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ローゼンメイデン百合スレまとめ@ウィキ
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ローゼンメイデン百合スレまとめ@ウィキ

第一話

最終更新:

rozen-yuri

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だれでも歓迎! 編集

 幸せは誰かの不幸の上に成り立っている…良く聞く話だが、実際はどうなのだろうか。 
 人によって答えは違うだろうが、私がこう聞かれたなら、何のためらいも無くこう答えよう。
 イエス、だと――


「…巴、巴?」

 ボンヤリとしていたら不意に肩を揺すられて意識を現実に戻された。
 揺すられた肩を見てみると由奈が自分の方を眺めているのが目に入った。

「どうしたの? 次は理科室で合同授業だからそろそろ行かないと遅刻しちゃうよ?」
「ああ…そうだったわね。すぐ準備するから」

 時計を見てみると次の授業まであと五分を切っていた。
 教室から理科室へ移動をして、授業の準備をするには少し急がなくてはいけない時間だ。
 巴は教科書類を持ち出し、由奈と共に教室を出て行った。
 廊下の窓から見える空は梅雨と言うこともあって、薄暗く曇天だ。
 まるで自分の心のように。

「…何だかさ、巴って最近変わったよね?」

 道すがら、由奈が少し心配そうな声で話し掛けて来た。

「そう?」
「あまり笑わなくなったって言うか…元気が無いって言うか…」

 笑わなくなった、か。そう言えば最近まともに笑ってないような気がする。
 いつだって心の中は曇り模様で、全然陽が差さない。まるで砂を噛むような日々…そんな時間だけが過ぎていった。
 その原因は分かっている。その原因は…。

「柏葉さん、桑田さん。こんにちは」

 声を掛けてきたのは合同授業で一緒に授業を受ける柿崎めぐ。
 その声を聞いて、巴は口の中に苦いような物が広がった気がした。

「今日、同じ班で実験する事になったから。よろしくね」

 そんな事に気付く由も無くめぐは喋り続け、巴の胸をどす黒い物が被って行く。
 ぐっと堪え、作り笑顔を浮かべてめぐへと言葉を返す。

「…そう、よろしくね」

 それだけ返すと満足したのか、めぐは話し掛けて来た由奈と話をし始めて、巴はそこから目を逸らした。
 めぐなんて眼中にも入れたくない。それ程までにめぐの事を内心では嫌悪していた。
 その理由は一つ。自分の愛する人を奪ったのだから。

―※―※―※―※―

 学校が終わり、校門へ行くとそこには見慣れた人影…桜田のりの姿が合った。
 その姿を見て一瞬足が止まる。こんな事ならもう少し遅く来てすれ違いになるようにすればよかった。
 引き返して図書室ででも時間を潰しに行こうか、と思ったがその前にのりに気付かれて声を掛けられてしまった。

「あ、巴ちゃん。こんにちは」
「え、ええ。こんにちは」

 話しかけられた手前、無視するわけにもいかない。
 正直顔を合わせるのも辛いが、それを堪えてのりの顔を見る。
 屈託の無い人懐こい笑顔で、可愛らしい…それが、辛い。

「今日は部活が無いからめぐちゃん迎えに来たんだけど…知らない?」
「さあ…会ってないので」

 ああ。やはり目的は自分じゃない。本人に悪気は無いだろうが、それが腹立たしくて悔しくて…そして悲しかった。
 結局この人の心に自分はいないのだ。自分がどれほどこの人の事を想い焦がれようと…。

「のりっ。お待たせ」

 不意にのりの体が揺れ、見てみるといつの間にかめぐがのりの腕に抱き着いていた。
 その光景を見て、昼間とは比べ物にならない位に胸の内を黒い物が被う。

「もう、いきなりビックリするじゃない」
「のりを驚かそうと思ってね」
「めぐちゃんったら」

 幸せそうに笑い合う二人を尻目に、巴の胸の中を嫌悪、怒り、嫉妬などあらゆる負の感情が満たして行く。
 手が白くなるほど握り拳を強く作り、嫌な汗が顔中に浮かぶ。
 もう、限界だった。

「…すいませんが、先に失礼します」

 それだけ言うと巴はそこから駆け出した。いや、逃げ出したと言った方が適切かも知れない。
 ただただ息が続く限り走り続け、二人から遠ざかっていく。
 やがてどれぐらい走っただろうか、気がつけば小さな公園まで来ていた。

「はあっ、はぁ…うっ…」

 乱れる息を整えようと息を吸い込もうとした瞬間、強烈な頭痛と吐き気が襲い公園内にある水道へと駆け寄っていった。
 どうにかそこへ辿り着くと、吐き気を堪えきれなくなり排水溝へと嘔吐した。
 吐瀉物が排水溝を汚し、汗がそこに垂れていく…はっきり言って惨めだ。

