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ローゼンメイデン百合スレまとめ@ウィキ

【君に言えなかったことがある。】2

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 相手を気遣うが故に言えなかったことがあります。
 負担になるといけないから。

 一緒にいるだけで良かった。

 だから、何も言わなかったのです。


 ──ごめん。君に謝りたかったこと。


 どうやってそこに着いたかは最早覚えていなかった。
 男の人に変わり果てた真紅を見せられて頷いて、両親がいないことを伝えた。
 救急車に同乗させてもらって、真紅の手を握らされていた。
「真紅……?」
 いつもの彼女とは思えないくらい冷たい手。その手で彼女が危険なことを理解した。
「真紅、真紅……」
 ぴくりとも動かなくて、ピッピッという音だけが真紅が生きているのを知らせていた。
 何やら細い管みたいなものを繋げられている彼女は機械みたいだった。
 病院に着くと慌ただしく真紅は集中治療室に運ばれていった。
 もちろんだけど私は入れなくて傍らにあったソファーに沈み込んだ。
 真紅が。あの真紅が。
「危ない状態……?」
 そんなバカなことがあるもんか。
 強情で頑固で女王様気取りで我が儘で、そして誰より優しくて──。
「おばかさぁん……」
 ぼろぼろと大粒の涙が頬を伝うが、それ拭う気力はなかった。
 寒くもないのに体がガタガタと震える。真紅が死ぬかもしれないと考えると。
 真紅が死ぬ?そんなわけない。そんなバカなことがあってたまるもんか!
 それからどのくらいたったのだろう。数分──いや、数時間かもしれない。
「水銀燈!」
「大丈夫ですか!?」

 バタバタと蒼星石と翠星石が駆けつけてくれた。
「何で……二人知って……」
「何言ってるですか!?お前ぇが連絡してきたんじゃないですか!」
 あれ?そうだったっけ?どこかに連絡した覚えがない。
 ──あぁ、何だかした気がしてきた。病院着いて他の知り合いも呼んでくれと言われて。
「ありがとぅ……二人とも」
 蒼星石の腕に手をかけてすがった。誰かに支えてもらわないと倒れてしまいそうだ。
 翠星石がしゃがみこんで心配そうに私の顔を見つめた。
「真紅は大丈夫だよ」
「ですよ!」
 何の根拠もない言葉だったが、気休めの言葉にすごく安心感を感じた。
 翠星石が私の手を握る。人の暖かみが妙に安心できる。
 それと比例して先ほどの真紅の手の冷たさが蘇る。
「真紅の手ぇ……すっごく冷たかったぁ……」
 ぼろぼろとまた乾きかけた涙が溢れだしてきた。
 自分は何を言おうとしてるのか。言ってはいけない言葉なのに、もう止められなかった。
「まるで……まるで、死んじゃったみたいに……っ」
 その瞬間、左頬に刺すような痛みを感じた。翠星石の右手で弾かれたのだ。
 その様子を見ていた蒼星石はゆっくりと右手を下ろした。

「翠星石がやらなかったら僕が殴ってた」
「次言ったら今度は蒼星石がするですよ!蒼星石は強いですから、ボッコボコのギッタギタですよ!」
 歯を食い縛りながら泣く蒼星石の隣で、私と同じくぼろぼろと涙を流す翠星石。
「大丈夫。真紅は大丈夫ですよ」
 翠星石が強くうなずいた。
「水銀燈さん、いらっしゃいますか?」
 一人の看護師がこちらに近づいてきた。手を上げて返事をすると、小走りに近づいてくる。
「何か……」
「これ、真紅さんの鞄から出てきたんです」
 と、手渡してくれたのはダークブラウンのリボンの飾られた小さな白い箱。
「水銀燈さんと真紅さんへ、と書いてあったので」
 とメッセージカードも手渡された。
「っ……」
 では、と看護師は会釈して去っていった。
「それ、何……?」
 蒼星石は恐る恐る尋ねてきたが、それは私の耳に入らず、そのまま私は膝をついた。
 ──……そうだ。今日は二人の……。
 心配そうに背中に手を回そうとしてきた翠星石にいきなり掴みかかる。
「謝らなきゃ!あの子に!私が……私がぁ!」
「お、落ち着けです!ゆっくり話せです!」
 翠星石からゆっくりと手を離すと崩れるようにソファーに座り込んで項垂れた。

