自らの威信を賭けた「ボルトバイブル計画」の失敗や、“宇宙の天才”ギルド星人ギルドスの出現により、ドクター・オブラーこと
尾村 豪はすっかり武装頭脳軍ボルトでの地位を失い、落ちぶれていた。
そして今、豪は、ライブマンを倒して大教授ビアスに見直してもらうべく、ライブマンに挑戦状を叩きつけた──ついに、オブラーと決着をつけなければならない時が来たのである。
一方、豪の生家では、前回、豪がオブラーに変貌する瞬間を目の当たりにしてしまった彼の母・
俊子が、
科学アカデミア入学時に撮った制服姿の豪の写真を前に、一人思い悩んでいた。
俊子「豪…… どうしてあんな姿になっちゃったの……」
机に突っ伏してむせび泣く俊子──。
約束の場所に来たオブラーの前に、ドクター・アシュラが現れた。
アシュラ「カットアッシャー!!」
アシュラの放った光刃がオブラーに炸裂。
アシュラ「サイバー分身!!」
間髪入れずに、アシュラが分身体・シュラー三人衆を出現させる。
シュラー三人衆「シュラー!!」
シュラー三人衆が、手にしたサイを一斉にオブラーに突き刺し、さらに羽交い絞めにする。
オブラー「アシュラ…… 何をする!」
オブラーはアシュラに拘束され、洞窟内の秘密アジトに連れてこられた。
アジトにはドクター・ケンプとドクター・マゼンダもいる。
アシュラ「お前の体を基に、頭脳獣を作るのだ。──ガッシュ」
ガッシュ「カオスファントムエネルギー・放射」
アシュラの指示で、ガードノイド・ガッシュがオブラーの体に接続された頭脳核にカオスファントムエネルギーを浴びせる。
オブラー「うわぁあっ、うぉぉ──っっ!!」
苦悶するオブラーの姿が、豪からオブラー、オブラーから豪へと絶え間なく変化を繰り返す。
やがて、頭脳核がオブラーそっくりの頭脳獣になった。
オブラー「お、俺が……?」
失神するオブラー。
アシュラ「ハハハ、くたばりやがったな」
ケンプ「急げ、オブラーヅノー」
オブラーそっくりの頭脳獣・オブラーヅノーが出撃した。
ライブマンが約束の場所に到着。オブラーヅノーも姿を見せる。
オブラーヅノー「ライブマン! 今日こそ貴様らを倒す!」
ファルコン「やめろ、豪! これ以上お母さんを悲しませるのはやめるんだ!」
オブラーヅノー「うるさいっ!」
目の前のオブラーが偽物であるとは知る由もないライブマンは、オブラーヅノーに手出しができず、一方的に痛めつけられる。
オブラーヅノー「覚悟しろ!」
ライオン「豪っ!! お前はどれだけおふくろさんが悲しんでんのか、わかんねえのか!?」
オブラーヅノー「黙れっ!!」
オブラーヅノーが胸から生体ミサイルを発射。吹き飛ばされたライブマンの変身が解け、地面に叩きつけられる。
めぐみ「こんなにパワーアップしたなんて……」
勇介「豪……!」
オブラーヅノーが斧を振るって3人を襲う。
木陰からその様子を眺めるケンプ、マゼンダ、アシュラ。
マゼンダ「計算通りだわ」
ケンプ「ああ。ライブマンはあいつを本物のオブラーと思い込み、戦うことができない」
アシュラ「ライブマンが戦い疲れたところで、俺たちが一気に……」
ケンプ「ビアス様! 宇宙人ごときの力を借りずとも、我ら地球人の天才が力を合わせれば、ライブマンなど敵ではありませぬ」
ヅノーベース内のビアスが、ギルドスと顔を見合わせてほくそ笑む。
ビアス「ライバル出現の効果がさっそく現れたというわけだ。こうでなければならん」
勇介たちにとどめを刺そうと迫るオブラーヅノー。
勇介「やめろ、豪!」
オブラー「待てっ!」
そこに本物のオブラーが姿を現した。
オブラー「ライブマンを倒すのは、この、俺だ……」
めぐみ「オブラーが2人…… どうなってんの!?」
丈「どっちが本物なんだ!?」
アシュラ「あっ、野郎生きてやがった!」
オブラー「この俺が、あれくらいのことでくたばると思ってるのか! 真の天才、ドクター・オブラーの力を見せてやる!!」
オブラーヅノーに迫るオブラー。そこへケンプたちも姿を現す。
ケンプ「はっ、笑わせるな。天才とは俺たちのこと、貴様なんか天才の内に入るものか」
マゼンダ「ボルトへ入った時のこと、思い出させてあげましょうか」
オブラー「!! ……やめろ…… やめてくれ!!」
マゼンダ「ある夜、科学アカデミアで勉強していた時だったわ。突然、謎の暗号が送られてきたのよ」
ケンプ「なんと、それがビアス様のテストだったのさ…… そして、それを解読した者だけが、ボルトへ招待されたのだ。俺たちはビアス様に選ばれたことに感激し、喜んでボルトへ行くことにした」
ケンプが動揺しているオブラーを鼻で笑う。
