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レイトレーシング(Ray Tracing)

レイトレーシング(Ray Tracing)は、光源から発せられる光の反射、屈折、影などを物理シミュレーションし、現実世界に近いリアルな映像を描画する3Dレンダリング技法です。
従来の技術より高品質な映像が得られる一方、膨大な演算処理を必要とするため、高性能なGPU(GeForce RTXなど)が求められます。


Playdateでのレイトレーシング

Playdateでレイトレーシングを動かすことは「技術的な挑戦(デモ)としては可能だが、ゲームとして実用的(リアルタイムかつ高解像度)ではない」というのが現実的な評価です。
Playdateのハードウェア性能と、実際にレイトレーシング/レイマーチングを実装した先行事例をもとに、そのハードルと実現方法を解説します。
1. ハードウェアの制約
Playdateの心臓部は 168MHzのARM Cortex-M7 です。
GPUの不在
描画はすべてCPUで行う必要があります。
レイトレーシングに必要な大量の浮動小数点演算を肩代わりする機構がありません。
1-bit ディスプレイ
Playdateは400×240ピクセルの白黒画面です。
階調を表現するには「ディザリング」が必要になり、これが演算負荷をさらに高めます。

2. 先行事例:Aras Pranckevičius氏のデモ
Unityの元エンジニアであるAras氏が、Playdateでレイトレーシング(およびレイマーチング)を含むデモ 「Crank the World」を公開しています。
彼は以下の手法で「現実的な速度」をひねり出しました。
時間的解像度の低下
毎フレーム全ピクセルを更新するのではなく、1フレームにつき「6ピクセルに1つ」や「4ピクセルに1つ」だけ更新し、数フレームかけて1枚の絵を完成させる。
低解像度レンダリング
内部的には2×2ピクセルを1ブロックとして計算し、解像度を1/4に落として描画。
ブルーノイズ・ディザリング
1-bit ディスプレイで擬似的に影や反射のグラデーションを表現するために、あらかじめ計算されたノイズテクスチャを使用。
これらすべての最適化を施しても、3Dのレイマーチングシーンではフレームレートを維持するのがやっと、という状況です。

3. 「現実的」な妥協案
もしPlaydateで「レイトレーシング的な表現」を取り入れたい場合、以下の手法がより現実的です。
レイキャスティング (Ray Casting)
『Wolfenstein 3D』や『DOOM』のような方式です。これはPlaydateでも非常に高速に動作し、すでに多くの作品で採用されています。
事前計算 (Pre-rendered RT)
動的な計算を諦め、レイトレーシングで作成したアニメーションを1ビットの動画データとして保持し、再生する手法です。
ベイクされたライティング
動的なライトではなく、事前にレイトレーシングで計算したライトマップをスプライトに適用しておく手法です。

結論
純粋なリアルタイム・レイトレーシングをPlaydateで動かすのは、「F1カーで細い路地を走る」ようなものです。エンジン(CPU)は非常に強力(マイクロコントローラとしては)ですが、画面への出力と計算のバランスが悪すぎます。
ただ、C言語でゴリゴリに最適化し、「解像度を極限まで落とした上でのディザリング表現」を逆にかっこいい演出(Lo-Fiな美学)として捉えるのであれば、非常に面白いプロジェクトになるはずです。

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最終更新:2026年05月02日 12:40