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作品





渋谷



533 名前:渋谷[] 投稿日:03/01/21 01:46 ID:U2GkQEqv
捨てそこねたレシートを指でぴらぴらと
風を刻む空想で歩く

人混みでは急に立ち止まらないで
あなたの言いつけは
今でも右頬が覚えていて消えない

途切れた人波に
坂道を振り返る

夕暮れはとろりと落ちて
金の飛沫が街へ散らばる
雑踏のむこうに
低い大きな赤い月
駅ビルに半月に切られて

締めつける甘い回想が
この坂道で
あのビルの下で
今はただ
喧噪に踏みつぶされて

冬が行き過ぎる また
あなたが通り過ぎたように






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得た時に失うもの



534 名前:得た時に失うもの (1/3)[sage] 投稿日:03/01/21 20:48 ID:jmbsBCOH

    今の俺は "街"の雑踏にまみれ すすけて見える?

俺は "町" を出た

"夢を叶えたい"
ただそれだけのために
それまで培ってきたものを 全て 捨てて

    あれからどれくらい経っただろう?

反対する人は多かった
誰の言葉にも耳を傾けなかった
彼女は泣いた
それでも俺の心は変わらなかった


535 名前:得た時に失うもの (2/3)[sage] 投稿日:03/01/21 20:48 ID:jmbsBCOH

尊敬していた人の諌めより
好きな女の泣き顔より
大事な事のように思えた

思っていた

    今でもそれで良かったんだと 思っている
    多分

こうして 生まれ育った "町" を出た


536 名前:得た時に失うもの (3/3)[] 投稿日:03/01/21 20:49 ID:jmbsBCOH

夢を手に入れた俺
今もその中で生きている
以前より 垢抜けた 生活も華やかになった
昔の俺と違う俺がここにいる

と同時に
大切な 何か
も一緒に忘れてしまった
気がする

町を出て街に来た代償


537 名前:得た時に失うもの (3/3)[] 投稿日:03/01/21 20:51 ID:jmbsBCOH

    今の俺は "町"の長閑さに飢え くすんで見える?




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なかまちさんとーめ



539 名前:なかまちさんとーめ 1/2[sage] 投稿日:03/01/21 23:29 ID:3f1olkjL
今また2回こけた空き地
乾いた乳母車の持ち手を見つめて
多分誰かを待っていた少年が独り

低い団地にしがみ付く夕陽
細く吐き出された大男の影に
靴より大きな石を避けつつ駆け寄った

    ねーおとーさんどこにいくの

ふたつの影が手ぶらでその町を出た

      *

施工したての人工塗料の臭いを掻き分け
諮問一つ付いていない思い扉をくぐり
小さな右足が遠慮がちに上がりこんだ

化繊の髪を透かせるオレンジの照明
大きすぎる革張りに不安定に腰掛けた少年が
冷えきったた赤飯の小豆を器用に摘み出す晩餐


540 名前:なかまちさんとーめ 2/2[] 投稿日:03/01/21 23:31 ID:3f1olkjL
    ねーおとーさんここどこ

勝手の違う大きすぎる湯船
不安げに父親にしがみ付く少年に
大きな手がタオルで蛸を作り泡を吹かせた

小さな手が蛸を潰し
大きな手が蛸を作り

父親はそれで少年の視線を釣りながら
立ち込める湯気に優しく声を響かせた

    港山 中町 三丁目

振り向きかけた少年に慌てて作るタオルの蛸
大きな蛸と小さな蛸がもう1時間も抱き合って

    みーなーとーやーま
    なかまちさんとーめ

    もう一回

    みーなーとーやーま
    なかまちさんとーめ




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瓦礫の街



541 名前:瓦礫の街 1/2[] 投稿日:03/01/22 01:01 ID:pWYSpZ6R
ぴかぴかに丹念に磨かれた機体が
黒く重い機影を引きずって
空から重い重い霰を播かなくなってからどれくらい経つか

