魔動王グランゾート 冒険編の最終回

宇宙海賊グレコ・ノーマン率いるノーマンベイツ団により、ガスはスペースシャトルの乗客たちもろとも捕われてしまった。
大地とラビはガスたちを救うため、宇宙の運び屋ストーミィお(きょう)の力を借り、ノーマンベイツ団の宇宙ステーションを目指す。

マリア「反応、出ました! モニター出します!」
お杏「あれが海賊の親玉のようだね」
大地「すごぉい!」
ラビ「なんてデケぇんだ!」
お杏「ここまで来て、怖気づいたのかい?」
大地「そんなことないよ!」

お杏のシャトルを目がけ、砲撃の雨が降り注ぐ。

お杏「来たよぉっ!」
ラビ「俺に任せろ! ドーマ・キサ・ラムーン── ドーマ・キサ・ラムーン── ドーマ・キサ・ラムーン──!」

ラビの魔動力(まどうりき)が砲撃を防ぐ。

ブリザード「グレコ様!?」
グレコ「フフフ。なかなか、大した魔動力を使うではないか。よし、丁重にお迎えしろ」

マリア「すっごぉい!」
お杏「これが魔動力!?」
ラビ「さぁて、お次はどんな…… わぁ~っ!?」

物語冒頭から一同を引っ掻き回していた老人が、いつの間にかシャトルに乗り込んでおり、ラビの背を突いている。

老人「ちょっと、ちょっと」
大地「おじいさん!?」
ラビ「爺さん! いつの間に!?」
お杏「危ない!」

ラビの集中が緩んだ拍子に魔動力の防御が解け、砲撃の嵐が迫る。

老人「ひえぇっ! くわばら、くわばら!」

老人が操縦桿にしがみつき、シャトルが制御を失う。

お杏「あぁ~っ!?」

シャトルはそのまま、ステーションへと突き刺さる。
船内で気を失った一同が、やがて目を覚ます。

お杏「う、うーん…… こ、ここは?」
ラビ「ったく、ひでぇ目にあったぜ…… あ? なんだ、ここは?」
お杏「どうやら、敵の懐に入ったようだね。行動開始だ!」
大地「はいっ!」

一同がステーション内部に突入。通路を歩き回った末、衛兵に守られた一室を見つける。

お杏「どうやら、あの部屋がクサイね。よし、行ってみようか」
大地・ラビ「OK!」
マリア「任しといて!」

マリアが何食わぬ顔で、衛兵たちの前に通りかかり、笑顔を見せる。

衛兵「ん? なんだ、お前は?」
マリア「へへっ……」

マリアが顔をひっこめるや、衛兵の隙を突き、大地とラビがキックで衛兵を叩きのめす。

マリア「イェ──イ!」
お杏「ハハッ! やるじゃないか!」

お杏が短刀で扉を切り裂くと、そこにはシャトルの乗客たち、ニジンスキー博士が捕われていた。

お杏「な、なんだい、こいつらは!?」
大地「きっと、捕まってたシャトルの人たちだよ」
ニジンスキー「おぉ~っ! 大地くん、ラビくん!?」
大地「えぇ~っ!? ニンジン博士!? どうして、こんなとこに?」
ニジンスキー「それより、ガスくんが大変なんじゃ!」

ニジンスキーの説明により、大地たちはグレコ・ノーマンがガスの魔動力を利用しようとしていることを知る。
そして──

お杏「なんだってぇ!? あんたたち2人を残して、私らに逃げろって言うのかい!?」
大地「これ以上、お杏さんたちに迷惑はかけられないよ」
ラビ「ガスは、俺と大地で助け出すからさぁ!」
お杏「冗談じゃないよぉっ!! 子供をこんなところに残して逃げたとあっちゃ、いい笑いもんになっちまうよ!」
大地「で、でも……」
お杏「マリア。人質を連れて、シャトルで脱出しな」
マリア「は、はい!」
お杏「私は大地と一緒に、ガスって子を捜しに行く。ラビは、マリアと一緒に行くんだ」
ラビ「何でだよぉ!?」
お杏「マリア1人じゃ心配だろ? それに私がいなきゃ、どうやってここからガスを連れ出すのさ?」
ラビ「あ、あぁ…… わかった。すぐ戻って来るからな!」
大地「ラビ!?」
お杏「行くよ、大地!」
大地「は、はい……」

