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変わりたい少女達の話

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変わりたい少女達の話 ◆Z9iNYeY9a2



Lの依頼で暁美ほむらの遺体の状態確認に出立することとなったアリスと美国織莉子。
2人が出る少し前、まだ遊園地内で情報整理を行っていた辺りの出来事。

「不思議なものね、ポケモンという生き物は」

目の前に顕現した焦げ茶色の岩の肉体を持ったそれを見ながら、織莉子は呟いた。

ポケモンという生き物は進化という、一定条件下での様々な事象でその姿を変異させる特性があるという。
そして、サカキの遺したサイドンというポケモンもまたその特性を兼ね備えていた。

Lが所有していたプロテクターというアイテム、それはサイドンを進化させる際に必要となる道具だという。
本来であればそこから一定の道具を介しての他人の手への譲渡という行為も必要なのだが、あるいはと思い持たせてみたところ、その姿が光と共に変化した。

元々サカキのポケモンであったサイドンに勝手に手を加えることに抵抗がないでもなかったが、Nやニャースが言うにはこれはサイドン自身の意思でもあったらしい。
主を失った時にあるいは自分にもっと力があればそうはならなかったのではないか、という思い。それが彼自身に力を求めさせる原動力ともなっていたようだ。

かくしてサイドンはより大きく、より岩のような肉体を持ったポケモン、ドサイドンへと進化を遂げた。

ダメージも薬を利用してほぼ回復。自身の状態と合わせてかなり万全の状態だ。

Lがアテがあると言っていた魔力回復の手段。無論それはソウルジェムなどではない。
渡されたものは、ピーピーリカバーという道具。ポケモンが技を使用する際に、そのエネルギーを回復させるために使う道具だという。
正直織莉子としてもこれを渡されたことには抗議しないでもなかったのだが、Lの考えはこうだという。
織莉子は技マシンを偶然使ってみてその技を習得した。それを自身の魔力を用いて使った。
すなわち、ポケモンが技を使う際に使用するエネルギーは魔法少女の魔力に近いものなのではないかという仮説だ。であればこれで回復することも不可能ではないはず。

結果として回復は叶い、ソウルジェムはかなりの輝きを取り戻したのだが。
織莉子としては空腹時にドッグフードを食べた人間の気持ちを理解した気がしてしまった。



ともあれ、あとは同行者のアリスの都合を見て出発するだけ。

アリス。
暁美ほむらの同行者であり、その彼女を実質手に掛けた自分は彼女にとっては仇ということになるはずだろう。
なのにこうして同行することにも特に顔色一つ変えることなく了承した。

不思議な子だと思った。
もし立場が逆であったなら、少なくとも自分にはそこまで割り切って考えることなどできないだろう。
実際に自分はキリカを殺したセイバーには未だわだかまりを残しているのを、彼女とは関わらないことで誤魔化している。

ほむらの件もあり接触はあまり望ましくないと考えていたが、こうしてみると興味が湧いてくる。
せっかくの機会でもあるし、少し彼女の人となりを知っておくのもいいだろう。

そんなことを考えていた時、ようやくアリスが出発のための待機場所としておいた遊園地の入り口に現れた。

その手に真っ黒な毛並みの猫を連れて。

「その猫は?」
「ここに来てからずっと一緒にいたんだけど、ほむらが死んだ時にあの子の傍に居たがってたみたいだから置いてきてたのよ。
それがちょっとここの中で見かけたから追いついてきたんだって思って捕まえてきたの」
「…そう」

ふと、その猫を凝視する織莉子。
その瞳は、細く鋭い視線を猫に向けていた。




遊園地から暁美ほむらの遺体を安置した場所まではそれなりに距離がある。
無論アリスの能力を使えばすぐなのだろうが、それでは織莉子やポッチャマは連れて行くことができない。
まだゼロの生存が確認されている以上下手に単独行動は危険だろう。
そうして、アリスはポッチャマを伴い、猫を抱きかかえた状態で織莉子の隣を歩いていた。
ポッチャマは歩かせて猫を抱きかかえているのは聞き分けがあるかどうかの問題だとか。

