リプレイ・エンピレオ◆wqJoVoH16Y
CLIMAX PHASE
Climax 01 抗いし者たちの系譜-覇道の魔剣-
Scene Player――――メイメイさん
「戻ってこなかった、か。こんなものかしらね。貴方の未練も、無駄になっちゃったわね」
失望したような口調で、メイメイは目の前の光景を眺めていた。
煮立つようにゴポゴポと唸る泥の海の中で、ゴーストロードの影が少しづつ削られていく。
かろうじて残っていた影さえも、勢いを増して喰い尽くされていく。
生者の想いではなく更なる死が送られ、喰われたことで、死喰いは更に活性化していたのだ。
島に留まる媒介であった斧も力を振るう肉体も失った今、この亡将は、ただ想いだけでここに存在している。
ブーストショットで失われた、神将器の『半分』に込められた、王としての未練だった。
「生まれ、得たものを愛し、失うことを悲しみ、死ぬ。
貴方の言うとおりよ、イスラ。人として、それが正解」
だがそれでも、王はその正解に留まることができない。
なぜならば、王は民達に『人』であってほしいと願うからだ。
自分が泣くことよりも、民達が泣くことを厭うからだ。
「王に人であってほしいと願う民。民に人であってほしいと願う王。
平行線……どちらかが折れなきゃ、息もできない、か」
勝者と敗者の溝のように隔たる境を見て、メイメイは杯の酒を飲み干す。
人として満足な死を得て、王として未練を食い尽くされるオスティアの覇者に、哀悼を示した。
「炎の子は現れず、凶星は降り注ぐ。“貴方達の”エレブ大陸の運命は、大きく歪むことになるでしょう。
それでも、どうか安んじられよ、異界の王よ。全てが失われた訳ではないのだから」
泥に喰われる影を見つめる眼鏡の奥に浮かぶのは、少し未来の流れ。
血に覆われ、全てを伺い知ることはできない。
だが、それでも、全てが失われた訳ではなかった。彼の親友が、彼とともに轡を並べた者達がまだ残っている。
まだ何も終わってはいない。“生きているなら、何度だってやり直せる”のだから。
「……せめて、その苦しみだけでも、濯ぎましょう」
王としての終わりを見届け終わったメイメイはゆっくりと立ち上がり、眼鏡を胸の谷間にしまい込む。
尋常ならざる魔力が、酒精さえ吹き飛ばすようにたぎり始める。
「だだの掃除みたいなもの。オル様も、目こぼしくらいしてくれるでしょ」
もともと、
ヘクトルの死は絶命の時点で死喰いの中だ。
イスラ達が戦っていたゴーストロードとは、その前にアルマーズが喰らったヘクトルの残滓に過ぎない。
そして、ここにいるのはその中の王としての未練。喰い残しの喰いカスのようなものだ。
ならば、彼をこのまま泥に陵辱させ続けてまで観測すべき対象ではない。
よりによって、彼が敵と定めたものの眼前で辱めてよいものではない。
「四界天輪、七星崩壊。世の条理よりはぐれし鬼神の残影よ、時の棺の中で眠りなさい。
二度と覚めることのない眠りに――――『紋章術<かがやく刃>』!?」
メイメイが力を行使しようとした瞬間だった。
彼女の背後から白銀の剣片が無数に飛来し、ゴーストロードの周囲に纏う泥を切り裂いていく。
想いを喰らう泥である以上、肉体を保たずとも想いを形に変えた力ならば届く。
「困ります、メイメイさん。オスティア候は――――僕が奪ったのですから」
ゆっくりと、紋章の発動者が闇の奥から現れる。
光刺さぬ地底でも輝く泥が、その純白の軍服をほのかに照らした。
「……ずいぶん、遅かったわねえ。今更、何しに?」
一瞬目を細めてから、メイメイはふと気を抜いて発動しようとしていた魔力を解除する。
そして、胸から眼鏡を取りだしながら嘲るように聞いた。
「無論、魔王らしく責務を果たしに」
片目を銀髪で覆い、右手に不滅なる始まりの紋章を輝かせながら、伐剣の王は真顔で力強く応えた。
「……配下にした責任をとって、死喰いから救おうってこと?」
「救うのは勇者ですよ。魔王には救えない」
救えない。その言葉だけが、やけに冷たく残響した。
ジョウイは泥の中を進み、ゴーストロードへと近づいていく。
死喰いの泥は、先ほどの屑とジョウイを認識するや、未だ執念だけで留まり続ける未練へと食指をのばし始める。
「でも、奪った以上は、奪ったなりの責務があるんですよ。
だから、勝手に奪わないで下さい――――紋章術<大いなる裁きの時>」
それを許さぬ、とジョウイの右手の魔剣が輝き、黒き光がゴーストロードへとその周囲へと降り注ぐ。
そして、その直後、ゴーストロードに襲いかかろうとした泥に、黒き刃の破片が突き刺さっていく。
位置も数も関係なく、泥が動こうとした瞬間に発生する刃が、先んじて攻撃を封殺する。
それはまるで、王の領土に入った賊を撃退するような手際だった。
「対象者への攻撃を核識の知覚で事前に察知して、黒き刃による半自動先制反撃……魔剣を、選ぶってこと?」
力の性質を見極めたメイメイが確かめるように尋ねる。
今発動したのは、核識と紋章――ジョウイの魔法に属する力。それは逆を返せば、憎悪に反する力である。
だが、ジョウイはそれには答えず、ゴーストロードへとまっすぐに歩き、たどり着く。
泥と刃が相殺しあう中、王と将が対峙するそこだけは、凪いだように静かだった。
「…………貴方には、殿を命じた。“全てを用いて、戦い続けよ”と、この僕が命じた。
イスラ達に負けたのだろう。なぜここに来た?」
吐き捨てられたのは、あまりにも無慈悲な問いかけだった。
殿を命じたのだから、最後の最後まで戦って果てて死んで当たり前だろうと、そう言っていた。
亡霊体の半分を失い、両腕も失って、それでも伐剣王を救いに馳せ参じた将にかける言葉としては、あまりにも傲慢だった。
だが、亡将は何も言わずひざを折って俯き、
メイメイもまた芝居を観劇するように、酒を舐めながら見つめていた。
「貴方は、命令に反した。未練がましく残っていた貴方の魂魄を縛り、仮初めの生命を与えた僕の命に背いた。
オスティアの軍法は、命令違反を見過ごすか?」
それでも亡将は何も言わない。
どんな世界であろうとも、軍とはそういうもので、そうでなければ軍たりえない。
たとえ、たった二人の軍勢だったとしても。
