名家として名を馳せたハリックの威光を示すかのように、各国の高官たちが入れ替わり立ち替わり訪れていた書斎。
今や足を踏み入れるのは血縁ばかりとなっていた。
依頼の書類が所狭しと並んでいたデスクは、今ではうっすらとホコリをかぶり、コーヒーの染みが拭き取られることもなく固まっていた。
開闢以来、ハリック家は選ぶ側から選ばれる側へと落ちてしまった。
かつては幼いジェイに対しても、媚びるように手をすり合わせて笑みを浮かべていた高官や裏社会の重役たち。
開闢以降、ハリックの側が彼らに頭を下げ続ける日々が続いた。
ようやく下りてきた仕事は、報酬が以前の1割を切り、
先方の都合によっては、これ見よがしに突然の破棄すら起こり得た。
お前たちに頼む仕事などもう何もないのだと言わんばかりに。
そんな中、ようやく割安ながらもまとまった報酬を提示してきた案件を、兄のエドワードが蹴った。
小雨が降りしきる寒い夜だった。
ジェイは乱暴に書斎の扉を開き、ドカドカと入室する。
「なぁ、エドの兄貴さぁ、一体何が不満だったんだよ!?」
苛立ちを抑えきれず、ジェイは兄に詰め寄って両手を机に叩きつけた。
「今度のクライアントは、俺らを高く買ってくれたんだよ。
専属契約を結べば、10万の支度金と確かな地位を用意してくれるとも言っていた。
……開闢以来、どこの馬の骨ともわからねえ奴らが次々と現れては、俺たちの仕事を奪っていきやがる。
今や俺たちは、他と大差ないくせに金だけは一丁前にふんだくるって評判だぜ?
そんなところに、今度の客は、ちゃんとしたビジネスを持ちかけてきた。
一体全体、何の不満があるんだ!」
エドワードは目を閉じて静かにコーヒーを啜り、深い吐息とともにゆっくりと目を開くと、カップをそっと卓上に降ろした。
「今、ネオスに世間は湧いてる。
目覚めたネオスを活用して、俺たちと競合するヤツらもずいぶん増えた。
だがな、それで俺たちの価値が毀損されるわけじゃないんだよ。
商いの世界じゃ、既存の概念や手法を組み合わせ、新たな価値を創出するのがほとんどだ。
組み合わせを変え、角度を変えりゃ、新しい道は開ける。
まわりの人間が短期の利益に目を眩ましてる間に、俺は次の一手を打つ。
俺は、価値観のまったく異なる新しい友人たちと共に、新たな未来を切り開くつもりだ。
――今は雌伏のときなんだ。
耐えろ、ジェイ。己を見失うな。
……”牧師”の宣教者なんかに、自分を安く売るな。
価値を見誤ったときこそ、俺たちは本当に終わる」
ハリック家の独自性が、ネオスの氾濫により薄まったのは事実だ。
だが、それは一面の見方にすぎない。
一歩踏み出せば暴走したネイティブが街の一ブロックごと吹き飛ばすかもしれない世界。
誰に何の異能が飛び出すかわからない人類総超力化社会。
そんな混沌と化した現代において、ハリック家は確実に予知に関連する異能者を輩出できる。
果たしてハリック家の価値は本当に有象無象のレベルにまで落ちたのか?
断じて否。
否である。
しかしながらハリックはいわば少数精鋭。
予知の使い手としては右に出る者のいない一族だが、門外不出の秘儀であるからこそ、短期間で数を増やすことはできない。
一方で世界は目まぐるしく変わっていき、次々現れる問題に、対処にはあまりに心もとない各国の財政事情。
『キングス・デイ』や『バレッジ・ファミリー』といった裏社会の住人たちはそこに目を付けた。
豊富な資金力と人海戦術にモノを言わせ、極めてリーズナブルな価格で裏仕事を受託。
実に真っ当な方法でハリック家の顧客を浚い取っていったのだ。
そして干上がっていくハリックに援助を申し出て恩を売り、あわよくば自らの傘下に収められるように画策をおこなっていた。
そんな水面下の攻防を年若く血気盛んな当時のジェイが理解するはずもなかった。
「ワケ分かんねえよ! 自分を安売りするなって?
新参のやつらに根こそぎ仕事持っていかれて、これまでゴマ擦ってきたヤツらに頭下げて、これ以上下がる価値がどこにあるってんだ!?
もう限界なんだよ!
価値ってんならよ、やっと俺の価値を理解してくれるクライアントが現れたんだぞ!
