野球しようよ ◆wKs3a28q6Q
自分のいる位置がE-05であることが分かり、俺はますます亀田君に感謝した。
俺がどこに行こうと思っても、目的地がそんなに遠くならない絶好の場所。
そこにわざわざ俺を飛ばしてくれるなんて、亀田君は本当にいい奴だ。
親友として、俺はその期待に応えなくっちゃ。
「まずは東にでも行こうかな」
東側には川がある。
そのため川より向こう側でスタートした人間は行動を4パターンに絞られる事になる。
南下して遊園地方面に向かうか、北上して商店街側まで回り込むか。そして素直に西の橋を渡るかだ。
この3つのどれかを選んだ人物はいい。
それが殺し合いに賛成する者か否かに関わらず、少なくとも行動を起こすつもりはあるということなのだから。
問題なのは、『3方向からしか敵が来ないのでその場に陣取り待機する』という者だ。
亀田君の親友として、そういった“やる気のない連中”はさっさと始末しておきたい。
まあ、中盤まではさほど慌てる必要もないんだ。誰もいないならいないでそれでいい。
そこから適当にぶらつけばいいだけの話だ。
別に今から慌てることはないんだから。
そんなわけで俺は東へ向かって歩き続け――間もなく、“やる気のない連中”と遭遇する事になる。
俺がどこに行こうと思っても、目的地がそんなに遠くならない絶好の場所。
そこにわざわざ俺を飛ばしてくれるなんて、亀田君は本当にいい奴だ。
親友として、俺はその期待に応えなくっちゃ。
「まずは東にでも行こうかな」
東側には川がある。
そのため川より向こう側でスタートした人間は行動を4パターンに絞られる事になる。
南下して遊園地方面に向かうか、北上して商店街側まで回り込むか。そして素直に西の橋を渡るかだ。
この3つのどれかを選んだ人物はいい。
それが殺し合いに賛成する者か否かに関わらず、少なくとも行動を起こすつもりはあるということなのだから。
問題なのは、『3方向からしか敵が来ないのでその場に陣取り待機する』という者だ。
亀田君の親友として、そういった“やる気のない連中”はさっさと始末しておきたい。
まあ、中盤まではさほど慌てる必要もないんだ。誰もいないならいないでそれでいい。
そこから適当にぶらつけばいいだけの話だ。
別に今から慌てることはないんだから。
そんなわけで俺は東へ向かって歩き続け――間もなく、“やる気のない連中”と遭遇する事になる。
☆ ★ ☆ ★ ☆
「…………いや、いやいやいや何やってるんだ俺は」
我に返った。
野球は楽しいし、ずっとやっていたいけど、そういうわけにはいかないじゃないか。
亀田を倒し、早く犯人を捕まえなくちゃいけないのに。
「オウ、よそ見したら危ないでーす!」
「いてっ」
ボールを見事に頭に食らう。
所詮はキャッチボール、ノックに比べたら威力が大幅に低いとは言え、それでも結構痛かった。
うーん、硬球恐るべし。
「大丈夫でーすか?」
「あ、ああ……」
とりあえず、コイツが無害と分かっただけ収穫としよう。
殺し合いという場において仲間の存在はかなり大きい。
仲間を作っている方が信頼も得やすいだろうし、何より戦闘面で有難い。
こちらに武器がない以上、殺し合う気の者と出会ってしまったら肉弾戦を強いられることになる。
ボールやバットを投げつけるのもありだとは思うが、数に限りがあるからな。
肉弾戦になるのなら、数が多いに越したことはない。
我に返った。
野球は楽しいし、ずっとやっていたいけど、そういうわけにはいかないじゃないか。
亀田を倒し、早く犯人を捕まえなくちゃいけないのに。
「オウ、よそ見したら危ないでーす!」
「いてっ」
ボールを見事に頭に食らう。
所詮はキャッチボール、ノックに比べたら威力が大幅に低いとは言え、それでも結構痛かった。
うーん、硬球恐るべし。
「大丈夫でーすか?」
「あ、ああ……」
とりあえず、コイツが無害と分かっただけ収穫としよう。
殺し合いという場において仲間の存在はかなり大きい。
仲間を作っている方が信頼も得やすいだろうし、何より戦闘面で有難い。
こちらに武器がない以上、殺し合う気の者と出会ってしまったら肉弾戦を強いられることになる。
ボールやバットを投げつけるのもありだとは思うが、数に限りがあるからな。
肉弾戦になるのなら、数が多いに越したことはない。
「それより聞きたい事があるんだけど」
ボールを投げ返しながら問う。
彼に聞きたい事――彼だけじゃなくて遭遇した者全員に聞いておきたい事だが――は三つ。
ボールを投げ返しながら問う。
彼に聞きたい事――彼だけじゃなくて遭遇した者全員に聞いておきたい事だが――は三つ。
一つ目は、亀田について。
亀田について何か知らないか、また亀田の持つ技術について何か知っている事はないか。
当然ながら、それらの情報は脱出の上で役に立つ。
亀田について何か知らないか、また亀田の持つ技術について何か知っている事はないか。
当然ながら、それらの情報は脱出の上で役に立つ。
二つ目は、相手について。
あの最初の場所で知り合いが近くに居たりしなかったか。
もしいたとしたらその人は信頼できる人なのかどうか。
そして一番大事なのは、亀田に目をつけられる理由に心当たりがあるのか、だ。
俺の場合は「時空警察だから」だと思っている。
俺が追う犯人が亀田、もしくはその犯人を裏で操っているのが亀田という可能性が高い。
もしこれで殺し合いに巻き込まれた者の大半が亀田の関係者ないし亀田の起こした事件の関係者だとしたら?
そうだった場合に具体的にそれが何の役に立つかまではまだ分からないが、もしかしたら何かのヒントになりうるかもしれない。
情報はあって困るものではないのだ。
あの最初の場所で知り合いが近くに居たりしなかったか。
もしいたとしたらその人は信頼できる人なのかどうか。
そして一番大事なのは、亀田に目をつけられる理由に心当たりがあるのか、だ。
俺の場合は「時空警察だから」だと思っている。
俺が追う犯人が亀田、もしくはその犯人を裏で操っているのが亀田という可能性が高い。
もしこれで殺し合いに巻き込まれた者の大半が亀田の関係者ないし亀田の起こした事件の関係者だとしたら?