道中歩む二人だが、その歩みは静かなものだった。
元々人付き合いの少ない二人、あまり会話に華を咲かせるような柄でもなく。
まあ敢えて言うなら、織莉子は他人に拒絶され、アリスはその気性から人を遠ざけがちという点で違いはあった。
そして、その違い故か、先に音を上げたのはアリスだった。

「…なーんかこの空気嫌なんだけど」
「あら、もっと賑やかに過ごす方が好みだったかしら?」
「そこまでは言わないけど、あんたが出してるお高く止まって他の人たちのことを気にしてません、みたいなそういう空気よ。
流石に面と向かってその雰囲気出されたらちょっとクるわ」
「…そんな空気、出してた?」

アリスの言葉に、織莉子の脳裏をふと過ぎる人物がいた。
もはや織莉子にとっては意味を無くしていた学校生活。父の一件以降多くの人が自分のことを遠巻きに避ける者ばかりの中で、たった一人面と向かって話しかけてきた少女がいたことを。

「一ついいかしら。あなた、いわゆるお嬢様系の同級生に対して邪険に扱われてるってことない?」
「え、何で分かったの?」
「いえ、何となくよ。
いいわ、お話をしてあげる。聞きたいこと、なんでもどうぞ」

アリス側からするとほむらの一件でわだかまりを感じている様子ではあるが、実際のところ織莉子としてはアリス本人にはそこまで悪印象はない。
たった今思い出した、そのかつて同級生でもあった一人の少女と同じような印象だ。

それでも突き放そうという印象を出していたのであればそれは自身の問題だろう。

「あんた、世界を救うために鹿目まどかを殺す、って言ってたわよね。
どうしてそんなことをしようとしてるのよ」

いきなり核心近くに迫ろうとするアリス。
本来であれば答える義理はないし答えるわけにもいかないことだが。

チラリ、と視線を下げ、少し思案した後応える。

「それが私の成すべきことだと、そう思ったからよ」

おそらくアリスが聞きたいのはそういうことなのだろうと。

「あなたは私がお高く止まっていると言ったけど、実際私はそうだったんでしょうね。
政治家の父を持ち、それに私も恥じないように努力を続けて自分を磨いてきた。だからたくさんの人に尊敬された、そう思っていた。
だけど、その父が汚職の疑惑を受けて自殺して、それ以降皆が私を見る目が変わった。まるで厄介者を扱うかのように見られるようになっていった。
私は絶望したわ」
「手のひらを返した周囲の人間に?」
「いいえ、その周囲の人間に父を通してしか見られていなかった、美国織莉子個人じゃなくて優秀な父の娘としてしか見られていなかったことによ」
「………」
「私は何故生きているのか、私の価値はどこにあるのか、知りたかった。
それで契約した私は、この未来視の能力で見たのよ。世界が滅びる未来を」
「…なるほどね。だいたい分かったわよ」

あくまでも受けた印象の話だが、確かに彼女とほむらは相容れないものだろうとそう感じた。
そして、その根幹に近しいものがあるようにも。

「ねえ、私なんかが聞くのもちょっとおこがましいかもしれないんだけどさ。
あんたたち魔法少女ってそういう、何ていうかこうもっと真っ当な生き方をしてる人っていないの?」
「どうかしらね。私の知る限りだと、千歳ゆまは親に虐待されてたし、キリカもどこか壊れているっていう感じだったし。
まあ探せばいるかもしれないけど、奇跡を求める子なんてそんなものだし、そういう子を狙うのがキュゥべえのやり方なのよ」
「ふぅん…」

相槌を打ちつつも、アリスの中には一つの気持ちが芽生えていた。
この魔法少女をもっと気にかけなければならないという思い。
もしかするとそれは、この魔法少女と話す中で感じた、どこかしらほむらに似通った雰囲気のせいだったのかもしれないし。
あるいは彼女の絶望の中に、かつて守ろうとした少女に重ねていた想いに最期の時まで気付けなかった引け目からくるものだったのかもしれない。

「さて、じゃああなたの話を聞かせてくれないかしら?私ばかり話しているのも不公平よ」
「…別に面白いものでもないけどね。元々私って、戦争孤児だったのよ」
「………、いきなりハードな話ね」