断るなんて正気じゃねえよ!」
「おい、ジェイ! 待て、早まるな……!」
そうして、エドワードの返事も聞かずにジェイは家を飛び出し。
いつもの酒場で、いつもより深く酒をあおった。
その後の顛末は語るまでもないだろう。
アビスにぶち込まれてしばらくした後、ジェイは見知らぬ囚人に怨嗟の目を向けられることが増えた。
それが一人二人ではなかったため、看守に理由を尋ねてみれば、
ハリック家は、GPAが手を焼いた凶悪犯を相手に成果をあげ、GPA傘下の対超力犯罪の特殊部隊に名を連ねたのだという。
エドワードに捕えられたという死刑囚本人の口から、その裏も取れた。
あらゆる人間に超力が与えられ、それが当たり前となったからこそ、
超力の無効化や、超力をトリガにカウンターを浴びせてくるような犯罪者は対処困難となった。
そこにこそ、超力に依らない異能を持ち、熟練の技を受け継いできたハリック家の力が求められる隙間があったのだ。
何より、初見殺しの犯罪者で溢れる中、安定的に供給される予知能力者をGPAが歓迎しないはずがなかった。
裏社会こそがこの世のすべてを掌握しているように語られることもあるが、表あってこその裏である。
あの『キングス・デイ』ですらも超大国の政府やGPAには資金力・人材・情報力で及ばない。
いつ切り捨てられるか分からない後ろ暗い組織の庇護を受けるよりも、ハリック家は表舞台で活躍できる真っ当な組織を選び、舞台に上がったのだ。
価値を切り替え、付き合う友人を変え、マフィアの息がかかっていれば決して到達できない高みへ到達したのだ。
選ぶ側から選ばれる側へ、そして最後には”選ばない”側へと登り詰めたのだ。
父や兄弟たちは逆境を乗り越え、ピンチをチャンスに変えて見事に表の世界に居場所を作り上げた。
それを理解しようとせず、座して待つことができなかったジェイだけが裏に取り残され、奈落の底へと落ちていった。
自惚れ、盲目、衝動。
過去の栄光にすがり、光を求め、生き方を改められない。
ジェイはずっと呪縛に囚われ続けている。
さっきだってそうだ。
何故、呼延光を相手にいきなり仕掛けるなんて愚を冒してしまったのか。
予知をおこなえば、ナイフが刺さらない相手だということは看破できたはずだ。
本条なるバケモノに相対しても、戦術も何もなかった。たまたま予知で命を拾っただけ。
予知通りに、あのままバケモノの一部として終わりを迎えてもなんらおかしくはなかった。
ジェイは泣き言を振り切って、顔を上げる。
枷をはめて森の中をゆっくりと歩く、筋骨隆々の鉄仮面の男をジェイは見据えた。
■
(相変わらず不気味な野郎だぜ……)
バルタザール・デリージュ。
鉄仮面で素顔を覆い隠した、アビスの囚人でも極めて異質な男だ。
もし、初顔合わせだったなら、その風貌に呑まれて間違いなく腰が引けていただろう。
だが、幸いというべきか。
ジェイは彼を知っている。
ジェイは自由時間が与えられるほどの模範囚ではない。
致命的な事態をことごとく予知を使って避けるような小狡い男である。
しかし、長い囚役の中で、他の囚人と共謀する性分ではないことは看破されていた。
故に、無期懲役囚ではあるものの、運動時間や刑務作業における集団行動は赦されていた。
私語こそ許可されていなかったが、同じ無期懲役囚のバルタザールとは顔を突き合わせる機会も幾度かあった。
イヤでも目を引く男だ。
囚人の間でも看守の間でも、その素性についてはもっともらしいものから荒唐無稽なものまで、様々な説が流れていた。
スヴィアン・ライラプスという特任看守官の存在もまた、憶測を呼ぶには十分な要素だっただろう。
『ケッ、錆び付き仮面の野郎は専属メイド看守がついてて羨ましいぜぇ~。
俺も専属のメイド看守様に下のお世話をしてもらいてえよぉ!
おっと、あのババアのことじゃねえぞ。
フォンテーヌちゃんなら一人と言わず二人、いや、三人でもいっぺんに相手してやれるんだがなぁ~』
『ハァ~、テメェは分かってねえよ。何も分かってねえ。
あのメイド長看守様のツンと澄ましたお上品なツラを歪ませてよお、オホ声でヨガらせんのがいいんじゃねえか。
毎日キリっとした顔で規則を守れだのなんだのヌカしてやがるけどよお、あのツラの下にゃ、スケベな本性が隠れてんだぜぇ~?
錆び付き仮面の野郎を監視してたときもさ、内心じゃ強引にヤられちまう妄想でビショビショだったんじゃねえか?』
『ちげぇねえわ、グバハハハ!!』
などと、私語の禁止も超力による監視もすっかり忘れて盛り上がっていたガブリルと若頭の服役半年コンビは、
案の定フォンテーヌのところの妹に仲良く懲罰房にぶち込まれていたが、
だいたいそのような憶測はいくらでも流れていた。
ジェイも本人と言葉をかわしたことはないが、その立ち振る舞いを見れば推測などいくらでも頭に浮かぶ。
バルタザールが現れるとき、必ずお付きのように現れる専任看守のスヴィアンの存在。
共同作業終了時におこなっていた、監視の看守たちにねぎらいの意を示すかのような身振り。
ぼろぼろに擦り切れた囚人服ながら、襟や裾にまで気を配り、仕立ての良い服のように丁寧に着こなすその所作。
歩行一つとっても、美しい姿勢を維持して堂々と歩む。
そこには品格がある。
あれは確かな社会的地位を持ち、社交界にも名を連ねるような名家の出身だ。
ジェイ自身、かつては名家の名を背負っていた人間であるからこそ、それは確信に近いものがある。
スヴィアン刑務官との関係も、あれは刑務官と看守という関係ではない。
社長と秘書。主と使用人。あるいは、王族と臣下の関係である。
実際、刑務官の中にはお家騒動のゴタゴタに巻き込まれて収監されたのではないかという疑う者もあれば、
"アビスの申し子"の親族なのではないかという根も葉もない憶測をおこなう者もいたくらいだ。
そんなバルタザールの鉄仮面の隙間から覗く目。
一度だけ視線が交わったことがある。
人生に満足し、穏やかな余生を受け入れた老人のように、安らぎを湛えた目だった。
その武骨な外見とはかけ離れた穏やかな目を、ジェイは覚えている。
それを思い出したとき、ジェイの思考が、激情に支配された。
バルタザールとジェイは、同じ23歳で収監された。
名家の出から一転、無期懲役囚として、死ぬまでアビスで暮らす身だ。
ジェイは没落してからも再興を夢見て鍛錬だけは欠かさなかった。
けれども、アビスへの収監は彼の心を折るには十分だった。
収監後、すべてに絶望したジェイは鍛錬にも身は入らず、全盛期と比べれば体力も気力も見る影もなく衰えた。
外見は実年齢以上にくたびれてしまったというのに、心はいまだに10代後半の黄金時代の幻影を追い、現実に引き戻されてはうずくまっている。
バルタザールは収監後も鍛錬を欠かさなかったのだろう。
50を過ぎても、いまだ精悍な肉体を保っている。
けれども寡黙で落ち着き払った態度は、閉ざされた未来をありのままに受け入れ、己の人生に満足しているように思えた。
言葉をかわすところを見たことはないが、担当刑務官の老婆と共にアビスに骨をうずめることを受け入れているように思えた。
ただ一人で過去を後悔し続けるジェイとは隔絶した、満たされた人生に思えてならなかった。
――どうして俺とアイツはこんなに違う?
赤の他人でありながら、そんな泣き言を考えずにはいられなかった。
同じ転落人生でありながら、バルタザールのあの穏やかな目は、己が惨めさを感じられずにはいられなかった。
それとも、いつか自分もあのような老人になってしまうのだろうか。
そう思うと、それもまた、たまらなくイヤだった。
バルタザールには絶対に負けられない。
自由という光を求める自分が、アビスに適応して外に出る気概を失った老人に敗れるはずがない。
敗れてはならないのだ。
(不気味なのは見た目だけだ。
あの鍛え上げられた身体だってハリボテに違えねぇ。
あんな枯れた野郎に俺が負けるわけがねえだろうよ!)
ジェイの超力『透明の殺意』は、見えないナイフを手の上に出し、自由に操作する超力だ。
2秒程度で消失するとはいえ、その最高移動速度はおおよそ150kmにも及ぶ。
本来は手といわず、遠く離れた空間にノータイムで出すこともできるのだが、15年のブランクは腕を鈍らせてしまった。
しかしそれでも、ただのナイフよりは切れ味も取り回しもずっと優れている。
頭をすっぽりと覆う鉄仮面によって、バルタザールの頭部や頸動脈への斬りつけは意味をなさない。
狙うは心臓、その一点のみ。
プロ野球選手がその肉体だけで時速320kmを超える投球をおこなう現代社会において、時速150kmというのは特筆した速さとはいえない。
しかし、この速度で飛んできたナイフが心臓に刺さろうものなら、いとも簡単に生命機能は停止してしまうだろう。
ジェイのナイフは不可視のナイフだ。
避けられない。避けられるはずがない。
チャリンと※う高い金属音が響き、ナイフの軌道がずれた。
――なぜ?
なぜ狙いがずれた?
なぜ空中で弾かれた?
ジェイはワケが分からなかった。
理由を探るために目を凝らしてバルタザールの周囲を見つめ、ようやく細い糸のようなものが張り巡らされていることが分かった。
極細の鎖をセンサーのように張り巡らせ、周囲を探っていたのだと理解した。
りんかと紗奈を取り逃がしたことで、力押しだけでは先がないとバルタザールは判断。
貴重な時間を割いて、ネオ※の練度を高めていたのだということをジェイは知る由もなかった。
それはただ焦燥のままに次の獲物を探し、さび付いた腕前のままに次に挑んだジェイにはたどり着くはずもない考えだった。
バルタザールがその鉄仮面の奥から、ギラつくまなざしでジェ※を見つめているような気がした。
そこには、かつて見た余生を過ごす老人のような穏やかさは微塵もない。
自由を求める貪欲な光が炎のように揺らめいている。
ジェイはその鋭い眼光に、押しつぶされそうな息苦しさを感じていた。
生への渇望ですら、足元にも及ばないように感じられた。
(お、落ち着け……!