「略式だが、処罰を与える。オスティア候――――命令に背いた以上、死刑だ」
ジョウイの背後から、黒き渦が生じる。黒き刃を呼び出す渦だった。
そして、そこから武器が一本、オスティア候めがけて射出される。
亡将は微動だにしなかった。むしろ、安堵のように影が緩む。
全てを失い、それでも最後にジョウイのもとに参じたのは、
ジョウイに恨みを言いたかった訳でも、感謝してほしかった訳でもなく、このためだった。
だが、欲すべき断罪の一撃は亡将を穿つことはなく、
その目の前にあったのは、黒き影となったゼブラアックスだった。
「……だから、最後に一働きして貰う。僕が渡したその力を、一滴残らず使い果たせ。
あれを、死喰いを奪る。僕のために、僕たちの楽園のために最後まで戦い、それから死ね」
魔王の叫びに、亡将が頭を上げる。
戦えと、言っていた。まだ役目はあると、告げていた。
まだ戦ってもいいと――否、戦ってほしいと、そう言っていた。
眼もない亡将の視線をまっすぐに受け止めながら、ジョウイは覚悟を胸に抱いた。
その意が伝わったのか、ゴーストロードは何も言わず、斧の柄を咬んで持ち上げる。
世界より生まれたありとあらゆる物には意志がある。
それは精霊の加護や皆殺しの剣のような呪いなどという次元ではなく、
存在する以上は、口にする術を持たないだけで思考が、意志が存在しているのだ。
それを伐剣王は拾い上げる。無色の憎悪によって消されたゼブラアックスの慚愧すら汲み取り、
背負い、黒き刃の一席として己が力と転ずる。
「短期決戦でいく。前衛を任せる。魔法発動まで、ぼくを守れ。
狙いはあの力の闇――――『災いを招く者』ッ!!」
大いなる裁きの時を解除した瞬間、封殺から解放された泥がジョウイへと襲いかかろうとする。
だが、再び恐るべき速度で泥とジョウイの間に立ちはだかった亡将は
首の力だけでゼブラアックスを振り回し、ジョウイの白衣を汚させない。
泥の奥で光さえ吸い込む闇と化したそれが、その名に反応し、本能的に警戒を強めた。
(やっぱり、そういうこと)
その名に、メイメイは自分の予想が当たっていたことを理解した。
マリアベルのエピタフ仮説を進めていけば、最後に残る敗者はエレブ大陸の敗者となる。
その者、ただ力だけを欲し、力の為に命を集め、千年を生きた怪人。
支配欲も征服欲もなく、ただ力を欲し、命をかき集めるためだけに世界を混沌へ落とした求道の権化。
オスティア候の、ニノの、
ジャファルの、リンの、
フロリーナたちの倒した敗者。
災いを招く者ネルガル――――その闇魔道の結晶がそこにあった。
(グラブ・ル・ガブルの純粋なる生命と死を喰らい続けたラヴォスの亡霊を重ねて、疑似的なエーギルとなす。
それをもって、死喰いを誕生させる儀式。その術式が、アレ。フルコースにもほどがあるでしょ、オル様)
あれに憎悪を送れば、自動的に儀式が開始され、ラヴォスのモルフ――否、死を喰らうものが誕生する仕組みだ。
だが、ただのアプリケーションではない。
闇魔道は術者を喰らう。ネルガルほどに究められた魔道は、術式自体が一個の力であり、脅威だった。
「でも、どうするの? どうやってアレを奪う?
いや、奪っても、魔剣の矛盾は何一つ解決していない」
その生誕システムを奪うというジョウイの着眼点は間違ってはいない。
されどシステムだけ奪ったところで、死喰いを生む憎悪も理想も不完全では、死喰いを誕生させられない。
ジョウイの劣勢は何一つ好転しない。だが、ジョウイの眼は惑いに揺れていなかった。
だが、気勢だけで覆せる状況ではない。いったいどうやって死喰いを奪るつもりなのか。
「見届けさせて貰うわよ、魔王様?」
メイメイが傍観する中、ジョウイはただひたすらに魔剣へと意識を済ませていく。
想うのは、あの書の著者。もしもあの書がなければ、ジョウイはここに立つこともできなかっただろう。
あの書を残した欲望の残滓を、想いの欠片を、魔剣の中で想う。
「我が魔法に応えて冥界より来たれ……新たなる誓約の下に伐剣王が命じる」
詠唱とともに、魔剣が色づいていく。
発生した想いに反応した泥がジョウイを襲おうとするが、ゴーストロードは足下の泥を跳ね上げて、王への道を阻害する。
だが、ジョウイはゴーストロードの貢献に一別もしない。
命じた以上必ず自分を守り通すと確信していたが故に、一顧だにしない。
だからこそ、ジョウイはひたすら、マリアベルを想い続ける。
『我は誇り高き孤高の血脈。ゆえに誰もが我が歩みに追いつけない。
リーズ。ビオレッタ。ジャック。誰もが止まり、去っていく』
想いに寄り添う心の中に浮かぶ言葉を、そのまま詠唱に変えていく。
甘く痛むその想いは、きっと、かつて彼女が通り過ぎた昔日の残照。
ノーブルレッドは不死の血族。失い続けてきた彼女にとって、それは一つの呪いだった。
心の奥底で何度想っただろうか。失いたくないと、失うくらいなら消えてしまえればいいと。
『それでも歩こう。憶えていよう。握った操縦桿の温もりを、空色に高鳴った冒険の日々を』
魔剣が血の紅に輝いていく。黒く濁った血ではなく、どこまでも澄み渡った高貴なる真紅に。
それでも彼女は歩いた。たとえ失っても、後悔はない。
別れたことよりも、出会えたことがうれしい。出会えた光を大事に抱きしめて、永遠を歩き続ける。
それこそが、ノーブルレッドとして誇れる道だと信じているから。
『我は孤高にして孤独にあらず。我は知を吸うもの。この身にて失わぬ想い出こそが真なる誇り』
マリアベルの想いと繋がる感覚とともに、腹部に激痛が走る。
それは、断末魔の痛み。手にした光を失う瞬間の絶望。
だが、それは叶わなかった。出会えた光は、深々と突き刺さる血とともに流れ落ちた。
その流血と共に、想いは慟哭へと変わる。
流れるな、こぼれるな、消えてくれるな――――失うな。
大切に想うから、どうしたって、別れることをいやがってしまう。
絶対に見せてはならぬ、光とともに浮かぶ影が生じる。
(いつか、君に言ったね。別れをいやがるのではなく、出会えた時間を大切にしてほしいと)
その影を伐剣王は背負う。一なる願いを、全なる願いで受け止める。
(でもそれは、こんな風に奪われることを良しとすることにはならない!)
