快適なり現代 ◆7WJp/yel/Y
非自然的なまでに真白な色で床が埋め尽くされ、幅六寸ほどの幅を持った個室が並ぶ、初めて見る部屋。
個室が並んでいる、と言ってもそれほど大そうなものではない。
中に入った人間の背中から太ももを隠す程度の扉と、同じ大きさの小部屋と小部屋を仕切っている壁。
その部屋が暖かな湯気で埋め尽くされている。
ここは野球場内部の簡易シャワールームという場所。
先ほど埼川珠子を殺した私は優雅に水浴びをしていた。
かなりの長寿だと自負しているが、今この瞬間ほどに快適な時間は初めてだった。
この妙な形の栓を捻ると瞬時に気持ちの良い熱湯が出てくる。
絶えることなく、だ。
長く濡れ羽色の艶やかな髪の端から端まで瑞々しい精気を取り込んでいるような気分で心が躍る。
この世界にはこれが溢れているのだとしたら、元の窮屈で汚い世界に帰る気が失せてくる。
大げさな言葉ではない、これにはそう思わせるに十分な魅力を感じる。
目前を見ると石鹸を見つけ、それを体にこすりつける。
……泡が瞬時に立ち花の匂いが漂う。
マズイ、これはマズイ。
少し石鹸を体に擦りつけるのが楽しくなってくる。
いっそのこと、この世界に常駐してしまおうか?
元の世界に置いてきた鷹森には悪いとは思うが、それほどにこの世界は快適だ。
人はこの島の外に溢れているらしいし、幸い自分は血があれば何とか生きていける。
そうだ、この世界で名探偵のように探偵業をしてみるのも悪くないかもしれない。
自分ならばどんな場所にも行けるし、忍びの里で鍛えた尾行術も行かせる。
思ったよりも生きていける確信が得られる。
この世界で生きていくことを視野に入れて考えてもいいかもしれない。
個室が並んでいる、と言ってもそれほど大そうなものではない。
中に入った人間の背中から太ももを隠す程度の扉と、同じ大きさの小部屋と小部屋を仕切っている壁。
その部屋が暖かな湯気で埋め尽くされている。
ここは野球場内部の簡易シャワールームという場所。
先ほど埼川珠子を殺した私は優雅に水浴びをしていた。
かなりの長寿だと自負しているが、今この瞬間ほどに快適な時間は初めてだった。
この妙な形の栓を捻ると瞬時に気持ちの良い熱湯が出てくる。
絶えることなく、だ。
長く濡れ羽色の艶やかな髪の端から端まで瑞々しい精気を取り込んでいるような気分で心が躍る。
この世界にはこれが溢れているのだとしたら、元の窮屈で汚い世界に帰る気が失せてくる。
大げさな言葉ではない、これにはそう思わせるに十分な魅力を感じる。
目前を見ると石鹸を見つけ、それを体にこすりつける。
……泡が瞬時に立ち花の匂いが漂う。
マズイ、これはマズイ。
少し石鹸を体に擦りつけるのが楽しくなってくる。
いっそのこと、この世界に常駐してしまおうか?
