アットウィキロゴ

主人公になれない少女達の話

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

主人公になれない少女達の話 ◆Z9iNYeY9a2



自分には友達といえるものはいない。
もし言えるものがいたとしても、通り過ぎた時間の中に全て置き去りにしてきたものだ。

そのはずなのに、何故だろう。
今目の前にいる少女とはとても親しい仲だったように思えた。

この日は、何かの記念日だろうか。まどか達への贈り物をするはずだったのに、それよりも優先して自分はこの少女に会いに来ていたようだ。

しかし目の前の様子は、ただ遊びに来た、などという状態ではなかった。

真っ赤に染まった衣服、濁りが止まらぬソウルジェム。

やがて、少女は語り始める。もう自分の運命が分かっていたのだろう。

その女の子は、自分が変わりたいと望んでいた。
しかし、魔法少女となっても、世界も自分も何も変わらなかった。

多くの人の中では特別な何かになれても。
魔法少女の中ではただのいち魔法少女にすぎない。

少女は血まみれの体で、1つの絶望に身を焦がしながらそれを実感していた。

いや、と少女は思い直す。
きっと変われなかったのは自分の方なのだ。
もしキュゥべえに「主人公になりたい」と、そう願っていれば、何か変われたのだろうか、と。

答えなど分からない。今その身にあるのは、絶望を抱えたまま、その生命を弱めていく愚かな魔法少女。

諦めないで、と私は叫ぶ。

だけど、結果は見ての通り。

目の前の少女は、絶望を撒き散らすだけの存在に変わり果てていく。

知らないはずの相手なのに何故だろう。その光景に、とても悲しみを覚えていた。




「………」

目を覚ます。
いや、そもそも今自分は眠っていたのか。

「…私、どれくらい寝ていた?」
「眠っていたのはだいたい10分くらいね」

小さなテーブルを挟んだ向かい側に座っているのは桃色の髪を左右に結んだ少女。

「アカギの気にでもあてられて疲れていたのかしら。
眠るのが嫌ならコーヒーでも飲んでおくといいわ」

監視役の少女、アーニャは自分の前に置かれているカップをこちらに出した。

「……」
「別に心配しなくても変なものは入っていないわ」

遠慮したいところだが、また意識が飛んでしまうのも避けたい。
かといって自分が入れ直すのも印象が悪い。別にそれ自体は構わないが、悪印象を残したままでは情報を引き出す際の空気に差し支えるかもしれない。
こういうところの不器用さはなかなか変われないのが自分でも鬱陶しい。

カップを口元に近づける。
ふわりと香ばしい苦味を含んだ香りが広がるのを感じる。その中には怪しい異物の臭いはない。
こっそりと魔法を使って強化した知覚で感じ取れない。臭いからは何もないものだと判断していいだろう。

カップを口につける。


「どうかしら?」
「…美味しいわ」

異物が体に入った感覚はない。ただのコーヒーだという判断は正しいだろう。

ゆっくりとすすりながら、意識が飛ぶ前までの記憶を整理する。




放送が始まる少し前辺りの時間。

軟禁状態の部屋に座り込むほむらの元に、アカギが来るということをアーニャの口から告げられた。
ほむらは、これはチャンスではないかという思いがあった。

アカギがどんな人物なのかは知らない。何が望みなのか、何をしようとしているのかもはっきりと知っているわけではない。
だが、人間である以上インキュベーターよりは信じることができるはずだ。
この場にインキュベーターはいない。もしも彼とのコンタクトを通して今の自分の力を売り込み、彼らと対等な立場として受け入れてもらえれば。
この寝言とも言われかねないほどに大きな、果てしない望みに対して希望が持てる。