「ちょうど二年前の今日、私達は付き合い始めたのよ」
 でも、今年はお互いに忙しくてお祝いできないからその代わりに、とペアリングを購入したの。
 記念日の今日、一緒に取りに行こうねって。カレンダーの丸はその日の印だった。
「すっかり忘れてたのよぉ……」
 私が面倒くさがらなければ、一緒に着いて行けば。真紅は……彼女は助かったかもしれないのに。
「だから、謝らなきゃ、真紅に!……謝ったって全然足りないけど、謝らなきゃぁ……真紅は、真紅は……」
 その時、手術室のドアが開き、一人の医者が出てきた。
 私は思わず、その医者にすがりつき大声で問い詰めた。
「真紅は……真紅はどうなんですか!?」
 医者はゆっくりとマスクを取ると、優しい笑みを浮かべた。
「出血量の割りに傷が浅く、輸血も足りていたので大丈夫です。夜には目を覚ますでしょう」
 私を安心させるように私の両肩を医者は支えた。私はぼろぼろ大粒の涙を流しながら崩れた。
 蒼星石達が慌てて私を支えてくれたおかげで倒れずに済んだ。
「今から病室に運びますので、ちょっと待っててください」
「本当にありがとうございます……」
 普段の私ならとても言わないような言葉がすっと出てきた。

 少し料金の高い一人用の病室を用意してもらう。
 出したのは私ではない。成績優秀で生徒会長の真紅に奨学金という形でなら、と学校側が出したのだ。
 まだ呼吸器をつけているが顔色はほとんど良くなっている。ただ眠っているだけのように見えるほどに。
 真紅の手をきついほどに握り、前髪をすいてやる。
「目が覚めたら言いたいこといっぱいあるのよぉ……」
 とにかく謝らなければ。怒られて殴られても、真紅が目覚めてくれるならそれで構わない。
「真紅、ごめんね」
 背後に蒼星石と翠星石が立ってるのも気にせず形のよい富士額に口づけをする。
 すると、ひくり、と少しだけ瞼が揺れた気がした。
 力の入ってなかった真紅の指にもわずかに力が戻った。
 驚いて思わず手を離して一歩下がってしまった。
「真紅……?」
「っ……」
 私が呼び掛けると真紅は低く一回呻くと瞼をゆっくりと開いた。
「……あれ……私……」
 真紅は虚ろな目で辺りを見回すと小さく呟いた。
「何で……」
「真紅っ!」
 翠星石は体を起こした真紅にきつく抱きついた。

「よかったです!本当によかったです!」
 言いたいことがいっぱいあるのに。いざとなると何も言えずただ涙が溢れてくる。
「翠星石……蒼星石も……私、確か車に……」
「そうですよ!でもよかったですよ、助かって……」
 翠星石の目尻に大粒の涙が溜まる。
「……ほら、謝るんでしょ」
 なかなか近づこうとしない私に痺れを切らした蒼星石が私の背を押した。
 翠星石も空気を読んでくれたらしく、パッと真紅から離れた。
「…………」
 真紅は無言でこちらを見ている。その表情からは何も読めない。怒ってるのか、悲しんでいるのか。
「……ごめん、なさい……真紅」
 膝を床に着いて、真紅の手を握りしめながら呟いた。
 気まずさのあまり、真紅の顔を見ることができず、今どんな表情をしているのか分からない。
「……貴女」
 真紅がポツリと呟く。私は勇気を振り絞って真紅の表情を見つめる。
 その表情には困惑の色が浮かんでいた。
「貴女……誰?」
 薔薇をモチーフにした指輪は冷たい音を立ててポケットから落ちた。



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