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EndGame_叛逆の物語(後)

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「桜さん大丈夫ですか?!それにまどかさんその格好は…」
「ちょっと色々あって。今は戦えるから」

リザードンの背から飛び降りたイリヤは状況を把握しながら双剣を構える。

「イリヤさん…」

呼びかけに答えながら桜はゆっくりと立ち上がる。
影の中から小さなぬいぐるみのような使い魔が現れる。

立ち上がりつつ魔力を行使して戦おうとする姿に驚くイリヤ。

「大丈夫です、私も戦えます」

言いながらやる気を見せるその姿に、今までずっと沈んでいた桜の心が前に進む決意をしたのだということが感じられた。
何があったのかまでは分からないが、小さく胸を撫で下ろす。


『ロ、ロト?!』

地面に降りたNの懐から飛び出したロトム図鑑が、前にいる暁美ほむらを見ながら慌てた様子を見せる。

『どうしてあの人間からポケモンの反応がするロト?!』

言葉の通り、ほむらの体からは確かにポケモンを見た時と同じ反応を受信していた。
そこに映っていたのは、反骨ポケモンのギラティナ。Nが見比べると、確かに翼部分にその面影が見えた気がした。

「…君たち魔法少女の体が普通の人とは違うことは聞いている。だけどこれはどういうことなんだ?」
「少し、予想を越えたことが起きただけよ。私はうまく利用させてもらっているけど」
「気をつけてくださいNさん!あの人は桜さんを攫って私達に黒化英霊達を差し向けてきたんです!」
「なるほど、君はアカギに協力することにしたんだね」

理屈は分からないが、その体からギラティナの反応がしているということは力を奪われたギラティナがどこかに存在していると推測した。

「ギラティナのことも、解放させてもらう」
「できるかしらね?」

魔法少女とはいえ美樹さやかほどの回復力がない故か、あるいはポッチャマの遺した置き土産か、体の回復速度はあまり早くはない。
ようやく腕と顔が形だけは戻ってきている様子だった。
身体機能としてはまだかなり支障があるが、情報が漏れている以上あまり時間を与えて連携・対策の暇を作るのはよろしくない。

一歩踏み出すと同時に、イリヤが双剣を振りかざして迫る。
体に降ろされた刃を、魔力を付与した腕で受け止める。

「な…、腕で…!?」
『イリヤさん、この人硬いです!』

素手で受け止められたことに驚愕するイリヤは、ほむらの背中の翼が爪の形となって振り下ろされたのに対して反応が遅れてしまう。
巨腕に吹き飛ばされた体は地面を転がるも、どうにか宙に浮いたところで体勢を立て直す。

『ロ、ロト…』
「どうしたんだロトム」
『今あの人間の状態を分析したけど、まずいロト…!全能力がポケモンのあげられる限界まで上がってるロト…!』
「全能力…!?」
『それってどういうことなのか、もうちょっと噛み砕いて言ってもらってもいいですか?!』

イリヤが弓や空中に投影した剣を放って牽制しながら、その体に取り付いたルビーが問いかける。

『要するにすごい攻撃力があってすごい防御力があって、すごく速いってことロト!』
「なるほど!」

イリヤが捻れた剣を放ち、それに合わせるようにまどかが引き絞った光の矢を撃ち込む。
すごく硬いということを理解したが故に、矢として放ったのは極大威力の螺旋剣。まどかもそれに合わせ引き絞った矢を射出した。
二つの閃光はほむらに命中する軌跡を描くも彼女の展開した翼が直撃を防ぎ、そのダメージを大きく軽減させていた。
翼は損傷するも、もう一方、再生を続けていた側の翼が形を取り戻して翻る。

『今のを耐えるとなると、宝具クラスの火力がないと厳しいですよ』
「じゃあこれで…。まどかさん、桜さん、後方支援お願い!」

前に出ながらカードを掲げるイリヤ。
その姿が紅い槍を手にした青い槍兵の姿へと変わっていく。

まどかの放った矢が拡散しほむらへと着弾していく。
ダメージはさほどないが、視界を奪われたところで追ってイリヤの槍が迫る。
繰り出される素早い突きをほむらは手で捌く。