そうだった場合に具体的にそれが何の役に立つかまではまだ分からないが、もしかしたら何かのヒントになりうるかもしれない。
情報はあって困るものではないのだ。
そして三つ目。
今の装備で殺し合いに積極的な者と出会った時、一体どう行動するつもりなのか。
作戦といえるほど具体的な者でなくても、ある程度方針は固めておきたい。
逃げるのか、戦うのか。
せめてそれぐらいは決めておかないとまずいだろう。
出来るだけ相手の意思を尊重した方針でいきたい。
今の装備で殺し合いに積極的な者と出会った時、一体どう行動するつもりなのか。
作戦といえるほど具体的な者でなくても、ある程度方針は固めておきたい。
逃げるのか、戦うのか。
せめてそれぐらいは決めておかないとまずいだろう。
出来るだけ相手の意思を尊重した方針でいきたい。
「ふむ、何で――」
口を開いたせいで集中力が散漫になったのだろうか。
足がもつれてアルベルトがバランスを崩した。
そのまま前回り受け身をするように肩から落下し、ごろんと一回転をする。
しかも勢いは全く削がれず何度も何度も回転し――
「お、おい!」
そのまま橋に激突した。
川に落ちなかっただけよかったかもしれないが、大丈夫だろうか。
「オ~ウ、肩が外れまシタ! 救急車呼んで下さ~い!」
……大丈夫そうだな。
肩が外れてるって言ってるわりには元気出し、応急処置をすればあっさり回復しそうに見える。
確か地図に診療所が……って、誰だアイツ?
「アルベルト!」
橋の向こうに現れた男は、ゆっくりとこちらに近付いている。
とは言え、こちらに気付いていないわけではないだろう。
奴からは明確な殺意を感じ取れる。
だからこそ、襲いかからずにゆっくりと歩いてくるのが不思議だった。
そして、それは同時に不気味でもあった。
口を開いたせいで集中力が散漫になったのだろうか。
足がもつれてアルベルトがバランスを崩した。
そのまま前回り受け身をするように肩から落下し、ごろんと一回転をする。
しかも勢いは全く削がれず何度も何度も回転し――
「お、おい!」
そのまま橋に激突した。
川に落ちなかっただけよかったかもしれないが、大丈夫だろうか。
「オ~ウ、肩が外れまシタ! 救急車呼んで下さ~い!」
……大丈夫そうだな。
肩が外れてるって言ってるわりには元気出し、応急処置をすればあっさり回復しそうに見える。
確か地図に診療所が……って、誰だアイツ?
「アルベルト!」
橋の向こうに現れた男は、ゆっくりとこちらに近付いている。
とは言え、こちらに気付いていないわけではないだろう。
奴からは明確な殺意を感じ取れる。
だからこそ、襲いかからずにゆっくりと歩いてくるのが不思議だった。
そして、それは同時に不気味でもあった。
「ハーイ、私アルベ……」
奴の発する異常な空気が分からないのか(まあ、一般人ならそれもやむなしなんだろうけど)アルベルトが自己紹介をしながら奴に駆け寄る。
まるでゴミでも見るような目でアルベルトを見、奴は前蹴りを繰り出した。
まともにボディに打撃を受けて、橋を転がるアルベルト。
問答無用かこの野郎!
「何をするんだ!」
アルベルトのデイパックを拾いながら橋上に駆けつける。
デイパックにはボールとバット、それからグローブが入っている。
俺の支給品が武器でない以上、頼りになるのはこれらの道具だけだ。
そして、おそらく奴は肉弾戦では俺を凌ぐ。
あの蹴りを出す速さと、あそこまでアルベルトを吹き飛ばす威力。
まともな武器があるならともかく、今の状況で格闘戦にでもなろうものなら勝ち目は薄い。
バットを使えばそれなりに戦えるかもしれないが……やはり金属バットでなく木製バットな事に不安が残る。
何だか奴にあっさりへし折られてしまいそうだ。
奴の発する異常な空気が分からないのか(まあ、一般人ならそれもやむなしなんだろうけど)アルベルトが自己紹介をしながら奴に駆け寄る。
まるでゴミでも見るような目でアルベルトを見、奴は前蹴りを繰り出した。
まともにボディに打撃を受けて、橋を転がるアルベルト。
問答無用かこの野郎!
「何をするんだ!」
アルベルトのデイパックを拾いながら橋上に駆けつける。
デイパックにはボールとバット、それからグローブが入っている。
俺の支給品が武器でない以上、頼りになるのはこれらの道具だけだ。
そして、おそらく奴は肉弾戦では俺を凌ぐ。
あの蹴りを出す速さと、あそこまでアルベルトを吹き飛ばす威力。
まともな武器があるならともかく、今の状況で格闘戦にでもなろうものなら勝ち目は薄い。
バットを使えばそれなりに戦えるかもしれないが……やはり金属バットでなく木製バットな事に不安が残る。
何だか奴にあっさりへし折られてしまいそうだ。
それなら、いっそ逃げてしまおうか。
ここは狭い橋の上。
奴の横をすり抜けることは出来ないだろうが、それは同時に敵に背を向け逃げた時に先回りをされないということを意味する。
歩いてきたのが自信の表れだとしたら、奴の足は速いと見ていいだろう。
普通に逃げたのでは追いつかれるかもしれない。
だが、先述の通りここは狭い橋の上だ。
ボールやバットをぶちまければ、相当距離を稼げるだろう。
あとは適当に森の中で撒けばいいいい。
アルベルトも「ア~ウチ!」とか叫べるぐらいに元気があるみたいだし、最悪診療所辺りを待ち合わせ場所にしてバラバラに逃げるのも手だ。
水に飛び込むという手もないわけじゃないし、逆に水に相手を落としてもいい。
「危険人物みたいだし、アイツはここで打倒する」とさえ考えなければ、意外とどうにかなる気がしてきた。
ここは狭い橋の上。
奴の横をすり抜けることは出来ないだろうが、それは同時に敵に背を向け逃げた時に先回りをされないということを意味する。
歩いてきたのが自信の表れだとしたら、奴の足は速いと見ていいだろう。
普通に逃げたのでは追いつかれるかもしれない。
だが、先述の通りここは狭い橋の上だ。
ボールやバットをぶちまければ、相当距離を稼げるだろう。
あとは適当に森の中で撒けばいいいい。
アルベルトも「ア~ウチ!」とか叫べるぐらいに元気があるみたいだし、最悪診療所辺りを待ち合わせ場所にしてバラバラに逃げるのも手だ。
水に飛び込むという手もないわけじゃないし、逆に水に相手を落としてもいい。
「危険人物みたいだし、アイツはここで打倒する」とさえ考えなければ、意外とどうにかなる気がしてきた。
「……一応確認しておくけど、殺し合いに乗ってるわけじゃないんだよな?」
「当たり前だ!」
相手の放ったその一言に腹が立った。
少なくとも、アルベルトに悪意はなかった。
お世辞にも友好関係を築きたくなるようなテンションではないが、悪人でない事は一目見れば分かったはずだ。
あれだけ無防備に近寄って来たのだ、疑う方がどうかしてる。
そんなアルベルトをあっさり蹴り飛ばしておいて、「殺し合いに乗ってるか」だと?