地上では子供達が元気に遊ぶ

瓦礫の下でかくれんぼ
砲塔の陰でナイショ話
朽ちた戦車は秘密基地

みんな輪になり集まって
崩れた鉄筋探検に

失なったものがどれ程大きくとも
人は強く優しく生きてゆく

錆びた鉄板はフライパン
弾の破片はマグカップ
コンクリ片は家の壁

足りないものは創ればいい
幾らでも術はある
歌ですら


542 名前:瓦礫の街 2/2[] 投稿日:03/01/22 01:01 ID:pWYSpZ6R
瓦礫に響く歌声は悲壮感など無く
ただ底抜けに明るい

それでいい

強くたくましく前に進め
振り返る道がしかばねばかりだとしても

しかばねの上の生は揺ぎ無く強く美しい


願わくば
願わくば皆に
皆に幸あれ

ここは
ここは我が生きた街




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「ある雨の──」



544 名前:「ある雨の──」  1/2[sage] 投稿日:03/01/22 21:12 ID:ZDTMBgee
雑音らしい特徴を失ってとめどもなく流れていく
居心地の悪さだけを蹴飛ばしたら
あの風船は中身が抜けていくまで空に降り続ける
そんな雨の中で ボールだけ見えなくなる

てんでばらばらの行き先を目指して歩く人たちの
傘の模様とその回転と角度が同じなので
小さく笑ってみて角砂糖をばら撒く今日も
眺めだけはたった数メートル上でよかったのだから

あの  だけが僕の目の前で踊るその嬉しさと哀しさ
それはきっと他の人には見えなかったし
誰の言葉としても伝えられなかった


彼と彼女はそれぞれ違う建物の屋上を見上げて
何事もなかった昨日を勝手に振り返り
そうやってこの縦長の空は作られていった
──とある人が語り継いだ

誰もが  を知らないことはどこにでもある事象
そんな気違いじみた風景を許容してしまう大ホールを抱え
ただ黙々と歩くだけの祭りが今年もやってくるだろう




545 名前:「ある雨の──」  2/2[sage] 投稿日:03/01/22 21:12 ID:ZDTMBgee
向こうに見える山々の向こうがまた山だという幻想
その冬の冷たさはそのまま雨に打たれた泣き声と叫び
そんな昔のことはもう忘れていいと思う……のだが

その風景というのは記憶だけのものだから
僕は  を名付けられないこの息苦しさを捨てて
今日も地上三階のコーヒーショップで昼の時間を迎える

どこを見上げても白から黒への移行の一日
雑音が全ての言葉を流してしまうそんな歩道で
衝突することもなく方々に流れていくのは 水ではなく

   はもう誰にも届かないような昨日の空気のようで
明日もそのまま街に溶けていくように見えるだけ




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白い自転車



546 名前:白い自転車[sage] 投稿日:03/01/22 21:48 ID:yXlDQoTD
『白い自転車』

みんな
まだ覚えているかい?
あの白い自転車に乗った少年の神様を
くすんだベレー帽を耳までかぶって
よくとおる口笛でポルカを吹いていた
あの痩せっぽちだよ

少年の時代がかった白い自転車は
大通りを 商店街を 路地の津々浦々を
車輪を軋(きし)ませて走っていった
この町の誰もが少年を見かけた
少年の自転車が通ったあとには
彗星のしっぽのような白い光がベール状に広がり
懐かしいポルカの旋律がいつまでも残った
そしてこの町の誰もが その光を浴びたんだ

その瞬間から
町の小さな揉め事は解決し 車の中で悪態をつく人はいなくなった
いじめられっ子は友達と楽しく遊び 寝たきりの老人にお見舞いカードが届き
親に虐待される子供は姿を消し それどころか全ての子供たちが
デザートとプレゼントをもらって 仲良くそれらを分け合った
政治家たちは心の底から人々の事を考えて 涙を流して政敵どおし抱擁した

そんな突然で闇雲な
優しさと幸せに包まれて ぼくたちは
正直どうしたらいいのか分らなくなり しまいには激怒して
寄ってたかって少年の白い自転車を叩きこわしてしまった