果てしない望み。過去救えなかったまどか、未来にも救えないはずのまどか、その全ての救済。

この接触が、望みの成就への第一歩となる。
今思えば、この時の自分の中には若干の驕り、そして焦りがあったのかもしれない。

意図せずとはいえ強大な力を身に宿したことへの驕り、得体の知れない力で本当にまどかの救済が叶うのかという焦り。
相反する二つの感情を秘めたまま、アカギと相対した。

アカギを視界に収めたところで、それらを心の奥に仕舞い込んで如何にも余裕があるような口調で振る舞った。

「…そろそろ放送でしょう。こんなところに来ていいのかしら?」

時計を見てそうほむらが言った時、放送が始まっていた。
どうやら今回はアーニャが代理として行っているらしい。

放送を告げている間、アカギはこちらをじっと見るだけで何かをする様子も話しかける気配も無かった。
今流している放送を聞かせようという配慮か、あるいは本当にただこちらを見ているだけなのか。

放送が終わった辺りで、アカギの目が静かに動いたのを見たほむらはずっと考えていたことを口にした。

「ねえ、私と取引をしない?
あなたは私…の体にあるギラティナ、だっけ、の力が必要なんでしょう?
もし私をキュゥべえ達と同じ位置においてくれるなら、力を貸したいと思うのだけど」
「……」

こちらをじっと見ているアカギに対し、ほむらは彼が興味を持っていると踏んだ。
興味を持っているのならば、交渉へと踏み込むことも可能だろう、と。

アカギの目がさらに動く。しかしそれはこちらの声に反応したというよりはこれまでの動きの流れによるもののように見えた。
ただ声に偶然重なって動いただけの、機械的な冷たい動き。

やがて、静かに口が開かれ、感情の篭っていない言葉が短く告げられた。

「まだ足りない、か」

それだけ呟いて、アカギはこちらに背を向けて歩き出した。
期待も失望も、何も分からぬその口調にほむらの中にあった焦りが急に大きくなり溢れ出してしまった。


「…!ま、待って!!
足りないって、何が足りないっていうの!
今の私に―――」

ここの機会を逃せば次にアカギに対面できるのはいつになるか分からない。
焦る気持ちのまま引き留めようとするようにアカギの肩を掴み。

その瞬間こちらを向いた、苛立ちと嫌悪を潜ませたような鋭い視線に気圧されていた。

ほむらは手を引き、そのまま動くこともできずに出ていくアカギを見送るしかなかった。




何が足りなかったのか。

何がアカギの気に障ったのだろうか。

何か重大なミスを犯してしまったのか。

思考が堂々巡りに入るうちに、気がつけば意識が飛んでしまっていた。

しかし目の前のアーニャにそのことを聞くわけにもいかない。
別の話で場を保たせよう。

「放送の内容だけど、もう一度教えてくれないかしら。聞いてはいたんだけど整理がしきれていなかったから」
「いいわよ。何なら放送から今までの起こったことも聞く?」
「ならついでにお願いするわ」

そうして前回の死亡者、禁止エリア、そして今現在までの起こったことをアーニャから聞くほむら。

(…皮肉なものね。まさか私達魔法少女の中で最後に生き残ったのが、美樹さやかだなんて)

巴マミは魔女化し、最期は乾巧に討たれたという。
聞けば殺し合いが始まってからの彼女はあまりに波乱万丈な道を歩いていたらしい。そして最期は失ったものに絶望し心が壊れたのだろう。

対してさやかはそんな彼女や木場勇治と戦う乾巧の姿を見て自分が歩むべき道を確立させ、村上峡児を倒したという。
多くの時間軸で最も運命に翻弄された魔法少女がよくここまで強くなったものだと関心した。

一方で自分が敗北した織莉子は、まどかの命を狙おうとしたがその近くにいた者達に懐柔され、今はアリスと共に行動しているらしい。
だが今更敗北した織莉子に対し思うところなどない。

「それにしても、ずいぶんと調子悪そうね。何か変な夢でも見た?」
「夢…なのかしらね。あれは」
「よかったら聞かせてくれない?私、夢占いとか得意なのよ」
「…私のことは…知ってるのよね。どうせ。
私の繰り返した時間の記憶じゃない、でも私が体験したかのようなものを見たのよ。
一人の魔法少女が、変われなかった自分に絶望する姿を私が見ていたって、ただそれだけ」
「なるほどねぇ」