ふざけるな。
こんな殺し合い、俺達が乗るわけないだろう!
「そうか……なら、ここで死んでもらう」
男が禍々しい手を突き出して言う。
余裕を見せやがって……暢気に宣言してないでさっさと攻撃すればいいのに。
だが、その満身に付け入る隙はありそうだ。
「俺の親友の亀田君のために――」
「当たり前だ!」
相手の放ったその一言に腹が立った。
少なくとも、アルベルトに悪意はなかった。
お世辞にも友好関係を築きたくなるようなテンションではないが、悪人でない事は一目見れば分かったはずだ。
あれだけ無防備に近寄って来たのだ、疑う方がどうかしてる。
そんなアルベルトをあっさり蹴り飛ばしておいて、「殺し合いに乗ってるか」だと?
ふざけるな。
こんな殺し合い、俺達が乗るわけないだろう!
「そうか……なら、ここで死んでもらう」
男が禍々しい手を突き出して言う。
余裕を見せやがって……暢気に宣言してないでさっさと攻撃すればいいのに。
だが、その満身に付け入る隙はありそうだ。
「俺の親友の亀田君のために――」
正直、気持ちは逃げる方に傾いていた。
あの禍々しい手で戦おうとしたということは、飛び道具を所持していないということだ。
所持しているならそれを使って俺とアルベルトをさっさと殺すのが普通だろう。
それに、慢心をしているならボールをぶち撒けるだけで楽に逃げ切れる可能性が高いというのも大きかった。
アルベルトと別れる必要がないならそれに越したことはない。
さっきからアウチアウチとやかましい男だが、それでも立派な仲間なのだから。
だから、8:2くらいの割り合いで逃げたい気持ちが勝っていた。
「今……何て……」
だが、事情が変わってしまった。
奴は亀田を知っている。
それも、奴は親友だと言ったのだ。
出来れば話を聞いておきたい。
だが、そのためにはまず無力化しないといけないだろう。
今の装備でそれを狙うべきなのだろうか?
――逃げるべきか戦うべきか、今や完全に5:5になってしまった。
あの禍々しい手で戦おうとしたということは、飛び道具を所持していないということだ。
所持しているならそれを使って俺とアルベルトをさっさと殺すのが普通だろう。
それに、慢心をしているならボールをぶち撒けるだけで楽に逃げ切れる可能性が高いというのも大きかった。
アルベルトと別れる必要がないならそれに越したことはない。
さっきからアウチアウチとやかましい男だが、それでも立派な仲間なのだから。
だから、8:2くらいの割り合いで逃げたい気持ちが勝っていた。
「今……何て……」
だが、事情が変わってしまった。
奴は亀田を知っている。
それも、奴は親友だと言ったのだ。
出来れば話を聞いておきたい。
だが、そのためにはまず無力化しないといけないだろう。
今の装備でそれを狙うべきなのだろうか?
――逃げるべきか戦うべきか、今や完全に5:5になってしまった。
☆ ★ ☆ ★ ☆
三橋一郎がゆっくりと獲物に近付いたのは、そんなに深い理由があってのことではなかった。
ただ単に、見つけた連中が殺し合いを円滑に進めたいと思っている人間かどうかを見極めたいと思っただけ。
殺し合いに乗り、同盟を結んだ二人組なら、こちらに気付くなり攻撃を仕掛けてきただろう。
こちらは腐ってもサイボーグ、初撃を防ぐくらいどうということはない。
防いでから“こちらも乗っているので争う気はない”という事を伝え交渉に入ればいい。
もし逃げられたら追いかけて背後から殺せばいいだけだ。
遠距離からの攻撃手段を持たないが、走力にはそれなりに自信がある。
それに、障害物は避けねばならない相手と違い、障害物を薙ぎ払って追いかけられる。
何せこれは木ですら簡単にへし折るのだ。
追いついてしまえば人間なんぞ簡単に殺すことができる。
ただ単に、見つけた連中が殺し合いを円滑に進めたいと思っている人間かどうかを見極めたいと思っただけ。
殺し合いに乗り、同盟を結んだ二人組なら、こちらに気付くなり攻撃を仕掛けてきただろう。
こちらは腐ってもサイボーグ、初撃を防ぐくらいどうということはない。
防いでから“こちらも乗っているので争う気はない”という事を伝え交渉に入ればいい。
もし逃げられたら追いかけて背後から殺せばいいだけだ。
遠距離からの攻撃手段を持たないが、走力にはそれなりに自信がある。
それに、障害物は避けねばならない相手と違い、障害物を薙ぎ払って追いかけられる。
何せこれは木ですら簡単にへし折るのだ。
追いついてしまえば人間なんぞ簡単に殺すことができる。
だがしかし、二つほど誤算があった。
橋の辺りに差し掛かると、見るからに殺し合いには乗っていない二人組の内一人がこちらに駆け寄ってきた。
鬼の手で葬ってやろうと考え、まずは相手の腹に蹴りを繰り出す。
防がれたら鬼の手で頭から引き裂き、防がなかったらバランスを崩した所をやはり頭から引き裂いてやるつもりだった。
頭蓋骨をあっさりと引き裂ければ、全力を出さずとも腹をぶち抜く事ぐらい可能だろうと考えたからだ。
折角見るからに雑魚と遭遇したのだ、鬼の手の実戦データを取らない手はない。
やはり木ではなく人間相手のデータこそ今後の役に立つだろうから。
橋の辺りに差し掛かると、見るからに殺し合いには乗っていない二人組の内一人がこちらに駆け寄ってきた。
鬼の手で葬ってやろうと考え、まずは相手の腹に蹴りを繰り出す。
防がれたら鬼の手で頭から引き裂き、防がなかったらバランスを崩した所をやはり頭から引き裂いてやるつもりだった。
頭蓋骨をあっさりと引き裂ければ、全力を出さずとも腹をぶち抜く事ぐらい可能だろうと考えたからだ。
折角見るからに雑魚と遭遇したのだ、鬼の手の実戦データを取らない手はない。
やはり木ではなく人間相手のデータこそ今後の役に立つだろうから。
だがしかし、ここで最初の誤算が起きる。
それは、予想以上にアルベルトが弱かったことだ。
ガードするでも蹲るでもなく、アルベルトは吹き飛んだ。
あくまでジャブ感覚で放っていたのに。
予想以上に豪力の効果は高かったということだろうか?