戦争に巻き込まれ家族を失ったこと、その後ブリタニアの特殊部隊の一員となって実験の末にギアス能力を得たこと。
アリス自身には自覚がなかったが曲がりなりにも戦争のない平和な国で多くの時を過ごしてきた織莉子には刺激が強い話だったようで、織莉子の顔色が若干曇っていった。

「…あなたはそんな世界をどうにかしようとは思わなかったの?」
「力を持ったって、逆に世界の広さを思い知らされるだけだったもの。
それに、妹一人守りきれなかった私が世界なんてどうにかできるわけがない。
ただできたのは、私が大切だと思った人の世界を守りたいってことだけ」
「それで、守れたのかしら?」

正直、これは織莉子自身意地の悪い問いだと思った。
アリスが守りたかった少女は既に放送で名を呼ばれている者だった。
この問いかけではまるでその気持ちに鞭を打とうとしているかのようにも見えたかもしれない。

「…私ね、ナナリーの最期を見届けた時に言われたの。
自分を殺した相手、間桐桜って子に、もっと綺麗で素晴らしい世界を見せてあげて欲しいって。
ナナリーがあの子と何を話して何を知ったのかは分からない。
だけどナナリーの想いだけは叶えたいし守り抜きたいって思ってるから。あの子のために」
「全く、何で戦争で戦ってたような兵士の子が、そんなものを信じられるのかしらね」

織莉子には、優しい世界など信じることができなかった。
世界を救おうとしているといっても、それは自身の願いのため。救う価値があるか、といった類のそれは別に当たるものだ。

アリスのそんな点は羨ましいと思うところがあった。

「だったらさ、探してみればいいんじゃない?
あんたのことを知らない人ばかりのところに行って、色んなものを見たりして」
「そうね。その時に私の世界が滅びていなかったら、ね」

一瞬絆されそうになった織莉子だったが、そこは譲ることができないものだった。
例えここにいる鹿目まどかをどうするかに猶予を与えたとしても、滅びが見えた世界にいる住人としてそれだけは譲ってはいけない部分だった。


ともあれ織莉子としては彼女の人となりを把握できた。
強い意志を持ち、大切なものを失って尚も正しくあろうとしている。

ならば、彼女は今から自分がしようとしていることに対しどう反応するだろうか。



遊園地から離れてそれなりに時間が経つ。
草地を抜けて、地面は砂で舗装された道がポツポツとある程度。
見晴らしはあまり良くはない。高低差が数百メートル感覚であるのか、地平線までは見えない。
しかし周囲に障害物はない。小さな生き物が隠れられるような場所も、無論ない。


「ねえ、アリス。あなたのバッグに入っている水を貰ってもいいかしら?私の分、ちょっと切らしてしまってて」
「え、水?もっと早く言ってよ。遊園地出る前とか……よいしょ、っと」

織莉子の頼みに、猫を地面へと置いてバッグに手を突っ込むアリス。

アリスの視線が反れた一瞬、織莉子の瞳の色が変わる。
その瞳は魔力を費やし、ほんの少し先の未来を見る際のもの。

「ん?織莉子?!」
「ギニャッ!!!」
「ポチャ?!?」

織莉子は作り出した水晶を猫に向けて射出。
しかし猫はギリギリのところで回避。同時にアリスは魔力の気配を感じ取って織莉子の方へと向く。

「ニャアッ!!」

慌てて猫はアリスの腕の中へと潜り込む。

「織莉子!あんた何してんの!?」
「…どきなさいアリス。その猫、ただの猫じゃないわ」
「どういうことよ」
「そもそもあなた、おかしいとは思わないの?そのポッチャマや私の連れたサイドンのようなポケモンでもないただの猫が、支給品に混じってこんなところにいるのよ?
それも今現在誰もその出処を知らない、誰かのものでもない猫が」
「それは、ただのハズレの品ってだけじゃないの?」
「ええ。だとすれば私としては邪魔になるだけ。あなたには悪いけど、ここで処分させてもらおうと思ったのよ」

アリスがその行動に抗議しようと口を開くより早く、畳み掛けるように織莉子は言葉を続ける。

「今、私は確かに見たわ。その猫の体を砕く未来を。
だけど、その猫は私の攻撃を確かに回避した。
私はこれまで色んな未来を見たわ。ポケモンの攻撃や、サカキさんのニドキングの死も。全部例外なく当たった未来よ。
何故その猫だけ例外なの?」

