オスマン帝国の商人アルはイスタンブールの造船所で友人サリムの姿を見付けた。
(友人サリム)
「ああ、アル
やっと会えた
探してたんだ」
(アル)
「どうしたんだ、深刻そうな顔して
いつものお前らしくないな」
(友人サリム)
「昨日、難破船が船に漂着しただろ
あれ、親父の船だった
ラテン船だって聞いて、まさかとは思ったんだが
せっかく親父の商売を手伝おうと思って海軍をやめてきたのに、儲け話があるとか言って欲張りやがって………
とうとう俺も独りぼっちになっちまった
あっ、ごめん」
(アル)
「気を遣わなくてもいいさ
幼い頃に両親と妹と生き別れて以来、独りってやつには馴れちまってるからな
それに、まるっきり独りぼっちって訳じゃないさ
お前という友達がいるからな
ところでサリム、何で造船所なんかにいるんだ?」
(友人サリム)
「親父の船を引き取ってきたんだ
アルが見つからなかったからここのオヤジさんに手伝って貰ってな
ところが、『修理すれば使えるようになる、任せとけ』って言って」
(アル)
「ま、まさか修理してるのか
おい、いったいくらかかると思っているんだ?」
(友人サリム)
「でも、お前に相談すればお金はなんとかなると思ってさ」
(アル)
「冗談じゃない
確かに少しは蓄えがあるが、俺がどれだけ苦労して貯めたかお前も良く知ってるだろ」
(造船所のオヤジ)
「アルも来たか
船はまだ修理中だ
もう少しかかりそうだな」
(アル)
「そのことで話が有るんだがその………修理費なんだが」
(造船所のオヤジ)
「それなら大まけにまけて金貨1000枚だ」
(アル)
「ちぇっ、やっぱりふっかけやがった」
(造船所のオヤジ)
「ん?何か言ったか?」
(アル)
「いや、何も
実は俺達この船を使って商売を始めるつもりなんだ」
(造船所のオヤジ)
「ほほう商売ねぇ」
(アル)
「どうだ、商売で儲けたら払うってことで待ってくれないか?」
(造船所のオヤジ)
「出世払いか
まあ、いいだろう
その代わり修理費は10倍金貨1万枚」
(アル)
「1万枚!?
分かった、それで手を打とう」
(造船所のオヤジ)
「せいぜい頑張って早く払ってくれよ
さて修理を続けるか」
(友人サリム)
「ほら、なんとかなった
でも商売を始めるって言ってたけど、何をするんだい?」
(アル)
「まったく能天気な奴だ
船で商売って言ったら貿易に決まってるだろ」
(友人サリム)
「貿易って、元手はどうするんだ
お金が無きゃ貿易なんて出来ないだろ」
(アル)
「港のみんなに金を出させるんだ
『旨い話があるぜ』ってみんなに話してまわるのさ
相手が少しでも興味を示せば後は俺の舌先しだいで金を出さしてみせるさ」
(友人サリム)
「でもそれじゃ詐欺じゃないか」
(アル)
「いや投資だよ
後で何倍かにして返してやるさ
元手さえ出来れば貿易をして稼いでみせるぜ」
(友人サリム)
「頭がいいな
そうだ、船があればお前の両親と妹も捜せるな」
(アル)
「親なんて居なくても今まで生きてこれたんだ
今更どうでもいいさ
だが、妹のサファのことは気になるな
なんとか捜し出して会いたいんだが」
(友人サリム)
「きっと見つかるさ
貿易をしながら世界中の海を探してまわろうぜ」
(アル)
「そうと決まれば早速金を集めてまわろう」
(銀行にて)
(出納係ラディーノ)
「これはアルさんいらっしゃいませ
ご預金ですか?」
(アル)
「いや、今日は預金を引き出しに来たんだ」
(出納係ラディーノ)
「そうですか
では、ご預金の金貨1000枚です
どうぞお確かめ下さい
でも急に預金を引き出すなんて、何かあったんですか?」
(アル)
「ああ、貿易を始めようと思ってな」
(出納係ラディーノ)
「貿易商ですか
そうですか、あなたならきっと立派な貿易商になれますよ
貿易の基本をご存知ですか
『安く買って高く売る』
これが基本だそうですよ」
(アル)
「そんなのは当たり前だろ」
(出納係ラディーノ)
「はい
でも当たり前なことが一番難しいのです」
(アル)
「うん、そうかもしれないな」
(出納係ラディーノ)
「これは当銀行の頭取、シャイロック様の受け売りですがね
シャイロック様も一介の貿易商から身を起こされたのです
ところでこれは私の個人的な投資ということで、金貨1000枚でございます」
(アル)
「個人的な投資?
おいおい、あんたは銀行員だろ」
(出納係ラディーノ)
「銀行員だからこそ利に聡いのでございます
元手さえあればあなたはきっと成功するでしょう」
(アル)
「うれしいことを言ってくれるなあ
じゃあ、10倍の金貨1万枚にして返すよ」
(出納係ラディーノ)
「10倍ですか
では期待していますよ」
(酒場にて)
(アル)
「よお、旨い話があるんだが」
(酒場の親父)
「旨い話?お前の言うことなんか信用できるか」
(アル)
「ふん、人がせっかく儲け話を持ってきてやったのに
ならいいや
おいサリム、他を当たろう」
(サリム)
「ああ、もったいない、もったいない」
(酒場女ラディア)
「待ってその話、私に聞かせてくれない」
(アル)
「おおラディア、いいとも
実は俺達、船を手に入れたんだ
その船で貿易を始めようと思ってな」
(サリム)
「そう、貿易をするんだ
アルは商売の才能があるからね」
(アル)
「どうせ貿易をするなら、元手を出来るだけ集めて大きな商売をした方が儲かる
どうだい、俺に投資しないか
金貨1000枚投資してくれたら、必ず1万枚にして返すぜ」
(酒場女ラディア)
「そうねぇ
いいわよ
酒場で働きながらコツコツ貯めてたお金があるの
本当にそのお金が何倍にも増えるのなら投資してもいいわ
じゃあ金貨1000枚ね」
(アル)
「期待して待っててくれ」
(酒場女ラディア)
「もし返さなかったらただじゃおかないわよ」
(出港所にて)
(出港所の兄貴)
「よお、いいところに来た
旨い話があるんだ」
(アル)
「よせよせ、あんたの旨い話っていうのはろくなもんじゃねえ
この間もサリムを損させたそうじゃないか
それより、俺の話の方がおいしいぜ
聞くかい?」
(出港所の兄貴)
「本当かい?
その話乗った」
(アル)
「おいおい、まだ話してもいないのに
まあいいや
金貨1000枚が1万枚になる」
(出港所の兄貴)
「1000枚が1万枚
10倍か」
(アル)
「俺とサリムの二人で貿易をして稼ぐんだ」
(出港所の兄貴)
「貿易?
お前が商売をするのか
確かにお前は金勘定が上手いから儲かるかもしれないなあ」
(アル)
「当たり前さ
俺の手にかかりゃ元手を10倍にするなんて簡単、簡単」
(出港所の兄貴)
「よし、じゃあ金貨1000枚だほらよ」
(再び造船所にて)
(造船所の親父)
「おお、来たか
やっと今、修理が終わったぞ
頑張って、早く金貨1万枚払ってくれよ」
(アル)
「さて、船の名前を考えないとな」
(サリム)
「『サヴァーニ(友人)号』なんてどうかな」
(アル)
「いい名前だ
そうしよう
サリム、さあ出発だ!!」
(ゲーム本編開始)
最終更新:2021年05月22日 14:24