キリト(アインクラッド76層。俺は軽率に始めたクエストにより、突然ベットルームに飛ばされていた。パジャマ姿で)
「暇つぶしのつもりが、なんだこの状況・・・」
そこへ、ユイが来た。
ユイ「パパ!」
キリト「ユイ!?」
ユイ「大変なクエストに登録してしまいましたね・・・」
キリト「え・・・!?」
ユイ「このクエストの名称は、千夜一夜物語」
キリト「『千夜一夜物語』・・・!?たしか王様が毎夜、女性に夜伽をさせて・・・朝に命を奪う・・・」
ユイ「このクエストではパパと関わりのある女性プレイヤーが呼び出され・・・」
「パパとベッドで添い寝をしようと迫ってくるので、添い寝を阻止し、朝を迎えねばなりません」
キリト「なんだとその設定は!」
「アスナたちと添い寝・・・添い寝したらどうなるんだ・・・?」
ユイ「添い寝した女性プレイヤーが身に着けているすべての武器や防具・アイテムの剥奪・・・」
キリト「なっ」
ユイ「つまり・・・」
「全裸になります」
キリト「んんんんん!?!?」
「えーっと・・・命の危険は?」
ユイ「それは大丈夫です。でも普段の装備が常に全裸になるので・・・」
キリト「あぁ・・・それでフィールドに出たら実質、命の危険はあるな」
「まぁでも、添い寝しなければいいだぇなら説明すれば・・・」
ユイ「そう簡単にはいきません」
アスナ「きゃっ」
その時、ベッドの上にアスナが落ちてきた。
キリト「アスナ!?」
ユイ「ママ!」
アスナ「な、なに?ここ・・・ユイちゃん!?それに・・・・」
「あなたが王女様ね!」
キリト「は?」
「王女・・・?どういうことだ?アスナ・・・俺がわからないのか・・・・?」
ユイ「ダメですパパ!!」
キリト「え?」
アスナ「?」
ユイ「今のパパにはフィルターがかかっていて、ママにはパパが知らない王女様にしか見えていないのです」
キリト「はぁ!?」
ユイ「ちなみにいまのママにパパはこう見えています」
ユイが見せた今のキリトの外見は、GGOでの少女の様なアバターであった。
キリト「超絶美少女!」
ユイ「ハラスメントコードに触れるのを防ぐため、この世界でパパは王女に扮し、性別を曖昧にした王となっています」
キリト「いや・・・性別を曖昧って意味がわからないぞ」
ユイ「パパ、ここはゲームであって遊びでもあるんです。あんまり深く考えてはいけませんよ?」
キリト「いやここデスゲームの中だよな!?遊びって・・・!パパはそんな子に育てた覚えは!!」
ユイ「そういうものだと思ってください!いまパパの脳波が女性に限りなく近く操作されているので、よほどのことをしない限りハラスメントコードには引っかかりません・・・つまり、ママのどんな誘いに乗っても合法になります!」
キリト「ゲーム開始直後に本来の性別へ強制的に戻された意味は!?」
アスナ「ユイちゃん・・・その王女様と知り合いなの?」
ユイ「えっ!あの・・・・・!!クエストの概要で知っているというか・・・」
ユイ「パパ、王女が本当はパパで添い寝してはいけないことを説明してはいけません!」
キリト「!」
ユイ「ママはいま強制的にクエストに参加させられ「王女様と添い寝をすればクリア」と説明されています。そう説明を受けた女性プレイヤーとの添い寝を回避し、朝を迎えることがこのクエストのクリア条件です」
キリト「・・・・もし俺だと気づかれて、添い寝してはいけないと説明したら?」
ユイ「ルール違反となりパパが全裸です!」
キリト「・・・・OK」
キリト(まぁとにかくアスナとの添い寝を回避すればいいだけのこと・・・簡単簡単・・・)
そう考えるキリトの首筋をアスナが指で叩く。
キリト「ん?なに・・・・」
キリトが振り返ったところで、アスナがキリトの手を握った。
キリト「え?」
アスナ「もしかして・・・あなたもユイちゃんと同じでプログラムなのかな。安心してね?この部屋に閉じ込められているって聞いたけど、私と一緒に寝れば・・・解放されるらしいから」
キリト(栗色の長いストレートヘアを両側に垂らした顔は小さな卵形で、大きなはしばみ色の瞳が眩しいほどの光を放っている。桜色の唇が華やかな彩りを添えながら、すらりとした身体を白と赤を基調としたパジャマで身を包んだ華麗な容姿に・・・・・)
ユイ「パパ・・・魅力的すぎて心が揺らいだのはわかりますが、愛が吹き出しの中に収まっていません!!」
キリトは気を取り直して、アスナの手を振り払った。
キリト「このイベントのクリア条件がそんなに簡単とは思えません・・・!」
「添い寝をしてたとえ私が解放されたとしても、あなたが本当にここから解放されるのかもわからない・・・こんな危険なことに巻き込むわけには・・・!」
ユイ(パパの冷静な対応力・・・さすがです!)
