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#8 名義貸し問題とその実例
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【コラム第8回】
管理人です。今回は馬主資格に関する最大の問題「名義貸し」について、いろいろ書いていこうと思います。
そもそも「名義貸し」とは?
つらつら独自の書き方をして誤解を招くことになってもアレですので、JRAホームページの「馬主情報」、「よくあるお問い合わせ 4.入厩(調教)」内の項目より引用させていただきます。
1.登録馬主が自分の馬主の名義を登録のない第三者に貸し、その者の所有馬を自己の馬のごとくに偽って競走馬登録し出走させること
2.馬主登録のない者と共同で馬を所有すること
3.一時的に借り受けた馬を登録し、競走に出走させること
これをやってしまうと、名義貸しを行った本人のみならず該当馬を管理した調教師まで重い処罰の対象となり得ます。個人で所有している馬を法人名義で走らせていたり、個人名義の所有馬を法人で会計処理していた、という場合も名義貸しです。名義貸しが判明すると馬主・調教師ともにゴタゴタが起こり、罪のない馬にまで汚名が着せられかねません。絶対に起こってはいけない事象です。3についてはよく一時的に他の馬主に名義が替わり、勝負服も変わっているというケースがありますが、それは大抵「当初から共同所有であり、代表馬主を変更した」ケースが多いと思われます。それ以外ではキチンと所有権の売買や譲渡の手続きが行われているということ(ただ馬を貸してるだけなら名義貸し)ですね。
ちなみに1997年からは、名義貸しを防止するために馬名登録や名義移転の際に念書を提出させることを義務付けるようになったようです(競走馬登録書類を見ると現在も存続しているみたいですね)。
これまでの実例
それでは、これまでJRAにおいて発生した名義貸し事案について、調べて分かった限りの実例を紹介していきます。なおばんえい競馬でも同様のけっこうヤバめの事案が発生していたこともありますが、今回の記事では中央競馬での事案に限って紹介させていただきます。
【1993年発覚】長田幸雄氏/野平富久師の事案
馬主の長田幸雄氏が馬主資格を持たない第三者に名義を貸しており、野平富久調教師(美浦)はその事実を知ったうえで該当馬を出走させていた。これにより両者には馬主資格、調教師免許を剥奪という重い処分が下された。このケースが中央競馬における「名義貸し」による初の処分事案である。
- 「名義貸しで長田氏と野平調教師を処分/日本中央競馬会」(読売新聞、1993年12月17日付)
【1995年発覚】鮫川三千男氏/調教師9名の事案
馬主(であり、カツラノハイセイコなどの生産者としても知られた)鮫川三千男氏が、1986年から1993年に渡って馬主の登録のない者の所有馬のべ60頭を出走させていた。鮫川氏は馬主資格剥奪の重い処分を下され、これらの競走馬を預託していた調教師9名(相川勝敏師、大和田稔師、仲住芳雄師、新関力師、西塚安夫師、二本柳一馬師【ここまで美浦】、伊藤修司師、荻野光男師、高橋直師【ここまで栗東】)には3-5か月間の調教停止処分が下された。
- 「JRA、名義貸し馬主抹消――9調教師は停止処分。」(日本経済新聞、1995年12月7日付)
- 「調教師9人を処分 馬主の名義貸し関与で中央競馬会」(朝日新聞、1995年12月7日付)
【1996年発覚】藤本照男氏/相川勝敏師の事案
GⅠ馬が巻き込まれてしまった、競馬界で最も有名な名義貸し案件。俗に言う「トロットサンダー事件」。馬主の藤本照男氏は資格剝奪、相川勝敏調教師(美浦)には2か月間の調教停止処分が下され、相川師は鮫川氏の事案に続き2度目の名義貸し案件ということに。詳細はWikipediaのトロットサンダー#名義貸し行為(1996年秋発覚)にて出典付きで詳しくまとめられております。
- 「競馬G1・2勝のトロットサンダーに別の所有者 「名義貸し」で馬主ら処分」(読売新聞、1996年9月28日付)
【1997年発覚】大井山栄治氏/武宏平師・島崎宏師の事案
馬主の大井山栄治氏が、1994年2月までの4年間にわたり馬主資格のない人物に名義貸しを行っていたことが発覚。大井山氏は資格剝奪、該当馬3頭を管理していた武宏平師には5か月間、島崎宏師には3か月間の調教停止処分が下された。
- 「馬主『名義貸し』の2調教師を処分/JRA」(読売新聞、1997年1月17日)
【2004年発覚】杉田勝二氏/土田稔師の事案
馬主の杉田勝二氏が、自身の所有でない競走馬を自己名義と偽り、土田稔調教師(美浦)がその競走馬を引き受け競走馬登録しようとしていた。この件に関して杉田氏に戒告、土田師には2004年7月29日から3か月間の調教停止処分が下された。
- 土田稔調教師、名義貸しで処分(netkeiba)
- 成績公報に掲載する制裁等について(平成16年度)(日本中央競馬会)
私が調査した中では、報道のあった中央競馬における名義貸し案件は以上となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。2000年代以降は報道で確認できる分にはほとんど見なくなってきた話ですが、水面下で行われていたりする場合にはこちらは知る由もない案件ですし、こればっかりは良心や道徳を信じるしかないなというのが率直なところです。馬を持つならしっかり資格を取りましょう。