激闘の負傷と疲労により、意識を失っていた葉月りんかは、交尾紗奈の悲鳴で目を覚ました。
 愕然と跳ね起きたりんかが、急いで周囲に視線を走らせると、血塗れの首が折れた女に襲われる紗奈の姿。
 バケモノに襲われている紗奈を見たりんかは、我を忘れて変身して、全力で駆け寄った。





 葉月りんかが目を覚ます少し前。葉月りんかと恵波流都の決戦場となった森から西に行った場所に有る海岸線。
 一人の美女と一人の美少女とが、並んで海水で顔を洗っていた。
 諸々の事情を省略すれば、殴り合った末に友人になったという、フィクションでは良くある展開を迎えた、ルクレツィア・ファルネーゼとソフィア・チェリー・ブロッサムである。
 ルクレツィアの、「友人になったからペッティングしてくれ」という、変なクスリでもやってるのかと訊いてみたくなる要望に対し。
 何とか回避したいソフィアは、考えた末にルクレツィアの格好を指摘した。
 曰く、「血塗れの貴女の身体を撫で回すのは嫌」
 対してルクレツィアは、ソフィアの顔を指さして、其方も顔が血塗れだと指摘。
 元はといえば、ルクレツィアが鼻に指突っ込んだ所為なのだが、そんな事を糾弾しても、狂人に通じるか不明なので止めておき。
 殴りたくなる衝動を抑えて、取り敢えずソフィアは二人して顔を洗う事を提案して、海水で顔を洗っているのだった。
 なおルクレツィアの衣服はどうしようも無いので、血塗れで破れたまなだった。

 顔を洗ってさっぱりすると、今後の方針を話し合う。
 ソフィアとしては、ルクレツィアを“アビス”の外に出したくは無いが、ルクレツィアが死刑になるのも困る。
 考えた末に、適当な刑務者を殺してルクレツィアにポイントを取らせることで、ルクレツィアの罪を一等減じて無期懲役にする事を思いついたのだった。
 無論の事だが相手は選ぶ。ルーサー・キングやアンナ・アメリアといった、決して世に出してはならない巨悪を、そうでなくとも危険度の高い刑務者を選んで殺害する。
 こうすれば、ルクレツィアを外に出すこと無く、ルクレツィアの超力(ネオス)を利用出来る。
 ルクレツィアは、ルーサー・キングや、ディビット・マルティーニの様に、世に及ぼす影響が大きい訳では無いが、世に出すことは許され無い鬼畜に違いは無いのだから。
 と、言う訳で、互いに名簿に知ってる名前が有るかを確認しあって────ソフィアはルクレツィアを殺したくなった。

 「知っている方ですか…。私が最初に出逢ったジャンヌさんのソックリさんは、ジルドレイさんという方だったのですね。
 ジャンヌさんの悪行の跡を追うと仰っておられましたね。
 他の方ですと、ディビット・マルティーニさんですが、この方は名前だけしか知りませんし。
 後はジャンヌさんご本人ですね。ディビットさんと違って直接逢ったので良く知っています」

 「貴女が…?ジャンヌ・ストラスブールと?」

 ソフィアが驚くのも無理は無い。ジャンヌとルクレツィアでは接点はおろか共通項が無さ過ぎる。
 ジャンヌからすれば、ルクレツィアなどは、断罪の剣を振り下ろす相手でしか無い。

 「二年前にイタリアとフランスの国境に在る街で出逢ったのですよ。外出は好きでは有りませんが、あの旅行は良かったです」

 「分かりました。もういいわ」

 “二年前”。“イタリアとフランスの国境に在る街”この二つのワードで、ソフィアは大まかな事情を察した。
 “イタリアとフランスの国境に在る街”。とはつまり、“キングス・デイ”の縄張りである歓楽街の事だろう。
 莫大な利益を産み出すその土地は、確か“バレッジファミリー”が利権を欲して、“キングス・デイ”との間で、水面下での暗闘を繰り広げていたはずだ。
 そこでジャンヌと逢ったというのならば、ルクレツィアの性状からすると───。

 「ジャンヌさんは私の事を覚えていらっしゃら無いと思いますよ。私は全身の黒子の位置から内臓の色艶まで思い出せますが」

 ソフィアは額に手を当てた。予想通りにも程が有った。
 ジャンヌ・ストラスブールが人々の前から姿を消した二年間。そして再び姿を現した時の数々の“悪名”。
 ジャンヌが戦っていた巨大犯罪組織が関わっていたのだろうと、少しでも裏の事情に通じる者ならば、簡単に思い至る真実。
 ルクレツィアの言葉からするに、“商品”として扱われ、その時にルクレツィアに“買われた”のだろう。
 ルクレツィアが何をしたのかは…想像もしたくは無い。
 自分の事など覚えてい無いと、ルクレツィアが思う程に、数える事も出来ない程の人数に買われ、凌辱され、果ては切り刻まれて。
 ジャンヌ・ストラスブールが二十年にも満たない人生で受けた苦痛と非業に、ソフィアは哀れみを覚えた。