背後の翼の竜爪が薙ぐように振るわれる。
見かけよりも速いその腕を身を反らして交わしながら。

(この武器は心臓を穿つ…。魔法少女なら…)

発動すれば相手の心臓を穿つ因果を放つ宝具。
殺したいわけではないが、魔法少女なら死ぬことはないかもしれない。聖剣よりは確実に動きを止めることはできるはず。

ほむらの横から黒い影が飛びかかる。
翼を使うまでもなく手で薙ぐと、崩れた形が帯となってほむらの体を縛り上げる。

(今だっ…!)

隙が生まれたところで体勢を立て直したイリヤは、槍を構え。

こちらを見ていたほむらの額が光る。

「刺し穿つ死棘の(ゲイボル)―――」
『…!!!いけません!!』

その真名を言い切るまでのところで、何かに気付いたルビーが叫ぶ。
同時にルビーの制御によりカードが強制停止、排出。
魔法少女の姿に戻ると共に、反動で吹き飛ばされる。

「ごほっ、げほっ…、な、何…?」
『危なかったです…、今の攻撃を放っていたらゲイボルグはイリヤさんの心臓を貫いていました』
「えっ…?」
『何故か、槍の暁美ほむらさんの心臓を穿つという因果の対象が何故かイリヤさんへと切り替わったのです。
 それと、そのタイミングでほむらさんからゼロと戦った時に感じたものと似た魔力反応を感じました。おそらくそれをもってゲイボルグの呪いを弾いてイリヤさんに押し付けたのでしょう』

危うい状況からどうにか乗り越えたということは分かった。しかし休んでいる暇はない。
立ち上がろうと前を向いた時には、視線の先に巨大な竜爪が迫っていた。

「イリヤちゃん!」

割り込んだまどかが弓の柄をぶつけてその一撃を反らす。
逸れた爪はイリヤの隣の地面を抉り取る。

同時に後ろから追ってくるように矢の弾幕が迫る。
動きを止めるほむらと、その隙を縫って離脱するまどかとイリヤ。
しかしすぐさま気を取り直してほむらが地を蹴って迫る。その速度は速く逃げる2人にすぐに追いつくほどだった。
すぐさま飛び出したリザードンが火炎放射を放ち、2人とほむらの間を炎で焦がす。

立ち止まって上を向いたほむらに向けて、続けて龍の怒りを吐き出す。
ドラゴンの力を宿した覇気は一直線にほむらへと軌道を描く。それに特に慌てるでもなく振り払おうと翼を掲げる。
それが翼に当たった瞬間、大爆発を引き起こした。

その体を焼くダメージは想定外のもので、爆風をやりすごし切れず吹き飛ぶ。

(炎は大したことなかったのに、…攻撃の属性の問題?)

身を起こしながら体の状態を確かめる。
威力はそう大きくはない。ただダメージがあの同じポケモンが放ったものと思えなかった。

空を飛ぶリザードンを見ながら不快そうに目を細める。

「邪魔ね」

一度なら問題ない。だが何度も撃たれるとまずい。
今一番の驚異と認定し、緋色の翼竜を落とすため飛翔した。



「そうか…!龍の怒りは相手の能力に左右されずダメージを与えるから…!」

ほむら/ギラティナの能力から能力値に上昇がかかっていることを読んだロトム。
その言葉を聞いてNは対策を思考し続けていた。

その中で、リザードンの撃った龍の怒りは対策の一つになり得るものだと判断していた。

「頼む、リザードン!君も彼を援護してくれ!」

クローンのリザードンにも指示を出し、ほむらの対応を任せる。
龍の怒りは能力に左右されないダメージを与える。しかし決して大きな威力ではない。対応ではあるが決定打にできない以上一匹では厳しい。

