ウルトラマンXの第20話

Xio橘副隊長の娘・かおるが、ベッドの中で目を覚ます。
窓から、巨大な目が覗いている。

かおる「きゃああああ!!」
橘「かおる!?」

橘が悲鳴を駆けつけ、部屋に飛び込む。

かおる「お母さぁん! お母さぁん!」
橘「かおるぅっ!」

橘は娘を助けるべく、手を伸ばす。
その手が空間を飛び越え、光に満ちた空間で、何かに触れる。
神秘の石碑、ストーンフリューゲル──


橘が夢から目覚める。
夜のXio基地、オペレーションベースX司令室。




─ Unite ─




橘は娘を気にかけ、連絡をとる。
画面に、かおるの姿が映る。

かおる『あれ? お母さんだ! 元気?』
橘「うん。そっちはどう? みちるも元気にしてる?」

次女・みちるも、顔を出す。

みちる『元気! あのね、今お父さんとキャンプに来てる!』
橘「楽しそう」
かおる『お母さんも来られたら最高なのに』
橘「……お母さんも、そっちに飛んでいきたい」
かおる『もう行くね。お母さん、ケガとかしちゃ駄目だよ?』
橘「あなたたちも、気をつけてね」
みちる『大丈夫。こっちには怪獣、全然出ないもん。じゃあね!』

大地がコーヒーを入れながら、声をかける。

大地「チャットですか? 娘さんと」
橘「まだ作業中なの?」
大地「屋上で、宇宙の声を」
橘「お母さんの宇宙電波受信機?」

大地は橘にもコーヒーを勧める。

橘「ありがと」
大地「カナダでしたっけ? 副隊長のご家族」
橘「まだ怪獣が出てない地域だって、旦那がね」
大地「Xioの副隊長でなければ、一緒に移住しましたか?」
橘「……そうね」


大地は屋上で、宇宙電波受信機で電波を測定しつつ、いつしか身を横たえ、夜空を見上げる。


エックス『大地、起きろ。大地!』

翌朝。
いつの間にか眠っていた大地が、エクスデバイザーからのウルトラマンエックスの声で跳び起きる。

大地「怪獣!? 宇宙人!?」
エックス『そうじゃない。これを聞いてみろ』

宇宙電波受信機からは、ノイズまみれの奇妙な音声が響いている。

大地「普通の宇宙電波じゃなさそうだ」
エックス『解析してみたらどうだ?』
大地「だね」

大地はラボに場所を移し、解析に取りかかる。

音声『解析します』

橘『エリアT-1、地下駐車場に、未確認生命が群れで出現!』

橘からの警報を耳に、大地は解析を機械に任せ、ラボを飛び出す。

音声『解析中──』


一同が司令室に結集する。

橘「体長は2メートル前後」
神木「フェイズ2! 大地、現場に出ろ。アスナ、ハヤト、ワタル、大地の分析を待って、必要ならこれを攻撃!」
一同「了解!」
橘「今回は私も行きます」
神木「頼む」

橘を含め、隊員たち一同が出動する。


現場の地下駐車場。
大地が様子を探っていると、スペースビースト・バグバズンブルードが闊歩している。

大地「こいつは、地球の生き物じゃないな」
エックス『宇宙から飛来してきたのか?』
大地「地球の何がこいつらを引き寄せてるんだろ?」
エックス『生命体の恐怖を餌にする『スペースビースト』の話は聞いたことがある』
大地「スペースビースト?」
エックス『大地!』

バグバズンブルードが会話に気づき、大地に襲いかかって来る。
アスナが大地を突き飛ばし、バグバズンブルードを狙撃する。

アスナ「大丈夫?」
大地「いつもごめん」
アスナ「見た目最悪だけど、この生物は駆除? 捕獲?」
大地「攻撃と捕食しか探知できない…… 仕方ない」
アスナ「大地から駆除判断が出ました」

アスナが銃撃で、バグバズンブルードを撃破する。
他の隊員たちも、バグバズンブルードを仕留めていく。

橘もバグバズンブルードを倒すが、逃げ遅れた女性がいる。

女性「きゃああっ!」
橘「民間人を発見。保護に向かいます。──大丈夫ですか? しっかり!」

衝撃で、天井が崩れ落ちてくる。

橘「危ない!」

橘が女性に覆いかぶさり、自らの身を盾とする。
降り積もった瓦礫の下、女性は橘に守られたものの、気を失っている。

橘「大丈夫ですか!? しっかりして! 聞こえますか?」

橘もまた、脚を瓦礫に挟まれ、身動きがとれない。

ジオデバイザーが鳴る。
画面には「かおる・みちる」の表示。

橘「今、話せない!」
みちる『話せなかったらお姉ちゃんが死んじゃう!』
橘「えっ……!?」
みちる『怪獣! 湖からいきなり怪獣が出て来て、カヌーが飛んで来て、お姉ちゃんの頭に当たって!』

カナダのキャンプ地、みちるのそばでは、かおるが倒れて気を失っている。

橘「お父さんは!?」
みちる『水汲みに行って戻って来ない! 電話にも出ないの!』
橘「ケガしたの? 血が出てる?」
みちる『出てない!』
橘「息はしてるよね!?」
みちる『──してる』
橘「みちる、よく聞いて。お姉ちゃんは今、仰向け?」
みちる『うん』
橘「なら、もし吐いたりしても息できるように、お顔を右に向けて」
みちる『うん!』

湖に出現した宇宙怪獣ベムラーが、湖面を目がけて熱線を吐き、みちるたちに激しい水しぶきが掛かる。

みちる『きゃあぁっ!!』
橘「みちる、どうしたの!? みちる!!」

その声を聞きつけ、バグバズンブルードがやって来る。
橘は、床に転がっているジオブラスターを掴もうとするが、依然として身動きが取れず、手が届かない。

橘「みちる!! 大丈夫!?」
みちる『怪獣、こっちに来るぅ!! お母さんぁ!! お母さんぁぁん!!』

バグバズンブルードが近づいてくる。
橘は瓦礫を投げて抵抗するが、到底、歯が立たない。

みちる『お母さんぁん!! お母さんぁん!! お母さんぁぁん!!』

さらに、もう1体のバグバズンブルードが出現する。
計2体のバグバズンブルードの前に橘も、そしてベムラーの前にみちるたちも、絶体絶命。

みちる『お母さんぁん!! お母さんぁぁん!!』

そのとき──!
光が満ち溢れ、神秘のアイテム・エボルトラスターが、虚空より出現する。

橘は導かれるようにそれを手に取り、天に掲げる。

眩い光が満ち溢れ、次の瞬間、巨大な拳がバグバズンブルード2体を叩き潰す。

攻撃の主は、橘が変身した神秘の銀色の巨人、ウルトラマンネクサスであった。
その手には、先の気絶した女性が優しく抱かれている。

ネクサスが地を蹴って空へ飛び立ち、雲を駆け抜け、あっという間にカナダに降り立つ。
かおるたちのそばで、熱線を吐く寸前のベムラーに、ネクサスが一撃を加える。

みちるのもとに、父の祥悟が駆けつける。

祥悟「みちる!」
みちる「お父さん、お姉ちゃんが! お母さんに電話したの」
祥悟「かおる!? かおる!」
みちる「お姉ちゃん、お姉ちゃん!」

祥悟が手当てを施し、かおるは意識を取り戻す。

祥悟「良かった。もう大丈夫だ!」
かおる「……お父さん? ずっと。お母さんの声が聞こえてた気がする」
祥悟「よし、ここを離れるよ。おいで」

ネクサスとベムラーの戦いが続く。
祥悟がネクサスを見つめ、何かを悟ったように、微かに笑んで頷く。
ネクサスが静かに頷き返し、再びベムラーへ立ち向かってゆく。


Xioの司令室。

タケル「もう一度再生します」

モニターには、スペースビーストたちの現場から、ネクサスが飛び発つ姿が映っている。

チアキ「巨人はこの後、カナダでベムラーを倒して、消え去ったようです」
ワタル「カナダ? なんでいきなりカナダ?」
橘「私が未熟だから」

橘が現れ、神木のもとに進み出る。

橘「処分してください。副隊長の立場にありながら、私は命ぜられた現場を離れ、自分の娘のもとに向かいました」

橘が神木に、隊員証とジオブラスターを差し出す。

神木「待て。話が見えない」
橘「この巨人は……」

画面に映っているウルトラマンを指す。

橘「私です!」
一同「……!?」
アスナ「副隊長がウルトラマンに変身したってこと?」
マモル「マジで!?」
グルマン博士「選ばれたということか」
ルイ「凄い!」
橘「ヒカルやショウ、それにトウマ・カイト。彼らの世界では、彼らがウルトラマンに変身していた。だとしたら同じように、私たちの世界にも、エックスに変身して戦ってくれてる誰かがいるはず。それはわかっていました。けれど…… 私自身がそうなるだなんて、思いもしなかった…… 理由はわかりません。気付いたら、私は──」
大地「変身していた……?」
神木「そして自分の娘を助けるために、カナダまで飛んだ」
橘「はい…… 任務遂行中に、独断で現場を離れるなど、許されない命令違反です」
大地「待ってください! 娘さんは助かったんですか?」

橘は頷く。

大地「逃げ遅れていた女性も、あの巨人が病院に降ろしてくれたおかげで、一命を取り留めました。俺たちも全員無事です! なら、何が問題なんですか?」
神木「次に同じことが起こっても、同じことをする。そういう顔だ」
橘「恐らく…… 次も、その次も…… 何十回でも、私は命令より、娘を守ることを優先し…… 今は、副隊長の職務を全うできません! 失礼します!」

橘が立ち去る。

ワタル「副隊長!?」
神木「何も言うな!」
アスナ「でも!?」
神木「突然ウルトラマンになったんだ…… 冷静でいられるか」


屋上にいる橘のもとに、大地がやって来る。

大地「ウルトラマンになったとき…… どんな気持ちでしたか?」
橘「『やるべきことがある』『出来ることがある』── そんな確信だけ、抱えてた気がする。ウルトラマンになるって、その使命を背負うことなのかもしれない。でもそれは、人として生きることも、同じね」

橘のジオデバイザーが鳴る。

かおるたち『お母さん!』
みちる『もうお姉ちゃん、元気になったよ!』
かおる『うん、もう全然大丈夫!』
橘「ごめん、娘たちから」

橘は娘たちと話しながら、立ち去る。

エックス『君に戦いを強いたのは私だ。君には、辛いことの連続だったろうな』

大地は、首を横に振る。

大地「君のおかげで、怪獣との共存っていう夢と、向き合えてる」


翌日、空からダークサンダーエナジーが降り注ぎ、巨大化したバグバズンブルードが現れる。
Xioの隊員たちが迎え撃つものの、苦戦を強いられる。

エックス『大地、昨日の生き残りだ!』
大地「エックス、ユナイトだ!」
エックス『よぉし! 行くぞぉ!』

音声『エックス・ユナイテッド』

大地もウルトラマンエックスにユナイトし、巨大バグバズンブルードに立ち向かう。
橘は神木と共に司令室から、エックスの苦戦の様子を見ている。

橘「やはり私は謹慎です。また任務を離れます!」
神木「橘!?」

エックスのカラータイマーが点滅し、危機を報せる。

橘は屋上に立ち、エボルトラスターを引き抜き、ネクサスに変身して飛び立つ。
さらに戦闘形態のジュネッスへと変身し、エックスのもとへ向かう。

エックスに飛びかかろうとしたバグバズンブルードに、ネクサスのキックが決まる。

大地「副隊長!?」

ネクサスは異空間メタフィールドを展開して、自分たちを包み込む。

大地「これは!?」

2大ウルトラマンとスペースビーストとの戦いが始まる。
メタフィールドで力を得たネクサスとエックスが連携し、次第にバグバズンブルードを追いつめてゆく。

音声『ウルトラマンエックス・パワーアップ』

大地「エクシード・エ──ックス!!

エックスがエクシードエックスに強化変身する。

大地「エクスラッガーショット!!

エックスのエクスラッガーショット、ネクサスのオーバーレイ・シュトローム、2大必殺光線が炸裂する。
バグバズンブルードが爆発四散し、最期を遂げる。


橘が橋の上で、エボルトラスターをじっと見つめている。
大地が駆けつける。

大地「副隊長、大丈夫ですか!? ……副隊長?」
橘「……『諦めるな』」
大地「えっ?」

エボルトラスターが、忽然と消える。

橘「あのウルトラマンがそう言ったの。なぜかな…… あなたに伝えろと、そう言われた気がする」
大地「俺に、ですか?」
橘「……ごめん、意味わかんないよね。ただ、これだけは言える。私はウルトラマンと繋がりを持った。一瞬だったけど、その絆は確かに存在したし、遠い国にいる子供たちとも、確かに繋がってる。だから──」
大地「俺と、父さんや母さんとの絆は、消えていない…… なんか、ウルトラマンに励まされてる気がします」
橘「実際、そうだもの。今は、力は消えたみたいだけど。私はたった1日だけ、ウルトラマンだったのよ」

橘が悪戯っぽく笑い、大地も笑みを返す。

大地「名前…… 何ていうのかな? あのウルトラマン」
橘「絆…… ネクサス」
大地「ウルトラマン…… ネクサス!」

大地の声に応えるように、エクスデバイザーに「ウルトラマンネクサス」のサイバーカードが出現する。


その頃、Xio本部のラボでは、無人のまま宇宙電波の解析が続いている。

音声『ノイズの解析を終了しました。再生します』

『──大地、お母さんの声が聞こえますか? 大地、大地、お母さんの声が聞こえますか? ──」


※ この続きはウルトラマンXの第21話をご覧ください

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最終更新:2018年09月28日 03:16