元の世界に置いてきた鷹森には悪いとは思うが、それほどにこの世界は快適だ。
人はこの島の外に溢れているらしいし、幸い自分は血があれば何とか生きていける。
そうだ、この世界で名探偵のように探偵業をしてみるのも悪くないかもしれない。
自分ならばどんな場所にも行けるし、忍びの里で鍛えた尾行術も行かせる。
思ったよりも生きていける確信が得られる。
この世界で生きていくことを視野に入れて考えてもいいかもしれない。
「ふぅ……」
栓を逆方向に捻るだけで、お湯は放水をやめる。
快適だ、何度思ったかも分らないがとにかく快適だ。
入り口で見つけた布を手に取り、体にまとわりついた水滴を拭っていく。
このタオルにも驚かされる。
冗談のような手触りの良さと何処までも沈んでいくような柔らかさを持っている。
これがそこら中に出回っているのだとしたら何とも羨ましい世界だ。
決めた、この殺し合いが終わったらこの世界に住もう。
快適だ、何度思ったかも分らないがとにかく快適だ。
入り口で見つけた布を手に取り、体にまとわりついた水滴を拭っていく。
このタオルにも驚かされる。
冗談のような手触りの良さと何処までも沈んでいくような柔らかさを持っている。
これがそこら中に出回っているのだとしたら何とも羨ましい世界だ。
決めた、この殺し合いが終わったらこの世界に住もう。
「鷹森は……私が居なくて清々してるでしょうね」
かなり振り回してきたから、彼は私に良い感情を持っていないだろう。
正直、一人でも十分に生きられるし行きずりの仲だ。
別に遠慮も要らなければ許可を取る必要もない。
完全に水滴を拭った後、先ほどまでの心地よさに少し後ろ髪を引かれながらも服を着ていく。
まずは簡素な形の下着を身に着け、シャツに袖を通し、ズボンに足を通し、最後にマントを羽織る。
少し汚れている為、気持ちの悪さがあるが贅沢は言えない。
壁に立てかけておいた愛刀を手に取り、外へと向かう。
しばらくはここに停滞する必要がある。
便利ではあるが、充電が必須とは面倒な機械だ。
正直、一人でも十分に生きられるし行きずりの仲だ。
別に遠慮も要らなければ許可を取る必要もない。
完全に水滴を拭った後、先ほどまでの心地よさに少し後ろ髪を引かれながらも服を着ていく。
まずは簡素な形の下着を身に着け、シャツに袖を通し、ズボンに足を通し、最後にマントを羽織る。
少し汚れている為、気持ちの悪さがあるが贅沢は言えない。
壁に立てかけておいた愛刀を手に取り、外へと向かう。
しばらくはここに停滞する必要がある。
便利ではあるが、充電が必須とは面倒な機械だ。
「あ」
◆ ◆ ◆
くるくる。
くるくる、くるくる。
くるくる、くるくる、くるくる。
くるくる、くるくる。
くるくる、くるくる、くるくる。
道化師の格好をしたいかつい顔の男、プレイグは手持無沙汰だと言わんばかりに手元の杖を回していた。
くるくる回っていくファンシーなデザインの杖。
それに似合わないプレイグの空を睨みつけるドギツイ顔。
何度目かになる舌打ちをしながら、プレイグは後方のドアを眺めた。
そのドアを眺めて思い出すのは、同行者の吸血鬼、あやかの『少しだけここで待機する』という言葉。
確かにリンと言う女は殺し合いに乗ったようだから、自分達が無理に動く必要がまだない。
理屈は分かる。プレイグもあやかも体力を温存するに越したことはないので、急ぐ必要はないだろう。
ただ、向こう側に主導権を握られているのがひどく気に入らない。
仕事をする時は常に妹のイルと一緒のため、コンビで動くこと自体には慣れている。
信頼も戦法も向こうに抱く感情も天と地ほどの差があるが。
いつも兄妹ではプレイグ主導で動いているのだが、今回は向こうの都合に振り回されっぱなしだ。
柄じゃない、こんなものはプレイグは柄じゃない。
やはりイルと組むのが一番気分も乗るし戦法もかみ合う。
何よりも今回の相手は幾らなんでも回りくどいやり方を好み過ぎる。
金髪の女も先ほど殺した相手も、殺し合いに積極的にされるには難しい相手だった。
ならば、あやかが誘導しプレイグが奇襲をかけるという正攻法で行くのがベストなはずだ。
だのにあやかはそれをしない。
わざわざ金髪の女を逃がして自らを危険人物として知らせるようにした。
くるくる回っていくファンシーなデザインの杖。
