目次
Part20
(≫15~18)
元スレ主◆hrpp3RuHxqNx22/12/18(日) 08:40:43
よく寝た…すっかり朝になっていると思ったがカーテンから日が入ってこないカーテンを開くとまだ暗く部屋にかけた時計の針はピッタリ3時を指している
昨日は練習で疲れてしまって いつもより早く寝てしまったからだろう
もう眠れそうにないし やることもない散歩でもしようか しかし何の宛もなく寒くて暗い外を歩きたくない何か他に外出する理由は─────そういえば…今年まだ焼き芋食べてない……
別に明日もとい今日でもいいのだが どうせやることなどないし暇潰しがてらに買いに行こう
近くのコンビニに売っていた筈だ焼き芋が食べられると思えば夜の道も風情があるだろう
写真でも撮ってやりたいぐらい気持ちよさそうな顔をして隣で眠っている同室を起こさないように身支度を整え扉を開けて外に出た
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コンビニに着き焼き芋が売ってあるコーナーを見ると大きい物は売り切れたのか小ぶりの物が2つ置いてあった本当は1つだけのつもりだったが2つとも手に取った何がともあれ売り切れてなくてよかった こんな寒いなか歩いてきて徒労だったなんてゴメンだ
レジに向かう途中のカゴに良く言えばシンプルな悪く言えば地味な肌色の手袋がポツンと無造作に置かれていた
おそらく売れ残りだろうタグを見ると何度も割引がされていてほぼタダ同然の金額となっていることに同情のような感情を抱き手にとってしまった
会計を済ませ 今付けている手袋を外し買った手袋を付けると私の手より大きいのか指先が上手くハマらずブカブカとしていた
これは使えないな
目当ての物は買えたし大した損などしていないが少し残念だ
とにかく早く帰ろう せっかく買った焼き芋が冷めてしまう
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街灯が照らすヒトがいない道は見知った場所の筈なのに寒さも相まって少し不気味でその雰囲気にあてられ歩を速めた
寒い怖い早く帰りたい
正直風情は感じられない大人しく寝ておけばよかったと若干後悔していると目の前にヒト影が見えた そしてそれが誰かすぐに分かった
「オグリ…?」
私の声に気付いたのかアチラも話しかけてくる
「イチ?なんでこんなところに?」
「私は眠れないから散歩してるだけよアンタは?」
バカ正直に焼き芋食べに来たと答えるのが恥ずかしくなり嘘をついた
するとアイツはモジモジしながら口を開いた
「私も…なんだか…その…眠れなくて……」
明らかに歯切れが悪い返答にそれが嘘だとすぐにわかった そしてコイツの用事と言ったら一つしかない直感で感じとったコイツも私と同じ物を買いに来たんだ 不本意ながら私だけじゃなかったんだと安心してしまい少しだけ体が暖かくなった気がする
本当に不本意だ
アイツは手袋をしておらず手を擦り合わせ白い息を手に吹きかけていた 薄暗くてよく見えないが手は寒さで赤くなっていることが容易に想像できる 聞かなくてもわかる付け忘れてきたんだ
丁度いいコイツに押し付けよう
「手袋買ったけどサイズ大っきいからアンタにあげる」
どうせ私は使えないのだから誰かに使ってもらった方が手袋も本望だろう
アイツは悴んでいるからか少しもたつきながら手袋をハメた
「焼き芋あるけどいる?」
「いいのか?」
アイツは一瞬喜んだ表情を見せたがすぐに耳を垂らし申し訳なさそうな顔をした
コイツ食いしん坊のくせに遠慮という言葉は知ってるんだよな
「2つあるからいいわよ この時間に2つも食べたら太るし」
コイツは10個食っても太らないんだろうなと思ったが口には出さず袋越しでも温かみ感じる焼き芋を手渡した
アイツはそれを嬉しそうに受け取り一口一口ゆっくりと食べ進めていった
すっかり風情もなく一口で食べるのかと思ったが予想に反し一口一口を大事そうに食べていた
それを横目に見ながら私も自分の分を取り出した 触ればすぐにわかる さきほど渡した物よりも一回り小さい
なんで私は少ない方を渡さなかったんだろう
少し後悔しながら袋開け食べ始めた
熱くはなく ただ温かく甘い味が口に広がる この一口だけで起きた価値がある
そしてまるで夏場の風鈴のように その慣れ親しんだ味に体が暖かくなる
そうしているとアイツが私に話しかけてきた
「あったかいな」
焼き芋を飲み込み私はこう返した
「そうね」
何の変哲もない冬のある一日の話
終わり
Part36
(≫163~)
⏰<ジジジジジ
カチッ
イチ「寝すぎた…モニーごめ…いない?手紙がある…」
📧<寝坊助さんは置いて朝ごはん食べに行ってきます
イチ「げっ!?やっば」
イチ (昨日久しぶりに弟と会って『都会を知るできるお姉ちゃん』だと思われたくて張り切っちゃったんだよね…)
イチ(クレープ屋さん行ったり映画見たり昔みたいに二人で手繋いで散歩したり写真撮りまくって楽しかったなぁ)
イチ(クレープあーんしあってるやつとか…いや我ながらよく撮ったわねあんなの…はたから見たらLOVELOVEカップルにしか………)
イチ「ん……?あっ…そうだ」
レスアンカーワン「イタズラで皆に『昨日元カレに会ったんだけどさ』と言ってみた」
Part63
(≫36)
4月10日 木曜日
『レスアンカーワン』彼女の周りには常に誰かがいる、その中には輝かしい成績をあげている者もいる。
特にオグリキャップとの親密度は、傍から見ても異常だ。
成績は平凡。一目見ただけでわかるが、とてもカリスマ性があるとは思えない。
私と何が違うんだ?