大切だと想うから、抗う。失いたくないと、失わないものを願う。
その願いが極まったとき、魔剣は高貴なる真紅に輝いた。
(だから、貴方の想いも受け止める。貴方を殺したことから逃げない。
そのためなら――貴方の願いも受諾しよう。この剣の中で、見届けてください)
「追憶は血識となりて不滅―――コンバイン・ノーブルレッド、アビリティドレインッ!!」
魔獣の知をその身に留めるレッドパワーの原点が具現し、
闇魔道の塊へと牙を突き立て、その技術を魔剣に取り込んでいく。
守護獣の意志が亜精霊と繋がり、形をなすように、
源罪の闇が憎悪と結びつき、天から降り注ぐものとなるように、
ノーブルレッドの想いが無色の憎悪とつながり、力の形をなす。
未練を従え、無念を背負い、頂へと突き進むその様は、まさしく敗者の王だ。
「闇魔道そのものを奪うつもりとは……でも、憎悪を使うってことは、理想を崩すってこと!?」
「崩さない! 理想を信じてくれた人が、ここでぼくを守っている。
夜空に誓った想いがある! ぼくは、この魔法で全てを導く!!」
驚愕を浮かべるメイメイの問いに、敗者の王が選んだ答えは理想。
こぼれ落ちていくこの世界への呪いではなく、優しい世界への想い。
その願いを高め続け、闇魔道を吸い上げようとする。
だが、理想を、憎悪無き世界を想えば想うほど、無色の憎悪は消えることを良しとせず憎み続ける。
そして、力を奪われることを感じた闇魔道も、必死に抵抗する。
憎い、憎い、全てが憎い。力を、力を、もっと力を。
始まりもなく終わりもない渇望が、伐剣王を内外から責め立てる。
彼らにしてみればジョウイは略奪者に過ぎないのだから。
だが、ジョウイは同調などせず、真っ向から受けにかかった。
「全て、全てをだ。たとえ終わらせる憎悪だとしても、憎悪を生むものだとしても、
それでもそのときまで背負う! 終わりも背負ってやる!!」
小細工などない、本気の言葉だけでぶつかり合う。
自分に言い聞かせるのではなく、届かせるという想いで誓いを吐く。
闇も、憎悪も、聞く耳など持たない。それでも想いを剣に乗せて、アビリティドレインを維持し続ける。
「オディオは言った。憎しみは永遠に続く感情だと。生まれ落ちた憎悪を消せば、憎悪は復讐者となって襲うと。
貴方たちもそうなのか。永遠に続くことを望むのか。終わりはないのか――――始まりは無かったのか!!」
その叫びに、僅かに憎悪と闇がたじろく。
憎悪の為に憎み続ける。力のために力を欲し続ける。それだけの存在だった。そのはずだった。
だが、伐剣王は始まりを問い続ける。憎んだ理由を、力を欲した理由を問い続ける。
なぜ、なぜ、なぜ。
この渇きはいつからだろうか。
この満たされないものはどこからだろうか。
『エイ……ル……?』
先に底をついたのは、闇だった。
未だに防衛を完遂し続けるゴーストロードの想いも乗せた魔剣に、単語が浮かぶ。
かつて亡将が人間だったとき、最終決戦に破れ崩れ落ちる力の求道者は、最後にそう漏らした。
もう自分ですら分からない、誰かの名前だった。
それほど前に、求道者は全てを失っていた。
「違う! 残っていたんだ!! どれだけ失おうが、意味すら無くそうが、
失いたくなかった想いが、まだ残っていたんだ!!」
それこそが、始まりだと伐剣王は断じる。
全てを失っても残る幾ばくかの想いを信じた敗者の王は、その名を鍵として誓約の儀式を発動する。
だが、そこまでだ。アルマーズを介した記憶ではそこまでしか分からない。
本人すら喰われてしまったものを、部外者の伐剣王が理解できるはずがない。
オスティア候はともかく、ジャファルもニノも背負いこそすれ、間接的なものであったため、記憶までは引き出せない。
「まだだ、まだ! 具現せよ亡刃。召喚……マーニ・カティッ!!」
だが、ジョウイはさらに一歩をねじ込む。
伐剣王の勅令によって、黒き刃としてマーニ・カティが現出する。
魔剣の力に、ディエルゴに取り込まれたものは“終わらない”。
黒き刃を従えるジョウイにとっては、武器ですら例外ではない。
されど、そんな剣一本で闇にダメージを与えられるはずもない。
闇はさらに餓えて渇き、暴れようとする。しかし、その瞬間、闇の中に一つの絵が走った。
――――部屋の中には、古代語で書かれた蔵書がぎっしり並んでるんだけど。
そこに飾られてる、一枚の絵をずっとみつめていて……動かないの。
闇の中に浮かぶのは、精霊剣を刷いた草原の少女の声。
彼女が魔の島にいるとき、精霊剣は常に彼女と共にあった。
――――人と竜が描かれてるの。
決戦の島で、ある一人の少女が追憶に導かれて一つの建物に入る。
古い古い、何百年も前に打ち捨てられた家。
――――ううん、戦争のじゃない。
闇魔道の書物の中に飾られる、一枚の絵。
少女たちにも、ましてや剣にもそれが何かは分からない。
だが、剣は“見ていた”。憶えていた。
―――― 一人の人間と、一匹の竜が寄りそって立っている……とても不思議な絵だったわ。
『………エ………イ、ナール……』
マーニ・カティの想い出を叩きこまれた闇が、闇に喰われた誰かが、微かに呟く。
「それが、始まりだ!! 貴方の想いの、真の名だ!!」
その言葉を聞き逃さず、ジョウイは魔剣を輝かせ、真名を以て闇に誓約を行う。
人名か、地名か。その名が何の意味を持つのかはジョウイには分からない。
分かるのはただ一つ。闇は、彼は、そのために闇に落ちたのだ。
その名前こそが、全ての始まりだったのだ。失いたくない何かだったのだ。
ならば、終われる。永遠ではない。
始まりがあるのならば、いつか必ず終わりがある。終われるのだ。
「貴方もだ。憎悪よ、無色の――――否、人間を愛した、物真似師の憎悪よ!!」
闇を制したジョウイの意志は、次いで魔剣の内側へと向かい合う。
オディオの系譜であるその憎悪は、闇よりも深く重い。
だが、それでもジョウイは耐え続ける。逃げず、真っ向から向かい合う。
「僕は、貴方を模造品だと、強大な力だと考え続けていた。それをまず謝罪する。
力とは、想いより流れ出る魔法だ。僕はまず、貴方の想いと向き合わなければならなかった」
それこそが、ボタンの掛け違いの始まりだった。
オディオの代替だと決めつけ、オディオばかりをみて、この憎悪を省みなかった。
それでこの想いを背負える道理など、あるはずもない。
「汝に問う。憎悪よ、永遠に憎み続けるものだというのなら、
なぜお前はここにいる。終わらないものだというのならば、なぜお前はここにいる!?」
憎悪を遡る。雷が落ちるよりも、天から降り注ぐよりも前へ。
所詮はオディオの贋作。本人でない以上、憎悪が存在するのに理由もなにもない。
だが、それでも物真似師はそれを生んだ。何のために憎悪は生を受けた?
生まれてすぐに、空へと飛び立ったのは、何のためだ?