とにかく、そのままゴロゴロと橋の上を転がり続け、アルベルトは鬼の手の射程から出てしまった。
それは、予想以上にアルベルトが弱かったことだ。
ガードするでも蹲るでもなく、アルベルトは吹き飛んだ。
あくまでジャブ感覚で放っていたのに。
予想以上に豪力の効果は高かったということだろうか?
とにかく、そのままゴロゴロと橋の上を転がり続け、アルベルトは鬼の手の射程から出てしまった。
そして立て続けにもう一つの誤算が起きる。
新六が橋の上までやってきてしまったことだ。
鬼の手の威力がどれほどのものか分からないが、下手をしたら一撃で橋を壊しかねない。
橋を破壊して水中戦になった場合、果たして鬼の手はちゃんと役に立つのだろうか?
水ごと相手を引き裂けるのか、それとも水中の抵抗力のせいで鬼の手といえど殴る速度は遅くなるのか。
遅くなったとしても、触れた時の威力は変わらないのか否か。
そんな状況で、果たして奴らをきちんと仕留められるのか否か。
分からない事が多すぎる。
出来る事なら、橋は壊さずにおきたい。
となると、橋の上では鬼の手を使わずに、二人を橋から叩きだす必要がある。
新六が橋の上までやってきてしまったことだ。
鬼の手の威力がどれほどのものか分からないが、下手をしたら一撃で橋を壊しかねない。
橋を破壊して水中戦になった場合、果たして鬼の手はちゃんと役に立つのだろうか?
水ごと相手を引き裂けるのか、それとも水中の抵抗力のせいで鬼の手といえど殴る速度は遅くなるのか。
遅くなったとしても、触れた時の威力は変わらないのか否か。
そんな状況で、果たして奴らをきちんと仕留められるのか否か。
分からない事が多すぎる。
出来る事なら、橋は壊さずにおきたい。
となると、橋の上では鬼の手を使わずに、二人を橋から叩きだす必要がある。
……やれやれ、面倒な事になったものだ。
銃を構える気配はないため、飛び道具は持っていないと見ていいだろう。
持っていたら、際威嚇射撃ぐらいしているはずだ。仲間が襲われたのだからな。
出来れば接近戦の当たり武器を所持していると有難い。
接近戦は願ったり叶ったりだ。
(見ていてくれよ亀田君。君のために頑張るから)
鬼の手を突き出し牽制する。
見るからに怪しい鬼の手を見て、警戒しない奴はいない。
橋の上では出来るだけ振いたくはないが、それを悟られないようにしたい。
鬼の手に気を取られ相手の動きが鈍ってくれれば幸いだ。
「なら、ここで死んでもらう。俺の親友の亀田君のために――」
そうさ、俺は君のためならどんなことだって出来る。
だって君は、大切な親友なんだから。
だから、これが終わったらまた二人でキャッチボールをしようよ、亀田君……
また、昔みたいに、二人で仲良く。
銃を構える気配はないため、飛び道具は持っていないと見ていいだろう。
持っていたら、際威嚇射撃ぐらいしているはずだ。仲間が襲われたのだからな。
出来れば接近戦の当たり武器を所持していると有難い。
接近戦は願ったり叶ったりだ。
(見ていてくれよ亀田君。君のために頑張るから)
鬼の手を突き出し牽制する。
見るからに怪しい鬼の手を見て、警戒しない奴はいない。
橋の上では出来るだけ振いたくはないが、それを悟られないようにしたい。
鬼の手に気を取られ相手の動きが鈍ってくれれば幸いだ。
「なら、ここで死んでもらう。俺の親友の亀田君のために――」
そうさ、俺は君のためならどんなことだって出来る。
だって君は、大切な親友なんだから。
だから、これが終わったらまた二人でキャッチボールをしようよ、亀田君……
また、昔みたいに、二人で仲良く。
☆ ★ ☆ ★ ☆
(この男、予想以上に強いッ)
三橋のソバットにより戦闘が始まり早数分。
萩原の頭は、「おそらく勝てない」という結論を出していた。
左手で持ったデイパックを盾代りにし、右手でバットを振るっているが、片手で振るった木製バットでは決定打になりそうもない。
運がよくて千日手、持久戦になれば間違いなく負けるだろう。
先程から牽制でしか鬼の手を使っていない事から、あの腕はこけおどしだと判断した。
とはいえ、通常の拳があり得ない程重いのだ。
渾身の左ストレートなどのおかげで、最初は橋の中にいたはずなのに、気が付けば陸地が背後に迫っている。
(く……逃げるしかないか……!)
最初から素直に逃げなかった事を若干後悔しながらどうすべきか考える。
アルベルトに逃走の旨を何とか伝え、三橋から逃走する。
少なくとも、それはもう確定だ。
ここで亀田の情報を引き出せないのは正直惜しいが、命は落とすわけにもいかない。
何としてでもここを抜け出し、時空犯罪者を捕まえねばならないのだ。
そのためなら、無様に敗走だってしよう。
この任務は失敗するわけにいかないのだから。
三橋のソバットにより戦闘が始まり早数分。
萩原の頭は、「おそらく勝てない」という結論を出していた。
左手で持ったデイパックを盾代りにし、右手でバットを振るっているが、片手で振るった木製バットでは決定打になりそうもない。
運がよくて千日手、持久戦になれば間違いなく負けるだろう。
先程から牽制でしか鬼の手を使っていない事から、あの腕はこけおどしだと判断した。
とはいえ、通常の拳があり得ない程重いのだ。
渾身の左ストレートなどのおかげで、最初は橋の中にいたはずなのに、気が付けば陸地が背後に迫っている。
(く……逃げるしかないか……!)