4月21日 月曜日
オグリキャップに弁当を渡しているのを見かけた。
なるほど、こうやっていたのか思ったより単純だったな、やはり物か。
となれば他のヒト達にも何か渡しているのだろうか?
5月14日 水曜日
観察していたが、何かを渡している様子はなかった。
というか冷静に考えれば食堂に行けば、もっと色んな物が食べれるだろう。
弁当程度で、あんな親密な仲になるとは思えない。
であれば、あの弁当自体にそこまで意味はないのか?
余計にわからなくなってきた、なんで先輩はあんなに好かれるんだ?
なんであんな、どこにでもいるウマ娘に…。
5月23日 金曜日
何度も見ても全然わからない。あほらし。もういい加減この日記にも飽きてきた。
気になるのは事実だが、わざわざ観察して日記まで書くほどか?
なんで私は、あの先輩に執着している?
なんで、ずっと見てるんだろう。
5月27日 火曜日
先輩が何故あんなに好かれているのかわかってきた。
彼女にカリスマ性はない。彼女にある魅力はカリスマのような、派手さを帯びた物ではない。
それよりももっと近くに存在する、意識しないと気付かないような繊細な魅力。
意識せずとも否が応でもわからせられるような魅力ではないが、その繊細な魅力に気付いてしまえば、蜘蛛の巣のようにがんじがらめにされて逃げられない。
一目見ただけでは、その魅力の一割もわからない。
何度も視線を合わせ、何度も会話をして、ジワジワと染みるように理解させられる。
例えるなら3口や4口目で味の良さがわかる家庭料理のような優しい魅力。
6月3日 火曜日
先輩の横を横切るときに、少し匂いを嗅いだ。その匂いは単なる柔軟剤の匂いだ。
そのはずなのに、心臓がポンプとなり全身の血管に大量の血液が流れる感覚がする。
顔が首から耳まで赤く染まり、脳みそが沸騰しそうなほどの目眩に襲われる。
私が先輩に感じている『もの』がなんなのかよくわからない。
一種の達成感から来る喜び?後ろめたい行為を行った背徳感から来る興奮?それとも単純な罪悪感?
それとも、まさか………もう、今日はよそう。
6月6日 金曜日
もう私はダメだ。気付いたら先輩を見ていた、見ていたことに数十秒経ってから気付いた。
なんなんだ全く、顔にかかった髪を煩わしそうにかきあげただけじゃないか。なんてことはない所作に目が奪われる。
ネイルのない、短く整えられた爪。疎ましそうに流し目で自分の髪を見つめる目。フワッと持ち上がる柔らかそうな髪。
もっと近くで見たい、もっと近くで声を聞きたい、もっと近くに
6月9日 月曜日
ついつい近くで見たいあまり近付きすぎてしまった。
私の気配を感じてか、急に後ろを振り返った。
急いで隠れたが、ばれていないだろうか?
それより、歩くたびに耳が上下にふわふわ動いてたの可愛かったなぁ。
6月10日 火曜日。
先輩は友人たちと食事に出かけた。
その中の小さい方は先輩に何か、しきりにせがんでいた。
交換留学生の方は散歩に行ったようだ。
6月11日 水曜日。
魔性の女め。
日記はここで終わっている。

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