 ────貴女を苛んだ者達の一人と、共に居る私に憐れまれても、不快なだけでしょうね。

 胸中に湧き起こった、ジャンヌに対する憐れみと、己に対する自嘲を押し殺す。

 ルクレツィアがどれ程狂っていて、世に害為す鬼畜だったとしても、ソフィアの希望はルクレツィアにしか無い。
 ルクレツィアの超力(ネオス)ならば、世界の何処にも存在が残ってい無い、ソフィアの記憶の中にしか、最早存在の証が無い最愛の男と、夢とはいえ逢瀬が叶うのだから。

 「わたくしは…ええ、この名簿の名は、大体が記憶に有りますわ。少なくとも、一年以上前に“アビス”に送られた方は、大抵知っています。
 その中でも、特に警戒しなければなら無いのは、ジェーン・マッドハッター、トビ・トンプソン。ルメス=ヘインヴェラート
 三人とも、出逢うことは避けたい相手ね」

 ────あの人は、わたくしをどう思うのでしょうね。

 ソフィアが挙げた三名。三人が三人共に、性格や信条は違えど、殺し合いには先ず乗らないという共通項を持つ。
 特にソフィアが捕縛した為に良く知っているジェーン・マッドハッターは、直接の殺し合いともなれば危険極まり無いが、そもそもがジェーンは殺し合いに乗る様には思えない。
 脱獄狂のトビにしても、そこは同じ。恩赦を得るのは出獄であって脱獄では無い。脱獄という檻に囚われているトビが、“刑務”に従事するとは思え無い。
 義賊として名高い怪盗『ヘルメス』もまた、刑務には服さないだろう。
 そんな三人の名を挙げたのは、ルクレツィアが危険度の低い刑務者へと襲い掛かる事を防ぐ為であり、危険度の高い刑務者の殺害にルクレツィアの戦力を活用する為で有る。
 二度と出会えぬ、記録すら存在し無い男との夢幻での逢瀬の為に、何も知らぬ少女を利用する。
 例えその少女が真正の鬼畜外道であっても、ソフィアの良識と良心がソフィアを弾劾して止まない。
 憂いを帯びた顔で溜息を吐き、ふと気付く。ルクレツィアがじっとソフィアを見つめていた。

 「……何でしょうか」

 己の算段に気付かれたか?
 そう思って身構えるソフィアに、ルクレツィアは笑いかけて。

 「心配しないで────」

 その時、森の奥で何かが輝くのが二人の視界の端に写った。

 「何でしょうか?誰かが襲われているのでしょうか?私には分かりませんので、ソフィアの判断に任せます」

 「……アレは」

 森の奥で輝く二つの光。白い輝きには覚えが無いが、紅の凶光は記憶に有った。

 「行きますわよ。ルクレツィア」

 立ち上がったソフィアに。

 「ええ…ああ、心配しないでも良いですよ。丁度良いです。あの光を出している人を、手早く殺しましょう」

 ルクレツィアが応えて走り出す。

 「……え?」

 ルクレツィアの言葉に、不意を突かれたソフィアは、ルクレツィアrに出遅れてしまい、走り出した時には既にルクレツィアは30m以上の距離を開け、更にその差を広げつつあった。





 死闘が終わり、紅の脅威が去って、気が抜けたりんかは気絶していた。

  「はあ…はあ…」

 気絶したりんかを背負い、紗奈はよろよろと、森の中を緩慢に移動している最中だった。
 何しろ彼処まで派手な大立ち回りを演じたのだ。他の刑務者がやって来ると考えるのが妥当だろう。
 そう考えて、りんかを背負い、移動を開始したものの、直ぐにまともに動けなくなりつつあった。
 原因は他でも無く、背に負ったりんかだった。
 凡そ人体というものは、抱えて運ぶのに適した形状と構造をしていない。
 背中や頭部が関節に沿って後方へ仰け反り、不規則に揺れる手足が負荷となって紗奈の体力を奪う。
 『希望は永遠に不滅(エターナル・ホープ)』により、心身共に超強化されたといえども、子供の身で人一人を抱えて、森の中を歩むのは辛すぎた。
 それでも止まる事なく歩き続けたのは、りんかの超力(ネオス)に拠るものか、紗奈の精神力か。
 何にしても、紗奈はりんかが安全に休める場所を見つけるまで、止まるつもりは無かった。
 緩慢に歩み続ける紗奈の脚が止まった。
 真っ直ぐに自分達の方へ走る足音が聞こえたのだ。
 そっとりんかを地に横たえ、身を低くして服を脱ぐ。
 未だにりんか以外に気を許していない紗奈は、りんかが意識を取り戻すまで、自身の超力(ネオス)の行使を厭わ無い。
 手錠を嵌めようとした時に、灌木を突っ切って、物凄い勢いで人影が飛び出した。