「イリヤちゃん、大丈夫?!」
「だ、大丈夫…。それより、どうにかできないの?」

胸を抑えて起き上がりながらロトム図鑑に問いかけるイリヤとルビー。

『あれはあなたの世界のポケモンの勝負で起こり得る状態なんですよね。であれば何かしら対処方法があるはずです。
 あなたの世界のバトルではどうやって対処してるんですか』
『ロト。能力上昇がかかったポケモンは、一度引っ込めて上昇をリセットさせるか上昇自体を無効化するか、あるいは能力上昇を無視できる攻撃を当てて対応してるロト。
 ポケモンじゃないから引っ込めるのは不可能として、黒い霧とかクリアスモッグが使えるポケモンがいればいいんだけどロト…』

残ったポケモン達にそれらの技を使える者はいない。
能力上昇を無視、龍の怒りは有効ではあるだろうが威力が小さい。イリヤが放った刺し穿つ死棘の槍も防御を無視可能な攻撃だったが、別要因によって阻まれた。

「無効化…、そうだ!」

頭を抱えていたイリヤに一つの考えが浮かぶ。

「Nさん、まどかさん!
 ほむらさんの動きを止められますか?少しの間で大丈夫ですから」
「動きを止める、それで対応できるのか?」
「できます、当てれば行けるんですけど当てるのが難しいから」
「だったら、私も手伝います…」

桜が再度影の使い魔を生み出す。
しかしそろそろ息が苦しそうだった。

「ありがとう、だけどみんな無理はしないで。桜さんも」
「大丈夫です、これくらい……」

足元がふらついている。その体をNが支える。

「彼女は僕が守ろう、だからみんな、気を付けてくれ」

言いながらほむらとリザードン達の戦いに目を向ける。
おそらくリザードンと比べてほむらが空中戦に慣れていないからだろう、どうにかリザードン達でも対処はできているが当たれば一撃で戦闘不能も有り得る攻撃を捌くのに精一杯の様子だった。

イリヤの姿が黒衣と髑髏の仮面を被った姿に変わる。
短刀を構えて突撃をかけるイリヤ、その後ろから大きく迂回しつつ矢を放って迫るまどか。

迫る2人の姿に視線を移したほむら。その隙を打ってリザードンが同時にほむらへ尻尾を叩き付けて地面に落とそうとする。
両手でそれを受け止めつつ尻尾を掴み、そのままリザードン同士の体をぶつけ合わせた。
衝撃に鳴き、その体から力が抜ける。
それを掴んだまま地に降下、リザードンをまるで武器のように容赦なく振り回して迫るイリヤを牽制する。

素早い身のこなしでその攻撃を避けつつ合間を縫って短刀をほむらの体向けて投げつける。
リザードンを壁にしようと掲げるも、短刀の柄へと目掛けて射られた矢が短刀の軌道を変えてほむらの体へと刺さる。
体を貫くことはなく、少し傷つけただけで地面に落ちる。
しかしほむらは顔をしかめた。

「毒…、こんなもので…」

傷自体は大したものではなくかすり傷をつけた程度だ。
ただ、体に回った毒が手に痺れを引き起こし、リザードンを掴んでいた手を離してしまう。
解放されたことでふらつきながら離れていく2匹。その合間から再度短刀が飛びかかる。

翼で風を巻き起こすことで、風圧で短刀を弾き飛ばす。同時に生温く不気味な魔力のこもった突風にイリヤの動きが止まる。
狙いをイリヤに絞ろうとしたところで、横から迫る気配を感じそちらに意識を移す。
迫ったまどかが振り下ろした弓の柄を、手で受け止める。

同時に視界の端でイリヤが短刀を投げつけてくるのを見て、再度風を巻き起こして2人の体を吹き飛ばす。
別方向に飛ばされていくイリヤとまどか。
すかさず影の中に飛び込むほむら。

イリヤが体勢を立て直して地に足をつけたところで、その背後に影が現れ、ドラゴンクローを構えたほむらが姿を表す。

「イリヤちゃん!!」

離れた場所に飛ばされたまどかが呼びかけながら弓を構えるが間に合わない。
巨大な爪がイリヤの体を貫く。

血しぶきが舞い、ほむらの顔を濡らして。

その姿が弾ける。

「―――!」

本体ではない、これは身代わりだと。
同時に弾けた体から飛び出した影が帯状にほどけ、ほむらの両翼を縛り付ける。

(また、これか…っ!)