アリスの猫を見る目に、僅かに疑惑が混じり始めた。

織莉子の言葉にはハッタリが含まれている。そもそも未来に誤差が生じたことはこれまでに全く無いわけではなかった。
もしかすると先の一発は偶然その誤差を引き当ててしまっただけの可能性もある。

しかしそれでも疑惑を強め、アリスにもそれを伝達していけば、猫に対する対応も変わるだろう。
例えば、もし猫に意志があったとしたらどうだろう。

「猫、もし答えられるのなら私の呼びかけに答えなさい。
答えないというのなら、このままこの猫は殺させてもらうことになるわ」

猫がゆっくりとアリスの手から降りる。
抱きかかえていたアリスの腕も、今の織莉子の疑いの言葉からあっさりと解ける。

逃げ場はない。離れるよりも織莉子の水晶が体を撃ち抜くのが早いだろう。そのためのこの遮蔽物のない場所だ。
しかし、猫は数メートルの距離をとったところでこちらに振り返る。

その瞳は、織莉子に見覚えのある赤い色をしていた。

「全く、やはり君という人間を少し見くびっていたみたいだよ、織莉子」
「…?!」
「やっぱり、というほど想定はできていなかったけど意外というほどでもないわ。
――――やはりあなたが関わっていたのね、キュゥべえ」

驚くアリスを尻目に、脳内に直接話しかけるかのような声に応える織莉子。

キュゥべえ。
その名はアリスもほむらから聞いている。年頃の少女に契約を迫り魔法少女を生み出す存在。
しかし、何故それがここにいるのか。

「ちなみに意外ってほどじゃないとは言うけど、君は最初からそう思っていたわけじゃないよね。いつからそう思っていたんだい?」
「Lに主催者は鹿目まどかと私の関係を知っていると言われた時よ。正直そこに意識が向かなかった私を罵倒したいくらい。それだけならまだ確証ってわけじゃなかったけど。
ついでに言うならあなたに呼びかけたのもカマかけのようなものだし」
「やれやれ、僕はまんまと誘き寄せられた、ってところか」
「…あなたは」
「はじめましてだね、アリス。僕の名前はキュゥべえ。ほむらが随分と世話になったみたいだ」

悪びれることもなくアリスに自己紹介をするキュゥべえ。
織莉子は早足で猫に歩み寄り、その首を掴んで逃走を封じる。

「逃げはしないよ。じゃなきゃこうして出てきたりはしない」
「ほむらは知ってたの?あんたが、黒猫がキュゥべえだって、最初にあんたを見た時から」
「たぶん気付いてはいなかったんじゃないかな。ほむらはどうも鹿目まどかとの思い出の中に一匹の黒猫がいたみたいだから、それとこの体を重ね合わせたんだろう」

つまりキュゥべえは意図せぬこととはいえほむらの思い出を利用していたということか。
それを悪びれることもなく淡々と言う姿には怒りを覚えずにいられないアリスだったが、ほむらが知らなかったのであれば織莉子にはそれ自体はどうでもいいことだった。

話を進めていく。

「それで、こうして出てきたということは話してもらえるんでしょうね。あなた達が何をしようとしているのか」
「まあ生存者もだいぶ減ってきたし、知っても問題ない頃合いだろう。話せる範囲のことなら教えてあげるよ」

「まず殺し合いの理由についてだけど、大筋はシロナが言っていた、アカギの目的のためで正解だよ。
彼の望む世界を作るために僕やもう一人の協力者の力で皆に戦ってもらって、因果を結び合わせ、集まったエネルギーをもって世界を作り出す。
それが殺し合いの目的だよ」
「そのために鹿目まどかを犠牲にしてもいいの?」
「彼女の力は確かに前代未聞だ。だから僕としてもまどかが生きていてくれればそれに越したことはないんだけど、儀式の過程で命を落としてしまうならそれはそれで仕方のないことさ」
「私をその中に混ぜたのは意図的なもの?」
「因果を結ぶ、それは同じ軸に存在しながら異なる世界にいる者たちのものを絡ませ合うことでより大きな力となる。
その点ではまどかと深い縁を持つ君の存在はいいものだったよ。
少し手の力を緩めてくれないかな。子機が壊れたら僕の言葉も届かなくなる」


