毒蛇党は去って行った。


谷-
ラーメンマン「ウ・・・ウーン・・・」
川のほとりで目を覚ましたラーメンマンの前に、陳という老人がいた。
陳「小僧、気がついたか」
ラーメンマン「あ・・・おじいさんがたすけてくれたの?」
陳「おまえが強運の持ち主じゃのう。岩壁の木の枝にひっかかってたすかったんじゃ。命は大切にせえよ」
ラーメンマン「ところでおじいさん、なにしてるの?」
陳「つりじゃよ」
ラーメンマン「えっ・・・つり?」

陳が川の中の魚を蹴り上げていく
ラーメンマン「ああ。わわ・・・つり針もサオもつかわないで足でさかなを・・・」
「これがうわさにきく超人拳法か・・・」
陳「どれ、これくらいにしてかえるか!」
ラーメンマン「・・・・・」
陳「ところで小僧、両親のことをなんどもうわごとでいっておったが、なにかあったのか?」
ラーメンマン「ろ・・・老師、なん十万、なん百万の軍団にひとりでたちむかって勝つことができるでしょうか」
陳「できる、それは超人になることじゃ!」
ラーメンマン「で、ではわたしは、わたしは超人になれるでしょうか!?」
陳「それはだれにもわからん!」
ラーメンマン「ろ・・・老師、わたしを弟子にしてください!!」

陳が振り向き、ラーメンマンの目を見つめた。
陳(こ・・・この目、よほどのことがあったんじゃろう・・・)
「よいか、道というものは理想であり、とおくにあるものだ。したがって常に自分の道にちがづくよう努力すればよい。いいか、修行はつらいぞ!」
ラーメンマン「ハイ老師!!」

陳老師の修行寺-
陳「よいかラーメンマン、拳法は心・技・体の三つがそろってはじめてなりたつ」
「この熱湯のはいったカマの底をみなさい。ありがたいお経の札がはいっておる、ラーメンマンこれをとってもらえぬか」
ラーメンマン「は・・・はい」
ラーメンマンがカマに手をいれようとしたが・・・
ラーメンマン「あち――――」
陳「ハッハハハ。それではダメじゃラーメンマン」
陳が素早くカマに手を入れ、お札を抜き取った。
ラーメンマン「わあはやい・・・しかも水面には波ひとつたってない!」
陳「よいかラーメンマン、手のはやさだけでは札はとれん。心を集中させるのだ。もし雑念が入ると水面に波がたち大やけどをしてしまうだろう」
「この集中力が強化されるとこのような芸当もできる!!フン!」
陳が手を振ると、上に吊されていた鐘が鳴った。
ラーメンマン「ああ・・・か・・・鐘が・・・・・」
陳「この技を完全に消化すると百歩はなれた位置から敵をたおすことができることから、百歩神拳とよばれる!」
「さあ、つぎはこれをきなさい」
ラーメンマン「ハイ」
陳がラーメンマンに白い胴着を渡した。
陳「ついてきなさい」
陳も白い胴着に着替えて外に出た。

ラーメンマン「ああ、こんな所にトンネルが」
陳「よいかラーメンマン。このトンネルの中には全身にススをぬりたくった像がならべてある。人がこの中にはいると像がつぎつぎにたおれる仕組になっている。今からわしとまえとでこの中にはいり、たおれてくる像をよけながら向こう側へはしりぬける」
ラーメンマン「よーしこれならわたしにもできそうだ。なんたってすばっしっこさにかけては、だれにも負けたことはありませんから」
陳「フォフォ!それはどうかな」
ラーメンマン「今度ばかりはわたしに分がありそうですね!老師」
「よーいドン!」
陳とラーメンマンがトンネルの中に入っていった。

ラーメンマン「わあっ、うわーっ!!」
「ひぇ~~~~!!」
ラーメンマンが倒れてくる像に苦戦する中、陳は軽々と通り抜けていった。

ラーメンマン「ひゃ~~~~、まっ黒になっちゃた」
陳「おう、今でてきたのか、ラーメンマン」
ラーメンマン「ああ・・・老師が先に・・・しかも白衣はまったくよごれていない」
「・・・・・」
陳「くやしいか、こんな老いぼれに負けて・・・よいか、どんなに年をとってもすごい力がだせる。これが超人拳法じゃ。拳法は曲芸でも手品でもない。くるしい修行にうちかつさえできれば、だれでも超人になれる。わかるな、ラーメンマン」
ラーメンマン「老師、わたしはやります」

それからはラーメンマンの血のにじむような修行がはじまった。
陳老師の超人拳法には超人一〇二芸と称する各種の鍛錬法がある。
修行者はその一〇二のすべての鍛錬法を消化しなくてはならない。
しかしラーメンマンは修行にいや気がさすどころか、ますます練習熱心になりもともと素質もあったため、ラーメンマンの拳法はうではメキメキと上達していった!
そして12年の月日がながれた―――