まだ俺がここにいることはバレてね※んだ)
ジェイは大木を背に、必死で息をひそめる。
じゃり※りり、と鎖が冷たく鳴り響いた。
音は自分の腹のあたりからだった。
目を向けると、細く長い鎖が木の後ろから蛇のように伸びてきて、ジェイの腹を大木に括りつけていた。
見れば、ジェイのいない物陰にも鎖は伸びて※た。
そのうちの一本がジェイを捕らえた。それだけの話だった。
――しくじった!
そう思ったときには何も※もが手遅れだった。
ゴッと鈍い音がして、木の幹が震えた。
ジェイが括りつけられた大木の幹は、その半ばほどから食い込んできた鉄球によってあっけなく貫かれた。
ジャリ※ャリと鎖がこすれ合う音が響き渡り、まるでナイフで絹を※くように、鉄球は大木の幹を布切れさながらに引き裂いて落ちてきた。
木くずが舞い散り、粘り気のある樹液がジ※イに降り注ぐ中、大木は※惨に割れていく。
鉄球の勢※は露ほども衰える※とはなく、ジェ※の肉※を、彼が潜むそ※大木ごと、容赦※く叩※割※た。
【※ェイ・※リッ※ 死※※
←Reverted
■
己の軽挙の顛末を見て、冷や汗がつーっと流れた。
バルタザールはゆっくりと歩いており、まだジェイには気が付いていない。
もう失敗は許されないと、行動を起こす前に予知をおこなったのが功を奏したのだ。
バルタザールの周囲をよく観察する。
鎖のセンサーの密度はさほど高くはない。
集中すれば、十分すり抜けられる密度だ。
なのに。
なのに、ナイフを投げられない。
行動に起こせない。
完膚なきまでに敗北するイメージがジェイの心中を覆い切った。
死を恐れているのか。
実力差をはっきりと突きつけられることに怯えているのか。
崖っぷちに立っていることを自覚したことで、魂が委縮しているのだろうか?
――それとも、決して勝てないという未来でも感じ取っているのだろうか。
息が乱れ、体内をかき回すように渦巻く。
不可視のナイフを持つ手が震え、狙いすら定まらなくなる。
予知した未来では、あれほど恐れ知らずに行動に移せたのに。
ふと、バルタザールの鉄仮面がジェイのいる方向を向く。
ドクン、と、鼓動が鮮明に聞こえた。
――気付かれた!
脈動がゆっくりと感じられる。
自分だけが時間から切り離されたかのように、すべてが緩慢となる。
死を眼前に突き付けられて、脳の信号が極限まで研ぎ澄まされ冴え渡る。
その一瞬だけ、ジェイの動きは全盛期を彷彿とさせる美しい型を取り戻し、導かれるままに三本のナイフを解き放った。
それは開闢以降、最も冴え渡った会心の出来だった。
ナイフのうちの一本がバルタザールの鎖をかいくぐり、心臓へと吸い込まれていく。
ジェイの口角が少しだけひきつった。
勝利の証として高らかに吊り上がるはずの笑み。
しかし、卑屈に笑ってきたジェイは、勝利の笑みの形を為せなかった。
そして、そのひきつった笑みが絶望の形へと変わるのに時間はかからなかった。
金属が金属とぶつかり合い、甲高い音が響き渡った。
バルタザールが囚人服の下に網み込んでいた鎖帷子がナイフを無情にも弾いていた。
予知の中で見た自由への渇望に満ちた眼光が、死を導くそれが、ジェイに再び向けられた。
ジェイは駆け出した。
わき目もふらず、振り返ることもせず、ひたすら前へと駆け抜けた。
鎖の音が聞こえた。
後ろでジェイが背にしていた大木が、引き裂かれる音がした。
予知で見た、死の音が森の中に響き渡る音がした。
駆けて駆けて駆け続けた。
駆けるごとに、ジェイの中から自信が欠け落ちていった。
いつしか、森を抜け、平原に足を踏み入れ。
鎖の音は聞こえない。
近くに人の気配はない。
ジェイは知る由もないが、一連のジェイのアクションはバルタザールにとっても十分脅威だったのだ。
まっすぐに心臓を射抜いてくる技量を持ちながら、その後の逃走はあまりに拙劣。
まるで処刑場へと誘い込んでいるとしか思えないその動きは、バルタザールの警戒心を強めるには十分であった。
バルタザールはジェイを追わなかった。
ジェイは再び命を拾った。
■
追っ手を撒いたことを知る由もなく、ジェイは走り続けた。
息が乱れ、思考がまとまらない。
ちょうど佇んでいた奇妙な黒い奇岩にもたれかかるようにして、ジェイは腰を落とした。
「俺は、俺はまだ……」
屈辱と惨めさで呂律がまわらない。
わずかに残っていたプライドがずたずたに引き裂かれ、冷たい風に吹きすさんで散っていく。
それでも。
――あなたはいつか、大きな偉業を成し遂げるわ。
――だから腐らず、前を向くのよ。
「はは、あんなにくだらねぇと思ってたってのに……」
いつかの予言で聞いた、いずれジェイが成し遂げる未来。
ジェイは未だ何事も為さず。
予言を信じるのならば、ジェイの人生にはまだ先がある。
あまりにも情けない理屈だ。
だが、かつては鼻で笑っていたそれが、皮肉にもジェイが立ち上がり続ける柱となっていた。
「俺はまだ、立ち上がれる……」
割れた心をかき集め、つなぎ合わせて、前を向ける。
地に手をつき、立ち上がる。
ぬるり。
「!?」
地面にぶちまけられていた液体に迂闊に体重をかけ、ジェイは手を滑らせてしまった。
背にしていた岩から流れ出てる粘っこい正体不明の液体。
目を凝らして岩をよく見ると、潰れて液体を垂れ流す数万もの眼と目が合った。
――岩じゃない!
すぐに悟った。
これは生物だと。
黒光りする巨大な甲虫の死体だと。
ジェイの実力では到底討伐できない怪虫の死骸だと。
ジェイの手にべっとりとついたのはその怪虫の血だ。
そして、血は未だどろりと流れている。
ジェイの背筋が冷たくなる。
こいつは今死んだばかり。
つまり、殺したやつがそばにいるのだ。
ジェイは慌てて周囲に目を走らせた。
誰もまわりにいないはずなのに、猛烈にイヤな予感が頭の中を駆け巡っていた。
右を見ても影一つなく、左を見ても遠くに深い森が見えるばかり。
きっと気のせいに違いないと自分を納得させ、正面へと目を戻したその瞬間――そこにそいつはいた。
「藍の瞳に、青の瞳。
藍の瞳に、青の瞳。
……ふふっ」
その女は、ジェイの真正面にただ立っていた。
ジェイの真正面から、誰もいなかったはずのジェイの真正面から、まっすぐとジェイの目を見つめていた。
夜の闇を背に、黒いドレスに身を包んだ彼女の肌は、月光を浴びて白く輝きを放っていた。
けれど、その目だけは夜闇よりも、漆黒のドレスよりもなお暗く、ジェイの魂を引き込むかのような黒だった。
そして予想通り、首輪には『死』という一文字が冷たく刻みこまれていた。
「~~~!!」
ジェイは声にならない悲鳴をあげた。
「ねぇ、ねぇ、ジェイ? 驚いた顔がとても可愛いと思うわ。
その手につ※てる液体、いったいなんなのだろうと※も考えてるのかしら?」
「テ、テメッ、な、なんで俺の名前知ってんだよ!?」
そして女はジェイの問いかけを聞くと顔を綻ばせた。
それは笑顔※あった。
新しい素材を前にした狂気の科学者が、新たな実験の喜びに顔を綻ばせるような、そんな屈託のない笑顔であった。
一度も遭ったことのない女が旧い友のように名を呼んでくる。
それだけで、関わり合いになりたくない状況だ。
ましてや、ここはアビ※。
出会ったすべてが怪物揃い。
目の前の女もまた、本条のような得体の知れないバケモノだと理解するのに時間はかからなかった。
――はやく、逃げなければ。
そんな言葉がジェイの頭の中を埋め尽くしていく。
なのに、金縛りに遭ったよ※に、ジェイの身体は動かない。
たとえ落ちぶれた身だとしても、ジェイは暗殺の道に生きる者だ。
目の前の相手がどれほど※血の臭いを纏っているのか、それを見抜くだけの嗅覚はあるつもりだった。
だが、その嗅覚も錆び付いていたに違いない。そうであることを切に願った。
そうでなければ心が耐え※れない。
頭蓋の奥※鈍い音が鳴り響くようだった。
胸の奥に冷た※鉛玉が食い込むようだった。
息を吸い込んでいるのに肺か※空気が逃げ出していくようだった。
「――あ?」
そこで※うやく気付いた。
己の頭蓋と※臓には確かに穴が開い※おり、女の持つ銃から硝煙が揺ら※き立っていたのだと。
女は息※吸うかのごとく、自然な※作でジェイの命を奪い去っ※のだと。
欲しい玩具を前に※て屈託のな※笑顔を浮かべ※いたはずの女は、
不良品をつ※まされた※うな冷え切っ※視線で、ジェ※だったも※を見据えていた。
【※ェイ・※リ※ク 死※】
←Reverted
■
「うおおおおおおおっっ!!!」
ジェイは腹の底から吼えた。
死への手招きを振り払うように大声で吼えた。
泥にまみれることも意に介さず、頭から前方へ飛び込んだ。
受け身など顧みる余裕もなく、不格好に大地に口づけをするような転倒を喫した。
それでも勢いを殺さずに飛び起きると、ジェイは後ろを振り返ることもなく、ただただ走り続けた。
疲れた肉体を酷使し、死の運命から逃れるために、息も絶え絶えになりながら走り続けた。
女の黒い目。
底の見えない澱んだ黒い目が、後ろからジェイを見つめているような気がした。
吸い込んだ空気が唾液を伴って肺に入り込み、ゴホゴホと咳き込んだ。
ジェイは肺が破れそうなほどに息を切らし、膝に片手を付いて汗で濡れた顔を拭う。
「はぁ、はぁ……。クソッ!」
自分のぜぃぜぃという喘ぎ声に、ドクドク鳴る心臓の鼓動、それから吹きすさぶ風の音だけが聞こえる。
足音はない。気配もない。
追ってきていないのか?
そう思うと、全身を包む緊張が解けた。
代わりに安堵が身を包んだ。
逃げ切れたのだと。
「ここにゃ、バケモノしかいねえのかよ……」
身の安全を確認したところで、心に僅かな余裕が生まれ、毒づく。
このままでは恩赦どころか、生存すら危うい。戦略を立て直さなければならない。
息を静かに整え、膨れ上がる焦燥を胸の内に押し込める。
そしてもう一度、『やるぞ』と決意を新たに、ゆっくりと顔を上げた。
すぐ隣に、女がいた。
「ねぇ、ねぇ」
声が、耳元でささやいた。
汗がすっと体内に引っ込んだ。
もう視線を動かすことすらできなかった。
息をひくつかせることすらできなかった。
決意などとうに消え去った。
女は足音も気配すらもなく、やさしさを切り取って貼り付けたような作り物じみた笑みを湛えて、すぐ隣でジェイを見つめていた。
■
「バケモノという呼ばれ方は、いつまで経っても慣れないわ。
私には銀鈴という名があるの。だから、そう呼んでくれると嬉しいわ?」
誰もいないはずだ。けれど、確かにそこにいる。
涼やかな声とともに、濃厚なワインのような、アルコールの香りがほのかに漂ってくる。
ジェイの足は、ぴったりと地面に縫い付けられているかのように動かない。
ジェイが息を切らしているにも関わらず、銀鈴は汗一つかいていなかった。
わずかな呼吸の乱れすら見られなかった。
ジェイは、その白魚のような指が腹に食い込み、はらわたを引きずり出すのではないかと気が気ではなかった。
麻薬中毒者のように、視点が定まらず手が震える。
そんなジェイを見て、銀鈴はますます愉しそうに顔を綻ばせる。
「ねぇ、ジェイ。私、とても驚いたのよ。突然ジェイが大声をあげて走り出すんだもの。
まるで私が何をしようとしているのか、分かっていたみたい。
エドワードのように、ジェイも不思議な方法で私の心を覗いたのかしら」
――支離滅裂ではあるものの。
――ふざけるなと声を大にして叫びたく思ったものの。
予知で見た銀鈴の行動が、ジェイの中でつながった。
銀鈴はエドワードと会ったことがあるのだ。
だからこそ、ジェイの容姿と名前を初見で結びつけられた。
だからこそ、ジェイの予知を"確かめようとした"。
あまりにも迷惑な確認手段であったが、そういうことなのだ。
それよりも注目すべきことは、銀鈴はエドワードと会い、今は死刑囚としてアビスにいる。
正体不明の悍ましい存在に思えたが、それなら、難しく考える必要などどこにもない。
(へ、へへっ、なんだよビビらせやがって……。
エドの兄貴にアビスにぶち込まれたクチかよ)
タネさえ割れてしまえば、取り乱していた心も落ち着きを取り戻せる。
「私が国を興そうとしたときにね、GPAがそれを邪魔をしてきたわ。
エドワードはね、私を相手にとても勇敢に立ち回ったの。
441秒よ。441秒も、私から逃げ切って、20人もの人間さんを逃がしたの。
そんなこと、今までなかったから、少し興味を持っちゃってね」
ジェイの内心に気付かないのか、銀鈴は饒舌に話している。
エドワードはジェイとは隔絶した実力であった。
エドワードが勝てたからといってジェイが勝てる保証はどこにもないのだが、手も足も出ないバケモノではないということだ。
空元気とはいえわずかに気力を取り戻すには十分だった。
これなら、指先の震えもじきに収まるだろう。
――もしかして。
――もしかして今なら、不意を突けるのではないか?
そんな思考すら湧き上がってきた。
恐ろしい程の隠形技術だが、不用心にも自ら間合いに入ってきたのだ。
見え※いナイフを振るえば、一息に……。
ジェイは、ひそかにぐっと力を込めた。
次の刹那、ふわ※と白磁のような指が視界を横切った。
まるで舞い落ちる雪のように静かに、けれど確実に、その手はジェイの右手をそっと抑え込んでいた。
銀鈴の指先は、氷のよ※に冷たかった。
「……あ?」
そして、もう片方の指が、牙を剥いた白蛇のようにジェイの視界に飛び込んできた。
じゅぷり。
「あ゛、が…※っ!!」
視界が赤く染まった。
何か※抜き取られた。
「ジェイ?」
もんどり※つジェイに対※て、銀※が名を呼ぶ声はひど※酷薄だった。
「人が話して※るときは、きち※と聞くのが礼儀とい※ものよ。
それとね、よこしまなこと※考えていると、身体に表※てしまうの。もう少※上手※隠しましょう?」
その声が聞こ※るや※や、歯を割※なが※、硬い石が口に押し込まれた。
「あが、 お、ごっ! ごぼっ……」
「ねぇ、ねぇ、※ェイ? 私の言っ※こと、ちゃんと聞いて※?
ちゃんと返事をしまし※?」
鈴のように澄んだ清らかな音と、ぐ※ゃりぐちゃりと肉が潰れる濁った音が同時に耳に飛び込んでくる。
やがて振るわれる尖っ※石はジェ※の延髄を破※し、その視界は赤から※へと転※して、二度※戻るこ※は※かった。
【ジェ※・※リ※ク ※※】
←Reverted
■
指先の震えがいまだ収まらない。
考えてみれば、先ほどの話はおかしい。
441秒も逃げ切ったという言い方自体が違和感の塊である。
まるで、最後には捕まった、そんな言い方ではないか。
「逃げた子に追いつくことなんて造作もなかったし、エドワードを飛び越えることもできたけれど……。
せっかく勇気を出して私を誘ってくれたのだから、踏み倒すのは不義理よね。
そう思って、お誘いに乗ったのだけれど……あのときはとても驚いたわ」
10年ほど前から、ジェイに憎悪の目を向けてくる新入りの死刑囚がめっきりと減った。
兄が出世し、現場に出なくなり、直接犯罪者を捕らえる機会が減っただけかと思っていたのだが。
「だから、私は考えを改めたの。
『旧人類は等しく同じ』、そんなふうに思い込んでいたなんて、なんて浅はかだったのかしら。
そのときから私は、一人ひとり、じっくりと視て、"たのしむ"ことにしたの」
少し先の未来、容赦なくジェイの目玉を抉り取った指が、ふわりと宙に舞う。
ジェイにはその柔らかな仕草が、蝶の羽をむしり取って弄ぶような、限りなく残酷なものに思えてならなかった。
「例えばね、散り際は人間さんの個性が特に色濃く現れるの。
美火のように、恐怖に怯え、命乞いをする子もいるわ。
最期まで反抗的な子も多かったわね。
そして、エドワードのように、満ち足りた表情で静かに幕を下ろす子もいるの」
肉親の喪失を突き付けられたジェイの叫びは、言葉として形になることはなかった。
衝動のままに動いて、目玉を抉り取られる光景がフラッシュバックしたからか。
あるいは。
――今は雌伏のときなんだ。
――耐えろ、ジェイ。己を見失うな。
兄を意識したことで、彼の言葉を思い出したのかもしれない。
「ねぇ、ねぇ、ジェイ?
あなたはどんな顔を見せてくれるのかしら?
エドワードみたいに、死の間際まで諦めないのかしら?
それとも、彼以上の価値を示してくれるのかしら?
血のつながった兄弟なら、きっとすばらしい価値を見せつけてくれるのでしょうね」
銀鈴はジェイの兄を殺したことを告白しておきながら、恨みを買うことなど微塵も考えていないかのように、楽しげな声で話しかけてくる。
ジェイに興味を持っているのは確かだろう。
しかしその一方で、喉が渇いたときに水道から水を飲むような気軽さで、銀鈴はジェイを殺せる。
二度の予知の先で、羽虫を潰すように容易くジェイの命をもいだ光景はジェイの目に焼き付いている。
ネオスと予知はいまだ健在にもかかわらず、切り抜けるビジョンが浮かばない。
逃げることはできない。
もう試した。容易く追いつかれる。
殺すなど夢物語だ。
もう試した未来を見た。気付いた時には屠られていた。
ジェイは過去へ遡っているわけではない。
数瞬の内に数刻先の未来を視ているだけだ。
一度の挑戦権しか持たない者と比べれば破格の異能ではあるが、
決して正解を選ぶまで、何度も何度も挑戦できるものではない。
人間の皮を被ったバケモノ相手に100パーセント正解のコミュニケーションを取ろうなど、正気の沙汰ではない。
――くそ、やってられねえよ!
