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第一話『人生と身体の天秤』

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「うっ…くっ…あぁっ!」
「とてもいい声…校内放送で流したいぐらいねぇ…」
「やっ…や…だ…」
「冗談よぉ…あなたは私だけのオモチャだもの…そろそろイキそうなんでしょぉ?イっちゃいなさぁい」
「あっあぁぁぁぁぁ!!」
「ふふ…可愛いわねぇ…これからもずっと可愛がってあげるわぁ」

何故…こんな事になったんだろう…
どれぐらい耐えればいいんだろう…
用を終え、教室から出て行く彼女の背中を見ながら、あの時の自分を───殺したいほど憎んだ


第一話『人生と身体の天秤』


「行ってきます!」
「行ってくるですぅ!」

父の多忙と母の死別により、お世話になってる祖父母に見送ってもらい、僕らは学校に向かった

「うぅ~緊張するです…」
「もう3年生だよ?中間テストで緊張なんて…」
「蒼星石は頭がいいから余裕なんですぅ!」

こちらは双子の姉、翠星石
僕らは公立のローゼン中学校(通称、薔薇中)に通う3年生で、毎日一緒に登校している
翠星石は姉でありながら僕よりも成績が悪く、今も「神様は不公平ですぅ」などとボヤいている
決して僕に才能があるわけではなく、単純に翠星石が勉強をしてないだけと思うのだが…

「蒼星石は勉強したですか?」
「一応ね…普通はするもんだと思うよ?」
「翠星石は一夜漬け派なんですぅ!」

勉強に派閥とかないと思うけど…なんてツッコミながら学校へとたどり着く
門には担任であり数学担当の水銀燈先生が立っていた

「おはようございます。先生」
「おはよぉ。その顔だと今回も自信あるみたいねぇ蒼星石ぃ」
「えぇ…まぁ」
「そして翠星石も…相変わらずみたいねぇ」
「うぅ…バレバレです…」
「二人の成績期待してるわぁ…特に蒼星石は今回こそ真紅を倒せるかもねぇ」
「!!………失礼します」

そのまま逃げるように教室に向かい、自分の席に座った

「ちょっ…ちょっとどうしたですか!?急に顔色変えて…」

翠星石が慌てて追いかけてくる

「別に…何でもないよ…それより最後の追い込みをした方がいいんじゃないかな?」

突き放すように、冷たくそう言う
翠星石は少し寂しそうに自分の席に着くと、教科書を取り出して睨めっこを始めた
それを見て、僕は自己嫌悪に陥った

──真紅を倒せるかもねぇ──

その言葉にとてもイラついて翠星石に当たってしまった事に…

真紅…僕のライバルであり…いやライバル視してるのは僕からだけなのかも知れない
とにかく頭がよく、テストでは常に学年トップ
僕はクラスでは真紅に次いで2位だが、学年では10位前後を行き来するレベルである

僕が翠星石と違って必死に勉強するのは真紅に勝ちたいから…
そしてこの学区でトップの公立高校…アリス高校に入りたいから…

父は多忙だが決して裕福な家庭ではなく、僕ら二人を設備の整った私立高校へ入れる余裕などない
だから僕は少しでもいい公立の高校へ行くと決めた…
それには評定が高ければ有利なのは誰もが知っている
だが5段階評価でオール5なんて生徒は滅多にいない
そう…滅多に…


テスト期間中はやたらと早く来る生徒が多く、教室はほぼ全員が揃っていた
万年遅刻魔の生徒ですら、15分以上早く教室のドアをくぐる
普段からそれぐらいの努力をすれば怒られずに済むのに…
しかし、たった一人だけ、テスト期間中だろうといつもと変わらず遅刻ギリギリの時間に登校する生徒がいる

その人こそが…滅多にいないオール5の女…

「あら、おはよう翠星石、蒼星石」
「おはようです…」
「おはよう…真紅」

真紅だった
優雅な足取りで席に着き、筆記用具のみを机の上に出しチャイムを待つ
余裕の現れで…さらに僕の対抗心が煽られる…

そしてチャイムがなり、数日間の戦争の始まりを告げた


―†―†―†―†―†―


結果は…言うまでもなくクラス2位
学年では9位という結果に終わった

これで落ち込むと周りに冷やかされる
だけど正直気が滅入る…
どれだけ努力をしても…真紅を超えるのはもちろん近づく事さえ不可能に思えて…
放課後…一人でテストをボーっと眺めていると、不意に肩を叩かれた
振り返ると…先生がいた

「先…生…」
「惜しかったわねぇ…」
「いえ…完敗です…慰めはやめてください」
「何が一番ダメだったのぉ?」
「…数学です…」
「苦手?それとも私の教え方がダメなのかしらぁ?」
「そんな事はありません…僕の勉強不足です」

基本は解けても、応用問題で点を落としてしまう
勉強不足なのだろうが…数学に集中すれば他が疎かになる
完全に手詰まり状態だった

「…あなた…真紅に勝ちたいの?」
「……」
「それとも…アリス高校に入学したいの…?」
「…え?」

意味がわからなかった
真紅に勝つ事は学年トップになること
それはすなわちアリス高校に一番近い位置にいられるということ

「どういう…意味ですか?」
「…公立高校の入試において本番の試験はもちろん重要だけど…内申も重要だって知ってるでしょぉ?」
「はい…スタート位置から優位に立てますから…」
「そう…ならその内申を上げる方法は知ってるぅ?」
「え…テストで点を取るぐらいしか…」
「ふふふ…それだけじゃないのよ…」
「授業態度がどうとか提出物がどうとかですか?」
「あなたってホント真面目さんねぇ…」

これもハズレてるらしい
何が言いたいのかわからず、要領を得ない話にイライラした

「成績を付けるのはあくまで教師…あなたの数学が悪くても…私のハンコ一つで成績は満点になれちゃうのよぉ…」

一瞬…何を言ってるのか理解できなかった
いや…頭が理解すること拒んでいた

明らかな問題発言を…

「え…今…何て…」
「言葉の通りよぉ…私に"いい成績"を付けて欲しいならこれからの中学校生活…私に従いなさぁい」
「え…」
「ふふ…頭パニックになっちゃったかしらぁ…一晩あげるわぁ…明日、もしその気があるなら放課後ここに来なさい」

そう言い残し、水銀燈先生は教室を後にした
僕の人生はここから狂い始めたんだ…


  つづく

  • ローゼンメイデン学園版・・・とてもイイですね -- ぽるく (2009-04-02 15:33:33)
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