翼が拘束され、ドラゴンクローが封じられる。
だが影の強度は分かっている。この程度なら引き千切るのは容易い。

その時、背後に気配を感じ取った。

分身を用いてこちらの攻撃を回避したイリヤの姿。その身を覆う衣装は黒衣から変わっている。
全身をローブで覆って、その手には短刀ではなくギザギザの刃を持った短剣が握られていた。

「破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)!!」

翼が封じられており振り払えない。腕で受けるのも不味いと直感で感じ取った。そもそも目の前で突きつけられた刃をやり過ごす技量はほむらにはない。

(いけるっ!!)

そう思ったイリヤ。
しかし。

「残念ね。私が魔法少女でさえなければ、当てられていたでしょうに」

突如ほむらの姿が消失、視界の外の頭上からその声が響いて。
同時に爪の一振りでイリヤの体は吹き飛ばされた。

見上げた一瞬イリヤの視界に映った姿、宙に座るような姿勢をするほむらの腕には、時計を思わせる盾が装着されていた。


しまった、忘れていたと咄嗟に矢を構えるまどか。
しかし引き絞った矢を放とうとした次の瞬間、目の前に移動したほむらに腕を取られ、地面に叩き伏せられていた。

その様子を見て、退いていたリザードン2匹がほむら向けて飛び立とうと翼を広げる。

「まずい、戻れリザードン!!」

直感が危険を感じたと同時にNはモンスターボールを構え、リザードンをボールに戻す。しかしボールのないクローンのリザードンはその場に残ったままだ。
ほむらが目の前に現れたと同時、空間に岩を象ったエネルギーが出現、リザードンやN達に向けて放たれた。

リザードンを庇うように前に出るN。しかし降り注いだ原始の力を防ぐことなどできず、N、桜、リザードンの体は吹き飛ばされる。

「うあっ!」

前に出たNをリザードンが翼で庇ったことでダメージを軽減できたものの、リザードンの受けたダメージは甚大だった。

ポケモンバトルであれば戦闘不能になるほどのダメージ。しかし今やっているのはポケモンバトルの試合ではなく命をかけたバトル。
体を起こし、Nと桜を庇うように立ち上がる。

リザードンに向けて爪をかざしたところで、背後から二つの閃光が奔った。

背に受けた衝撃に振り返ると、弓を構えたまどかと魔法陣を宙に描いたイリヤ。
イリヤはローブが裂けて血が滲んでいる。それでも息を切らしながら杖を支えにして立ち上がっている。

思ったより立ち上がるのが早かった。トドメを刺すより追いすがってきそうな方を優先して叩いたが判断を間違えたかもしれない。
立ち位置が逆方向なのも面倒だ。

時間を止めて2人の元に迫る。
目前まで距離を詰めたところでドラゴンクローを構えて解除。

目の前に迫った敵に驚きつつも魔術の盾を形成して振るわれた一撃を防ぐイリヤ、しかし盾は耐えきれず破壊され吹き飛ばされる。
吹き飛ばされた体を、駆け寄ったまどかが受け止め、そのまま駆け出す。

「っ…」
(どうしよう…、このままじゃほむらちゃんに勝てない…)

距離を取りながら考え続けるまどか。
おそらく今のイリヤの、さっき取り出した短剣がこの状況を打開する鍵なのだろう。
だが不意打ちに失敗した以上当てるのはより困難になった。

(どうすれば、どうすれば…)

思考を巡らせる。
脳裏に、まどかの知らない記憶が巡っている。おそらく別の時間軸の、魔法少女としての自分の記憶だろう。
何か、魔法少女としての力に反撃の一手が打てる手段は。

多腕の巨大な魔女に矢を射る自分がいた。
人魚の魔女の攻撃を避ける自分がいた。
ワルプルギスの夜に向けて矢を放つ自分がいた。

見知らぬ魔法少女の手を取って、共に矢を射る自分がいた。

「――――!!」

上に向けて矢を放ち、光の魔法陣を作り出す。
目の前に迫ったほむらに対し、上から降り注いだ矢が一斉に襲いかかる。
大きなダメージを受けた様子こそないが、衝撃でまどかとの距離を離されてしまう。

時間は稼げた。

「イリヤちゃん、さっきの短剣、もう一回出せる?あれが今ほむらちゃんに効く武器なんでしょ?」

地に足をつけ抱えたイリヤを下ろしながら聞くまどか。

「え、うん、あれは燃費がいいから出すのは問題ないけど…」
「じゃあお願い、今から言うことに合わせて!」

説明しながら、こちらに振り返るほむらがまどかの目に映る。

「そんなことが、できるの…?!」
『私達にそもそも互換性があるのかは分かりませんが、いえ道理を無茶で突破してこその魔法少女ですし、やってみましょうイリヤさん!』

説明を終えたまどかは、イリヤと手のひらを合わせ。

「「―――コネクト!!」」

そう叫ぶと同時に、二人の内にあるクラスカードが光を放ち。
光が収束したと同時に、まどかの構える弓とイリヤの構える杖が一つに合わさった武器となる。
二人の持つ魔力が、一つの武器となり互いの特性を保持したまま混ざり合っていた。
イリヤの構えた杖の先端に照らされる魔法陣の中心で、まどかが光の矢を引き絞っている。

直感的に、何かまずいことが起きたと感じたほむらは二人の元へ飛ぶ。
おそらく距離を詰めるより矢を放たれる方が先だろう。そう判断し時間を止める。

距離を詰めて二人の目の前に移動。
羽状の魔力の矢を一気に周囲に撒き散らして二人の逃げ場を封じ。
そのままドラゴンクローをイリヤに向けて構えた。

仮に時間停止から攻撃までの僅かなラグに対応できたとしても、この羽根の弾丸を避けることはできない。

時間がかかったが、これで締めとなるだろう。
イリヤスフィールさえ殺せば向こうには対抗する手立てはなくなる。

「これで最後よ」

時間が動き出す。
ドラゴンクローがイリヤの体を叩き潰し、同時に一斉に降り注いだ弾丸が二人を襲う。

「な…」

思わず声が漏れるほむら。
今放った攻撃に、手応えが感じられなかった。

いや、それどころか二人がいたはずの場所とは違う方向を向いている。
振り返ると二人の魔法少女は武器を構えた姿で健在。

視界の端で、地に膝を付いているN。
その傍には、幻影を操る黒い狐の姿があった。


「ちょっと痛いかもしれないけど――我慢してほむらちゃん!!」

放たれた閃光。
まどかの敵を追尾し貫く攻撃と、イリヤ/メディアの相手の魔力効果を打ち消す宝具の効果が合わさった矢が、ほむらの体を貫いた。



残った参加者達が戦っている場所とは別空間。
会場の空間崩壊と共に風景が剥がれ、どんな場所とも言えない空間となった場所。
そこに力を奪われ抜け殻のように倒れていた一匹の巨竜。
その瞳が、静かに開いた。



貫かれた腹部を抑えながら膝をつくほむら。
ほむらの纏っていたドレスや巨大な翼が消滅し、まどかにとって見慣れた魔法少女のものへと変わっていく。
転がり落ちた、変質したソウルジェム・ダークオーブは一つの珠へと形を戻していく。