「守りたかったからだろう! 全てを失ってでも、失いたくない光があったからだろう!!」
お前はそのために生まれたのだと、敗者は宣言する。
たとえその後全てを憎悪に塗り潰そうが、ただの力と思われようが、汚物のように蔑まれようが、
それでも、それでも生まれた瞬間、お前は確かに必要とされて生まれ、誰かを守るために在ったのだ。
ならば、繋がれる。たとえその憎悪と同調できずとも――――憎悪を生みし始まりの願いならば、届く。
「だから、来い。その願いは僕も抱いた想いだ。
どうか背負わせてほしい。永遠に続くオディオではなく、楽園<おわり>へ続く想いとして!!」
殺すのでも、無かったことにするのでもなく、終わらせる。
その叫びに魔剣が再び色めき立つ。真紅ではなく、金色の光として。
そして、ジョウイの右目が変質していく。
盾の碧だった色彩は憎悪の金色へと変わり、人間の眼球は狼の如き獣眼となる。
これが憎悪だ。どう言い繕うとも、憎悪は憎悪。肉体すら変じさせ、全てを呑み込む闇だ。
そして、闇魔道もまた同様。闇を欲すれば闇に喰われる運命だ。
憎悪のまま、闇のままジョウイはそれらを背負う。
奪うと強く認識し、所有者が彼らであったと強く戒めて背負う。
憎悪も闇も、その毒性を以て伐剣王を蝕むだろう。
だが、それでいい。民の憎悪を背負えずして何が王か。
胸に抱く魔法――傷つかない世界を、失われない楽園を伐剣王は想い続ける。
「それがいつかとまでは約束できない。でも、そのときまで僕も共に歩き続ける。
たとえ、永遠のように闇が続こうとも、僕は二度と止まらない」
オディオの忠告の通り、きっとそれは限りなく不可能なのだろう。
永遠に等しい時間の中で、憎悪に奪われ、時の復讐者に喰われ続けるだろう。
それがどうした。
奪いたければ奪うがいい。喰いたければ喰うがいい。
それでも理想は失われない。楽園は傷つかない。
紋章に冠した名の如く、何度塗り潰されようと、滅ばずに始まり続けるのだ。
いつか楽園が完成するその日まで。願いが終わるその時まで。
「あの日、確かに在った光を想って歩き続ける――――
それが、かつてこの座にいた者が僕に遺した、闇の使い方だ!!」
闇が魔剣の中に吸い込まれ、暴れ狂っていた金色の光が澄み渡る。
獣と化した右眼を憎悪の金色に輝かせながら、
それでも人間として目指すべき場所を見続ける一人の愚者がそこにいた。
無限に続く世界を渡り歩いてでも、答えを探し続けて闇に進んだ、オディオではない魔王のように。
“魔王”として、この理想を貫き通すと、その身体で示していた。
アビリティドレインが終了し、魔剣の光が収まる。
憎悪を負った証である金色の獣眼が、吸収しきれずに残った闇を睨みつける。
そこには魔剣にも取り込めない、想いも祈りもなにもないただの力が、
闇魔道の純然たる権化が残るだけだった。
Climax 02 魔王になるということ
Scene Player――――ジョウイ=ブライト
泥は残った闇を守るようにして、島の中心へとその身を寄せる。
憎悪を背負った伐剣王が、金色の魔剣を携え死喰いへと疾走する。
足を前に出すたびに泥は飛沫となってジョウイを穢し、阻もうとするが、その歩みを止めるには至らない。
泥がいよいよ危機感を覚え、圧倒的な質量でジョウイを全方向から喰らい尽くそうとする。
勇者ならば、あるいは英雄とよばれる者ならば。
希望を、勇気を、愛を、欲望を、人が生きるための想いを抱くならば、死も闇も憎悪も切り裂いて進めるだろう。
彼にはそれがない。希望はなく、勇気は乏しく、愛は足りず、欲望は歪んでいる。
『AAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!』
だけど、その道に導きを見た者はいた。
8割近くを泥に喰い尽くされたゴーストロードが、最後の想いを振り絞って闘気を発動する。
邪魔はさせぬと、その道を阻ませぬというありったけの邪念で、ジョウイに迫る泥の動きを遅滞する。
その様に、ジョウイは僅かに奥歯を軋ませ、それでも亡将を省みることなく島の中心へと走る。
イスラの慟哭が、ジョウイの脳裏を掠める。
彼の言うとおりだ。ぼくが、オスティア候から終わりを奪ったのだ。
その事実は消えないし、奪ったものを返すこともできない。
ならばそれを抱いて前に進む。奪い尽くして、前に進む。
奪ったのならば、より大きなものを与えなければならない。
全てを失った王が祈り続けた、餓えぬ国を、民の笑顔を、貴族も貧民も、
勝者も敗者もない世界を――――何一つ失わない楽園を、それを成す新しき法を、秩序を生む。
たとえ、代わりの利かぬものだとしても、それだけが王にできることだから。
そのためならば、ぼくたちの涙などいらないのだから。
「全部、奪う気なの……死も、憎悪も、闇も、全て……」
酒を呑む手さえも止めて、メイメイはジョウイを見つめる。
「……そこまでする必要あるの? 人の身で、どうしてそこまで……」
その様に、メイメイは驚嘆するしかない。
彼は英雄と呼ばれる者の気質を持たぬ、資格なき人間だ。
器ではない。故に彼はこの先に進めない。その先に待つのは破滅しかない。
資格はない。故に彼はここで沈む。宿罪に呑まれた彼にハッピーエンドは存在しない。
それを承知で、彼は走っている。
先ほどまでの彼は、魔法によって自分が歩く理由こそ知ったものの、
その歩みは先の見えぬ闇におっかなびっくり進むような足取りだった。
だが、今は違う。その爪先には体重が乗り、明確に進む先を見据えている。
いったい上で何を知ったのか、その理由を問わずにはいられなかった。
「戦いの誓い――――」
闘気に怯んだ泥の隙間を縫って走り続けるジョウイは、問いが聞こえどそれに応える余裕を持たない。
代わりとばかりに紡がれた紋章術の名に、不滅なる始まりの紋章がどくりと鳴動する。
そして、ジョウイの背に、黒い靄のようなものがまとわりつく。
それは嘆きだった。怒りだった。悲しみで、憂いだった。
失われたもの、終わったもの、奪われたもの。
紋章と魔剣に刻まれたそれらの記憶が、無色の憎悪と結びつき、負の感情と化して形となる。
ハイランド、都市同盟、忘れられた島、エレブ大陸。
様々な世界の記憶を取り込んだ、魔剣に生ずる怨嗟は、千や万ではもはや利かない。
彼らが在る限り、ジョウイはその歩みを止めることはできない。
自分は器ではない。それでも、背負ってしまったものがある以上、足を止めるわけにはいかない。
魔王の外套のようにジョウイの背を覆う黒き波濤が、ジョウイを縛り付けている。
彼らが背を押す以上、ジョウイはどれだけふらつこうが地獄の中で足を動かすしかなかった。
「つらぬく者――――」
だが、ジョウイはこの足を歩ませる想いが好意だと知った。
そして、今のジョウイは、この地獄を進むための標を紅の賢姫から得ていた。
――――それは、ある男の物語。
資格が無いと告げられた。お前にその聖剣は抜けぬと雷鳴を以て返された。
お前は、英雄にはなれないと、言われてしまった。
だけど、彼は頷かなかった。
資格が無いなら、資格を得ようと奮うべきだ。
認められないのなら、認められるように努めればいい。
英雄になるのだ。世界を、未来を守るために。英雄にならなければならないのだ。
世界が私を英雄と認めぬなら、認めさせよう。
たとえ誰に否定されようが、たとえ何を失おうが。
私は英雄となって世界を守ろう。そこにたとえ血を流そうとも。
その意志だけで、彼は世界<ファルガイア>を変革した。
彼の方法論の是非を問うつもりは更々ない。
彼が英雄になりたかっただけなのか、世界を救うための手段として英雄になりたかったのかも分からない。
だけどただ一点、分かることがある。
彼は貫いた。己が意志を世界に貫いた。
誰が認めずとも、間違いだと言っても、資格が無くとも。
ありとあらゆる手段を用い、果てを目指し、走り抜けた。
彼は、己が想いを――――魔法を以て世界を変えた。“王に至った”のだ。
「デュアルキャスト――――」
正統たる魔女の呪文と共に、魔剣が再び金色に輝きだす。
先人への畏敬を込めて、ジョウイは魔法を研ぎ澄ませる。
リルカには似ているとは言われたが、全然だ。彼の懊悩に比べれば、この魔法の何と弱いことか。
資格が無いのなら、努力すればいい。それだけのことではないか。
楽園から小鳥が飛びだしたのならば、それはその場所が居心地悪かっただけのこと。
まだ完全ではないと指摘してくれただけで十分。より良くなるように努めればいい。
魔王となるのにも資格などない。出来る出来ないなど問題にならない。
力でも血でもなく、この想いのみで魔王となり、全てを背負おう。
(だから、お前もだ死喰い。その妄念も、僕が叶え、背負ってみせる!!)