 「……………」

 「……………」

 二人は違いに暫し見つめ合う。

 紗奈の前に現れたのは、ボロボロで血塗れの服を着た白い少女。鮮血色の瞳を、紗奈とりんかを交互に向けている。
 どう見ても誰かに襲われて重傷を負った身で有るにも関わらず、平然と動いている白い少女に、紗奈は僅かに恐怖を感じた。

 白い少女を────ルクレツィア・ファルネーゼは、紗奈とりんかを見て小首を傾げた。
 地面に横たわって動かないりんかと、服を脱いで手錠を嵌めようとしている紗奈。
 ルクレツィアでなくとも、訳がわからない状態である。

 互いに相手を推し量り────最初に動いたのは、紗奈。
 りんかを守る為に、手錠を嵌めると、上目遣いにルクレツィアを見上げる。
 目の前にいる、血塗れの女が、過去に自分を嬲り抜いたのと同じ人種だと、直感的に悟ったのだ。
 拘束された裸体を見せつける様に、地面に横たわって妖しく身体を蠢かせる。
 幼女趣味でなくとも、思わず衝動に駆られる色香を放つ紗奈を、ルクレツィアは無感情な眼で見下ろした。

 「ポルコ(豚)さん。私は人間にしか興味は無いんですよ」

 紗奈には何の関心も無いと、声だけではっきりと理解できる。

 「私が殺すのは人間だけなのですよ…本来は。けれども、今はそうも言っていられないんですよ。友人の為に、貴女達をポイントにさせて頂きますね」

 「え…。え…?」

 紗奈にはルクレツィアの言葉が理解出来なかった。
 ルクレツィアが自分やりんかの側では無く、虐げ苛む側の人間だという事は、身に纏う雰囲気で理解出来た。
 だからこそ、理解出来ない。
 ルクレツィアに超力(ネオス)が通用しない事が。

 「それにしても、助かります。人間だったならば、手早く殺すのは惜しい気もしますが、ポルコ(豚)が二匹。これなら手早く殺せます」

 紗奈の超力(ネオス)が、ルクレツィアに効果を発揮しない理由は至極単純。
 “調教された家畜の様に”いきなり服を脱いで媚を売る紗奈は、ルクレツィアにとっては人では無く、飼い慣らされた豚と同じ存在でしか無い。
 鉄火場でいきなり媚を売り出すのは、命乞いの為だろうとルクレツィアは判断したのだが、その為に“家畜の所作”を行う相手は、面白味が全く無い。
 人を苛み嬲り殺す事を欲するルクレツィアからしてみれば、人の姿をした家畜は、全く関心を引か無い相手である。
 りんかも豚と見做したのは、明らかに年齢不相応な巨大な胸だ。
 誰かに飼われ、その間に身体を改良されたのだろうと、歓楽街で同じ様な“豚”を複数見てきたルクレツィアは、過去の記憶に基づき結論する。
 であればりんかもまた家畜。豚でしか無い。

 「それでは、さようならですよポルコ(豚)さん達。手早く死ねるのですよ。人を辞めた事は幸運でしたね」

 無表情のまま、声音は優しく、ルクレツィアの手が紗奈に伸びる。
 ルクレツィアの両手が、紗奈の首に触れる寸前、紗奈は大きく後ろに跳躍した。

 「誰がッ!…豚だッ!りんかも、私も…人間なんだあああああ!!!」

 絶叫と共に紗奈はルクレツィアへと猛然と体当たりを敢行する。
 りんかの超力(ネオス)による身体強化。りんかと自分を豚呼ばわりしたルクレツィアへの嚇怒。何よりも、りんかを守るという決意が、紗奈に限界以上の力を与えて、あっけに取られたルクレツィアを転倒させた。

 「うああああああああ!!!」

 仰向けにひっくり返ったルクレツィアに素早く馬乗りになり、顔目掛けて組んだ両手を何度も何度も振り下ろす。
 鼻が折れ、目が潰れても、なお紗奈の手は止まらず────手首を掴まれ、強制的に止められた。