「ゲホッ…ゲホ…」

 一通り吐き終え、水道から水を流し汚れた口と手を拭いていく。
 胃の方はすっきりしたが、心の方はちっとも晴れやしない。むしろ酷くなってきている。
 何故自分がこんな目に遭わなければならないのか。こんな思いをしなければいけないのか…。

「…柿崎めぐ…どうしてあんな人に…!」

 去年の二学期くらいまで入院してたとか何だか知らないが、ふらっといきなり復学してきた。
 いや、それは良い。問題はそこからだ。
 どう言う訳かめぐは、自分が想いを寄せていたのりといつの間にか交際していたのだ。
 ずっと…十年以上も想いを寄せていた人を、あの女は簡単にさらって行ってしまった。
 その事実が許せない。そして、自分じゃなくてあの女を選んだのりも同じ位に憎かった。

「…どうして…どうして私は奪われてばかりなの…!」

 昔からそうだ。両親や周りの目に縛られてあらゆる事を制約され、自分を押し殺して生きてきた。
 そこに現れた、雛苺と言う大切なドール…それもいつしかジュンに奪われてしまった。
 そして自分が想いを寄せていた人も…柿崎めぐに奪われた。
 何故自分だけ不幸になるのか。何故自分は幸せになれないのか…。
 そこまで考えて、フッとある話を思い出した。

 人の幸せは誰かの不幸の上に成り立っている――
 世の中には奪う側と奪われる側の人間がいる――

 自分はどうだ。今まであらゆる物を奪われて不幸になり、そしてのりとめぐは自分を不幸にして幸せになっている…。
 今まで自分は奪われる側の人間で、幸せな人の土台となる不幸な人種だったのではないか。
 だったら。

「もう我慢はしない…。奪ってやる…奪って、幸せになってやる…!」

 巴の中で何かが切れた。流れる水に映った自分の顔は、酷く歪んでいるように見えた。

―※―※―※―※―

 数日後の放課後、校門へ行くと予想通りめぐを迎えにのりがそこへ来ていた。
 あらかじめジュンからのりが今日は部活が無いという事を聞き出していたから準備は万端だ。
 巴は笑顔を浮かべてのりに近付いて行く。

「のりさん、こんにちは」
「こんにちは巴ちゃん」
「柿崎さんを迎えに来たんですよね? 柿崎さんは今日授業の後片付けがあるから遅くなるって言ってましたよ」

 もちろんこれは口から出任せの嘘だ。そんな事も知らずのりは間に受けて少し残念そうな顔をする。

「そうだったの…なら仕方ないわね」
「時間があるんだったら、少し付き合ってもらってもいいですか? 私の友達にのりさんと料理について話したいって子がいて…」

 少し申し訳無さそうにしてそう尋ねると、のりは何の疑いも無い笑顔で頷いた。
 計画通りだ、その御人好しな所も人を疑わない所も。

「良いわよ。ちょっとの間なら」
「ありがとうございます。すぐ終わると思いますから。…こちらです」

 そう。すぐ終わる。この忌まわしい感情も今までの不幸な自分も。

 そのまま連れて来たのはいつも剣道の練習をする武道場だ。
 今日は部活も無いのでここに居るのは自分とのりのみ。そのまま更衣室へと案内する。
 少しカビっぽい臭いと不快な湿気が鼻をつく。

「ここなの? それで、話したい子って…」
「…そんな人いませんよ」

 ガチャリ、とカギを閉めながら返事をするとのりはえっ、とした表情を浮かべた。
 それを気にすることなくのりの体を壁に押さえつけて眼鏡の奥の目を睨むように見上げる。
 異変に気付き、その目には恐怖が浮かんでいるのが見て取れる。それがまた巴の劣情を掻き立てた。

「と、巴ちゃん? どうしたの…?」
「…ふふ、可愛い…。食べちゃいたいくらいです」
「何言ってるの、冗談は止めて…」
「…冗談じゃありませんよ」

 冷たい声で言い放ったと同時にのりの顎を鷲掴みにし、そのまま強引に唇を奪った。
 のりはいきなりの事で訳が分からずパニックを起こして声を上げそうにあったがそれを巴は見逃さない。
 開いた口に舌をねじ込み、のりの口内を舌でなぞって行き舌を絡め取った。
 初めて味わう人の…のりの味に、これまでに無い満足感と幸福感が胸を満たしていく。