成長したラーメンマンは、あのトンネルの像をよけきって抜けた。
陳「おお・・・ようやく白衣をススでよごさないで、はしりぬけられるようになったの」
ラーメンマン「はい」
陳「よし卒業じゃ」
ラーメンマン「ええ、今な・・・なんといわれました」
陳「もうわしがおまえにおしえることはなにもない。下山してもよいぞ!」
ラーメンマン「老師、ありがとうございました」

陳「では卒業式じゃ。あの火の中の巨大なカマを・・・はこんでここまでもってきてみい」
「いっておくが力だけではもちあがらんぞ。わしのおしえた超人拳法、心・技・体が一体となったときにもちあがるのじゃ。失敗すれば大やけどをおって死ぬ」

ラーメンマン「うわ―――っ、うわ――――っ!!」
ラーメンマンがカマを持ち上げようとするも、熱くて持ち上げられなかった。
陳「ラーメンマン、心・技・体じゃぞ!」

ラーメンマン「ハッ」
ラーメンマンがカマに「中」の文字が彫られていることに気づき、その文字に額を合わせた。
ラーメンマン「うわあ~~~~、うわあ~~~~!!」
ラーメンマンはカマを持ち上げ、陳が笑った。

ラーメンマン「おお・・・」
ラーメンマンはカマを陳の前に置いた。
その額には、「中」の文字が焼き付いていた。

陳「よ――――しラーメンマンよ、おまえは今日から美来斗利偉拉麺男(ビクトリー・ラーメンマン)となのるがよい!!」
「それからおまえにこの闘龍極意書をさずける」
ラーメンマン「こ・・・これは・・・」
陳「これにはひとりで軍隊にたちむかう方法がかいてある」
ラーメンマン「老師・・・」
陳「命は大切にな!」

かくしてラーメンマンは父親の敵、毒蛇党をもとめ山をおりた。

ある村-
毒蛇党に滅ぼされたこの村で、一人の子供が泣いていた。
シューマイ「お・・おとうさん・・・シューマイはどうして生きていけばいいの・・・・」
ラーメンマン「この村もやつらのえじきになったのか・・・・」
シューマイ「だ・・・だれだ・・・」
ラーメンマン「わたしは美来斗偉拉麺男!毒蛇党をたおしにきた」
シューマイ「ええ・・・あの毒蛇党を!!正気かあんた・・・・」
ラーメンマン「正気だ。あんなカスどもの退治はひとりで充分」
シューマイ「ええ、ひ・・・ひとりでってどうやって・・・・・」
ラーメンマン「ワナをしかけて、そしてやつらを一網打尽にする」
シューマイ「え?ワナ?」
ラーメンマン「超人説法その1,戦いをするにもまず完全な準備から。少年よ、やつらは今度いつせめてくる?」
シューマイ「またすぐやってくるよ!」
ラーメンマン「ではいそがねば」
シューマイ「ぼ・・・ぼくもてつだうよ!」

ラーメンマン「これでよし」
「超人説法その2、敵を一望できる所に拠をかまえるべし!少年よ、このあたりで一番見通しのいい所は?」
シューマイ「あそこかな」
シューマイは少し離れた丘を指差した。
ラーメンマン「う―――む、絶好の場所だ!」
シューマイ「ところでなんなのそれ?」
ラーメンマン「これか。これはわたしの守り神だ」
シューマイ「守り神?」
ラーメンマン「超人説法その3、自然現象をフルに活用すること。自然現象か・・・・」
「ム!あ・・・あれは台風雲だ。それも大型・・・!!こ・・・これはつかえるぞ!!」
「よ―――し!!あの雲の大きさからみてこのあたりだろ」
ラーメンマンは地面に大きなマル印を書いた。
シューマイ「マルなんかかいて、なにすんのさ?」
ラーメンマン「数時間後、このマルがやつらを一掃してくれる!」
シューマイ「ええ!?このマルが・・・」

シューマイ「き・・・きた、毒蛇党だ!」
馬に乗った毒蛇党の軍勢が二人の前の平原に差し掛かろうとしていた。
(蛇九は巨体のせいで馬に乗れないので走ってきた)
シューマイ「ほ・・・ほんとに大丈夫なの?」
ラーメンマン「わたしの作戦は完璧だ!」

蛇五「ハッハハハハハ――――ッ!!」

ラーメンマン「とうさん・・・そして老師、みていてください・・・ラーメンマン一世一代の大戦を!」

蛇九「なんだ―――っ!!」
党員たち「うわっ」「あたっ」
蛇九や党員達がラーメンマンとシューマイの彫った落とし穴にかかった。
シューマイ「やった―――っ!!」

蛇九「だれだ、こんな所に穴をあけたやつは―――!?村の連中か!?くそ―――!!」
蛇五「いいや、臆病者のやつらにはそんことはできん!!」
蛇九「じゃあ、いったいだれが・・・」

蛇五「だれかがわれら三兄弟をねらっているとしかおもえん」
蛇六「よしおまえら、われらのタテになれ―――っ!!」
蛇五「あの丘だ・・・」

毒蛇党は、毒蛇三兄弟を囲む陣形になって丘の方に向かった。

ラーメンマン「毒蛇三兄弟は警戒して護衛兵をまわりにおいた。予想どおりの行動だ・・・これで勝てる」
シューマイ「ああ・・・風が強くなってきた・・・」
ラーメンマン「ま・・まずい。風が強くなるのがおもったよりはやい。はやく三兄弟をあのマルの中へいれなくては。マルの中にはいるのは三兄弟でなければすべては水のアワ・・・」
「あと10M(メートル)・・・あと6M」
「5M、4M・・・」
毒蛇党はどんどんマルに近づいていき・・・
ラーメンマン「3M、2M、1・・・ゼロ」
「はいった―――っ!!」

三兄弟がマルの中に入ったのと同時に、台風が起こった。
党員「うわっ・・・風が・・・!」
「ひえ~~~っ」
「うわ~~~っ!!」
三兄弟を残して、党員たちが台風に吹き飛ばされていった。
蛇五「い・・・いったいどうなってるんだ!!」

シューマイ「わああ、すげえ・・・」

蛇五「こ・・これはいったいどういうことだ!!」

シューマイ「ど・・・どうして毒蛇三兄弟だけふきとばされなかったの:
ラーメンマン「それはあのマルの位置がちょうど台風の目の位置だったからさ。しってるかな、台風の目の位置は・・・無風状態だということを!」
シューマイ「あ・・あなたはすごい・・・台風がくることだけでなく、台風の目の位置まで予測して戦いをいどむとは、ちょ・・・超人だ・・・!!」

ラーメンマン「ひさしぶりだな、毒蛇兄弟!」
ラーメンマンが丘から出て来た。
蛇五「お・・・おまえがわれらを・・・たったふたりで毒蛇党をおびやかすとは、おまえはなに者!?」
ラーメンマン「わすれたか、12年前を」
蛇六「き・・・きさま、あのときの・・・」
ラーメンマン「わたしは生きていた。12年間きさまらをたおすために修行してきた・・・とうさんや村の人びとの敵をうつために。そして今、その宿願がはたされるときがきた――――っ!!」
ラーメンマンは胴着を脱ぎ捨て、毒蛇三兄弟の元に飛び降りた。

ラーメンマン「そりゃ――――っ!!」
シューマイ「ああ・・・」

ラーメンマン「大車輪蹴り!!」
ラーメンマンの回転蹴りが毒蛇三兄弟に炸裂した。

蛇六「こ・・・こしゃくな――――っ!!きさまも父親の所へおくってやるぜ-―――っ!!」
蛇九「ぐわはは―――っ!!」
蛇六がラーメンマンに向かい、蛇九がラーメンマンと蛇六の間に立ちふさがった。

ラーメンマン「秘技、幻惑夢壁だな」
(みえる、蛇六のうごきが・・・)
ラーメンマンは蛇九の体の向こうの蛇六の動きを見越していた。
ラーメンマン「上だ――――っ!!百歩神拳~~!!」
ラーメンマンの百歩神拳が蛇六と蛇九を真っ二つに切り裂いた。

シューマイ「ああ・・・」

蛇五「ひぇ―――、ゆるしてくれ、ラーメンマン。もう悪事ははたらかない、村人たちには償いをする」
ラーメンマン「・・・・・」
ラーメンマンは蛇五に背を向け立ち去ろうとしたが、蛇五は剣を拾い、ラーメンマンを斬ろうとしていた。
シューマイ「ラ・・、・ラーメンマン、うしろ・・・」

シューマイの言葉を聞き、ラーメンマンは飛び上がった。
蛇五「うわっ」
ラーメンマン「後方風車―――っ!!」
ラーメンマンの両足蹴りが蛇五の頭を蹴り砕いた。

ラーメンマン(シューマイのひとことがなかったら、わたしはやられていただろう・・・まだまだ武道家としては未熟・・・)
「また山にもどって修行のやりなおしだ」
胴着を拾って、去っていくラーメンマンの後ろをシューマイが追いかける。
シューマイ「ああ、ラーメンマン、まってよ!!ねえまってよ」
ラーメンマン「修行はつらうぞ、シューマイ!」
シューマイ「ハイ!お師匠さま!!」

一日師となれば終生父となす・・・(中国のことわざ)

(続く)

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最終更新:2018年06月02日 18:28