少し考える素振りをして、アーニャは語り始める。

「夢っていうのはだいたいが深層意識にある願望を見せる、とかそういうことが言われているけど。
たまに予知夢のような、知らないはずのものを見せることがあるわよね。あなたはその子のことを知らないなら、そういう可能性もあるけど―――」

と、アーニャは気持ち悪くも感じるような満面の笑みを浮かべて告げる。

「別の方向性から語るとね、例えば殺し合いの参加者には主従関係を持っていて、互いの記憶を夢を通して見ることがあるらしいのよ。
まあそういう意味で言うなら、あなたの場合は平行世界の因果、とかかしらね」
「………」
「因みにその因果だけど、この場所はエデンバイタル――有りていに言えば平行世界に繋げられる門にかなり近いからそういうこともあるのかなとは思うんだけど。
でもそう簡単に繋がるものでもないのよね。
あるとしたら、ギアスユーザー同士の接触か、あるいはエデンバイタルと同等の神の力に直接触れたものか…」
「神の力…、もしかして…」
「それも、ただ触っただけじゃない、例えばあなたの場合、力を使いこなせるようになってるくらいにならないと、その領域は見えないのよね」
「……」

誘導されている、と思った時にはどうやら手遅れだったようだ。

「そっかー。どこまで共感していたのかは分からなかったけど、そこまでの段階にいっていたのね」

答える術に悩んで沈黙してしまったことが、確信付かせてしまったようだった。

ほむらの背に冷や汗が流れる。
あのポケモンと既に意識の共有ができるくらいには繋がっているということは隠し通しておきたかった事実だ。
これがバレてしまえば、情報アドバンテージを得ることができなくなるどころか、今の緩めの軟禁状態から更に厳しい監視が付きかねない。
そうすれば今後の行動に大きく関わる。

「………」
「ふふ、油断してたわね。自分にも把握できてないようなことはあんまり口にしないほうがいいわよ。特に信用していない相手には」

笑顔で笑いかけるアーニャ。その笑みが逆に不気味に感じられた。
歳相応にも見える屈託のない笑顔なのに、その裏の得体のしれなさがほむらにもはっきりと分かるほどだった。

少なくともアーニャにはバレたことになる。
もしこれがキュゥべえの耳にでも入れば。
自分の力がアカギに見限られたのではないかと思ったあの時と同じくらいの焦りがほむらの中に湧き上がる。

「ずいぶんと焦ってるわね。でも隠せてると思ったの?たぶんアカギなら気付いてるわよ。
だってあなたのそれと同質に近い力を持ってるんですもの」
「……」
「まあ安心しなさい。別にキュゥべえに言おうという気はないわ。あの子はたぶんまだ気付いていないし」

ほむらの警戒心を空振りさせるかのようなことを言ってのけるアーニャ。
その答えはほむらには良い知らせだったはずなのだか、ほむらの中に生まれたのは安堵より疑念だった。

「言う気はないって…どういうこと?あなた達は協力関係にあるんじゃないの?」
「ん~、協力関係っていうのも少し違うのよね。どっちかというと共犯関係というか。
一つの目的のために各種の持ち得ている技術を出し合ってる関係なのよね」

アカギは伝説のポケモンの力を。
アーニャ達はエデンバイタルの力で並行世界のアクセスと会場の時間・空間の安定化を。
キュゥべえは感情エネルギーや因果の収集を行う機能を。

各々の得意分野で補っている。

「だけどね、正直私達やアカギに比べたら、キュゥべえは少し頑張りすぎてるのよ。あなた達のところに干渉したり、自分で会場に分身を置いたりね。
どうしてか分かるかしら?」
「……力がないから?」
「正解。あの子だけ並行世界に繋げる力がないの。
だから私達は万が一この儀式が失敗すればまた次を狙えばいい。
だけどキュゥべえだけは違う。もしかしたら自分はその時には捨てられる、処分されるんじゃないかって考えてるんじゃないかしらね。
まあ、実際にシャルル達がどう考えてるのかは分からないけど、だから今回の儀式を何としても成功させないといけないって他の皆よりも頑張っちゃってるのよ」
「実際はどうなのよ。利用するだけ利用して捨てるなんてことを考えていたりするの?」
「それはアカギに聞かないと分からないわ。だけど彼の考えてることは、正直私にも読めないから。
だけど、アカギを見たあなたなら分かるでしょう?あの人すごく分かりにくいから」