それに似合わないプレイグの空を睨みつけるドギツイ顔。
何度目かになる舌打ちをしながら、プレイグは後方のドアを眺めた。
そのドアを眺めて思い出すのは、同行者の吸血鬼、あやかの『少しだけここで待機する』という言葉。
確かにリンと言う女は殺し合いに乗ったようだから、自分達が無理に動く必要がまだない。
理屈は分かる。プレイグもあやかも体力を温存するに越したことはないので、急ぐ必要はないだろう。
ただ、向こう側に主導権を握られているのがひどく気に入らない。
仕事をする時は常に妹のイルと一緒のため、コンビで動くこと自体には慣れている。
信頼も戦法も向こうに抱く感情も天と地ほどの差があるが。
いつも兄妹ではプレイグ主導で動いているのだが、今回は向こうの都合に振り回されっぱなしだ。
柄じゃない、こんなものはプレイグは柄じゃない。
やはりイルと組むのが一番気分も乗るし戦法もかみ合う。
何よりも今回の相手は幾らなんでも回りくどいやり方を好み過ぎる。
金髪の女も先ほど殺した相手も、殺し合いに積極的にされるには難しい相手だった。
ならば、あやかが誘導しプレイグが奇襲をかけるという正攻法で行くのがベストなはずだ。
だのにあやかはそれをしない。
わざわざ金髪の女を逃がして自らを危険人物として知らせるようにした。
面倒で非効率的なやり方だ。
仕事はさっさと終わらせて次の仕事を探すのが賢い金の稼ぎ方と言うものだ。
もちろん愚痴を言ってもしょうがないことであるし、道具やコンビを組む条件は破格なのも事実だ。
だが、信用は出来ない。
あやかの目的は殺し合いの活性化、つまりはプレイグと共に人を殺すことではない。
あの女は殺し合いが面白くなるのならば、誰が勝ってもいいのだ。
いや、プレイグを殺して殺し合いが活性化するような状況になれば間違いなくプレイグを殺す。
プレイグもそれを承知の上で組んでいるのだ。
そのデメリットに目をつぶられるぐらいにはあやかの戦闘力と探知機は優秀だ。
仕事はさっさと終わらせて次の仕事を探すのが賢い金の稼ぎ方と言うものだ。
もちろん愚痴を言ってもしょうがないことであるし、道具やコンビを組む条件は破格なのも事実だ。
だが、信用は出来ない。
あやかの目的は殺し合いの活性化、つまりはプレイグと共に人を殺すことではない。
あの女は殺し合いが面白くなるのならば、誰が勝ってもいいのだ。
いや、プレイグを殺して殺し合いが活性化するような状況になれば間違いなくプレイグを殺す。
プレイグもそれを承知の上で組んでいるのだ。
そのデメリットに目をつぶられるぐらいにはあやかの戦闘力と探知機は優秀だ。
「お待たせしました、プレイグさん」
そんなことを考えていると、にこやかな表情で黒羽根あやかその人が近づいてくる。
デイパックと探知機と刀を持っている、準備は万端と言ったところか。
どうやら今にも出発するつもりのようだ。
思ったよりも積極的なのだな、と考えながらプレイグも腰を上げる。
未だにあやかに主導権を奪われているのは癪だったが。
だが、プレイグの予想とは異なりあやかも椅子に腰をかける。
デイパックと探知機と刀を持っている、準備は万端と言ったところか。
どうやら今にも出発するつもりのようだ。
思ったよりも積極的なのだな、と考えながらプレイグも腰を上げる。
未だにあやかに主導権を奪われているのは癪だったが。
だが、プレイグの予想とは異なりあやかも椅子に腰をかける。
「なんや、まだここに居るんか?」
「ええ、そうですね……後少し、ここでのんびりしていきましょう」
「まあ、あの金髪の姉ちゃんが働いてくれるやろうから構わんが」
「ええ、そうですね……後少し、ここでのんびりしていきましょう」
「まあ、あの金髪の姉ちゃんが働いてくれるやろうから構わんが」
自分から動く必要はない。
狭い通路ならば広範囲に攻撃できる呪文『ボーボー』で逃げ道はなくせるため、籠城には持って来いだ。
加えてリンと言う女が殺し合いに乗っているだろうし、放送を聞く限り他にも殺し合いに乗っている人間も居るようなのでわざわざ自分達が動く必要性は全くない。
故に籠城は正しい選択肢の一つでもあるのだが、そんな賢い選択をあやかがしたことが意外だった。
狭い通路ならば広範囲に攻撃できる呪文『ボーボー』で逃げ道はなくせるため、籠城には持って来いだ。
