前回で、謎の宇宙電波の正体が母からの呼びかけと判明し、大地は宇宙電波研究所跡地で、通信を試みている。
その様子を見つめていたアスナが、飲み物を勧める。
アスナ「一息入れない? もう3日目だよ。ろくに寝てないんでしょ?」
大地「ありがと」
アスナ「お母さんの声…… 本当にここから発信されたの?」
大地「ここは、時空の特異点なんだと思う。だからウルトラフレアのときも、この場所だけ別の時空に飛ばされた」
アスナ「時空の特異点……」
大地「母さんはずっと、宇宙の電波の中には、未来から飛んで来たものがあるって研究をしてたんだ」
アスナ「それって未来がわかるってこと?」
大地「化石の発掘みたいに、断片を見つけてはそれを解析してたみたいだけど。それに、父さんはこの場所で何か、大昔の遺物を発掘した。その場所に宇宙電波の研究所を建てたんだ。変だと思わない?」
アスナ「……お父さんが発見した遺物と、未来からの電波には関係があった?」
大地は休む様子もなく、機器に呼びかける。
大地「母さん、聞こえる? 俺だよ。大地だよ!」
アスナ「大地…… 少し休も」
大地「ここには絶対何かあるんだ。母さんと父さんが、一緒にここで何か未来に関る研究をしていた。その母さんが、今俺に何か伝えようとしてる。母さん、聞こえますか? 父さん、俺の声聞こえる?」
月面上空。ワタルとマモルの乗るスペースマスケッティが、宇宙空間を行く。
ワタル「うぅん…… このマスケッティ、新型機つったって、一体どこが変わったっていうの?」
マモル「驚いてください。この2号機には最強の──」
ワタル「ビーム砲か!?」
マモル「最強の、空間エネルギー測定器が搭載されてるんス」
ワタル「……何だそれ」
マモル「空間エネルギー量の変化を測定することで、ダークサンダーエナジーの発生源をばっちり見つけられちゃう、大発明っス!」
ワタル「普通に、最強のビーム砲は搭載されてないってことですか」
マモル「……強力な力に、強力な兵器で対抗って、その考え方は時代遅れっしょ」
ワタル「強力な武器じゃなかったら、どうやって地球を守るっていうんだよ」
マモル「さぁ……」
ワタル「『さぁ』って……?」
マモル「最終的には、愛じゃないっスかね」
ワタル「愛? この顔で、愛を語りますかぁ。えぇ?」
マモル「ワタルさんは、地球好きっスか?」
ワタル「う、うん、もちろん」
マモル「二度と、あの星に戻ることはできないって言われたら、泣きますか?」
ワタル「……泣く」
マモル「それは、地球を愛してるってことっス。その愛が、地球を守るっス」
Xio基地オペレーションベースXのハヤト、タケル、チアキ。
タケルがマモルたちの会話をモニターしつつ、笑みをこぼす。
ハヤト「ワタルたちから何か報告は?」
マモル「『愛が地球を守る』ですって」
マモル「……何だそれ」
チアキ「もうお昼だねぇ~。買い出しジャンケンでもしますか?」
タケル「俺、蕎麦って気分なんだけど」
ハヤト「蕎麦なら、俺の親父の打った蕎麦、食わしてやりたいよなぁ」
タケル「あぁ、長野でも有名な老舗でしたよね」
チアキ「でも遠過ぎて、出前は頼めないですねぇ~」
ハヤト「まぁな」
一同「おし!」「最初はグー!」
ルイとグルマン博士も、ラボで昼食でありついている。
ルイ「うん、美味っ! これ出前とかすれば結構人気出るかも」
グルマン「だろぉぉ! ファントン特製、ヨーグルト蕎麦!」
ルイ「まさに驚天動地の珍味だね、博士! あっ、これチェーン展開しちゃおうよ。ルイルイヨーグルトヌードル!」
グルマン「何でお前の名前を付けるんだ!?」
ルイ「ふふ~ん、てへっ!」
一同「じゃんけん、ほい! ほい! ほい!」
ハヤト・タケル「よっしゃぁ!」
チアキ「キーッ! じゃあ、行ってきますね~」