思い出すのは、アカギに向けられたあの冷たい視線。
キュゥべえは感情がないと言っていたが、もし彼もあの眼に当てられて焦りを生じさせたとするなら滑稽なものにも思えた。


アカギは伝説のポケモンの力を手中に収め、アーニャ達はエデンバイタルなる神々と繋がっている。
一方でキュゥべえ、インキュベーターは一つの世界の中では大きな存在ではあったが、並行世界へのアクセスが可能な存在ではない。

それ故に会場の空間遮断の機能やエネルギー収集装置など多くのものを作り出し、この儀式自体は自分の存在なくしては進行が滞るよう不可欠なものとしている。
だからこそ、この儀式が失敗してしまった時のことを他の誰よりも強く警戒しているのだという。

「一つ……いえ、幾つか聞かせて欲しいのだけど。
まず一つは、あなた達は同じ目的のために手を組んでいるのではないの?」
「目的というと語弊があるのよね。殺し合い自体はあくまでも手段。
キュゥべえはエネルギー収集のために、アカギは感情のない静寂な世界の創造のために動いているのよ」
「あなた達はどうなのよ」
「シャルルは……どうしてなのかしらね。もう既に私達の願いは終わったのに、あの子達まで巻き込んでこんなことを」

一瞬物憂げな表情を浮かべたアーニャ。
その様子を見てこれ以上入り込もうとするとややこしい部分に足を踏み入れると直感したほむらは咄嗟に話を切り替えた。

「…ともあれ、その定義でいくならキュゥべえはあなた達の中では一番下の扱いってことになるのかしら」
「そういう定義付けはないわね。彼自身がどう思っていようとあくまでも私達の立場そのものは同志という扱いよ。
敢えていうならアクロマが一番下扱いになるのかもしれないけど、彼は自分が興味のあることしか興味を持たないから」
「そう。ならもう一つの質問よ。
何故あなたはそれを私に話したの?キュゥべえに対する裏切りにはならないの?」

本来であれば情報が得られたことは喜ばしいものだが、その理由が読めなかった。
もしかするとさっき自分から情報を引き出したような、何かしらの意図があるのではないかとほむらが疑ってしまうのも無理はない。

「裏切り、そうね。確かにキュゥべえに対してはそうかもしれない。だけどもしそれが儀式全体の利になるならシャルル達への裏切りにはならないわ。
それと、シャルルは理由があってこの儀式に協力している。だけど私には理由がないのよ。シャルルがいるから私も力を貸しているだけ」
「……」
「私ね、あなたに期待してるのよ。というか気に入ったと言ったほうがいいかしら。
それに実を言うとキュゥべえのことは個人的感情としてはあまり好きじゃなかったりするのよね」
「個人的感情で動いてるっていうの?」
「あら、あなたの願いだって個人的感情、どころかあなた自身のエゴに近いものじゃないのかしら」
「…だからよ」

要するにただの自己嫌悪だ。


「ふふ、ずいぶん可愛い子ね。そういうところ、私嫌いじゃないわよ」
「……」
「キュゥべえには黙ってあなたに協力してあげてもいいわ。
もしあなたの願いが、世界の可能性を、キュゥべえ的にいうならエントロピーを凌駕するものだったなら、あなたの力はきっと私達にとっても益になるものだから」
「……」