加えてリンと言う女が殺し合いに乗っているだろうし、放送を聞く限り他にも殺し合いに乗っている人間も居るようなのでわざわざ自分達が動く必要性は全くない。
故に籠城は正しい選択肢の一つでもあるのだが、そんな賢い選択をあやかがしたことが意外だった。
「探知機が少しの間だけ使えなくなりましてね。それが回復するまでの間、ですよ」
「構わへんで、急ぐ理由もないしな」
「構わへんで、急ぐ理由もないしな」
プレイグは再び椅子へ腰を落とし、杖を回し始める。
相変わらず気持ちの悪い装飾がされた杖だ、ひどくプレイグには合わない。
だが、杖のあるなしで魔法の成功率が多少なりとも違ってくる。
新しい杖が手に入るまでは贅沢を言えない。
相変わらず気持ちの悪い装飾がされた杖だ、ひどくプレイグには合わない。
だが、杖のあるなしで魔法の成功率が多少なりとも違ってくる。
新しい杖が手に入るまでは贅沢を言えない。
「さて……」
「ん、どないしたんや?」
「ん、どないしたんや?」
そんなプレイグを幾らかの時間眺めた後、あやかは席を立つ。
何をするのか気になったプレイグは思わず尋ねてしまう。
あやかは相変わらず綺麗に笑顔を作り、静かに言葉を返した。
何をするのか気になったプレイグは思わず尋ねてしまう。
あやかは相変わらず綺麗に笑顔を作り、静かに言葉を返した。
「ここなら写真があるかと思いまして」
「まだこだわっとったんかこのボケェがぁ!!」
「まだこだわっとったんかこのボケェがぁ!!」
【G-3/野球場/1日目/朝】
【黒羽根あやか@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:歓喜、テンション↑
[装備]:妖刀ムラマサ@パワプロクンポケット7裏、日本刀
[道具]:支給品一式、高性能型探知機、充電器、タオル数個
[思考・状況]
基本:『殺し合い』を円滑に進めるために動く。方法は問わない。
1:休憩、充電が終われば動き出す。
2:ゲームに乗っていない人間は殺す、マーダーに出来そうだったらする。
3:『名探偵』は、今度こそこの手で………
[備考]
1:参加者全員の顔と詳細情報についての知識を持っています。
2:探知機はあやかには反応しません。
【黒羽根あやか@パワプロクンポケット7裏】
[状態]:歓喜、テンション↑
[装備]:妖刀ムラマサ@パワプロクンポケット7裏、日本刀
[道具]:支給品一式、高性能型探知機、充電器、タオル数個
[思考・状況]
基本:『殺し合い』を円滑に進めるために動く。方法は問わない。
1:休憩、充電が終われば動き出す。
2:ゲームに乗っていない人間は殺す、マーダーに出来そうだったらする。
3:『名探偵』は、今度こそこの手で………
[備考]
1:参加者全員の顔と詳細情報についての知識を持っています。
2:探知機はあやかには反応しません。
【プレイグ@パワプロクンポケット4裏】
[状態]:健康
[装備]:ハヅキの杖@パワプロクンポケット4裏
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3(杖は無い)
[思考・状況]
基本:『殺し合い』に乗り、優勝を目指す。
1:あやかについては保留。とりあえず今は殺さない。
2:もっとまともな杖が欲しいでホンマ……
[備考]
1:杖がなくとも呪文を唱える事に支障はありません。精神的にほんの少し落ち着かないだけです。
[状態]:健康
[装備]:ハヅキの杖@パワプロクンポケット4裏
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3(杖は無い)
[思考・状況]
基本:『殺し合い』に乗り、優勝を目指す。
1:あやかについては保留。とりあえず今は殺さない。
2:もっとまともな杖が欲しいでホンマ……
[備考]
1:杖がなくとも呪文を唱える事に支障はありません。精神的にほんの少し落ち着かないだけです。
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054:朝の来ない夜に抱かれて | 黒羽根あやか | ― |
054:朝の来ない夜に抱かれて | プレイグ | ― |