 「私とした事が…人を豚と取り違えるとは……非礼をお詫び申し上げます。
 まあ、それはそれとして、人であるならば、相応の殺し方をしなければなりませんね」

 握り潰されそうな程に手首を圧搾され、それでもルクレツィアを睨み付けた紗奈は、元通りの美麗さを取り戻しているルクレツィアの顔を見て、悲鳴を漏らした。

 「やはりソフィアでなければ、気持ち良くはなれませんね」

 言いながら上体を起こし、紗奈を腕の力だけで投げ飛ばす。

 「ガッ……」

 宙を飛んだ紗奈の身体が、樹木の幹にぶつかって止まるのを余所に、ルクレツィアは優美な動きで立ち上がった。

 「どう殺しましょうか?嬲り殺しをソフィアは嫌がるでしょうし、此処はやはり手短に済ませましょう」

 倒れ伏して呻く紗奈を放置して、ルクレツィアは緩やかな足取りで、未だに意識を失ったままのりんかへと近づいた。

 「私の超力(ネオス)では、思考や感情までは追体験出来ませんが、精神的な衝動が肉体に及ぼす影響は、体験できるんですよね。
 哀しみで胸が張り裂ける、怒りで脳が沸騰する。喜怒哀楽は感じ取れないのですが、胸が張り裂けそうな苦しみや、脳が煮え沸る感覚は、良く感じ取れますよ。
 なので────今からこの方(りんか)を殺します。貴女(紗奈)がどう苦しんだのか、後で教えてもらいますよ」

 痛みに耐え、手錠を嵌めた不自由な身で、何とか起き上がった紗奈と、紗奈の方を見て笑い掛けたルクレツィア視線が交差する。
 焦燥と怒りと恐怖が混ざり合った紗奈の眼を、ルクレツィアは胸中に昏い悦びを湛えて見つめ。
 喜悦と嗜虐の浮かんだ────紗奈にとっては反吐が出る程に見慣れた────ルクレツィアの笑顔を、無力感に苛まれながら紗奈が睨み付け。

 必然として、ルクレツィアの両手首が捻折れた。




 「あら?」

 ルクレツィアが、唐突に聞こえた鈍い音の発生源に視線を向けると、捻じ折れていた手首が急速に修復する。

 「貴女の超力(ネオス)ですか?」

 紗奈の方を見て訊いてみる。再度両手首が折れる音。
 視線を向けると、手首が再び元に戻る。

 「…………ああ、成る程」

 呟いたルクレツィアは、再度視線を紗奈へと向けると、手首が捻じ折れるのにも関わらず紗奈を見つめ、少ししてから眼を閉じる。
 音を立てて捻じ折れた手首が治るのを確認すると、再度眼を開く。瞬時に両手首が捻じ折れる。

 「つまり貴女の超力(ネオス)は、裸で拘束されている貴女の姿を見ると、拘束されている部分を捻じ折る…回復と拮抗していましたから、捻じ切る。といったところでしょうか」

「…………ひっ」

 自身の超力(ネオス)の詳細を言い当てられ、紗奈の顔に怯えが浮かぶ。

 「それだけですと、先程私に効果が無かった理由が分かりませんね?貴女を人として見るか?何らかの…感情を…おそらくは欲情か加害欲求を持つ事が、トリガーなのでしょうか」

 「……あ……あ………」

 紗奈の超力(ネオス)が通じない訳では無い。現にルクレツィアの両手首は無惨に捻じ折れている。よくよく目を凝らせば、手首が更に捻じれようとしているのが見て取れる。
 捻じ折れる程度で収まっているのは、ルクレツィアの言葉の通り、ルクレツィアの超力(ネオス)と拮抗しているからだろう。 

 だからこそ、不気味だった。
 紗奈の超力(ネオス)で、手首を破壊されているというのに、何事もない様に、平然と語り続けるルクレツィアが。
 新人類であっても泣き叫ぶ程の痛みを伴う筈なのに、微笑すら浮かべるルクレツィアが。
 そんな不気味な相手に、己とりんかの身を守る切り札を、解き明かされてしまった恐怖に、紗奈は我を忘れて逃げ出したくなる恐怖に襲われていた。

 「フフフ…鬼ごっこでもしましょうか?貴女に逃げる猶予を与えて差し上げますよ」

 紗奈は動けなかった。りんかを守るという意志と、得体の知れない相手への恐怖で、板挟みになっていた。
 動けない紗奈の眼の前で、ルクレツィアはゆっくりと、りんかへ近づいて行く。
 血を吸って赤黒く変色した、ズタボロの刑務服を着ていながら、何処か典雅さを感じさせる歩き方だった。
 微笑を浮かべた横顔は、恐怖に動けない紗奈が、思わず見入ってしまう程に美しかった。
 美しく恐ろしい女は、遂にりんかのもとへと辿り着き、屈み込んだ。

 「私がこの方を解体する間が、貴女の逃げる時間ですよ。…とは言え、ソフィアが来る前に殺さないといけませんから、そう時間は掛けられませんが」

 ルクレツィアの言葉を聞いて、紗奈の身体が動き出す。
 りんかを守るという、強い思いが、紗奈の身体を突き動かす。
 紗奈は脱ぎ捨てた刑務服を目指して走り出す。
 走りながら手錠を外し、刑務服へと飛びつく様に、服を拾い上げた。