そのためにも、ここで死喰いに想いを与える必要がある。
力にするべく生むためだけではない。この想いを、伝え、知らしめ、認めさせるために。
伐剣王の踏み込みが加速する。背負ったものを、前へと進む意志へと変えていく。
犠牲に縛られるのではなく、犠牲になった人たちを想い、だからこそ楽園を創りたいと願う。
屍を増やす道だとしても、失われていい命なんてないと知っても、その屍を背負って地獄を進もう。
オスティア候、災いを招く者、ノーブルレッド。
生きている間は、絶対に交わらなかったはずのものさえも背負う。
たとえ進む道が違っても、始まりの願いと終わりの場所はきっと繋がれると信じて。
『しなければならない』と『したい』ことは、きっと同じことのだと信じて、
背負ったものの重みを魔法へと変えて、この金色の一閃に賭す。
「――――『つらぬく誓い』ッ!!」
憎悪に輝く金色の一太刀が、島の中心へと打ち込まれた。
複合紋章術によって高められた魔力が、剣撃の威力としてグラブ・ル・ガブルへと穿たれる。
泥と合一したラヴォスの亡霊と、そしてその中に眠るルクレチアへと届けと、
蒼き泥の粒子一つ一つに、4つの想いさえも越えた魔法が刻まれる。
憎悪を制し、なおかつ想いを極めたジョウイの魔法は死喰いを誕生させるのに十分だろう。
城へと、街へと、山へと、全てに伝わるように。
全てを失った者たちに、この導きが届くようにと、死喰いの内的宇宙を照らす。
このままならオディオを憎悪し、オディオに憎悪され、
何一つ望むまま終われなかった者たちはこの光を掴むだろう。
ジョウイにはその確信があった。
このまま奪うことは容易い。誕生させて力にすることも不可能ではないだろう。
(そんなに生れたいか。生れたいと子宮で暴れるか。
――――――――ならば問う。“貴方たちは、生まれて何をしたい”)
“だが、敢えてジョウイはその光を収める”。
代わりに、死喰いの奥深くへ問いを投げかける。
これは赤子なのだ。光を見れば喰わずにはいられない。
そのくせ食事の作法も知らないから、希望も欲望も勇気も愛も喰いきれない。
力だけの、本能だけの胎児。
今ここでジョウイが奪ったとしても、それは何もわからぬ子供を攫ったに過ぎない。
それは背負うとは言わない。死喰いの選択が介在していないのだ。
召喚獣として呼び出すのならば、それは力を減じさせることになる。
(それほどまで生れたいのなら、手伝ってやろう。だから、生れて何をしたいのかを決めておけ。
その答えが、それがぼくの魔法に繋がるのならば、ぼくが背負おう)
ジョウイの懐から自分の首輪の感応石がこぼれ、ルクレチアへと落ちていく。
奪うのならば、まず与えなければならない。故に伐剣王は、死喰いの想いを確かめる。
この導きを知って、それでなお掴むかどうかの選択を許そう。
もしも共にあれるのならば、そのときこそ誓約を結ぼう。
その意が伝わったか、泥は今度こそ海へと還っていくいった。
ENDING PHASE
Ending 1 SUCCESSION -継承-
Scene Player――――グレートロード
静かに流れゆく星の泥の中で、ゴーストロードは立っていた。
いや、足の影すら残っていない今の状態で立っていた、というのは語弊がある。
千路に食いちぎられた魂が、油汚れのように染み着いている。
そういう表現が妥当なほどの残滓だった。
とうに肉体も依代もなく、授けられた斧の影も砕け、もう幾ばくの時間もあるまい。
放っておけば自然に消える。
そんな影の前で、泥がじゃぶりと波打った。
彼を縛り、呪った男が、彼の目の前に立ち、己の姿をじっと見つめていた。
「御苦労でした。死喰いは僕たちの掌中に収まった。
これで、勝利の可能性ができた。貴方は任務を全うしました」
無機質な事後報告。感覚も残されていないゴーストロードにそれを述べる伐剣王の表情は分からない。
だが、亡霊はそれでも良かった。
感謝も謝辞も必要ない。ただ、このままでは終わりきれないと思っただけなのだから。
「……貴方は、最後、人として戦いたかったのですね。
彼らと、勇気を持った彼らを見て、魔剣の加護を捨ててでも、
己の個我で、彼らに向かい合いたかったのですね」
少しだけ、王の湿っぽい声が聞こえる。もはやその言葉に想えることも無かった。
そうであったのか、託された任務のためだったのか。もう思い出せない。
人としての想いを置いてきたこの身は、全て失ってしまった無様な王でしかないのだから。
「……貴方には、殿を命じました。全てを賭して礎となれとぼくが命じました。
そのために必要な全てを与えました」
死に恥を晒し続ける将に、伐剣王は冷たく言い放つ。
「だから、貴方は知らないでしょうが……僕がラグナロクに力を供給しました。
だってミスティックを使ったのですから。僕を通さなければできるはずもない」
亡霊は、消えゆく中で、それを黙って聞いていた。何を言われても、言い返すことはしない。
「ぼくが、ラグナロクを暴走させました。
ジャスティーンの力を見定めるために、捨て石にしたんですよ。
それを傀儡に過ぎない貴方が、さも自分がやったかのように嘆くなんて」
語気を強めて、伐剣王は続ける。
お前は馬鹿だと愚かだと、手のひらで踊った人形をこき下ろす。
「もう一度言います。ぼくが命じました。全てを賭して戦えと命じました。
貴方はそれを全うした。その結果によって貴方の守りたかったものは壊れたのだ。
判断ミスで失った? 自惚れないでください。貴方に自由意志などない。
貴方は僕の命令を完璧に達した。それだけが真実だ!!」
軍の行動によって生じた責任は、命じられたものではなく、命じた者がそれを負う。
そんな杓子定規な軍隊の原則論を、神秘的な泥の海で、賢しげに振り回している。