最初から素直に逃げなかった事を若干後悔しながらどうすべきか考える。
アルベルトに逃走の旨を何とか伝え、三橋から逃走する。
少なくとも、それはもう確定だ。
ここで亀田の情報を引き出せないのは正直惜しいが、命は落とすわけにもいかない。
何としてでもここを抜け出し、時空犯罪者を捕まえねばならないのだ。
そのためなら、無様に敗走だってしよう。
この任務は失敗するわけにいかないのだから。
大事なのは逃げるタイミングだ。
隙を突かずに背中を見せれば即死に繋がる。
かといって対峙したまま逃げ切れるとも思えない。
だから、『自分は橋から出ているのに、相手はまだ橋の上に残っている』というタイミングを突くことにした。
その瞬間にボールやバットといったデイパックの中身をぶち撒け足を止める。
一本道の橋ならともかく、広々と走り回れる陸地でなら仮に拾ったバットを投げられても避けることが出来るだろう。
そう考えてデイパックを半開きにし、機会を待った。
自分とアルベルトの、いや、それだけでなく未来の命運がかかっているのだ。
失敗するわけにはいかない――
隙を突かずに背中を見せれば即死に繋がる。
かといって対峙したまま逃げ切れるとも思えない。
だから、『自分は橋から出ているのに、相手はまだ橋の上に残っている』というタイミングを突くことにした。
その瞬間にボールやバットといったデイパックの中身をぶち撒け足を止める。
一本道の橋ならともかく、広々と走り回れる陸地でなら仮に拾ったバットを投げられても避けることが出来るだろう。
そう考えてデイパックを半開きにし、機会を待った。
自分とアルベルトの、いや、それだけでなく未来の命運がかかっているのだ。
失敗するわけにはいかない――
だが、運は萩原を見放した。
手にした木製バットがへし折れ、とうとう武器を失ってしまう。
それだけならまだいい。
もう萩原は逃げる事を選択しており、攻撃など牽制でしかなかったのだから。
なので、致命的なのはバットが折れた事ではなかった。
バットを失い、次の打撃をデイパックで受けた際、一つのボールがデイパックから零れ落ちた。
向こう側からの衝撃で飛び出したボールは、萩原の方に飛んでくる。
足もとに転がったボールを、別に踏んづけたわけではない。
ただ、踏んづけぬよう一瞬視線が足元へと行き、致命的な隙が生まれた。
そして、その隙を見逃すほど三橋一郎は愚かではない。
手にした木製バットがへし折れ、とうとう武器を失ってしまう。
それだけならまだいい。
もう萩原は逃げる事を選択しており、攻撃など牽制でしかなかったのだから。
なので、致命的なのはバットが折れた事ではなかった。
バットを失い、次の打撃をデイパックで受けた際、一つのボールがデイパックから零れ落ちた。
向こう側からの衝撃で飛び出したボールは、萩原の方に飛んでくる。
足もとに転がったボールを、別に踏んづけたわけではない。
ただ、踏んづけぬよう一瞬視線が足元へと行き、致命的な隙が生まれた。
そして、その隙を見逃すほど三橋一郎は愚かではない。
三橋が鬼の手を付けた右の拳を固く握る。
橋から叩き出してから思う存分鬼の手を振るうつもりだったが、こんな大チャンスを見逃すというのは愚の骨頂。
既に『鬼の手は触れていないものまで破壊する超兵器ではない』という事は分かっている。
触れた木しか折れなかったし、外したジャブでは相手の頭をもぎ取ることができなかった。
要するに、壊したくないものには触れなければいいのだ。
『回避された際、勢い余って橋を壊すのは避けたかった』
これが三橋が鬼の手を温存していた主な理由。
だがしかし、橋の破壊の心配が無い攻撃方法も持ってはいる。
万が一避けられたとしても、勢い余って橋に触れる事は絶対にない攻撃方法。
隙がデカイのでやるつもりはなかったが、決まれば一撃必殺となりうる。
隙を見せても相手に避けられないような状況になったら、つまり相手に隙が生まれたら、使ってしまおうと思っていた。
橋から叩き出してから思う存分鬼の手を振るうつもりだったが、こんな大チャンスを見逃すというのは愚の骨頂。
既に『鬼の手は触れていないものまで破壊する超兵器ではない』という事は分かっている。
触れた木しか折れなかったし、外したジャブでは相手の頭をもぎ取ることができなかった。
要するに、壊したくないものには触れなければいいのだ。
『回避された際、勢い余って橋を壊すのは避けたかった』
これが三橋が鬼の手を温存していた主な理由。
だがしかし、橋の破壊の心配が無い攻撃方法も持ってはいる。
万が一避けられたとしても、勢い余って橋に触れる事は絶対にない攻撃方法。
隙がデカイのでやるつもりはなかったが、決まれば一撃必殺となりうる。
隙を見せても相手に避けられないような状況になったら、つまり相手に隙が生まれたら、使ってしまおうと思っていた。
(まず……っ!)