 「私を見ろ!バケモノ女!」

 りんかの右手首を捻じ切るべく、手を伸ばしていたルクレツィアは、紗奈の声に反応して視線を向けて、首に刑務服を巻きつけた紗奈を見た。

 鈍い音がして、ルクレツィアの首が百八十度回転した。

 「やった!」

 首が有り得ない程に捻れ、地面に倒れたルクレツィアの姿に、紗奈は快哉を叫んだ。
 手首を捻じ折っても動くのならば、首を折ってしまえば良い。そうすれば死ぬ。死ななくても動けなくなる。
 倒れたルクレツィアが動かない事を確認して、緊張を解いた紗奈は、りんかの無事な姿を見て安堵の溜息を漏らす。
 脅威が去ったと喜んで、紗奈はりんかに駆け寄ろうとして、不意に立ち上がったルクレツィアに行手を遮られた。

 「もう少し捻れれば、神経を切断できたのですが…残念でしたね」

 「~~~~~~~~~~ッッッッ!」

 己を見下ろして微笑むルクレツィアに、紗奈は失禁する程の恐怖を感じ、意味を為さない絶叫を上げた。
 紗奈が恐怖するのも無理は無い。ルクレツィアは、顔こそ紗奈へと向けているが、身体は紗奈に対して背面を向けている。
 つまりルクレツィアは、首が百八十度捻れたままで、平然と立ち上がり、紗奈へと話掛けたのだ。

「首を折るとは流石に酷いですね。子供のする事とは言え許せません。罰を与えます」

 言葉のままに捉えれば、怒りの表明だが、ルクレツィアの表情を見れば、抱いているのが紗奈への嗜虐の悦楽だと嫌でも認識出来る。

 「今の貴女の姿を、この方(りんか)見せる事にしましょう。守ろうとした方を、自分の超力(ネオス)で殺してしまうのは、どういう苦しみなのでしょうね?」

 微笑み掛けるルクレツィアに、遂に紗奈の精神が限界を迎えた。
 涙を流しながら絶叫する紗奈を、ルクレツィアは愉しそうに見下ろして、紗奈の怯えを愉しむかの様に、緩やかに手を伸ばす。

 「嫌だあああアアアアアアアアア!!!!」

 首を折っても、死ぬどころか行動不能にすらならない。純粋な腕力でも叶わない。
 逃げればりんかがバケモノ女に殺される。
 逃げずに留まれば、りんかを己が超力(ネオス)で殺されてしまう。

 どうする事も出来ない紗奈は、只々泣き喚き絶叫し────バケモノ女の姿が不意に視界から消滅した。





 「紗奈ちゃん!」

 りんかに抱きしめられて、紗奈は漸く泣き止んだ。
 激しく全身を震わせて、荒い呼吸を繰り返す紗奈を抱きしめ、りんかは突き飛ばしたバケモノ女への怒りを顕に凜然と立ち上がる。

 「紗奈ちゃんをどうして虐めるんですかッ!」

 「一つ申し上げておきますが、その方は私を見るなり、服を脱いで手錠を嵌めましたよ」

 冬籠に失敗した熊ですら逃げ出しそうな大喝を浴びせられ、バケモノ女ことルクレツィアは、至極当然の様に、自分は悪く無いと主張した。

 「────それはっ」

 「首に服を巻きつけたりもしましたよ。先に危害を加えたのはその子ですよ」

 激昂するりんかに対し、悠然と落ち着き払って、状況を説明するルクレツィア。外道鬼畜な本質を、当人の身につけた気品と典雅で覆い隠し、無害な被害者に擬態する。

 「だったらどうして────」「私の超力(ネオス)の効果です」

 ならば何故生きているのか?というりんかの問いに、ルクレツィアは答えを被せて黙らせる。

 「私は被害者です。首まで折られたのですよ?」

 「紗奈ちゃんは…事情が……」

 言い淀んだりんかの言葉に被さる様に。

 「違う!其奴は、私とりんかを、豚呼ばわりして殺そうとしたんだ!」

 紗奈の糾弾が、ルクレツィアが支配しかけていた場の空気を吹き飛ばした。

 「其奴に騙されないで!其奴は、私達を痛めつけた奴等と同じだ!!」

 ルクレツィアの本質と相対した紗奈の糾弾は、ルクレツィアに飲まれかけていたりんかの精神を引き締める。

 「……ああ、成る程。そういう事でしたか」

 怒りを込めて睨みつける紗奈と、紗奈を守るという決意を顕にするりんかに対し、ルクレツィアは一人納得のいった表情を浮かべて。

 「貴女方は、元“家畜”という訳ですか」

 二人の傷に、平然と毒爪を突き立てた。

 「貴女方の様な人は、あまり味わった事はありませんので、丁寧に頂きたいのですが……。残念ですね。愉しむ事が出来ないのは」

 ルクレツィアの言葉に、りんかは凄惨な過去を思い出し、ルクレツィアが紗奈の言葉通りの人間だと理解する。
 赤紫の仮面の下に、哀しみと正義への希望とを隠していたブラッドストークとは違う。
 ルクレツィアの白貌の下に有るものは、芯まで真っ黒な魂と、救う余地の無い邪悪さだ。