とても信じられる話ではない。
しかし接触を図ってきたこの事実には意味がある。
例え罠だとしても、乗る価値はあるかもしれない。

だが。

「私があなたを裏切るとは思わなかったの?
聞きたいことだけ聞いて、あとはあなたを殺すかもしれない、なんて」

この時のほむらはアカギの件もあり気が立っていたこと、そして自分に植え付いた力が確かに己に根付いていることにある程度の確信が持てたことから少し冷静ではなかったのかもしれない。
目の前の少女一人、あるいは制圧することも、しようと思えば可能と、そう思うところがあったのだろう。

「そう。ところでほむら、さっきあなたの手の甲の白金玉、少し変に光っていたのだけど」
「え?」

思わず一瞬そちらに意識を向けた。
その時ふと、顔の横で少し髪が舞った気がした。

「気のせいだったわ。ところで、あなたピアスとかつけるかしら?」
「つけないわよ。何よいきなり」
「せっかく耳たぶに穴を空けたんだから、つけてみたらどう?」

そういって小さなイヤリングをテーブルの上に置く。
言葉につられて耳たぶにふれると、指先が赤く染まっている。それが血だと認識した瞬間、遅れて痛みがやってきた。

アーニャはほむらの前で、裁縫針のような小さな針をつまみながら語る。

「確かに私にはあなたみたいな特別な能力はないのだけど。でも私、これでもブリタニアでは"閃光のマリアンヌ"なんて呼ばれて恐れられてたのよ。
もう一つの世界の私は、未来視のギアスを持つ帝国最強の騎士とも渡り合ってたし、私にも同じことができるのよ。
もし今のがあなたの命を狙ったものだったら、避けられたかしら?」
「………」
「いくら自分が強い力を手に入れたからって、あまりそれを過信しないことね。大人からの忠告よ」
「…そうね。少しあなたのことを舐めていたわ。
そのイヤリングは戒めに貰いましょう」

耳の出血を魔力を使って止め、小さな宝石がつけられたイヤリングをつける。
一見ただのイヤリングだ。つけることに実利的な意味があるのかと言われればおそらくないのだろう。

「それで、最初の質問の答えは?」
「そうね、乗ってあげる。だけど一つ質問させて。
あなたの正体は何なの?」

ほむらにしてみれば目の前の少女はあまりに得体が知れなかった。気持ち悪いと言ってもいいかもしれない。

年は同じくらいのはずなのに、まるで巴マミに、いや、もっと年期を感じる相手にいいようにあしらわれている感覚は決して気分のいいものではない。
外見と印象のギャップがあまりにもほむらの認識を狂わせる。

これだけは解決しておかないと、このズレを残したまま行動すればきっとどこかで大きな足枷になると直感していた。

「そういえばあなたは魔法少女だったわね、なら私のギアス能力も感知できるはずよね。
目じゃなくてあなた達が持ってる魔力を通して私を見てみたら分かるわよ」

ほむらは目を閉じて、アーニャを心の目で見るかのように意識を集中させた。
閉じられた視界には何も見えないはずなのに、そこに映り込んだのは長い黒髪を持つ妙齢の女性。
目を開くと、その女性が写った場所には目で見たままの少女、アーニャの姿があった。

「私もアリスちゃんと同じ、ギアス能力者なのよ。この体は私の魂が入り込んだただの器。
納得してもらえたかしら?」
「…ええ。納得したわ」
「本名はマリアンヌ・ヴィ・ブリタニア。シャルル・ジ・ブリタニアは私の夫。
そして殺し合いの参加者、ナナリーとルルーシュの母親よ」
「そう、あなたがアリスが守りたかったって子の…」

「それでどうするのかしら。まだキュゥべえが戻ってくるまでの時間はあるわよ」
「なら今のうちに聞いておきたいことがあるわ。
さっきあなたは私の能力であなたの正体が見えるって言ったわね。
私の魔法少女の力に対してあなた達の使う力、一体どんな繋がりがあるのかを教えて」




「戻ったよ」

しばらく後、キュゥべえが戻ってきた。

どうやらアリス達と直に接触をし、結果あの黒猫は消滅させられキュゥべえ自身が単体で会場内に干渉をかけるのは難しくなったという。

「でもよかったのかしら、キュゥべえ。
あなたの存在を殺し合いの参加者に知らせることになってしまったわけだけど」
「君の生存について混乱を与えてしまう方が困るからね。この段階で今更こんな希望を持つ者もいないだろうけど、放送の信用を失わせるのは好ましくない。
そもそもキミが脱落したということは事実には違いないし」