三橋が右腕を振り上げるのを見、萩原は慌ててデイパックでのガードを図る。
しかし、鬼の手を装備してのアッパーカットはそう簡単に防げる代物ではなかった。
避けることだけを優先し、後方に倒れ込むようにして顎への直撃は避けたものの――
「オウ!」
あっさりと、本当にあっさりと左腕はデイパックとともに上空へと打ち上げられた。
それだけでなく、腕でガードされていたはずの洋服までがパックリと裂け、その向こうに在る鍛え上げられた肉体にまで真っ赤な線を付けられた。
言葉を発することもなく、萩原の体はそのまま後方へと倒れ込む。
そんな萩原を見届けることなく、三橋は一気に橋を駆け抜けた。
その瞳が映すのはアルベルト・安生・アズナブル。
痛みを押して立ち上がり、二人の攻防の結末を目撃したばかりの四番打者。
続けざまにアルベルトを殺そうとし、
「ン? ……あなた、火星オクトパスにいませんでしたか?」
つい、手を止めてしまった。
三橋が右腕を振り上げるのを見、萩原は慌ててデイパックでのガードを図る。
しかし、鬼の手を装備してのアッパーカットはそう簡単に防げる代物ではなかった。
避けることだけを優先し、後方に倒れ込むようにして顎への直撃は避けたものの――
「オウ!」
あっさりと、本当にあっさりと左腕はデイパックとともに上空へと打ち上げられた。
それだけでなく、腕でガードされていたはずの洋服までがパックリと裂け、その向こうに在る鍛え上げられた肉体にまで真っ赤な線を付けられた。
言葉を発することもなく、萩原の体はそのまま後方へと倒れ込む。
そんな萩原を見届けることなく、三橋は一気に橋を駆け抜けた。
その瞳が映すのはアルベルト・安生・アズナブル。
痛みを押して立ち上がり、二人の攻防の結末を目撃したばかりの四番打者。
続けざまにアルベルトを殺そうとし、
「ン? ……あなた、火星オクトパスにいませんでしたか?」
つい、手を止めてしまった。
アルベルトの存在に、三橋は本当に今の今まで気付かなかった。
つい先ほどまで彼の頭は、殺し合いの参加者を『殺し合いに乗っている、同盟を結ぶ価値のある者』と『それ以外の殺すべき者』の二種類でしか考えていなかった。
だから先程アルベルトが駆け寄って来た時も機械的に『コイツは殺す』と決定付け、相手が誰かもよく考えずに始末しようと思っていた。
それを、今になって気付いてしまった。
いい印象は正直欠片も持っていないが、アルベルトは確かに自分のチ-ムメイトだと。
(……亀田君はどうしてアルベルトなんかを……)
少しばかり疑問を持ったが、すぐに頭を切り替える。
自分はただ、親友の望みを叶えるだけだ。
そして親友の望みとは、自分が推測するものではない。
望みは命令という形で自分に知らされ、自分はそれを忠実にこなすことで彼の望みを叶えている。
それが今の二人の関係なのだ。
「誰誰をどうしろ」といった詳しい命令など受けていないし、知人と言えど殺した方が親友のためになるだろう。
そう考えて、三橋は下した手を再び上げる。
つい先ほどまで彼の頭は、殺し合いの参加者を『殺し合いに乗っている、同盟を結ぶ価値のある者』と『それ以外の殺すべき者』の二種類でしか考えていなかった。
だから先程アルベルトが駆け寄って来た時も機械的に『コイツは殺す』と決定付け、相手が誰かもよく考えずに始末しようと思っていた。
それを、今になって気付いてしまった。
いい印象は正直欠片も持っていないが、アルベルトは確かに自分のチ-ムメイトだと。
(……亀田君はどうしてアルベルトなんかを……)
少しばかり疑問を持ったが、すぐに頭を切り替える。
自分はただ、親友の望みを叶えるだけだ。
そして親友の望みとは、自分が推測するものではない。
望みは命令という形で自分に知らされ、自分はそれを忠実にこなすことで彼の望みを叶えている。
それが今の二人の関係なのだ。
「誰誰をどうしろ」といった詳しい命令など受けていないし、知人と言えど殺した方が親友のためになるだろう。
そう考えて、三橋は下した手を再び上げる。
「まあ、どっちでもいいでーす。それよりあなた、一緒に野球をやりませんか?」
「……なんだと?」
三橋の腕が止まる。
別に一緒に野球がやりたいからというわけではない。
ただ理解不能な言動に呆気に取られてしまっただけだ。
「そこの彼はナイスな腕を持ってまーす。怪我を治せばいい選手になるはずでーす。
だから、一緒に野球をやりましょーう!」
「……何でそんな事が言えるんだ? 俺はお前の仲間を殺したんだぞ?」
何故、そんな自分を野球に誘ってくれるのか。
三橋にはそれが理解できなかった。
親友でさえ、歯向かえば怒ってキツイ仕置きをしてくるというのに。
「何故って……野球が楽しいからでーす」
それはとてもシンプルな答えだった。
望んでいた答えではないけど、野球を愛した三橋にとって理解可能な思考ではあった。
確かに野球は面白い。
野球のためなら命だって賭けられるんじゃないかってほど、自分も野球を愛している。
野球をするためなら襲ってきた者だろうと気にしないというのも、極端ではあるが野球馬鹿の一種として受け入れられた。
「ああ、そうだな……野球は楽しいからな……」
だが、思考を理解してやったのと、この場を見逃してやることとは別問題だ。
自分が死ぬなどと思ってもいなさそうなアルベルトを見下ろしながら、三橋は呟く。
「でもな……やっぱり一番楽しいのは、“親友とする”野球なんだよ。
人生で一番楽しかったのは、亀田君と一緒に野球をしてた時なんだよ」
昔を思い出しながら、三橋は目を閉じた。
そしてそのまま右腕を斜めに振り下ろす。
体中に生暖かい液体を浴びながら、三橋はアルベルトの事を少しばかり思い返した。
目を開け、アルベルトがしっかりと二つに分かれたことを確認する。
「だから、ごめんな。俺のやりたい“野球”に、アルベルトは入ってないんだ」
そうとだけ呟くと、支給品も回収せずに三橋は再び歩き出す。
かつての仲間を殺すのが、全く辛くないわけがない。
気持ちは沈むし、後味だって最悪だ。
だけど、三橋はアルベルトを躊躇いなく殺害した。
心の中の天秤において、亀田の存在は圧倒的なものなのだ。
「……なんだと?」
三橋の腕が止まる。
別に一緒に野球がやりたいからというわけではない。
ただ理解不能な言動に呆気に取られてしまっただけだ。
「そこの彼はナイスな腕を持ってまーす。怪我を治せばいい選手になるはずでーす。
だから、一緒に野球をやりましょーう!」
「……何でそんな事が言えるんだ? 俺はお前の仲間を殺したんだぞ?」
何故、そんな自分を野球に誘ってくれるのか。
三橋にはそれが理解できなかった。
親友でさえ、歯向かえば怒ってキツイ仕置きをしてくるというのに。
「何故って……野球が楽しいからでーす」
それはとてもシンプルな答えだった。
望んでいた答えではないけど、野球を愛した三橋にとって理解可能な思考ではあった。
確かに野球は面白い。
野球のためなら命だって賭けられるんじゃないかってほど、自分も野球を愛している。
野球をするためなら襲ってきた者だろうと気にしないというのも、極端ではあるが野球馬鹿の一種として受け入れられた。