そんな子供に、亡霊は身を震わせた。気恥ずかしさで悶えそうになったのかもしれない。
「だから、僕を恨んで下さい。僕だけを憎んで下さい。
許しは乞わない。さよならも言わない。だけど」
向いていないのだろうな、と思った。
素直にさよならと、ありがとうと言えば楽だろうに、それを言わない。
悪逆非道な魔王の演技が1分も保たずに剥げ落ちている。
「後悔だけはさせません。いつか必ずや、貴方が拓いた理想郷の先の、楽園で」
それでも、この背中に負った物を忘れないでいてくれるのならば、それを拒める道理はなかった。
亡霊の影が、粒子となって完全に砕け散る。その粒が、魔剣の中に吸い込まれていった。
人としての終わりを、未来を見た少年に預け、
王として終われぬものを、理想を見た魔王に預け、
何も為せず全てを失った男の終わりは、不思議なくらい軽やかだった。
Ending 02 決戦の足音
Scene Player――――メイメイさん
「最後、手を抜いたでしょ?」
花咲く地底の楽園で、メイメイは新しく酒を注ぎながらジョウイに尋ねた。
71階に戻り抜剣状態を解除したジョウイがメイメイの方を向く。
精神のみであったとはいえ、激戦を終えたその顔は涼やかで、異変を感じさせない。
ただ、獣のような右目が金色に輝いていることだけを除けば。
「あの場で死喰いを誕生させようと思えばできた。でもしなかった。それはなぜか、聞いてもいい?」
「……理由は2つです。1つは、あの闇を完全に吸い切れなかったから」
ジョウイがアビリティドレインで魔剣に取り込んだのは、
災いを招く者が闇に踏み行った想い――――いわば始まりだ。
だが、闇を極めれば極めるほどに始まりの想いは失われ、ただ力を渇望する存在へと墜ちてしまった。
「貴方の想いで取り込むには、破滅に寄りすぎている、と」
「そうですね。破滅だけを純粋に願われてはこの魔剣では背負えない。
この中に入った闇魔道を使って、死喰いを生むしかない」
そう言って、ジョウイは自分の右目を擦る。
理想を以て憎悪と闇を制するという無茶を行ったからこそジョウイは理解する。
あれを取り込むならば、恐らく人間を捨てなければならない。
獣に、オディオに墜ちなければ、始まりの想いを捨てなければ手に入らないだろう。
それを認めることはジョウイにはできない。
この理想を貫くためには、そこに墜ちるわけにはいかないのだ。
「でも、不完全でも生むだけならたぶん半分の闇魔道で十分でしょう? 想いもそれなりに食べたでしょうし」
「……逆に聞きますが、ガーディアンロード相手に不完全な死喰いをぶつけて勝てると思います?」
「ノーコメントで」
ただ死喰いを誕生させるだけならば、今のジョウイでも十分可能だ。
そこそこの想いで、半端な術式で、それなりの憎悪でも生むには十分だろう。
だが、ゴーストロードが残したイスラ達との抗戦記憶に、
核識を通じて識った
ロザリーの歌を魔剣から連れ出した
ピサロの愛と、
セッツァーの祈りさえも乗っ取るような希望と欲望。
それらを知ってしまった以上、もはや死喰いを出せば確定で勝てるという考えは捨てなければならない。
「特にジャスティーンはまだ延び代を残しているように見えました。
この状況下での単独投入は下の下策です。召喚するならば、相応の仕掛けを打つ必要があります」
「でも、そんな悠長なことしてていいの?
貴方が永く保たないのは言うまでもないし、貴方が死喰いを誕生できると分かったら、
オル様が先取りして誕生させるかもしれないわよ?」
少しだけ身を案じるようなそぶりでメイメイはジョウイに尋ねた。
憎悪と同調せずに制するという道を選んだ以上、ジョウイのタイムリミットは変わらず存在する。
いかに制御できようが、毒に触れればいずれ蝕まれるように。
それに、ジョウイが死喰いを誕生できると分かれば、オディオとて黙ってはいられまい。
なんらかの手を講じる可能性も否定はできない。
「それはないですよ。オディオは別に戦力として死喰いが欲しい訳じゃない。
オディオはそれがどういう形で生まれるのかが見たいだけだ。
むしろ、不完全な形で召喚する方が、オディオの機嫌を損ねるでしょう」
だが、ジョウイはそれはないと断じる。
オディオの目的は、勝者に敗者を省みらせるという一点に集約される。
ならば、世界の敗者とこの島での敗者を練り合わせて生まれる死喰いはまさに敗者の象徴となるだろう。
それを、自分の手に入らないからと先走って、不完全な形で誕生させるメリットは全くないのだ。
少なくとも、誕生を完全な形で為そうとする限り、オディオは手を出さないだろう。
それこそが、ジョウイが完成度を優先する理由の2つめだ。
(……それに、死喰いにも約束した。時間を与え、完全な形で生を与えると)
蒼き門を通じて泥の海に置いてきた感応石を思い出しながら、ジョウイは死喰いを想う。
理由はまだ分からないが、死喰いはより完全な形で生まれたがっている。
それ知りながらジョウイの個人的な都合で早産にする訳にもいかなかった。
「ふーん、死喰い誕生の最低ラインは突破したから、
後はそれで勝てるように完成度を高める……ってのは分かったわ。
で、実際どうするの? ここで闇魔道を解析しながら、儀式を完璧にする?」
ジョウイの方針を聞いてそれなりに納得したメイメイはその先を促す。
このまま待ちの戦略を取るような可愛い気があるようには見えなかったのだ。
「……メイメイさんに、一つお願いがあるのですが。これを、彼らに届けてあげてくれませんか?」
ジョウイは返答の代わりにメイメイに一冊の書物を渡す。
それはマリアベルが死の淵で認めた欲望の書物に他ならなかった。
「いいの? これを渡したら、いずれ首輪解かれちゃうわよ?