 正義を掲げるりんかにとって、恵波流都に希望を語ったりんかにとって。
 相容れる事の出来ない、敵だった。
 凌辱され、道具として扱われた過去を持つりんかと紗奈にとって、許すことの出来ない邪悪だった。


 拳を握り、ルクレツィアの顔目掛けて繰り出す。
 対するルクレツィアもまた、大振りのパンチを放つ。
 本来ならば、簡単に躱せるテレフォンパンチ。
 だが、りんかの攻撃に合わせて放たれたルクレツィア拳は、見事にりんかの臍へ減り込んだ。
 鼻血を盛大に噴き出しながら、ルクレツィアが仰け反り。
 息を吐き、身体を折り曲げて、りんかが後ろへ蹌踉めく。

 再度交わされる両者の攻撃。
 今度はアッパーを受けてルクレツィアが、砕けた歯を口から溢しながら仰け反り。
 喉へと貫手の直撃を受けたりんかが、盛大に息と血の混じった唾液を吐き出した。
 互いに足を止めて、真っ向からの殴り合い。
 身体能力ではりんかが勝り、回復力ではルクレツィアが凌駕する。
 技量ではりんかが卓越し、人体破壊の知識に関してはルクレツィアが隔絶する。
 総じて戦力は互角と言える。となれば勝敗を分つのは、両者の状態に他ならない。
 二度の激戦を経て、超力(ネオス)を以ってしても、未だに癒しきれぬ程に疲労困憊しているりんか。
 対するルクレツィアは、ジルドレイに切り刻まれ、ソフィアに破壊の限りを尽くされたとは言え、りんかを凌駕する回復力と、痛みと疲労に極端に鈍くなる超力(ネオス)を持つ。
 時間と共にりんかの動きは目に見えて鈍り、最初は相撃っていたのが、今ではルクレツィアgs五発殴る間に一撃を返すのがやっとの有様。
 打たれ続けたりんかは、大きく後ろに飛んで距離を空ける。
 逃げたところで追って来る。ならば、此処で倒すしか無い。

 「シャイニング────」

 猛然と地を蹴り、眩い輝きを纏った右脚を繰り出す。
 ブラッドストークの渾身をすら撃ち抜いて、致命の傷を負わせた必殺キック。

 「キーーーーック!!!」

 初手から繰り出す大技は、りんかの疲労と負傷が最早無視できるものでは無い事を雄弁に物語る。
 一撃を以って決着しなければ、りんかの身体が保たないのだ。
 それに加えて、流都と根本からして異なる相手。紗奈を当然の様に狙うだろうという確信が有った。

 「お疲れのご様子ですが、ご無理を為さらなくとも、宜しいのですよ」

 凄まじい土煙が巻き起こり、その中をりんかの放つ輝きが飛翔する。
 目指すルクレツィアの消失を知り、焦燥に駆られたりんかの耳に、紗奈の悲鳴が聞こえた。

 「紗奈ちゃん!」

 シャイニング・キックを強引に中断して着地。全身の痛みに耐えて振り返ったりんかが見たものは、泣き叫ぶ紗奈をネックハンギングツリーに捉えた、首の折れたルクレツィアの姿。
 首を締め上げられる恐怖と、首が折れても平然と動くルクレツィアの姿に、紗奈は恐慌して泣き叫ぶ。

 「慌てないでも良いですよ。お返しします」

 急いで駆け寄るりんかに対し、ルクレツィアは紗奈を猛速で投げつけると、紗奈を受け止めたりんかの元へと瞬時に距離を詰めて、拳を振るう。

 「グアッ!」

 咄嗟に紗奈を庇い、ルクレツィアに背を向けたりんかの腎臓へ、ルクレツィアの拳が直撃した。

 「常人なら、腎臓が破裂している筈ですが…。丈夫な方ですね。好きですよ、身体が丈夫な方は」

 振われる拳の乱打。背骨に痛打を受けて仰け反った所へ、再度腎臓に重い一撃、息を大きく吐き出して、力が抜けた瞬間を狙い澄ましての、背面からの心臓打ち。
 意識が遠くなるのを必死になって堪えて、紗奈を抱く両腕に更に力を込める。

 「貴女が本来の状態で有れば…。いえ、その子供が居なければ、こうまで一方的に打たれる事は無いでしょうね」

 膝裏に蹴りを入れて、りんかに片膝をつかせると、鎖骨に手刀を振り下ろし、肝臓へと爪先蹴りを叩き込む。紗奈を抱えて蹲ったりんかへと、急所を狙った拳と蹴りを浴びせ続ける。