「ああ、そうだな……野球は楽しいからな……」
だが、思考を理解してやったのと、この場を見逃してやることとは別問題だ。
自分が死ぬなどと思ってもいなさそうなアルベルトを見下ろしながら、三橋は呟く。
「でもな……やっぱり一番楽しいのは、“親友とする”野球なんだよ。
人生で一番楽しかったのは、亀田君と一緒に野球をしてた時なんだよ」
昔を思い出しながら、三橋は目を閉じた。
そしてそのまま右腕を斜めに振り下ろす。
体中に生暖かい液体を浴びながら、三橋はアルベルトの事を少しばかり思い返した。
目を開け、アルベルトがしっかりと二つに分かれたことを確認する。
「だから、ごめんな。俺のやりたい“野球”に、アルベルトは入ってないんだ」
そうとだけ呟くと、支給品も回収せずに三橋は再び歩き出す。
かつての仲間を殺すのが、全く辛くないわけがない。
気持ちは沈むし、後味だって最悪だ。
だけど、三橋はアルベルトを躊躇いなく殺害した。
心の中の天秤において、亀田の存在は圧倒的なものなのだ。
たった一人の親友のために、多くの友を犠牲にする。
決して楽な道ではない。
それでも三橋はその道を選んでしまった。
振り返ることもせず、三橋は歩き続ける。
後戻りのできない、人殺しの道を。
決して楽な道ではない。
それでも三橋はその道を選んでしまった。
振り返ることもせず、三橋は歩き続ける。
後戻りのできない、人殺しの道を。
【G-5/橋から大分離れた所/一日目/黎明】
【三橋一郎@パワポケ3】
[状態]:健康 エネルギー85%
[装備]:鬼の手、パワーと走力の+パーツ一式、豪力
[道具]:支給品一式、予備バッテリー
[参戦時期]亀田の乗るガンダーロボと対決して敗北。亀田に従わされしばらく経ってから
[思考]
基本:亀田の命令に従いバトルロワイヤルを円滑に進めるために行動する
1:参加者を積極的に探して殺す
2:もしも相手がマーダーならば協力してもいい
3:亀田に対する恐怖心
[備考]:萩原は死んだと思っています
【三橋一郎@パワポケ3】
[状態]:健康 エネルギー85%
[装備]:鬼の手、パワーと走力の+パーツ一式、豪力
[道具]:支給品一式、予備バッテリー
[参戦時期]亀田の乗るガンダーロボと対決して敗北。亀田に従わされしばらく経ってから
[思考]
基本:亀田の命令に従いバトルロワイヤルを円滑に進めるために行動する
1:参加者を積極的に探して殺す
2:もしも相手がマーダーならば協力してもいい
3:亀田に対する恐怖心
[備考]:萩原は死んだと思っています
☆ ★ ☆ ★ ☆
「アルベルト……」
三橋が去ってから数十分後、萩原新六はようやく意識を取り戻した。
三橋は気付いていなかったが、萩原はまだ生きていた。
左腕と共に血液を失ったので重症には変わりないが、それでもまだ生きている。
「ごめんな……」
三橋の鬼の手の最大の弱点。
それは『何を切り裂いたのか手応えではよく分からないこと』である。
鬼の手は豪力と合わさることで木だろうが人間だろうがいとも簡単に切り裂いてしまう。
そこに、手応えの違いなど存在しない。
どれだけ深く抉ろうと、その手応えはおそらくほとんど変わらないだろう。
いずれもプリンをスプーンで掬うかのようなあっさりとした手応えだった。
なので、しっかり対象を切り裂けたかを三橋は視覚で確かめる必要がある。
今回萩原は腕を吹き飛ばされた事で大量の血液をぶちまけていた。
出血の酷い左腕付近の服が裂け、激痛で意識を失いそのまま後ろに倒れた事から、三橋は萩原が死んだものだと勘違いしたのだ。
「……あの男は絶対に逮捕してみせるよ。いずれ、必ず」
運よく拾った自分の命を、みすみす捨てるわけにはいかない。
だから、三橋はまだ追わない。今はまだその時ではない。
今は自身の回復が最優先だ。
腕の切断面は洋服で縛り上げ、飛ばされた左腕はデイパックに入れておいた。
気休めにもならなさそうだが、冷えたペットボトルで断面を冷やしている。
貧血で頭がクラクラしてきたので、支給されたスーパーパワビタDを飲んだ。
ビンに成分が書いていないのでよく分からないが、栄養化は高いようだし貧血も少しはマシになるかもしれない。
「……さて、どうするかな」
はっきり言って、応急処置をしたとはいえこのままだとそう長くは持たないだろう。
表面を薄く切られただけとはいえ、腹部にだって傷があるのだ。
死因にはならずとも、戦闘にはそれなりに支障が出るだろう。
空気に触れたら普通に痛いし、感染症の恐れもある。
どちらの怪我も、きちんとした治療を施した方がいいだろう。
喪失した腕の復活まで望んでいるわけではないが、最低でも止血と栄養補給をしたい。
診療所か病院ならば正しい止血の仕方の乗った本が置いてあるかもしれない。
上手くいけば、点滴や輸血パックも手に入るかもしれない。
このどちらかを目指す必要があるだろう。
三橋が去ってから数十分後、萩原新六はようやく意識を取り戻した。
三橋は気付いていなかったが、萩原はまだ生きていた。
左腕と共に血液を失ったので重症には変わりないが、それでもまだ生きている。
「ごめんな……」
三橋の鬼の手の最大の弱点。
それは『何を切り裂いたのか手応えではよく分からないこと』である。
鬼の手は豪力と合わさることで木だろうが人間だろうがいとも簡単に切り裂いてしまう。
そこに、手応えの違いなど存在しない。
どれだけ深く抉ろうと、その手応えはおそらくほとんど変わらないだろう。
いずれもプリンをスプーンで掬うかのようなあっさりとした手応えだった。
なので、しっかり対象を切り裂けたかを三橋は視覚で確かめる必要がある。
今回萩原は腕を吹き飛ばされた事で大量の血液をぶちまけていた。
出血の酷い左腕付近の服が裂け、激痛で意識を失いそのまま後ろに倒れた事から、三橋は萩原が死んだものだと勘違いしたのだ。
「……あの男は絶対に逮捕してみせるよ。いずれ、必ず」
運よく拾った自分の命を、みすみす捨てるわけにはいかない。
だから、三橋はまだ追わない。今はまだその時ではない。
今は自身の回復が最優先だ。
腕の切断面は洋服で縛り上げ、飛ばされた左腕はデイパックに入れておいた。
気休めにもならなさそうだが、冷えたペットボトルで断面を冷やしている。
貧血で頭がクラクラしてきたので、支給されたスーパーパワビタDを飲んだ。
ビンに成分が書いていないのでよく分からないが、栄養化は高いようだし貧血も少しはマシになるかもしれない。
「……さて、どうするかな」
はっきり言って、応急処置をしたとはいえこのままだとそう長くは持たないだろう。
表面を薄く切られただけとはいえ、腹部にだって傷があるのだ。
死因にはならずとも、戦闘にはそれなりに支障が出るだろう。
空気に触れたら普通に痛いし、感染症の恐れもある。
どちらの怪我も、きちんとした治療を施した方がいいだろう。
喪失した腕の復活まで望んでいるわけではないが、最低でも止血と栄養補給をしたい。
診療所か病院ならば正しい止血の仕方の乗った本が置いてあるかもしれない。
上手くいけば、点滴や輸血パックも手に入るかもしれない。
このどちらかを目指す必要があるだろう。
では、どちらを目指そうか?