そうなったら禁止エリアなんて――――ッ!?」
そこまで言って、メイメイはジョウイの目論見を理解した。
この書に書かれた事実を知れば、彼らは否応なく死喰いにたどり着くだろう。
そうなれば彼らはここを無視できない。
ここに背を向けて空中城を攻めるのは危険すぎる。
彼らは死喰いを何とかするべく首輪を解除してこちらに来るだろう。
「……ぼくはこの地で彼らを迎撃します。
彼らが来るまでに可能な限り闇魔道を完成させ、
たどり着いた彼らを殺し死を喰わせ、それを以て死喰いを完成させる」
ジョウイの背後に門が生じ、そこから2つの影が現れる。
一人は鋭い眼が印象的な猛犬の如き将で、一人は角張った顔に浮かぶ冷徹な表情が印象的な将だった。
シード、クルガン。紋章の記憶と憎悪より形作られた亡霊。
ただ違うのは、そこには曖昧な亡霊ではなく、明確な肉体があったということだ。
白磁の如き肌、黒髪と金の眼が特徴的なそれは、紛う事なきモルフの肉体。
グラブ・ル・ガブルの生命と亡霊を組み合わせて作られたモルフだった。
「勝ちます。希望も勇気も欲望も愛も、憎悪も越えて、魔法を以て王に至るために」
その宣言と共に、巨大感応石が鳴動する。
島自体が脈動するかのように響いた鼓動は、死喰いの中に更なる死が送り込まれた証だった。
希望と欲望を喰らったセッツァーの死を喰い、死喰いが更なる高みを知った証だった。
全ての幸いを喰らうセッツァーの想いを取り込んだ以上、
もう首輪が在ろうがなかろうが、死喰いは死を取り込むだろう。
「彼らにはゲートホルダーもある。あまり時間をかけるわけにもいかない。直ぐに準備を始めます」
ジョウイはそう言って立ち上がり、モルフとなった将達から魔王の外套と絶望の棍を受け取る。
外套の一部を千切り、憎悪に歪んだ右眼を隠しながら、彼はついに魔王を背負った。
「……分かったわ。もう試すようなことは言わない。だけど、最後に一つ教えてくれない?」
全ての運命が加速し始める感覚を覚えながら、
メイメイはふと、楽園のなかの一輪の花に手を添える。
「貴方の戦いによって楽園は手にはいるかもしれない。
そしてそのために血は流れるでしょう。この花も赤く染まるでしょう。
でも、白い花が好きな人もいるでしょう。そんな人たちのために、貴方は何ができるかしら?」
この楽園を血に染めてでも勝利を掴む覚悟があるのかと、占い師は問う。
はっきり言って答えの出ない問題だ。出題者と回答者の溝がでかすぎる。
「守りますよ、赤い花を。ずっと、ずっと。
いつか、誰もが赤色を忘れて、それを白いと言ってくれるまで」
それでも、誰よりも弱い魔王は間断なくそう答えた。
血に染めてでも、勝利を掴むと、敗者の王はそう宣言した。
そう、とメイメイは眼鏡の奥でこの島に残った最後の敗者を見つめる。
彼は間違っていない。その始まりの祈りも、終わりの答えも間違っていない。
それでも彼はその道を選んだ。
それだけ人を想えるのに、そこまで自分を知っているのに、選んだ道は破滅の回廊。
正しい道を選んでいるはずなのに、どこかで捻れて歪む。
いったい何が彼をそうさせるのか。そのどうしようもなさはいったい何なのか。
(でも、それが――――)
手にした手記をその力で転移させながら、メイメイは注いだ酒を飲み干した。
それが、人間と言うものかもしれないという言葉ごと。
【F7 アララトス遺跡ダンジョン地下71階 二日目 昼】
【ジョウイ=ブライト@幻想水滸伝Ⅱ】
[状態]:クラス『伐剣王』 ダメージ(中)疲労(中)金色の獣眼(右目のみ)
全身に打撲 首輪解除済み 腹部に傷跡 『魔王』としての覚悟
[装備]:キラーピアス@DQ4 絶望の棍 天命牙双(左) ハイランド士官服 魔王のマント
[道具]:賢者の石@DQ4 不明支給品×1 基本支給品
[思考]
基本:優勝してオディオを継承し、オディオと核識の力で理想の楽園を創り、オディオを終わらせる。
1:魔王として地下71階で迎撃の準備を整える
2:参加者を可能な限り殲滅し、その後死喰いを完全な形で誕生させる
3:メイメイに関してはしばらく様子見
[参戦時期]:獣の紋章戦後、始まりの場所で
2主人公を待っているとき
[備考]:
ルッカ、リルカと参加している同作品メンバーの情報を得ました。WA2側のことは詳しく聞きました。
※紋章無しの魔法等自分の常識外のことに警戒しています。
※紋章部位 頭:蒼き門の紋章 右:不滅なる始まりの紋章
※無色の憎悪の『始まり』を継承し、憎悪を限定的に制御できるようになりました。
ただし、毒性はそのままのため、日没までには憎悪に喰われます。
※マリアベルの欲望の残滓を魔剣に取り込んだことで、アビリティドレインが使用可能。
無色の憎悪を介して伐剣王が背負った(魔剣に想いを取り込んだ者)の能力を限定的に使用できます。
ただし、その為には死の痛みも含めた全てを背負う必要があります。
また、ロードブレイザーのようなジョウイの理想に全く繋がらない想いは背負えません。
※アビリティドレインにより『災いを招く者』の力と誓約しました。
その力とグラブ・ル・ガブルにより、亡霊騎士をモルフ化しました。
この2体のみ維持のための魔力コストがなくなりましたが、破壊されれば再召喚はできません。
【つらぬく誓い】
不滅なる始まり・Lv3紋章術。魔剣の中の憎悪を制したことで使用可能になった。
魔剣の中にある犠牲になってきた人たちの負の感情を高揚させ、魔力に変換して使用者をブーストする。
彼らに操られるのではなく、彼らを背負うという誓いが、伐剣王の魔法を遥か高き大地へと押し上げる。
一目見れば誰でもわかる、魔王が抱くその矛盾はあまりにも惨くおぞましい。
それでも、その矛盾を貫かなければ始まりは開かれない。
*ロザリーが見たのは、死喰いに喰われたルクレチア@LALでした。
ルクレチア以外の場所(魔王山等)が死喰いの中にあるかは不明。
*召喚獣を使い、遺跡ダンジョンの地下1階~地下70階までを把握しました。
*メイメイが地下71階に待機し、オディオにも通じる状態でジョウイを観察しています
*死喰いの誕生とは、憎悪によって『災いを招く者の闇魔道』を起動させることで、
グラブ・ル・ガブルとプチラヴォスの亡霊をモルフとして再誕させることです。
ただし、現在は闇魔道の半分がジョウイの魔剣に封じられたため、
現時点ではジョウイにもオディオにも不完全な形でしか誕生できません。
Ending 03 そして彼らもまた集う
Scene Player――――アナスタシア=ルン=ヴァレリア
「ティムくんったら少し観ないうちに、
おちんぎん(ARMS隊員としての)、こーんなに大きくしちゃって……
コレットちゃんのことを思って、がんばっちゃったんだぁ……
ほら、こんなにパンパンになっちゃってるよ?(がまぐちが)
三ヶ月も貯めちゃうなんて、ふふ、我慢強い子は大好きよ?
でも、貯めすぎっていろいろ良くないから……(節税的な意味で)
ね? 出費しちゃいましょ? 気を楽にして……お姉さんが手伝ってあげるから……
ぐへへへへええへへへええ―――――――ほげえッ!!!!」
スウィートな夢を見ていたアナスタシアの目を覚ましたのは、本の角だった。
斜め45度に傾いて自由落下した本は、このように目覚ましの役割すら果たす。
「誰よ! はにぃであふぅできっちゅなスんばらすぃドリーミンに浸っていたってのに!