エドの兄貴の仇と叫んで、兄思いの弟として清々しく散るか?
いっそ、予知のことをぶちまけて媚びるか?
……仮に運よくここを切り抜けても、また価値観からして異なる怪物どもに出会うのだろう。
それならバケモノ同士で仲良く潰し合ってくれれば、とすら思う。
――――。
ふと、ジェイの心に閃きが灯った。
兄の語っていた言葉と、銀鈴の語る言葉が、事故のように合体する。
それはあまりに不義理だった。
だが、ジェイは再び前を向き直る。
すべてを呑み込み、ぎり、と奥歯を噛みしめると、不意に息を抜いた。
「はっ、そんなに俺の価値を見たいってんのかよ……」
ジェイはゆっくりと口を開く。
「だったらよ……。友達になろうや」
その言葉に、銀鈴は虚をつかれたか※ようにその目を丸くする。
「銀鈴だっけな。
あんたの興味が冷めるまで、友人になるって※はどうだい」
たとえ、それが虚勢から出た言葉だとしても。
たとえ、その言葉の裏で殺意のナイフを研ぎ澄ませていたとしても。
たとえ、その声がどうしようもなく震えていたとしても。
銀鈴に友人になろうと声をかけてきた人間は※めてだった。
「ふふっ……!」
喉の奥で、鈴を転がす様な笑い声が響く。
「ジェイ、声が震えているわ。
一体、何に怯えているのかしらね?」
ジェイのオッドアイの瞳が、僅かに揺れた。
そして、ジ※イを怯えの色が包む。無理もないだろう。
兄の仇に対して、命惜しさに友人になる※とを持ち掛ける浅ましさ。
"友達"という言葉の薄っぺ※さをいつ看破されるのかという冷たい恐怖。
「いいわ、人間さんの方からは※めてお友達になろうと持ち掛けてきたんですもの。
断るのは少しかわい※うよね」
いや、すでにジェイの思惑など見透かされ※いる。
その上で、弄ぶ※うに話に乗ってき※いるのだ。
「じゃあね、じゃあね、お友達になった証に、これ※あげる」
その冷たい手を通して手渡されたのは、一粒の飴玉だった。
何の変哲もない、た※の飴玉だった。
これ※、本当に切り抜けられたのか?
それ※らも、もうわ※らなかった。
最悪の結末だけは避け※れたらしい。
"友人"という、ひどく薄っぺらく、おぞまし※関係を持つことになっ※代償に。
←Committed
■
ジェイの色彩の異なる二つの瞳から、対称的な感情が覗く。
激情と安堵が交錯し、抵抗と諦観が、怒りと哀しみが絡み合う。
それでも家族からの言葉を支えに、ジェイは立ち上がった。
家族を裏切り、家族を奪われ、家族に支えられ、ぐちゃぐちゃな心を貼り合わせながら、ジェイは顔をあげて前を向いた。
口に含んだ甘い飴玉は、何の味もしなかった。
そんなジェイの中で煮えたぎる複雑な感情を目にして、
人の情を糧とする魔物のように、銀鈴は静かに唇を舌で濡らした。
【E-2/森/一日目 黎明】
【バルタザール・デリージュ】
[状態]:健康
[道具]:なし
[方針]
基本.恩赦ポイントを手にして自由を得る
1.(……しばし、ネオスの感覚を取り戻さなければ)
2.(なぜあの小娘(紗奈)を殺そうとした時、動けなくなったのだ?)
【E-3/草原/1日目・黎明】
【ジェイ・ハリック】
[状態]:疲労(大)、全身にダメージ(中)
[道具]:なし
[恩赦P]:0pt
[方針]
基本.生き延びる。チャンスがあれば恩赦Pを稼ぎたい。
1.銀鈴の友人として振る舞いつつ、耐え忍んで機会を待つ。
2.呼延光、本条清彦、バルタザール・デリージュ、銀鈴に対する恐怖と警戒。
【銀鈴】
[状態]:疲労(中)
[道具]:グロック19(装弾数22/19)、デイパック(手榴弾×3、催涙弾×3、食料一食分)、黒いドレス
[恩赦P]:4pt
[方針]
基本.アビスの超力無効化装置を破壊する。
1.ジェイで遊びながらブラックペンタゴンを目指す。
2.人間を可愛がる。その過程で、いろんな超力を見てみたい。
※今まで自国で殺した人物の名前を全て覚えています。もしかしたら参加者と関わりがある人物も含まれているかもしれません。
※サッズ・マルティンによる拷問を経験しています。
※名簿で受刑者の姓名はすべて確認しています。
※システムAに彼女の超力が使われていることが真実であるとは限りません。また、使われていた場合にも、彼女一人の超力であるとは限りません。
最終更新:2025年04月07日 21:47