戻ってきたキュゥべえに対して問いかけるほむら。
キュゥべえにすればこの事実を告げることはあの黒猫の端末を失うことよりも重要であったらしい。
いや、自分が一度死んで今ここにいる以上あの端末自体がもう役割を失っていた、と言うべきだったのかもしれないが。

「アーニャ、何か変わったことはあったかい?」
「特になかったわ。ね、ほむら」
「その馴れ馴れしい呼び方は止めて」
「あら、私達同年代なんでしょ?ならアリスにしたみたいに仲良くできないのかしら」

「んん?」

そんな会話を見て、ふとキュゥべえが首を傾げる。

「そういえばほむら、アカギと何かあったかい?」
「何か、っていう意図は分からないけど、何も無かったわ。
それとキュゥべえ、話を変えるけど、少しアクロマのところに行こうと思うの。
この体に何が起きているのか、私自身把握できてないからもう少し専門家の話を聞いてみたいと思って」
「そうか。アーニャが特に何も言わないなら、問題はないんだろうね。
ただ、ちょっとほむら、外で待っていてくれないか。アーニャと話があるから」
「分かったわ」




「アーニャ、ほむらと何かあったかい?」
「何もないわ。少し仲良くできないかなーなんてことを思っただけ。
ほら、体の子とも年が近いし」
「それとその口調や調子、さっき会った時と比べてどうもおかしいように思うんだけど。
もっと無口だったと思うし、そこまで砕けた喋り方をしていたかい?」
「これは平行世界の私のものね。あっちの私はずいぶんと破天荒でいたずら好きな感じだったから。
こっちの方があの子の警戒心を解くにはいいんじゃないかしらって思ってね」
「そういうものなのかな。よく分からないな、君たち人間は」
「そうよ、よく分からないものよ。だからこそどうにかしようって思ってるのよ。シャルルも、アカギも」

それだけ言って、アーニャは外で待っているほむらの元に向かう。

アーニャ、マリアンヌがキュゥべえを快い存在と思っていないことは事実だ。
アレが契約のために目をつける人間は年頃の女の子、やり方も人間の感覚からすれば詐欺に近いものだ。
もしその手がナナリーに届いたら、と空想してしまうと、あまり受け入れやすい存在ではない。

そして同時に、もう一つの世界の自分に対しても抱いている嫌悪感は同じだった。
いくらあれが自分と同じ存在と言われても、あれほど自身の欲深さと周囲の省みなさは同じマリアンヌとしてもあまりに醜悪で目に余るものではあった。

まあこのどちらを言ったとしても、きっと自分もやっていることは変わらないのだろうが。

だが、一方でもう一つの世界の自分のあの奔放さは見習いたいと思うところがないでもなかった。
これまでの人格としてのあの無愛想にも思えるアーニャの顔では、他者との付き合いに際しては限界があるのではと思ったこともないわけではない。

他者との付き合い。
かつて娘・ナナリーに否定されたことがあった。そして、同じことを別の世界の息子も言っていた。
自分たちがやろうとしているのは自分たちに優しい世界を作ろうとしているだけではないか、と。
他者を通じて世界を知り、未来を見ることを諦めた自分たちにより良い世界など作れるはずがない、と。

きっとアカギが作ろうとしている世界は彼にのみ優しい世界という意味では自分たちがかつてやろうとしていることと同じなのだろう。

思い出すのは、エデンバイタルの一部として分散していた自分たちの意識が収束し、あのアカギとシャルルが最初に対面した時のアカギの表情。
未来に絶望しただ自分の求める世界を作ろうと覇道を歩むあの姿勢、そして現世の何も見ていないあの虚空な眼。
それは、かつて彼と出会ったばかりの頃に見たシャルルのそれに重なって見えるところがあった。きっとシャルルもそれに気付いていただろう。