『やったロト!能力強化が消滅、ギラティナの反応も消えていくロト!』
「勝った、のか…?」

原始の力の余波で意識を失ったままの桜を抱きかかえながら、ゾロアークに警戒をさせつつ様子を伺うN。

イリヤは矢を放つことに協力したことで魔力を消費しすぎたか、クラスカードを排出して息を切らせていた。
疲労から膝をつくイリヤの隣で、まどかは魔法少女の姿を保ったままほむらへと歩み寄った。


「ほむらちゃん…」
「まどか…、ぐっ……」

苦しそうに胸を抑えるほむら。
ギラティナが解放されたことで力を取り戻そうと暴れている。
ほむらの魂を捉えた白金珠だが、もし力を取り戻されたならその魂は完全に追放され消滅するだろう。

「私の、負けね…」
「勝ちとか負けとかじゃないよ。
 ほむらちゃんはずっと私達のために頑張ってくれてたんだよね」

ほむらの体を静かに抱きしめるまどか。

「ありがとう。だけど、これ以上はダメだよ。ほむらちゃんが頑張ってきたこと、それが全部ダメになっちゃう」

何度も繰り返して、いろんなものを見捨てて、いろんな罪を犯して。
それでも戦い続けてきた軌跡、その全てが穢されていく。
ほむら自身のより大きな罪によって。

「ずっと辛かったんだよね。ごめんね…」

まどかの瞳から涙が零れ落ちる。
自分のせいで、こんなになるまでほむらちゃんを傷だらけにしてしまった。その罪悪感が胸を痛める。

そんなまどかを、抱きしめようと動いたほむらの手は。

「―――まだ、よ」

抱きしめることなく、まどかの肩を掴んで引き剥がした。
そのまま、まどかの体を突き飛ばす。

「ほむらちゃん…?」
「まどか、あなたは優しすぎる。自分にしかできないことがあると知ったら、どれほどつらい事だとわかっていてもそれを選択できてしまう勇気がある。
 あなたにしかできないことがあると知った時、あなたは、自分でも気づいていないほど優しすぎて強すぎる…」

自分のソウルジェムに手をかけるほむら。

「その優しさがないと進めない世界なら、あなたを犠牲にしないと続けられない世界だったら、そんな世界なくなってしまえばいい…!」
「ほむらちゃん…!」
「アーニャ、あなたから預かった最終兵器の起動キー、ここで使わせてもらうわ」

ほむらの手が光る。
今や自分のソウルジェムでもある白金珠に、それを撃ち込もうとしている。

「ダメっ!!」
「ずっと大好きよ、まどか。いつも、どんな時も」

ほむらを止めようと手を伸ばすまどか。

しかし間に合わず。
額に紋様を浮かべたほむらはその光を白金珠の内部に撃ち込んだ。

白金珠には傷一つ付いていない。
しかしその内側にあった輝きの一部、ほむらの魂であった部分が消滅した。


同時に、戦いと空間崩壊の影響で別位相に移動していた最終兵器、巨大な花の蕾を思わせるオブジェのような水晶の物体が動き出す。
ほむらの魂の流入を楔として起動したそれは、膨大なエネルギーを持った閃光を放つ。

最終兵器、ポケモンの世界にて戦争を終わらせるための大虐殺を行ったそれはシャルルやキュゥべえ達の技術をあわせることで神を殺すための兵器となっていた。
そこにほむらの因果を操るギアスを用いて世界の形を変える楔を、神を殺すと同時に撃ち込むことで世界の形を作り変える。
もし最後の1人となるまでに参加者の因果が集まっていれば多数の世界の法則を壊し影響を与えるものになっただろう。
しかしまだ参加者は残っていることで影響を与える範囲は大きく狭まってしまった。
それを承知で、ほむらは自分の世界の「神」を殺す攻撃を放った。
まどかに因果が集まることのない、ただの人間として生きていられる世界を願って。

閃光は空間を割って遥か彼方の空へと飛んでいく。
それを見る皆にはどうにかする手段などなく、ただ見ているしかできなかった。


【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ 死亡】

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