ラビとマリアたちは人々を連れて駆け出し、大地とお杏はガスを捜して駆け出す。
1人残された老人。

老人「ふぅ~、美人のお杏さんと、かわいいマリアちゃん。どっちかを選べっていわれてもなぁ~…… やっぱ、美人のお杏さんですかの」

あっという間に、老人が大地たちに追いつく。

老人「はぁ、はぁ、もう少しゆっくり走ってほしいんですがのぉ」
大地「あぁ!?」

あっけにとられた大地たちが、足を止める。

老人「あららら? わしゃ別に、止まってくれとは言うてませんのじゃが」
大地「お、お爺さん! ラビたちと一緒に逃げたんじゃないの!?」

突如、床に穴が開く。

大地たち「わ、わぁ~っ!?」

どこかの真っ暗な部屋に、大地たちが落とされる。

老人「いやぁ、ひどい目に遭いましたのぉ」

灯りがつき、グレコ・ノーマンとブリザードが姿を現す。

グレコ「フフフ…… ようこそ、魔動戦士さん」
大地「えぇっ!? 誰だ、お前は!?」
グレコ「フフフ。私は宇宙海賊ノーマンベイツ団のボス、グレコ・ノーマンだ」
大地「だったら話が早いや。俺たちはガスを返してもらいに来たんだ!」
グレコ「そんなことより、ちょっと頼みがあるんだがね。君の力を貸してほしいんだよ」
大地「俺の力を……?」

グレコがグランゾートを模して造った巨大ロボット、ダークグランゾートが鎮座している。
第1話にて月面で発掘された魔動石(まどうせき)が、額にはめ込まれている。

グレコ「そうだ。そいつを動かすために、君の魔動力が必要なのだよ」
大地「断る!」
グレコ「いや、君は断れないよ」

スクリーンに、ラビたち3人の姿が映し出される。

大地「あぁっ!?」

通路を行くラビたちの前後を壁が覆い、3人は閉じ込められてしまう。

ラビ「しまった、ワナだ!」

壁面から水が吹き出す。

ニジンスキー「オーノー! 水が出とるぞ!?」
マリア「そんなの、見りゃわかるよ!」
ラビ「くそぉ、俺たちを溺れさす気かぁ!?」

お杏「あぁっ、マリア!?」
グレコ「フフフ。さぁ、どうする? あと5分もすれば、あの中は水浸しになってしまうぞ」
お杏「くっ…… 汚いマネしやがる!」
大地「ぐぅっ……」
グレコ「そうそう。その調子で、この私を憎むがいい。君が私を憎めば憎むほど、君の光の魔動力は闇の魔動力に近くなっていき、我々の魔動王(マドーキング)にふさわしい力になっていくのだ」
お杏「野郎! ゴチャゴチャ言ってないで、とっとと水を止めやがれぇ!」

お杏が刃向おうとするが、ブリザードに取り押さえられる。

大地「お杏さん!? このぉ!」

飛び出そうとした大地は、足もとに魔方陣が浮かび上がり、身動きが取れなくなる。

大地「わ、わぁ~っ!?」
お杏「だ、大地!?」
グレコ「フフフフ! これで君の魔動力をエネルギーとして使うことができる。それでは、我らが魔動王の糧となりたまえ」
大地「わぁ~っ!?」

天井からカプセルが落ちてくる。
いつの間にか老人も、大地の足元で魔法陣の力を浴びている。

老人「クククク、これは、シビれますわい」
お杏「じ、爺さん!? 何やってんだい!?」

大地は老人もろともカプセルに閉じ込められ、ダークグランゾートの魔動石に吸い込まれてしまう。

お杏「あぁっ……!?」
グレコ「フン、余計な奴まで入ってしまったが、ま、いいか」

大地が気づくと、そこは真っ暗な空間。

大地「こ、ここは……!? あっ! あれは…… ガス!?」

気を失ったガスが、空間内を漂っている。

大地「ガス、しっかりしろ! ガス、ガス! ガス、しっかりしろ!」
老人「おや? どうしたんじゃ、ガス? しっかりせんかい!」
ガス「あ、あ……」
大地「気がついたか、ガス!?」
ガス「あ、大地くん…… あぁっ!? これはこれは、オジジ様! お久しぶりでございます」
大地「えぇっ!? その人が、ガスのお爺さんなわけ!?」
ガス「はい、そのとおりです!」

老人は実は、ガスがたびたび「オジジ様の遺言」と口にしていた祖父であった(以降、オジジ様と表記)。

オジジ様「ガス。早いとこ、ここから出てメシでも食おうかいのぉ」
大地「出るたって、どうやって!?」
オジジ様「なぁに、入って来たんじゃから、出るところもあるじゃろうて」
大地「ふぅ~ん、そんなもんかなぁ…… あぁっ、闇の魔法陣!?」

眼下には闇の魔法陣。
強烈な黒い波動が放たれ、大地たちを襲う。

大地「わぁ~っ!?」

それと共に、ダークグランゾートが起動を開始する。

お杏「あぁっ!?」
グレコ「フフフ、ついに待ち望んでいた時がやって来たようだな。我らが魔動王、ダークグランゾートよ! その大いなる力で、この宇宙を我が物とするのだ!!」


一方でラビたちは依然、水攻めから抜け出ずにいる。

ニジンスキー「もうすぐ水が満杯になってしまうぞい!」
マリア「嫌だぁ~っ! こんなところで死にたくないよぉ!」
ラビ「くそぉ……!」


そして、魔法陣に苦しめられる大地たち。

大地「うわぁぁ──っっ!」
声「大地── 大地── しっかりするのだ! 大地!」
大地「こ、この声は……? グランゾート!?」

虚ろな意識の中、目の前に魔動王グランゾートの姿が浮かび上がっている。

グランゾート「大地── 悪しき心に惑わされるな」
大地「悪しき…… 心?」
グランゾート「私はお前に教えたはずだ── 光の心を持っていれば、恐れるものは何もないと。大地よ、光の心を信じるのだ──」
大地「光の心……」
グランゾート「負けるな── 大地!」

グランゾートの姿が遠ざかってゆく。

大地「グランゾート!? ま、待ってよぉ! グランゾート、グランゾート!」

大地が我に返る。
オジジ様が大地の肩をつかんで、揺さぶっている。

オジジ様「負けるんじゃないぞ、大地くん!」
大地「お、お爺さん……?」
オジジ様「ちょっとお尋ねしますが、あそこで一休みさせてもらっては、いけませんかのぉ?」

真っ暗な空間の彼方に、光が見える。

大地「あっ、あれは!?」
ガス「もしかして、出口では!?」
大地「よし、行こう!」


一方でお杏は、壁面にはりつけにされる。

お杏「な、何だこりゃ!? 今さらこんなことして、何を始めようってんだい!?」
グレコ「なぁに、君に名誉を与えようと思ってね」
お杏「名誉だとぉ!?」
グレコ「そう。我らが魔動王、ダークグランゾートの生贄第1号という名誉をね」

ダークグランゾートが、お杏を目がけて歩き出す。

グレコ「どうだ、怖いかね? 怖かったら、悲鳴を上げてもいいんだよ。人間たちの苦しみや悲しみの悲鳴が、このダークグランゾートのエネルギーとなるのだから」
お杏「……フン! 誰が悲鳴なんか上げるもんかぁ! やるなら、ガーンとやりやがれぇ!」

突如、床を突き破って水柱が吹き出し、その中からラビが飛び出す。

グレコ「何ぃ!?」
ラビ「だぁ──っっ!!」

ラビの鞭が唸り、お杏の戒めを切り裂く。

お杏「ありがとよ! マリアたちは!?」
ラビ「シャトルの乗客を連れて、逃げてる頃さ! さぁてと、大地とガスを返してもらうか!」
グレコ「な、なな、なぜあの水の中から逃げられたのだ!? お前は水に弱いのではなかったのか!?」
ラビ「へへっ! たまには水と仲良くするときだってあるんだよ! 俺は水の魔動戦士なんだぜ!」


大地たちは必死に出口へ向かおうとするものの、強烈な衝撃波が一同を阻む。

オジジ様「これじゃあ、ちっとも前へ進めませんのぉ」
大地「あぁっ、出口が閉じてゆく!?」


ラビの背後を、ブリザードが短刀で狙う。

お杏「伏せな! フン、ドスの使い方が甘いね!」

ラビが伏せると共に、ブリザードがお杏に叩きのめされ、床に叩きつけられる。

ラビ「さぁ、おとなしく大地とガスを渡してもらおうか! さもないと、痛い目を見ることになるぜ!」
グレコ「フフフ。誰が痛い目を見るのかね?」
ラビ「何!?」

ダークグランゾートが、ラビの背後に迫っている。

お杏「ラビ! あっ、あれは!?」
グレコ「やれ!」

お杏は天井の配線を見つけ、短刀を投げつける。
配線が切断されて天井から垂れ、ダークグランゾートに触れ、電撃が走る。

グレコ「何ぃぃ!?」

ダークグランゾートが電撃を浴び、ガックリと膝をつく。
同時に、大地たちを襲っていた衝撃もやむ。

大地「あれぇ!?」
ガス「衝撃波がなくなりました!」
大地「よぉし、この隙に出よう!」

ダークグランゾートから大地たちが飛び出し、床に降り立つ。

グレコ「し、しまったぁ!」
大地「やったぁ! 出られたぞ!」
ラビ「大地!」
大地「ラビ!」
ガス「おひさしぶりです、ラビくん!」
ラビ「あ、あれぇ? ガス! お前、また足が短くなったんじゃねぇか?」
ガス「えっ? そ、そうですか?」
ラビ「ハハハハ! 冗談だよ!」

安堵している一同の隙を突き、息を吹き返したブリザードが、お杏の背後を狙う。

ブリザード「死ねぇ──っ!」
マリア「姉御ぉ──っ!」

駆けつけたマリアが強烈なキック。
ブリザードが壁の配電盤に叩きつけられる。

ブリザード「がぁぁ──っ!」

ブリザードは感電して焼け焦げ、機械の骨組みだけとなって床に転がる。

お杏「なんてこった! こいつ、人間じゃなかったのかい!」
マリア「姉御、ケガはないですか?」
お杏「あぁ! ありがとよ、マリア」
グレコ「お、おのれぇ!」

ノーマンベイツの宇宙ステーション全体が、大きく揺れる。

グレコ「な、なんだ!?」

ステーションを大勢の宇宙船が取り囲み、砲撃を加えている。
その中に、オセロたちのヒスパニオラ2世号もある。

オセロ「行くぜぇ、ドミノ! こうなったら、やぶれかぶれだ!」
ドミノ「へぇい、船長!」

ガス「あれは、機動宇宙軍のようですよ。どうしてここへ?」
ラビ「ヒスパニオラ2世号だ! オセロが呼んだんだよぉ!」
お杏「フッ、あいつら馬鹿だねぇ。自分から宇宙軍へ行ったのかい?」
大地「よぉし。グレコ・ノーマン! お前の野望もここまでのようだな!」
ラビ「周りはすっかり、機動宇宙軍に囲まれてるみてぇだぜ。おとなしく観念したほうがいいんじゃねぇの?」
グレコ「クックック……」
大地「何がおかしいんだよぉ!?」
グレコ「フフフフ、馬鹿め! 観念するのはお前たちのほうだ!」

床に闇の魔法陣が出現する。
衝撃波が放たれ、大地たちを襲う。

大地たち「わぁっ!?」「何だい、こりゃあ!?」
グレコ「行くぞ、ダークグランゾート!」

グレコは自ら、ダークグランゾートに乗り込む。
ダークグランゾートの起動に連動し、ステーションが無数のビームを発射。
機動宇宙軍の艦艇が、次々に爆爆発する。

オセロ「な、何だぁ!?」

大地「あぁっ!? 機動宇宙軍が、い、一撃で全滅かよ!?」
グレコ「見たか! 我が魔動王の本当の力を! 次はお前たちだ!」

ダークグランゾートの強烈なパンチ。
大地たちは危うく、攻撃をかわす。

グレコ「逃がさん!」

再びのダークグランゾートの攻撃。
大地たちはが再び避けるが、お杏が転倒する。

お杏「あぁっ!?」
大地「お杏さん!?」
ラビ「危ねぇっ!」

ラビが飛び出して、魔動力でダークグランゾートの攻撃を防ぐ。

ラビ「わぁぁ──っ!?」
大地たち「ラビ!?」「ラビくん!?」

攻撃を耐えきれず、ラビもろとも一同が吹っ飛ぶ。

グレコ「フフフ。さすがの魔動戦士も、ダークグランゾートには敵わなかったか」
大地「くッ……!」
グレコ「それではそろそろ、とどめを刺してやる。──死ねぇ!!」

あわやと思われたそのとき、壁面を突き破り、オセロのヒスパニオラ2世号が現れる。

グレコ「何だぁっ!? わぁぁ──っ!?」

ダークグランゾートは虚を突かれ、ヒスパニオラ2世号の砲弾をまともに浴び、壁面に叩きつけられる。
衝撃で魔動石が外れて床に転がり、ダークグランゾートは機能を停止する。

ラビ「ふぅ…… やったのか?」
大地「あ、あぁ……」
ガス「そうみたいですね」
オセロ「おめぇら! 生きていやがったか!? へへっ、この俺様が助けたんだ! 感謝しろよぉ!」
ドミノ「あれぇ? だけど船長は『お杏さんを助けるんだ』って、飛び出しってたんじゃなかったんでしたっけ?」
オセロ「わ~っ!? 馬鹿野郎、余計なことを言うんじゃねぇ~っ!」
お杏「ハハッ、どうやら、あいつらにいいトコを取られちまったみたいだねぇ」

ダークグランゾートの中で、グレコは虫の息。

グレコ「くそぉ…… このままでは、済まさんぞぉ……」

突如、ステーションが大きく揺れ動く。

ラビ「な、なんだ!?」

ダークグランゾートの機能停止に伴い、ステーション各所が火を吹き、崩壊が始まる。

お杏「なんだかヤバそうだ! 早いとこ、ズラかろう!」
ラビ「そうだな。こんなとこ、長居は無用だぜ!」

大地とガスが、ダークグランゾートのほうへ駆け出す。

お杏「どこ行くんだい!?」
大地「魔動石を置いては行けないよ!」
ガス「そうですよ! それに、あの人もこのまま放ってはおけませんからね!」
お杏「えっ!? フッ…… なんなんだろうね、あの子たちは……」


大地たちが、ヒスパニオラ2世号に乗り込む。
お杏の愛船であるシャトルは、ステーションに突き刺さったまま。

お杏「くッ…… もう、間に合わないか」
オセロ「今だ、ドミノ! エンジン全開──!」
ドミノ「ガッテン!」

ヒスパニオラ2世号が飛び立つ。
直後、ステーションが大爆発。
お杏が思わず、目を背ける。

「いやぁ、危なかったのぉ~」
「こういうのを、危機一髪というんですかのぉ~」

ヒスパニオラ2世号のそばに、お杏のシャトルが並ぶ。

大地「そ、その声は!? ニンジン博士とオジジ様!」
お杏「ど、どうして私のシャトルに!?」

お杏のシャトルの窓から、ニジンスキー博士、オジジ様、グレコの飼い犬が覗いている。

ニジンスキー「脱出しようとしたシャトルが満員で、わし1人残ったのじゃが、そこへこのご老人と犬が1匹通りかかって、このシャトルに連れて来てくれたのじゃよ」
ガス「オジジ様!」
大地「へぇ~……」
ラビ「ハハッ! 爺さん、なかなかやるなぁ!」
マリア「良かったね、姉御!」
お杏「あぁ!」
ニジンスキー「ところで、魔動石は無事かね?」
大地「はい!」

貨物室には魔動石が積み込まれ、グレコがすっかり観念した様子で縛り上げられている。

大地「でもニンジン博士、なんであの魔動石は、闇の塔にあったんでしょう?」
ニジンスキー「うむ…… 人間も悪い心を持てば邪動(じゃどう)族になる要素を持っとるという、耳長族からのメッセージのような気がするのぉ」
大地「そうかもしれないね……」

お杏「あ! そのシャトル、誰が運転してるんだい!?」

シャトルの操縦席には、誰もいない。

お杏「あぁ~~っ!?」

シャトルがデタラメにバーニアをふかし、滅茶苦茶な軌道を描いて、宇宙の彼方へと飛んで行く。

ニジンスキー「オー・マイ・ガッ~っ!?」

お杏「あ……!? 私の…… シャトルが……!? 何やってんだい! さっさと追っかけるんだよぉぉっ!」
オセロ「わ、わかったから落ち着いて……」
お杏「早くしなよぉっ!!」

お母さん、大変です……
夏休みが終わるまでに、
僕は家に帰ることができるかどうか、
心配になってきました……

オジジ様「助けてくだせぇぇ~~っ!!」


(終)

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最終更新:2016年06月16日 19:04