ケンプ「ところがだ。俺たちがビアス様に誘われたことを知って、お前は、大いに焦った……」
回想──
豪「大教授ビアス様、なぜ私に問題を与えてくださらないのですか?」
自室のパソコンからメッセージを送信し続ける豪。
豪「私にだって、剣史やルイに負けない才能があります。
私もテストしてください。必ず解いてみせます!」
そんな豪の必死な姿を、当の剣史とルイがあざ笑っている。
悔しさに身を震わせるオブラー。
ケンプ「お前はお情けで入れてもらったのだ」
マゼンダ「でもしょせん、私たちとは才能が違ったのよ。お前がいくら頑張っても、私たちには及ばないのよ」
オブラー「黙れ…… 黙れっ!! ドクター・オブラーは、絶対に貴様らには負けん!! ライブマンは、俺が倒す!!」
オブラーヅノー「ほざくな! ライブマンを倒すのは、この俺だ!!」
オブラー「一番優れていることを、ビアス様にわかっていただくのだぁ!!」
勇介たちを蹴散らし、2人のオブラー同士の戦いが始まる。
丈「どっちが本物なんだ、コロン!」
コロン「わからないわ。両方とも全く同じ反応を示しているの」
めぐみ「そんな…… どうしたらいいの?」
オブラーとオブラーヅノーに痛めつけられる勇介たち。
アシュラ「この方がかえって面白くなったじゃねえか」
勇介は丈、めぐみと分断され、入り江の洞窟でどちらか一方のオブラーに襲われる。
勇介「やめろ、豪! お前はお母さんのことを少しでも考えたことがあるのか!?」
オブラーの動きが止まる。
勇介「やっぱりお前が本当の豪なんだ……」
オブラー「……違う! 俺は…… 豪なんかじゃない!!」
勇介「お母さんは君を誇りに思い、君だけが生きがいだったんだ!! 帰るんだ…… お母さんの所へ!!」
なお暴れるオブラーを勇介が押さえつける。
勇介「君の体は元へ戻ったじゃないか、豪! 君は人間へ戻れるんだ。ボルトとの果てしない恐ろしい競争なんかやめて人間の世界へ戻るんだ!!」
オブラーはそれでも聞き入れようとせず、勇介を断崖に追い詰める。
そして、足を滑らせた2人は共に落下した。
勇介は懸命に闘志を奮い立たせて起き上がるが、オブラーは死んだように動かない。
勇介(お前を豪と信じてるぜ。待ってろよ、必ず元に戻してやるからな)
勇介がいずこかへ歩き出す──。
尾村家の居間の床に、割れたままの写真立てが落ちて放置されている。
俊子は庭の社の前で呆然としていた。
勇介「あっ、お母さん!」
勇介が俊子に駆け寄り、ひざまずいて頼み込む。
勇介「豪を助けてやってください」
俊子「どうしろとおっしゃるんですか…… もうあんな子は、私の子供ではありません」
勇介「そのオブラーこそあなたの子なんです」
俊子は勇介から顔を背け続ける。
勇介「あなたは、豪は生まれつきの天才だとおっしゃいましたね。違います、あなたが作った天才なんです! オブラーを作ったのはあなたなんです!!」
俊子の肩を掴み、揺さぶる勇介。
勇介「前に、オブラーの作った頭脳獣が急に遊びだしたことがあるんです。その時わかったんです、豪は本当は遊びたかったんだって。でも、お母さんは豪に勉強ばかりさせていた…… 豪もいい子だったんでしょう、お母さんの期待に応えようと一生懸命だったんです。いつも一番でいようと……」
幼い豪「1573年、織田信長が……」
勇介「科学アカデミアでも一番勉強していたのは豪だった。それもあなたのために!」
俊子は頑なに反発し続ける。
勇介「ボルトへ入ってからも頑張り続けたんです。でも…… そのためにもうあいつは擦り切れようとしているんです。精神的にも肉体的にももう限界に来ているんです!」
再び土に膝をついて頭を下げる勇介。
勇介「助けてやってください! あいつにはお母さんの愛が必要なんです!!」
ついに、俊子が滂沱の涙を流す。
勇介「生まれてこの方一度も味わったことがない本当の親の愛で包んでやってください……!!」
俊子「……豪……!!」
横たわるオブラーが、自分を呼ぶ勇介の声で目を覚ました。
勇介「豪ーっ!! 豪、お母さんだぞ! お母さん、あそこに……」
勇介が俊子を促す。
俊子「豪…… 豪、許して!! 母さんが悪かった……!!」
オブラーに駆け寄る俊子。オブラーが身を起こす。
俊子「もう天才なんかならなくていいのよ。もう誰とも競争なんかしなくていい…… 一番になれなんて、言わないから……」
オブラー「母さん……!」
オブラーヅノー「おのれ、余計な真似を!」
そこにオブラーヅノーが姿を現す。斧を振りかざして俊子を襲うオブラーヅノー。
俊子は身がすくみ、逃げることができない。
オブラー「危ないっ!! 母さーん!!」
オブラーが俊子をかばってオブラーヅノーの一太刀を浴びる。
オブラーヅノーの反撃をいなし、口から光線を吐いて攻撃するオブラー。
しかしオブラーも限界を迎え、再び倒れこむ。
俊子「豪っ!!」
オブラー「母さん…… 人間に戻りたい……」
オブラーを抱きしめ、泣き崩れる俊子。
オブラー「母さん……」
俊子の涙がオブラーの顔に落ちると同時に、オブラーが豪に戻る。
勇介が駆け寄る。
勇介「豪……」
俊子「豪? 豪……!」
豪はうつろな目で遠くを見つめ、反応を示さない。
ケンプ「ちいっ、戻りやがったか!」
アシュラ「やれ、オブラーヅノー!」
勇介「黙れ!! 豪はもう渡さんぞ!!」
アシュラ「たった一人で俺たちに勝てると思っているのか!」
丈「待てっ!!」
アシュラ「ん!?」
丈とめぐみが駆けつける。
丈「ところがどっこい、生きてるぜ!」
めぐみ「お前が豪でないとわかったら、手加減しないから!」
勇介「行くぞっ!!」
3人「ライブマン!!」
勇介たちが再び変身を遂げる。
ファルコン「超獣戦隊!」
ライブマン「ライブマン!!」
オブラーヅノーも真の姿をあらわにして攻撃を開始した。
さらにケンプ、マゼンダ、アシュラも戦闘に加わる。
マゼンダ「エルボーガン!!」
ケンプ「スプリットカッター!!」
マゼンダ、ケンプの攻撃でブルードルフィンとイエローライオンが吹き飛ぶ。
アシュラ「サイバー分身! 行け、シュラー!!」
シュラー三人衆「シュラー!!」
シュラー三人衆がレッドファルコンを襲う。
ライオン「ファルコン!」
ドルフィン「しっかり!」
オブラーヅノーが両手に持った剣を交差させ、光線を発射。
ファルコン「みんな頑張れ! 豪のためにも勝つんだ!!」
ライブマンが3人同時に飛び蹴りを放ち、オブラーヅノーをひるませる。
さらにレッドファルコンがファルコンソードでの必殺技・ファルコンブレイク、ブルードルフィンとイエローライオンがライブラスターによる銃撃を見舞い、致命傷を与えた。
ファルコン「今だ! バイモーションバスターだ!!」
グラントータスからバイモーションバスターが転送され、3人がそれをキャッチ。
ライブマン「バイモーションバスター!!」
バイモーションバスターから撃ち出された3色のエネルギー波がオブラーヅノーに炸裂!
オブラーヅノー「あぁうぅ、あぁ──っっ!!」
オブラーヅノーがあおむけに倒れながら爆発・消滅。
そこにガッシュが現れる。
ガッシュ「ギガ・ファントム」
オブラーヅノーが巨大な姿となって蘇生される。
何も言わず引き上げるガッシュ。
ファルコン「マシンバッファロー!!」
巨大母艦・マシンバッファローが飛来。
3台の超獣メカにライブマンが乗り込み、ライブロボに合体して巨大オブラーヅノーに挑んでいく。
軽快な動きでオブラーヅノーを殴りつけ、投げ飛ばす。
オブラーヅノーは胸からの生体ミサイルで反撃。
ファルコン「ライブロボビーム!!」
ライブロボの胸の獅子の口から光線が放たれる。
光線を受けて吹き飛ばされたオブラーヅノーの斧をキャッチし、オブラーヅノーめがけて投げつけるライブロボ。
斧はオブラーヅノーの胸に刺さる。苦悶するオブラーヅノー。
ファルコン「超獣剣!!」
ライブマン「スーパーライブクラッシュ!!」
とどめの一撃が炸裂!
オブラーヅノーが爆発四散し、最期を遂げる。
戦いを終えた勇介たちが、豪と俊子に駆け寄る。
めぐみ「豪!」
丈「豪ーっ!」
俊子「……豪、勇介さんたちよ」
豪はうつろな表情のままうつむいている。
俊子「勇介さんのおっしゃる通りでした。この子は精神も肉体も、もう完全に擦り切れてしまったんです」
勇介が唇をかんでうなだれる。
丈「じゃあ、豪…… お前、おふくろさんのとこへ戻ったこともわかんねえのか?」
豪は何も言わない。
勇介「いや、わからないはずがない。お母さんだとわかったからこそ、元へ戻ったんじゃないか」
俊子「これからはせめてもの罪滅ぼしに、ずぅっと一緒にいてやります。さあ豪、行きましょう」
俊子が勇介たちに一礼して、豪の手を引き去っていく。
ふいに、蝶の群れが一同の目に留まる。
めぐみ「豪、ちょうちょよ」
子供のように、穏やかな笑みを浮かべる豪──。
この微笑みを見た時、勇介たちは、 豪がいつの日か必ず、破壊された心を、 取り戻してくれることを信じた……。
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最終更新:2022年03月07日 00:32