猫を放り投げる織莉子。これ以上掴んでいれば握りつぶしてしまいかねなかった。
同時にアリスがポッチャマに指示を出し、水の渦に包み込むことで猫の移動を封じた。
壁が音を遮りかねないものだが、テレパシーで話しかけてくるこの生き物には不要な心配だった。

「やれやれ、ここまでしなくても話が終わるまでは逃げはしないのに」
「話を続けるわ。ならキリカやほむらが魔女にならなかったのはあなた達の仕業ね?」
「そうだよ。魔女となってしまうとその魔法少女の因果自体を全て消費しきってしまう。
意志も持たないただの化物には、そこから因果を生み出し結ぶことなんて起こりえない。そんな存在にせっかく集めた参加者を浪費されてはもったいないからね」
「なら、何故巴マミは魔女になったの?」
「それは正直想定外だったんだけどね。言ってしまうと暁美ほむらのせいなんだよ」
「…どういうこと?」
「彼女は元々多くの並行世界を渡り歩いていた。君の世界もその一つだったんだろう。
この会場には並行世界を自身の経験・能力で集められる前から明確に認知している者はそうはいない。そうした者達は参加者の中でも特異点と呼ぶにふさわしいほどの因果を備えている。
その彼女が死んだ時に、どうやらその因果が解放されて会場に少なからぬ影響を与えてしまったみたいなんだ」
「そんな言葉を信じると思っているの?」
「信じる信じないは君たちの勝手さ。ともあれ僕に言えるのは、これからはある程度君たちにかけた枷が外れた状態での殺し合いになるってことだ。
もしかすると君がソウルジェムを濁りきらせた際には魔女を生み出す可能性もある」
「あなたの言葉が真実と仮定して、一つ聞くわ。何故それを私達に説明したの?」
「ほむらの体を僕たちがその現象を起こした事実に対する研究材料として回収したからだよ。
もし君たちがほむらの死体が無いことに気付いたら彼女の生存、ないしは放送内容の真偽自体を疑い始めるだろう?
それは流石に進行に差し支える。例外中の例外な事態だ、ある程度の説明はしておくべきだと思ってね」
「そう。分かったわ、それじゃあ、死になさい」

一通りの情報を引き出し終えた織莉子は、水晶を猫へと向ける。
放たれれば、猫の体を粉々に打ち砕くことだろう。

「待って。私からも一つだけ聞かせて」

しかしその織莉子の殺気を止めたのはアリスの声だった。

「あなたは言ったわね。世界を創造するエネルギーを集めるために殺し合いをしてるって」
「まあ、それはアカギ達のものであって僕の目的はそうじゃないんだけどね」
「なら、最後の一人になったらどんな願いも叶えるって言葉、あれは嘘だってこと?」
「嘘じゃないさ。最後の一人にさえできたならば世界を創造する因果も携えられたってことだ。
ならその副産物として、その一人が持つ願いを叶える程度のことはしてあげられるよ。
もし信じられないというならこう考えてもらったら良い。
僕たちは魔法少女が契約時に生み出すエネルギーを奇跡に変換している。それの応用がより大規模にできるものだってね」
「そう、それを聞いて安心したわ」
「そうかい。じゃあ、そろそろ話も終わったことになるし、僕を――――」

キュゥべえの言葉は最後まで口に出されることはなかった。
織莉子の目に届かぬ速度で自分の後ろからキュゥべえの背後までいつの間にか移動していたアリス。
そして猫のいた場所は黒いエネルギーの渦のようなものがあり、猫の姿は掻き消えていた。
エネルギーの出処を魔力探知で探ってみると、それはアリスの手の内から放たれていた。

「…あなたが無差別に人を殺めるような人じゃなくて本当に良かったと思ったわ。私の未来予知も追いつかないんだもの」

アリスが魔女の力を受け継いだ際に得た力の副産物、対消滅攻撃によりキュゥべえの変化していた動物は完全に消滅していた。

「でもよかったのかしら。正体はどうあれ一緒に行動していた動物だったんでしょう?」
「これは私自身のけじめみたいなものよ。ずっと一緒にいて気付けなかった愚かな自分の、ね。
ああ、でもやっぱり癪に障るわね。ほむらもずっとあいつに騙されてたってことだし」