少年の神様はしばらく自転車の残骸を見つめていたが
やがて無言のままどこかへ行ってしまった


547 名前:白い自転車;続き[] 投稿日:03/01/22 21:49 ID:yXlDQoTD

みんな
もう再会したかい?
あの懐かしいポルカに 彗星の自転車に
町のみんなに笑顔を分けようと必死に頑張ってる
ちっぽけな少年の神様に

この町にはまだ 深い痛みや憎しみや
暴力や悪意があふれているけど
どれだけ心が豊かになっても
生きるかなしみは消えはしないけど

夕暮れのひとり 帰り道
花屋の前に 電柱の上に みんなの心のなかに
曲乗りをしてくるりと回る
白い彗星の自転車に乗った少年を探しているんだ
みんな
覚えているかい?
あんなにも健気な少年の神様を

もう間違えない
もう間違えたくない
ようこそわが町へ
白い自転車の神様




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歴史的建造物



548 名前:歴史的建造物[] 投稿日:03/01/23 00:45 ID:3S1B8zwa
町は嵐に耐えて孤独に堪えてしがらみの中で立体化する
手触りがある
町はひとえに歴史的建造物という栄光の下
破壊と再生を繰り返す
排気ガスと騒音が季節感を超越し
町行く人々の流れが時間の速度を緩めたり早めたり
町はだからこそ神がかりな祈りの呪文を嫌う
町はまったく無言で神話を超越する
こうあるべきだの前に
こうなっている
町
町は主張しない
町は破壊され再生される
町はただそれだけの
物体としてのリアリストなのだ





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(タイトルが浮かびません)



549 名前:(タイトルが浮かびません)[] 投稿日:03/01/23 04:09 ID:JrLYncGV
建物の隙間に挟まる私は肉片のようにして取り除かれるのを待ちつつ
いつか取り除かれるべき存在なのだと知ってはいても
つまようじに偽装した保安庁のやつらが掻きだしに来るのは
歯ブラシが仰々しく薬臭い粉をつけて迫ってくるより的確であるから恐ろしいな

明日は風に晒され酸化しようとも
この街にはもう必要なところは全て吸収され尽くしてしまわれた後だから
私がどうなろうと知ったことではないのだとカスはカスなりにまだ頭は働くが
月曜日にならないとまだ分からないとつき返された応えは
月曜日を待つこともできずにいるかもしれないなどという未来予測の元にはなくて
会社の未来を日本の未来を地球の未来を強制させられた時代と世代は
交代とともに後退したのはよくよく考えれば起こりうることだったのだと
誰がそのように今思い至ったところで何がどうなろうというのか

街路に落ちるは屍ばかりだとそこに映る水鏡の影を見ながら感じたが
明日を飛び越え明後日を過ぎればきっとなどという淡い期待は
持たないほうが身のためだということに気づくのに何年かかっただろう

私は君の顔を思い出す何度も それが今更でわざとらしい




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重い出の袋



550 名前:重い出の袋[] 投稿日:03/01/23 06:37 ID:E90YAmmI
久々に会社を早く上がり、まだ日のあるうちに家路へついた。
町では子供の笑い声がまだ遊びはしゃぐ
空は茜に染まり、飛行機雲が一筋。地面へ映る影は伸びていく。
僕は・・・不意に思い出す。

もう昔になった「あの頃」の
今もこの町に息を潜めている思い出を
そして、この町がくれた友達を・・・

あの頃も今も僕は、この町が大好きで仕方ない。
町中を知り尽くし、毎日駆け回り、
子供にしか通れない抜け道を探し
祭りには必ず出てはみんなで仕切って。
学校から帰るなり鞄を玄関に投げ込んで
宿題もせずに毎日通った公園、駐車場、駄菓子屋。
何故か恥ずかしくて見れなかった告白の一本桜。
商店街でみんなでかじったあのコロッケ。
毎日が楽しくて、時間がいくらあっても足りなかった。
でも今思っても、コロッケやっぱり高かったよな・・・。
そう思うだけで笑いがこぼれる。

いつの間にか気が付くと肉屋。
僕もおじさんもあの頃のままだった。

「おじさんコロッケ14枚!」

力はあるほうだと思っていたが
コロッケ14枚の袋は何故かずしりと手にきた。
それはおじさんがおまけしてくれたのもあるけど
この町での消したくない思い出がいつの間にかそれだけ増えて
袋を重くしてたってことだよな、みんな・・・。




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最終更新:2006年09月17日 15:45