 「この方(りんか)を守ろうとして、私を攻撃した結果、この方(りんか)はこうして打たれ続けている…。どういうお気持ちですか?貴女(紗奈)の軽虜の招いた結果は」

 紗奈のりんかを呼ぶ声が、ルクレツィアの言葉を聞いて声が途切れた。

 「私と敵対した挙句、この方(りんか)の枷となる…。ご自身だけで無く、この方(りんか)にまで枷を嵌めるとは…フフフ、大した超力(ネオス)です」

 りんかの肉体を暴力で、紗奈の精神を言葉で苛み、ルクレツィアは深く昏い喜悦の笑みを浮かべた。

 「ではそろそろこの方(りんか)を殺しますね。特等席でご覧になって下さい」

 打たれ続けて、呻き声を上げる以外の反応をしなくなったりんかを見下ろし、紗奈が泣き喚く様を堪能して、止めの一撃を見舞うべく拳を振り上げて────。

 「何をしているのかしら」

 背筋が凍る様な冷たい声。
 りんかの陰から見上げた紗奈が見たものは、ルクレツィアを羽交い締めにする赤髪の美女の姿だった。





 「その子供が、私を見るなり殺そうとしてきたのです。私は悪く有りません。そちらの方(りんか)も、いきなり殴りかかってきました。正当防衛です」

 今のルクレツィアの状態は、背骨に当てられた膝を支点に、状態を大きく仰け反らされ、ソフィアの腕で頭部を締め付けられている状態。プロレス技のドラゴン・カペルナリアに掛けられていた。

 「その割には随分と愉しそうでしたね」

 ソフィアが更に力を込め、ギリギリと、ルクレツィアの全身が軋む。

 「あああああああああ~~~~~」

 ルクレツィアの悲鳴に、ソフィアもりんかも紗奈も、揃って赤面した。
 全身を締め上げられている人間では無く、情交の最中の人間が出す声だった。

 「私はいきなり手を折られたのですよ。更に首まで折られたんですよ。お返しをしたくなっても仕方の無い事ではないでしょうか?」

 「限度というものが有るでしょう?」

 骨が折れるレベルで、ルクレツィアの全身に力が加えられ、🤍が大量に付いていそうな嬌声をルクレツィアが上げ。
 りんかと紗奈は呆然と座り込んでいた。





 「わたくしの連れが悪い事をしましたわね。どうか許して下さい」

 深々と頭を下げるソフィアに、りんかは戸惑いを隠せない。
 アレだけの嗜虐性を発揮して、りんかと紗奈を嬲り殺そうとしたルクレツィアと、ソフィアとがどうしても結びつかないのだ。
 なおルクレツィアは満足したのか、安らかな寝息を立てていた。
 好き放題な振る舞いに、りんかと紗奈はイラッとしたが、グッと我慢する事にする。

 「………貴女が謝ったりする必要は無いと思います」

 「彼女を止められなかった責任は、わたくしに有ります」

 りんかとソフィアは、少しの間、黙り込む。

 「あの…私達と一緒に────」

 意を決してりんかは言う。ソフィアからは、ルクレツィアとは根本的に違うものを感じる。
 その精神に善性を、流人と同じく、押し殺した哀しみを、ソフィアから感じたのだ。

 「貴女達と最初に出逢っていれば…。そうしたでしょうね」

 身体能力で上回り、灌木も茂みも平然等突っ切るルクレツィアに置いていかれ、森の中を彷徨ったソフィアを、此処へと導いたのは、泣き叫ぶ紗奈の声だった。
 急いで声のする方へとは知ったソフィアが見たものは、りんかと紗奈を嬲るルクレツィアの姿と、ルクレツィアから紗奈を守り続けるりんかの姿。
 ほんらいのソフィアであれば、ルクレツィアを殺してでも、りんかを救った事だろう。
 だが、自己の為に、ルクレツィアの血塗れの手を取り、地獄への片道切符を手にしたソフィアには、その選択は存在し無い。
 ソフィアが取る途は二つ。二人をルクレツィアに殺させてポイントにするか、二人を救うか。
 ソフィアが迷った時間が、りんかの苦しんだ時間だった。
 ソフィアは迷った事そのものを恥じていた。二人と共に行くことなど、ルクレツィアを抜きにしても出来はし無い。

 「あの人を…放っては置け無いからですか?」

 眠るルクレツィアを指差して、尋ねるりんかに、ソフィアは無言でも首肯した。
 りんかの表情が、疑念と悲痛に歪むが、どの道りんかに説明しても理解されないだろう。
 せかいの何処にも存在しなくなってしまった男との逢瀬を望むなどと言う事は。

 「それでは、わたくし達は、これで」

 眠る地獄への片道切符(ルクレツィア)を背負い、ソフィアは歩き出す。
 りんかも紗奈も、ルクレツィアが側にいては落ち着かないだろう。

 「最後に訊きますが…貴女は、ブラッドストークと戦いましたか」

 森の中にやって来る原因となった閃光について、ソフィアには心当たりが有った。
 ブラッドストーク。あの紅い閃光は、紅の怪人が放ったものだろう。ならばだれかがブラッドストークと闘ったという事だ。
 それがりんかであっても、ソフィアは驚か無い。新時代では良くある事でしか無いからだ。