目を細めながら言うその言葉の端々には怒りが感じられる。
ただ、織莉子はふとその点においては僅かに疑問を持っていた。

元々鹿目まどかを殺すための最大の障害として警戒対象であったほむら。
実際に顔を合わせたのはこの殺し合いの場が初めてであったが、いくら思い出を利用されたと言っても果たしてあの子が本当に最期までこの猫のことに気付かなかったのだろうか。
この疑問自体、織莉子のほむらに対する評価が間違っていなかったということを言いたいだけのものであり根拠があってのものではないのだが。

故に口に出すことはしなかった。

「それで、あんたはどうするのよ。こんな話を聞かされた後だけど」
「別に、行動としてはどうもしないわよ。ただ方針は少し変えさせてもらうことになるけど」

この場所で鹿目まどかを殺すことには意味はないのだろう。逆にLが言ったように主催者の思惑通りということになる。
遊園地を離れて尚も迷いがあった方針だが、ここに来てようやくそのやり方を飲み込むことができた。

ならば自分がするべきことは一つ。
ここから抜け出すために皆の力を借り、協力していくこと。

抜け出した後で鹿目まどかをどうするかは今は考えない。自分がここに連れてこられたことで今より良くなっているのか悪くなっているのかも今は意識しない。
ただ、キュゥべえの思惑だけは乗らないようにしたかった。

「さて、とりあえずポケモン城への道へと向かうのでしょう」
「そうね、だけど」

と、織莉子はふと空を見上げる。
そこには宙を飛ぶ巨大な戦艦の姿があった。
L達が乗ってくるという予定のアヴァロンであればここにいるのはルートがおかしい。きっともう一隻の斑鳩という方だろう。

「その前に、一仕事あるようね」

そして、織莉子の見る未来は、その戦艦から放たれる敵意をはっきりと捉えていた。



【E-6(斑鳩が視界に収まる位置)/一日目 夜中】

【美国織莉子@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:ソウルジェムの穢れ(2割)、魔法少女姿、疲労(大)、ダメージ(小)、前進に火傷、肩や脇腹に傷
[装備]:グリーフシード×2(濁り:満タン)@魔法少女まどか☆マギカ、砕けたソウルジェム(キリカ、まどかの血に染まっている)、モンスターボール(サカキのサイドンwith進化の輝石・ダメージ(大))@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:共通支給品一式、ひでんマシン3(なみのり)@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:何としても生き残り、自分の使命を果たす。
1:この殺し合いをどうにかすることを優先。
2:鹿目まどかに対することは後回し。
3:魔力回復手段が欲しい。
4:優先するのは自分の使命だが、他の手段があるというなら―――?
5:もっと他の人を頼ってもいい?
6:斑鳩に対し警戒。
[備考]
※参加時期は第4話終了直後。キリカの傷を治す前
※ポケモン、オルフェノクについて少し知りました。
※ポケモン城の一階と地下の入り口付近を調査しました。
※キュゥべえが協力していることはないと考えていましたが、少し懐疑的になっています。
※マジカルシャインを習得しました。技の使用には魔力を消費します。

【アリス@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:ダメージ(小)、ネモと一体化、喪失感
[服装]:アッシュフォード学園中等部の女子制服、銃は内ポケット
[装備]:グロック19(9+1発)@現実、ポッチャマ@ポケットモンスター(アニメ)、双眼鏡、 あなぬけのヒモ@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:共通支給品一式、
[思考・状況]
基本:脱出手段と仲間を捜す。
1:ナナリーの騎士としてあり続ける
2:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
3:今は美国織莉子と共にほむらの亡骸を調べに行く。その後ポケモン城へと向かう。
4:ほむら……
5:美国織莉子を警戒。しかし警戒心自体は少々軟化している
最終目的:『儀式』からの脱出、その後可能であるならアカギから願いを叶えるという力を奪ってナナリーを生き返らせる
[備考]
※参戦時期はCODE14・スザクと知り合った後、ナリタ戦前
※アリスのギアスにかかった制限はネモと同化したことである程度緩和されています。
魔導器『コードギアス』が呼び出せるかどうかは現状不明です。



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