ハヤトたち「行ってらっしゃ~い」「落っことすなよぉ」
緊急通信が入り、すかさずタケルとチアキは厳しい顔に一転、配置につく。
チアキ「UNVERジュネーブ本部からです。ダークサンダーエナジーの最新データが来ました。未だ発生源が特定できていないようですが、18日前は水星、3日前のものは、金星周辺だったようです」
神木「まさか、地球に近づいて来ている…?」
橘「マモルたちに知らせて。2人の現在位置からなら、もっと厳密な場所が特定できるはず」
マモル「了解。では、数値のチェックを開始します。ワタルさん」
ワタル「はいよ。えっと…… 空間エネルギー量、3」
マモル「おもしろいこと言いますね」
ワタル「何がおもしろいんだよ?」
マモル「空間エネルギー量は絶対、レベル5以下にはなりません」
ワタル「そうか…… 今、2になったぞ」
マモル「だからぁ、おもしろくないし……」
マモルが機器に目をやると、確かに表示の数字は「2」。しかも、どんどん低下している。
マモル「あれ? いや、そんなはずは……!?」
大地とアスナは依然、宇宙電波を測定中。
機器から声が聞こえる。
『──大地、お母さんの声が聞こえますか? ──』
大地「母さん? 母さん!!」
音が消えてしまう。
アスナ「どうしたの!?」
マモルたちのもとでは、空間エネルギー量の数字がついに「0」と化す。
マモル「ヤバいっしょ! これ、絶対!」
やがて2人の前方の宇宙空間に、奇妙な発光体が出現する。
ワタル「……何だ?」
その様子を、Xio本部でもモニターしている。
チアキ「綺麗……」
マモル『スペースマスケッティより本部! 正体不明の発光体が出現! 空間エネルギー量が0なんて有り得ない──』
画面の映像が消え、マモルの声も途切れる。
タケル「通信途絶! スペースマスケッティ、レーダーから消えました!」
アスナたちのもとにも、そのことが通信で届いている。
アスナ「すぐに戻ります。行くよ!」
ハヤト「ワタル! おい、ワタルぅぅ!」
ルイ「マモルぅ、聞こえる? こら、返事しろぉ~!」
グルマン「通信映像を再生してくれ」
タケル「了解」
映像とマモルの通信が再生される。
画面に再び、マモルたちの前に現れた謎の発光体が表示される。
『正体不明の発光体が出現! 空間エネルギー量が0なんて有り得ない──』
ルイ「はっ! 捜してたのは、こいつだよ。博士!」
グルマン「なるほど…… 謎だったのは当然だ! ダークサンダーエナジーの発生源は、存在しない物だったんだ」
神木「存在しない物!? しかし現に、あそこに──」
グルマン「空間エネルギー量が0ってことは、スペースマスケッティの前には何も無かったということだ。こいつは全くの『無』なんだ。ゼロ。虚無。情報の無い物を脳が無理に視覚化したのが、このキラキラだ」
橘「あの発光体がダークサンダーエナジーの発生源だと、UNVER本部に知らせて!」
タケル「了解!」
神木「月面基地、各国の衛星を駆使して、スペースマスケッティとあの発光体の行方を追え!」
一同「了解!」
発光体が地球上に降下、UNVERネバタ支部が一瞬にして壊滅にする。
タケル「発光体、UNVERネバダ支部を直撃。半径1キロが消滅!」
チアキ「監視衛星の映像、来ました」
ネバダ支部の壊滅跡より、発光体が不気味な人型の怪獣と化し、姿を現す。
アスナの運転するトレーラー・ジオポルトスで、アスナと大地も本部へ向かっており、2人もその映像を見ている。
アスナ「何なの、あれ!?」
エックス『グリーザだ』
大地「えっ!?」
エックス『大地、緊急事態だ! 私から直接、Xioのみんなに話す!』
大地「ちょ、直接!?」
アスナ「どうしたの?」
大地のエクスデバイザーに加え、アスナのジオデバイザーにも、エックスが姿を現す。