シャルルがアカギに協力する理由。
きっとシャルルは見極めようとしているのだろう。アカギが作ろうとしている世界、その歩む道の果てを。

元のマリアンヌとしての自分の死以降、現世においてはほぼ誰とも心を開いた関わりを持とうとしなかったシャルルが、その力を積極的に貸している。
かつての彼には考えにくいことだ。
もし彼自身が変わろうとしているのならば、きっと自分も変わる必要があるのかもしれない。

そのきっかけに選んだのが、あの少女だった。
ルルーシュのようにただ一人の人間が幸せに生きることを願い、しかしその歩む道はそれ以上に独善と困難に満ちている。
そしてきっと、今の自分に導くことはできないだろう。シャルルに対してのアカギのように。
なら、自分もあの子の行く道の果てを見届けてみよう。

「待ったかしら?」
「別に。…別にあなたが付き合うことはないのだけど」
「いいじゃない、別に」

かつて敗北した自分は、きっと物語を動かすような存在にはなれないのだから。




アーニャとキュゥべえが何を話しているのか。
正直自分の力を使えば会話の内容も聞き取れただろう。しかし敢えて何も聞かずにいた。

アーニャ、マリアンヌのことを信じたわけではない。
彼女に乗ることを選んだ自分の判断を信じようと思っただけのこと。

ふと思い出すのは、アーニャに言われた平行世界の自分が見た光景。
そういえば、自分がなりたかったものは鹿目まどかを守れるような存在だった。
あの最初の時に彼女に救われたように、自分も誰かを、何よりもまどかを守れるような魔法少女になりたかったんだった。

どうして忘れていたのか、などとは問わない。もうまどかを手に掛けたあの時から、目的のための手段が変わっているのだ。
自分は、アリスのような生き方はできない。
自分が自分である限り、あの時の出来事にいつまでも縛られ続ける。もしそれ以上のことを望めば、きっとあの自分のようにもっと色々なものを失うことになる。

「待ったかしら?」
「別に。…別にあなたが付き合うことはないのだけど」
「いいじゃない、別に」

きっと自分には、あの時のまどかのように、誰かを救えるような、言ってみれば物語のヒーローにはなれないのだろう。

だけど構わない。
もし彼女を救うためなら。

そんなヒーローのような者に仇なす存在にも。
悪魔にもなれる。




【?????/一日目 夜中】

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康?、あかいくさりによる拘束
[服装]:見滝原中学校の制服、まどかのリボン@魔法少女まどか☆マギカ 、右耳にピアス
[装備]:はっきんだま(ほむらのソウルジェムの代用品)@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本:キュゥべえ達に従うふりをして、”目的”のための隙を伺う。
1:アーニャの手を借りて行動する。とりあえずの信用はするが完全には信じない。
2:アクロマに接触する。
最終目的:“奇跡”を手に入れた上で『自身の世界(これまで辿った全ての時間軸)』に帰還(手段は問わない)し、まどかを救う。
[備考]
※はっきんだまにほむらの魂が収められており、現状彼女のソウルジェムの代用品とされています。
ギラティナを制御しているあかいくさりによってその生命が間接的に繋ぎ止められている状態です。
魔法少女としての力が使用できるかどうかは現状不明です。
※バトルロワイヤル上においては死亡扱いとなっています。
※ギラティナと感覚が共有されており、キュウべえとアクロマ達の会話を聞いていました。


※アーニャ・アールストレイム(マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア)は表面的振る舞いについては反逆のルルーシュ版の路線で行くようです。


147:永劫の神々 投下順に読む 149:キボウノカケラ
時系列順に読む
142:一歩先へ(前編) 美国織莉子 154:立ち向かうべきもの
アリス
135:Guilty Girl 暁美ほむら 155:ReStart準備中
137:第三回定時放送 アカギ 160:第四回定時放送
キュゥべえ 158:悪魔が生まれた日
マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア 155:ReStart準備中



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー