"アグリッピーナ"

対訳

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あらすじ

  • ローマの第4代皇帝クラウディオと皇妃アグリッピーナの間には子供がいない。アグリッピーナは前夫に授かった連れ子のネローネを、次期皇帝にしたいと密かに願っているのだが…

訳者より

  • 「アグリッピーナ」はヘンデルがイタリア修行の集大成として、24歳の時ヴェネツィアで初演し大成功を収めたオペラです。今日比較的良く上演される彼のオペラの中では、最も初期のものになりますね。その後ヘンデルがロンドンに活躍の場を求めた時、若手有望作曲家として派手なデビューを飾ることが出来たのも、本場イタリアで賞賛を得たという勲章があったからに外なりません。
  • さて「アグリッピーナ」の台本は、イタリア語を解さない観客用に最適化されていたロンドン上演のヘンデル・オペラとは異なり、長いレチタティーヴォによる登場人物間の丁寧なやりとりや、胸中の本音を語る傍白の多さが第一の特徴です。最低限の状況説明だけでサッサと話を進めるような所は全くありません。騙したり騙されたり本心と裏腹の態度を取る場面でも、きちんと内面までフォローされているのです。特に脇役パッランテとナルチーゾの、2人それぞれの反応が話運びや会話にリズムを与えている部分は、訳していても大変楽しいものでした。
  • 演出次第でいくらでもニヤニヤできそうな、コミカルな場面が随所に折り込まれているのも特徴です。第1幕の終わりでポッペアがヤル気満々のクラウディオに迫られるシーン(ここでクラウディオ役の男性歌手がポンポン服を脱いでサービス?することが多い)や、第3幕前半でオットーネとネローネを別々のドアの向こうに隠して、ポッペアが大芝居を打つ場面などがそれ。ちょっとしたコントのような趣ですね。このオペラがロングランを重ねた理由には、ヘンデルの素晴らしい音楽だけでなく、芝居としても良く出来た台本の面白さもあったのだと思います。
  • しかしこれらの長所も台本の意味が分からないと、そっくり短所になってしまいます。レチタティーヴォが長い…いつになったらアリアが来るの?やっと歌になっても微妙に短い…またレチ?もう退屈…とか(笑)。つまり音楽だけでも何とか楽しめるように構成されたロンドンのヘンデル・オペラと違い、「アグリッピーナ」は外国人にはツラい作品なのです。
  • そこでこの対訳(笑)!抜け目ない悪女アグリッピーナ、一度は彼女に騙されるも気丈に反撃に出るポッペア、愛と正義感に溢れたオットーネ、女たらしで優柔不断の皇帝クラウディオ、マザコン?バカ息子ネローネ…個性豊かな登場人物達が織りなす、丁々発止のやりとりが理解できれば長いレチも何のその、小ぶりなアリアも各状況に応じてヘンデルが実に適切な音楽を与えているのが良く分かっていただけると思います。やはり物語の中で聴いてこそ、それぞれの歌も印象深いものになりますね。
  • 第3幕(ヤーコプス盤用対訳)について
    多彩な通奏低音楽器を駆使したドラマチックなレチタティーヴォが面白い、ヤーコプスのハルモニア・ムンディ仏盤は、第3幕に初演以前に削除されたアリアや二重唱を含んでいます。その一方でカットも多く通常の台本では鑑賞に不便なので、今回は第3幕のみヤーコプス盤用の対訳も作成しました。CDをお持ちの方はどうぞ御利用ください。

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@ REIKO

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最終更新:2014年08月22日 22:37