アスナ「えっ!?」
そして、本部の神木隊長以下、隊員全員のジオデバイザーにも。
神木「エックス!?」
エックス『私はウルトラマンエックス』
ルイ「エックスから直電!?」
エックス『神木隊長。今アメリカを襲ったのは、グリーザです』
神木「あなたがこんな通信をしてくるということは、よほどの非常事態ということですか!?」
エックス『グリーザは、星の生体エネルギーを狙い、全てを無へと変換します』
橘「生き物を、消し去るということ?」
エックス『えぇ。3つもの生命豊かな星を消失させたグリーザを追って、私はこの太陽系までやって来たのです』
エックス『地球を狙うグリーザを、私は太陽に突き落とすことで、ようやく倒すことができました。15年前のことです」
橘「15年前……』
グルマン「それがウルトラフレアの原因か」
エックス『しかし、倒したはずのグリーザが復活してきた!』
グリーザが、ネバダ支部から飛び立つ。
チアキ「グリーザ、西に向けて飛行を開始」
エックス『奴は生体エネルギーの強いものから消していきます。地球の場合は、怪獣』
橘「ネバタ支部は、世界最大のスパークドールズ保管施設……」
神木「スパークドールズが引き寄せたのか……」
ルイ「二番目は…… ここだね」
エックス『そう。次に狙われるのは、Xio日本支部です』
グルマン「そして奴は最終的に、この地球から全ての生命を消滅させようとしているわけか」
エックス『グリーザは、今までの怪獣たちとは格が違う。私だけでは倒せないかも知れない。共に基地を守り抜き、奴を倒しましょう!』
神木「わかりました。副隊長、非常事態宣言だ! この基地を中心とする、半径20キロの住民に、緊急避難指示発令! 基地内の非戦闘員も総員退避!」
一同「了解!」
Xio基地から、隊員たちが次々に退避してゆく。
「退避命令だ! 総員退避」
神木「博士、エナジーシールドを最大出力で、基地全体を覆ってくれ」
グルマン「最大出力でも足りん! ルイ、パワーアップだ! よぉし、行くぞ!」
ルイ「ガッテンテン!」
神木「ハヤト、スカイマスケッティで迎撃!」
ハヤト「了解!」
チアキ「Xio USA、太平洋上空のグリーザに、ペルセウスミサイルを発射。交戦を開始しました!」
太平洋上。上空のグリーザを目がけ、艦艇からミサイルが注がれる。
しかしグリーザにはまったく効果が無く、逆にグリーザの反撃の前に、艦隊は全滅してしまう。
ハヤトは格納庫に向かいつつ、ジオデバイザーで、実家の父に電話をかけている。
ハヤト「いや、別に急用じゃないよ」
父『暇なのか? だったらたまには戻って来て、店、手伝え』
ハヤト「正月には帰れるから。父さんの打った蕎麦、食いたいし」
父『フフッ。蕎麦食うんなら、大晦日に帰って来い』
ハヤト「帰るよ…… 必ず!」
音声『ジオマスケッティ、ラウンジします。ジオマスケッティ、オンザウェイ』
ハヤト「ジオアトス・ジョイント・トゥ ジオマスケッティ!」
音声『スカイマスケッティ・コンプリート』
ハヤトの乗ったジオアトスがジオマスケッティと合体、スカイマスケッティとなって空に飛び立つ。
ラボではルイとグルマン博士が、シールドの作業を進めている。
ルイがマモルたちと共に撮った写真を見やり、感情を押し殺すように唇を噛む。
タケル「グリーザ、あと9分20秒で基地に到達します!」
神木が胸に手をやる。
常に胸に忍ばせている、愛娘が描いた、妻の死を描いた一枚絵──
神木「副隊長、基地最終防衛システムを起動!!」
橘「了解!!」
アスナのジオポルトスが、本部へと急ぐ。
神木『アスナ、基地に戻り次第、サイバーゴモラでグリーザを迎え撃て!』
アスナ「了解!」
神木『大地はアスナをサポート!』
頭上の空中に、グリーザの姿が見える。