 「はい、戦いました」

 「そう…ですか」

 りんかの答えを聞き、ソフィアは歩き出す。
 りんかの状態は未だに動ける程では無い。ソフィア達が、去るべきだった。
 ソフィアの目的に、りんかの戦力は有用だろうが、年端もいかない善良な少女を、ソフィアの我欲に巻き込む事は、出来なかった。




【D-3/森の中/一日目 黎明】
【葉月 りんか】
[状態]:シャイニング・ホープ・スタイル、全身にダメージ(極大)、疲労(大)、腹部に打撲痕、ダメージ回復中 ルクレツィアに対する怒りと嫌悪
[道具]:なし
[方針]
基本.可能な限り受刑者を救う。
0.今は少しだけ、休む。
1.紗奈のような子や、救いを必要とする者を探したい。
2.この刑務の真相も見極めたい。
3.ソフィアさん…

※羽間美火と面識がありました。
※超力が進化し、新たな能力を得ました。
 現状確認出来る力は『身体能力強化』、『回復能力』、『毒への完全耐性』です。その他にも力を得たかもしれません。

【交尾 紗奈】
[状態]:気疲れ(中)、目が腫れている ルクレツィアに対する恐怖と嫌悪
[道具]:手錠×2、手錠の鍵×2
[方針]
基本.死にたくない。襲ってくる相手には超力で自衛する?
0.りんか……!
1.超力が効かない相手がいるなんて……。
2.りんかのことを信じてみたい。
3.バケモノ女(ルクレツィア)とは二度と会いたく無い

※手錠×2とその鍵を密かに持ち込んでいます。
※葉月りんかの超力、 『希望は永遠に不滅(エターナル・ホープ)』の効果で肉体面、精神面に大幅な強化を受けています。

【共通備考】
※D-3の森のどこかに恵波 流都の首輪(100pt)が遺されています。
※シャイニング・ホープとブラッドストークの必殺技の衝突により、D-3エリアにて強い光が生じました。





 「あの二人と、一緒に行かなかったのですか」

 何時から起きていたのか、ソフィアに背負われたままで、ルクレツィアが話し掛けてくる。

 「……友人を置いては行けないでしょう?あの二人は貴女を嫌がるでしょうし」

 「少し苛め過ぎましたね」

 クスクスと笑うルクレツィアに、ソフィアは一つ訊いてみる事にする。

 「どうして…わたくしを友人にしようと考えたのですか?」

 「何故…でしょうね」

 少しだけ、考える気配。

 「ソフィアは私と同じだったから?でしょうか」

 「わたくしが…貴女と、同じ!?」

 流石にこんな殺人狂から同類呼ばわりは、心外を通り越して腹が立つ。
 ルクレツィアは、ソフィアの耳元でクスクスと笑って。

 「同じというか…まっとうな手段では決して許され無い…欠落…飢え…渇望……そういったものをかかえている様に思えたのですよ」

 「……………」

 図星を突かれたソフィアは、ルクレツィアに沈黙を以って返し、黙々と歩き続けた。
 目指すはブラックペンタゴン。数多の刑務者が、差し当たって目指すだろう場所。
 手頃な刑務者を見繕うのには、丁度良かった。


 ルクレツィアが起きているなら、背負って歩く必要が無い事にソフィアが気付いて、ルクレツィアをポイするのは、もう少し先の事である。




【D–3/道/一日目・黎明】

【ルクレツィア・ファルネーゼ】
[状態]: 疲労(中) 上機嫌 血塗れ 服ボロボロ
[道具]: デジタルウォッチ
[恩赦P]:0pt
[方針] 殺しを愉しむ
基本.
1. ジャンヌ・ストラスブールをもう一度愉しみたい
2.自称ジャンヌさん(ジルドレイ・モントランシー)には少しだけ期待
3.お友達(ソフィア)が出来ました
4.さっきの二人(りんかと紗奈)は楽しかったです


【ソフィア・チェリー・ブロッサム】
[状態]:ダメージ(小) 精神的疲労(中)
[道具]:デジタルウォッチ
[恩赦P]:0pt
[方針]
基本.恩赦を得てルクレツィアの刑を一等減じる
1.ルーサー・キングや、アンナ・アメルアの様な巨悪を殺害しておきたい
2.この娘(ルクレツィア)と一緒に行く
3.あの二人(りんかと紗奈)には悪い事をしました


045.名無し(ノーネーム)vs多重名(マルチアカウント) 投下順で読む 047.耐え忍べ、生きている限り
時系列順で読む
[E]volution 葉月 りんか 超人幻想/親愛なる始まりの君へ
交尾 紗奈
地獄行き片道切符 ソフィア・チェリー・ブロッサム いっそ最初から出会わなければ──
ルクレツィア・ファルネーゼ

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最終更新:2025年03月30日 08:33