(これがのりさんの味…たまらないわ…)
「んっむぅ…! や、やぁ…!」

 最初はパニックで何も出来なかったのりだが、理性を少し取り戻したのかしばらくして体を引き離された。
 それでも巴は手をのりの肩に掛けたままで離すつもりは毛頭無い。

「何で…何でこんな事…! どうして…!」
「どうして…? 私からしたら、のりさんの方こそどうしてって聞きたいぐらいですよ」

 涙目で睨みつけてくるのりを冷たい目で睨み返す。
 肩に掛けた手は胸倉に移し、そこを掴みあげて顔を近付けた。

「私はずっと昔から…もう子供の頃からずっとあなたの事を想ってたんですよ」

 冷たい、抑揚の無い声で呟くようにのりに語りかける。

「だから私は桜田君の引き篭もりを止めさせるのを手伝ったし、ずっと通いつめてた…あなたの為にね」
「私の…?」
「ええ。桜田君が引きこもりを止めさせれば私に振り向いてくれると思ったし、毎日あなたへ逢いに行けば私の気持ちに気付いてくれるはず…振り向いてくれるはず…そう思ってね」

 そこで俯き、胸倉を掴む手に力が篭り震えだす。

「それなのに…」

 いや、震えているのは手だけではない。腕が、全身が怒りで震えだしている。
 顔を上げ、息が掛かるくらいに顔を近付けると負の感情を吐き出すように一気に大声をあげた。

「それなのに、あなたはあの女を選んだ! あの柿崎めぐとか言う女を!! どうして、どうして私じゃないんですか!! 何で私じゃなくてあの女なんですか!! どうして!!」

 怒り狂って喚き散らす。でも芯の方は恐ろしく冷えていた。冷たく、どす黒い感情が今の巴の全てだった。
 のりは初めて見せる巴の鬼気迫る様子に、もはや涙を流して怯えるだけで何も言えなくなっていた。

「昔からそうだった…! 何もかも奪われて、得られる物は何も無い…。雛苺も、あなたも…尽くしても何も手に入らなかった…!」

 ふぅ、息を一つ吐く。

「だったら…」

 もう、道は一つだ。

「だったら、力尽くであなたを奪って幸せになってやるわ!!」

 刹那、のりの制服を力尽くで引き裂いて白い肌を一気に露出させた。
 そのまま床に押し倒して馬乗りになり、抵抗するのりを押さえつける。

「いっ、いやああぁぁ!! 巴ちゃん止めてぇ!!」
「もう私だけが不幸になるのは嫌…あなたを不幸にしてでも手に入れて、今度こそ幸せになる!」


 それからはもう本能に任せたままでどうしたかは覚えていない。
 全てが終わった時にはのりは半ば放心状態で横たわり、衣服はボロボロで目も当てられない状態だった。
 だが、巴はそれを見て今まで感じた事もない満足感と幸福感を感じ取った。
 これでのりを手に入れた。もっとも欲しい物を自分の物に出来たのだと。

「ふふふ…良い格好ですね、のりさん」

 放心状態ののりに携帯を向けて、写真を数枚撮っておく。
 軽い電子音にのりが気付き、奪って来ようとしたが今ののりなど巴の相手ではなく簡単にかわしていく。

「なっ…止めて! お願い!」
「これをばら撒かれたくなかったら、これからは私の言いなりにしてください。破ったら…柿崎さんや桜田君がどうなっても知りませんよ」
「そんな…めぐちゃんとジュン君は何も関係ないじゃない…!」
「関係ない? 大有りですよ。柿崎さんはあなたを汚した、桜田君は二人の仲を認めた…私からしたら害悪でしかないんですよ」

 それを聞いて絶望の表情を浮かべるのりに、姿勢を低くして歪んだ笑みを浮かべ顔を覗きこむ。

「これは言わば犬の手綱…。分かりましたね? じゃ、これからよろしくお願いします」

 絶望したのりの頭を撫でて更衣室を出ると、後からすすり泣く様な声が聞こえて来た。
 それを背にして武道館を出て、帰る道すがらさっきの写真を見ると自然と笑みが浮かんでくる。

「ふふ…これでのりさんは私の物…ああ、幸せ…」

 本当に幸せなの? ふと、頭の奥から自分の声が響いた気がした。
 愛する人を傷つけて、それで幸せか? 無理矢理汚して、幸せか?
 そんな声がする。

「ふふ…あは…あははは…」

 一瞬の葛藤はすぐに消え、幸福感と虚無感、その二つが渦を成す。
 だが、分かっている事は一つ。
 もう、引き返せない。過去の様にはなれない…それだけだ。
 ならば、もうこのまま堕ちるしかない。堕ちて堕ちて、堕ちた果てにある汚れた幸せを完全なものにしなければ…。
 それしかもう、道は残されて無かった。


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