大地「間に合わない!」
エックス『行こう、大地!』
アスナ「ちょっ、どういうこと!?」
大地「アスナ、停めて!」
アスナ「えっ!?」
大地「早く停めて!!」
アスナが車を停め、大地が飛び出す。アスナが慌ててしがみつく。
アスナ「大地!! 何やってんの!?」
グリーザはどんどん、本部を目がけて降下して来る。
大地「アスナ、今まで黙っててごめん」
アスナ「だから何を!?」
大地「俺とエックスで、あいつを止めてみせる!」
アスナ「ちょっ、大地ぃ!?」
大地がアスナをふり切り、駆け出す。
大地「エックス、ユナイトだ!!」
エックス『よぉし、行くぞ!!』
大地「エックスウゥゥ──ッッ!!」
大地がウルトラマンエックスと化し、空へと飛び立つ。
アスナは、自分の目の前で起きた信じられない光景を、呆然と見つめる。
橘『アスナ、急いで!』
アスナ「大地が……」
橘『大地が!? どうしたの、何があったの!?』
アスナ「大地が…… 大地は、グリーザ迎撃に向かいました」
神木「グリーザを迎撃……!?」
アスナ「大地がエックスだったんです!!」
その事実に、Xio本部の神木たちが、驚愕に包まれる。
アスナ「大地とエックスを援護します!」
エックスは一気にエクシードエックスに強化変身し、空中にグリーザと激突する。
アスナ「一緒に戦おう、大地!」
音声『サイバーゴモラ、ロードします。リアライズ』
サイバー怪獣・サイバーゴモラが実体化し、登場する。
エックスが空中でグリーザと組み合い、地上に引きずり降ろす。
神木「博士、エナジーシールドは!」
ルイ「できたぁ!!」
グルマン「ハイパーエナジーシールド、起動!!」
本部基地がシールドに包まれる。
それを背に、大地のユナイトしたエックス、アスナの操るサイバーゴモラ、ハヤトの駆るスカイマスケッティが、グリーザを迎え撃つ。
一同「行くぞおぉぉ!!」
エックスたちとグリーザの、最終決戦が始まる。
3体がかりで次々に攻撃をしかけるものの、グリーザにはまったく歯が立たない。
スカイマスケッティが被弾し、火を吹いて墜落してゆく。
ハヤト「うわあぁっ!!」
アスナ「ハヤトぉ!?」
大地が気をとられた隙に、エックスにもグリーザの攻撃が直撃する。
大地「うわあぁっ!!」
アスナ「大地ぃぃ!?」
ゴモラもまた攻撃を受け、衝撃がアスナを襲う。
グリーザの超音波がエクシードエックスを苦しめ、Xio基地内のシステムを狂わせる。
エックスがガックリと、膝をつく。
エックス「大地…… 君と一緒に戦えて、良かった」
大地「これが最後みたいに言うなよ。今できること、やるべきことがある! それに集中すればいいんだ!」
エックス「君は強くなった!」
大地「エックスのおかげだよ。行くぞ!」
エックス「あぁ!」
大地「エクスラッガー!!」「エクシードエクスラッシュ!!」
エクシードXの最強技、エクシードエクスラッシュが炸裂──!!
大地「わああぁぁ──っっ!!」
エクシードXがグリーザ目掛けて突進する。
しかし、グリーザの展開する光の壁に阻まれ、そのまま吸収されてしまう。
アスナ「大地いぃぃ──っっ!!」
エックスを吸収したグリーザは内部崩壊を起こし、爆散する。
凄まじい爆風に、アスナが吹き飛ばされる。
ルイ「エックスが…… 大くんがぁぁ!? 嫌…… 嫌あぁぁ!!」
グルマン「ルイ……」
ルイ「嫌だぁぁ──っ!!」
ハヤトはかろうじて、墜落したスカイマスケッティから脱出し、生還している。
ハヤト「大地……?」
エックスとグリーザが消滅した跡には、カラータイマーが墓石のように地面に突き立っているのみ。
アスナが絶叫しつつ、駆け寄ってゆく。
アスナ「大地!! はぁ、はぁ…… 大地いいぃぃ──っっ!!」
最終更新:2018年09月28日 03:17