距離でいうなら病院の方を目指すべきだ。
洋服で縛っただけの簡素な止血では血を完全には止めれていないし、一秒でも早く治療に入るべきである。
だが、病院に向かうと三橋と遭遇する可能性が少なからず存在する。
どちらに行ったかまでは分からないが、恐らく再び橋を超えることはしていないはずだ。
橋を渡ったのだとしたら、腕からしか出血してない自分に気付かないのは不自然。
自分の死体には目もくれず、さっさと目的地に向かったとみていいだろう。
その目的地が病院だった場合は最悪だ。
奴の目的地が病院じゃなかったとしても、病院に行くまでに再び出会ってしまったら今度こそ生き延びれないだろう。
今三橋と遭遇するのは何としても避けるべきだ。
距離でいうなら病院の方を目指すべきだ。
洋服で縛っただけの簡素な止血では血を完全には止めれていないし、一秒でも早く治療に入るべきである。
だが、病院に向かうと三橋と遭遇する可能性が少なからず存在する。
どちらに行ったかまでは分からないが、恐らく再び橋を超えることはしていないはずだ。
橋を渡ったのだとしたら、腕からしか出血してない自分に気付かないのは不自然。
自分の死体には目もくれず、さっさと目的地に向かったとみていいだろう。
その目的地が病院だった場合は最悪だ。
奴の目的地が病院じゃなかったとしても、病院に行くまでに再び出会ってしまったら今度こそ生き延びれないだろう。
今三橋と遭遇するのは何としても避けるべきだ。
その点、診療所は安心できる。
三橋は診療所がある橋の向こうから、診療所を目指すには遠回りになるこの橋までやってきた。
目的地が診療所である可能性は皆無である。
三橋と遭遇しないというのはかなり大きい。
だが、診療所に行くまでに駄菓子屋や倉庫といった建物の通過を余儀なくされる。
物資のある建物には人が集まりやすいだろうし、誰にも会わないという事はまずないだろう。
仲間は欲しいが、戦闘は避けたい。
三橋は診療所がある橋の向こうから、診療所を目指すには遠回りになるこの橋までやってきた。
目的地が診療所である可能性は皆無である。
三橋と遭遇しないというのはかなり大きい。
だが、診療所に行くまでに駄菓子屋や倉庫といった建物の通過を余儀なくされる。
物資のある建物には人が集まりやすいだろうし、誰にも会わないという事はまずないだろう。
仲間は欲しいが、戦闘は避けたい。
どちらもメリット・デメリットがある。
それを承知したうえで、どちらか片方を選ばないといけない。
「よし、決めた。俺が向かうのは――」
それを承知したうえで、どちらか片方を選ばないといけない。
「よし、決めた。俺が向かうのは――」
【G-5/橋の上/一日目/黎明】
【萩原新六@パワプロクンポケット6】
[状態]:左腕欠損、腹部に軽度の切り傷
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 、野球用具一式(バット8本、ボール7球、グローブ8つ)@現実、野球超人伝@パワプロクンポケットシリーズ、パワビタD@パワプロクンポケットシリーズ、自身の左腕
[思考・状況]
1:どこかでしっかり手当をしたい。出来れば仲間も見つけたい。
2:野球超人伝を後でじっくりと読みたい。
3:元の世界に戻って犯人を捕まえる。
【萩原新六@パワプロクンポケット6】
[状態]:左腕欠損、腹部に軽度の切り傷
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 、野球用具一式(バット8本、ボール7球、グローブ8つ)@現実、野球超人伝@パワプロクンポケットシリーズ、パワビタD@パワプロクンポケットシリーズ、自身の左腕
[思考・状況]
1:どこかでしっかり手当をしたい。出来れば仲間も見つけたい。
2:野球超人伝を後でじっくりと読みたい。
3:元の世界に戻って犯人を捕まえる。
[備考]
グローブがひとつアルベルトの手についたままです。
折れたバットとボールが各1つずつ橋の東側に落ちています。
アルベルトの暴投したボールがG-05のどこかに落ちています。
グローブがひとつアルベルトの手についたままです。
折れたバットとボールが各1つずつ橋の東側に落ちています。
アルベルトの暴投したボールがG-05のどこかに落ちています。
【アルベルト・安生・アズナブル@パワプロクンポケット10 死亡】
【残り 50人】
【残り 50人】
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| 028:キャッチボール | アルベルト・安生・アズナブル | GAME OVER |
| 028:キャッチボール | 荻原新六 | 044:起承転々 |
| 020:"親友"のために | 三橋一郎 | 046:君のためなら、殺せる |