アスナ「・・・・っ!そんなこと気にしなくていいの」
アスナがキリトの首から両手をまわし、抱きしめた。
アスナ「まずは何も考えず・・・私に身を委ねて・・・・?」
ユイ(ママ・・・!!あすなろ抱きなんてイケメンすぎます!!)
キリト(あっ、アスナ、男前すぎる・・・・だめ・・こんなの女の子になっちゃう・・・!)
ユイ(パパ!ママの男らしさに乙女ゲーのプレイヤーのごとくときめいてしまっています!なんて熱い愛のある抱擁・・・!)
アスナ「よっ・・・」
キリト「え?」
アスナが手をキリトの腹に持って行き―――
アスナ「せいっ!!」
キリト「ぐふっ」
ジャーマンスープレックスを炸裂させた。
ユイ(からのジャーマンスープレックス!?!?!?)
アスナはそのまま、キリトを添い寝に持って行った。
アスナ「ふふっ、ちょっと強引だったかもしれないけど、なんかあなた私を助けて自分を犠牲にしてしまいそうで・・・」
しかし、添い寝に入ったことでブザーが鳴った。
アナウンス「添い寝回避失敗です」
アスナ「え?」
フィルターが解除され、アスナは顔を覆っているキリトに気づいた。
アスナ「キリトくん!?なんで!?え?失敗って!?」
ユイ「パパ!!」
キリト「油断した――――――――!!!」
アスナ「どういうことなの!?説明して!!」
キリト「え・・・え~っと」
アスナ「なんで顔を隠しているの!?何かやましいことがあるんじゃ・・・!」
キリト「いや・・・これからやらしいことが起こるというか・・・」
アスナ「は・・・はあ!!?やらしいって何!?こ、こんなベッドで・・・ユイちゃんもいるのになんてこと言・・・」
アナウンス「『千夜一夜物』ペナルティ発生。すべての武器・防具・アイテムを剥奪します」
アスナ「え・・・・・」
アスナが全裸になった。
アスナ「は・・・!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?キ・・・キリトくん!!ほんとにどういうこと―――!?」
キリト「いや・・・その・・・」
アスナ「ちょ・・・こっち見ないで!」
「あといま絶対昔のこと思い出してるでしょ!?想像しないで!!」
キリト「思い出していません!決して!何も!」
アスナは布団を被り、説明を受けた。
アスナ「つまり・・・夜の暇つぶしでこんなクエストに登録してしまったと・・・?」
キリト「はい・・・」
アスナ「どうすろのよ!?こんな・・・裸じゃ戦えない!」
ユイ「大丈夫ですママ!!クエスト対象の女性プレイヤーはママだけじゃないのです!!これから更に現れる女性プレイヤーと3回以上添い寝しなければいいんです!!」
アスナ「は・・・・・?さ、3回って・・・」
ユイ「今のママで1回カウントされたのであと1回大丈夫です!!」
キリト「3回以上って・・・あといったい何人くるんだ・・・」
ユイ「とりあえずパパと親しい女性は全員来るかと・・・」
アスナ「ふ―――――――ん。つまり・・・私の武器や防具が戻ってこなかったら、キリトくんは2回私以外の女性と添い寝を・・・」
キリト「ぜ・・・善処します!!」
「あ、そういえばクリア報酬は・・・?」
ユイ「もちろんリスクが高いぶんすごいですよ!クリア後パパは王女から真の王となり、肌さわりも防御力も最強な高級ブランド、ジェラート・ミケのパジャマをクエストに関わったすべての女性プレイヤーにプレゼントすることができるんです!!」
キリト・アスナ「「ぱ・・・ぱじゃま・・・・?」」
「すべての武器や防具にアイテムを賭けてパジャマって・・・」
「防御力がいくら高くても・・・パジャマ・・・」
「パジャマで戦うのはちょっと・・・」
こうしてパジャマのためにリスクの高い攻略をしなければならない、キリトの長い長い夜が始まった・・・
(つづく)
最終更新:2020年03月09日 15:16