安眠妨害とか訴訟? もうこれは訴訟も辞さないってこと? 上等ッ、表出ろやぁ!!」
「……屋外だろうが」
映像にするといろいろコードに引っかかりそうな夢から
現実に引き戻されて怒り心頭なアナスタシアに、ピサロが呆れたように応じる。
ピサロは既に目を覚まし、砲剣の握りを確かめていた。
「口開くなよリア充、黙って爆発しろよ(おはよう、ピサロ! すがすがしい朝ね!!)」
鼻血を吹きながらいい笑顔で挨拶するアナスタシアを見て引き金にかかるピサロの指に力が入るが、
ロザリーのことを3回ほど思い出したところで力を緩めることに成功した。
「……貴様の仲間が呼んでいるぞ」
ピサロが促したその先には、先ほどまで戦場を隔てていた壁だった。
鼻をこすりながらアナスタシアが耳を傾けると、
その向こうから、アナスタシアやアキラを呼ぶ
ストレイボウの声が聞こえてきた。
あたりを見回せば戦闘らしき音はなく、どうやら全ての戦闘は片づいたらしい。
「あなたが答えればいいじゃない?」
「……勘違いの上でもう一戦したいというのなら、やぶさかではないぞ」
どうやらピサロはアナスタシアが目覚めるのを待っていたらしい。
返事をしてアナスタシアが死んだと思われ、戦闘に発展する可能性を危惧したのだろう。
やはり、戦う気はもうないらしい。
「聞こえてるわよー! 今から壁ぶった切るから、少し離れてなさーい」
扉を開けるから離れてなさいというのと同レベルの気安さで、
アナスタシアは退いていろという。
「……山にもほどがあるだろう」
「なんか言った? まあいいけど。そういえば、そろそろ出せるかしら、ルシエド……ふんっ」
ピサロの呆れたような言葉を聞き逃し、アナスタシアは欲望を高め、巨大な聖剣ルシエドを具現する。
「……セッツァー……」
問題なく召喚された聖剣を見て、ピサロは僅かに顔を曇らせる。
ルシエドが出現したことの意味を理解できないほど、ピサロは忘八者ではない。
「…………?」
「どうした、アナスタシア」
だが、一向にルシエドを振らないアナスタシアを怪訝に思い、
ピサロはアナスタシアに声をかける。
「ん? いや、何でもないわよ。見てなさい……ふん!!」
アナスタシアの斬撃によって、隆起した壁が両断される。
常人から見れば明らかにおかしいが、アナスタシアならばさほど不思議ではない。
だが、その光景に僅かな安堵を滲ませていたのは、当のアナスタシア本人だった。
「んー? なに、こっちを見つめて……いやらしい」
「馬鹿を言え。……装填」
ピサロの視線に感づいたアナスタシアが、おどけるように身をくねらすと、
考えるだけ阿呆臭いと目を背けながら、ピサロは砲剣に魔力を込める。
放たれた砲撃は、飴のように壁をくり抜き、アキラたちのいるエリアへの道を開く。
完全とは言えないが、戦闘可能な程度には魔力も戻ったらしい。
「こんなものか。人間どもに事情を説明するのも億劫だが、致し方ないか……」
「ねえ、ピサロ、これ貴方の?」
ストレイボウたちの影が大きくなっているのを見続けるピサロに、
ツインテールを解いてポニーに戻しながらアナスタシアが声をかける。
その手には、先ほどアナスタシアの眼を覚ました一冊の本があった。
だが、ピサロには当然思い当たる節もなかった。
そう、とアナスタシアはデイバックにそれをしまい込む。
読むのは他のみんなの状況を確認したあとでもいいだろう。
そう意識を切り替えて、アナスタシアは彼ら3人を迎えた。
その手に残る、本の重みを振り払うように。
この後、彼らは知ることになる。
イスラたちが戦い抜いた勇気の物語を。アナスタシアが吼えた愛の物語を。
眠りから覚め、散乱した遺品を集めて待つアキラだけが継げる希望の物語を。
そして、その書に記された、賢者の物語を。
最後のページだけ白紙となった愚者の物語だけは知らぬまま。
【C-7とD-7の境界(C-7側) 二日目 昼】
【
カエル@
クロノ・トリガー】
[状態]:書き込みによる精神ダメージ(中)右手欠損『覚悟の証』である刺傷 瀕死 疲労(極大)胸に小穴、勇気(真)
[装備]:天空の剣(二段開放)@DQ4+WA2 覆面@もとのマント
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本:燃え尽きた自分を本当の意味で終わらせる
1:イスラを引っ張ってストレイボウの仲間たちと合流する
2:友の願いは守りたい
[参戦時期]:
クロノ復活直後(グランドリオン未解放)
[備考]
※ロードブレイザーの完全消失及び、紅の暴君を失ったことでこれ以上の精神ダメージはなくなりました。
ただし、受けた損傷は変わらず存在します。その分の回復もできません。(最大HP90%減相当)
※天空の剣(二段開放)は、天空の剣本来の能力に加え、クリティカル率が50%アップしています。
【
イスラ・レヴィノス@サモンナイト3】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(極)、心眼、勇猛果敢:領域支配を無効化
[装備]:魔界の剣@DQ4、ドーリーショット@
アークザラッドⅡ、サモナイト石“勇気の紋章”@サモンナイト3+WA2
[道具]:基本支給品×2、
[思考]
基本:――
1:――
[参戦時期]:16話死亡直後(病魔の呪いから解かれている)
[備考]
※高原、クロノ、マッシュ、ユーリル、ヘクトル、ブラッドの仲間と要注意人物を把握済み。
※フォース・ロックオンプラス、ブーストアタックが使用可能です。
※サモナイト石“勇気の紋章”のおかげでカスタムコマンド“ブランチザップ”が限定的に使用可能です。
通常攻撃の全体攻撃化か、通常攻撃の威力を1.5倍に押し上げられますが、本来の形である全体に1.5倍攻撃はまだ扱えません。
また、本来ミーディアムにあるステータス補正STR20%SOR10%RES30%アップもありません。
【ストレイボウ@
LIVE A LIVE】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(極)、心労(中)勇気(大)ルッカの知識・技術を継承
[装備]:フォルブレイズ@FE烈火の剣、“勇者”と“英雄”バッジ@クロノ・トリガー+クロノ・トリガーDS
[道具]:基本支給品一式×2
[思考]
基本:約束と勇気を胸に抱き、魔王オディオを倒してオルステッドを救い、ガルディア王国を護る。
1:イスラを引っ張って仲間達と合流する
2:ジョウイ、お前は必ず止めてみせる…!
参戦時期:最終編
※アキラ以外の最終編参加キャラも顔は知っています(名前は知りません)
※記憶石によってルッカの知識・技術を得ました。
ただし
ちょこ=アクラのケースと異なり完全な別人の記憶なので整理に時間がかかり、完全復元は至難です。
また知識はあくまで情報であり、付随する思考・感情は残っていません。
フォルブレイズの補助を重ねることで【ファイア】【ファイガ】【フレア】【プロテクト】は使用可能です。
※“勇者”と“英雄”バッジ:装備中、消費MP2分の1になります。
※首輪に使われている封印の魔剣@サモナイ3の中に 源罪の種子@サモサイ3 により
集められた 闇黒の支配者@アーク2 の力の残滓が封じられています
闇黒の支配者本体が封じられているわけではないので、精神干渉してきたり、実体化したりはしません
基本、首輪の火力を上げるギミックと思っていただければ大丈夫です
※首輪を構成する魔剣の破片と感応石の間にネットワーク(=共界線)が形成されていることを確認しました。
闇黒の支配者の残滓や原罪によって汚染されたか、そもそも最初から汚染しているかは不明。
憎悪の精神などが感応石に集められ、感応石から遥か地下へ伸びる共界線に送信されているようです。
【アキラ@LIVE A LIVE】
[状態]:HP1/32、疲労(超)、精神力消費(超)
[装備]:パワーマフラー@クロノ・トリガー、激怒の腕輪@クロノ・トリガー、デーモンスピア@DQ4
[道具]:毒蛾のナイフ@DQ4 ブライオン@LIVE A LIVE、基本支給品×5 天使ロティエル@SN3(使用可)
デスイリュージョン@アークザラッドⅡ、ミラクルシューズ@FFⅥ、いかりのリング@FFⅥ、
海水浴セット、基本支給品一式、ランダム支給品×1、焼け焦げたリルカの首輪、
ラストリゾート@FFVI、44マグナム(残弾なし)@LIVE A LIVE、バイオレットレーサー@アーク2
セッツァーのデイパック、アシュレーのデイパック、
ちょこのデイパック、拡声器(現実)、日記のようなもの@???
[思考]
基本:ヒーローになる。
1:起きたことを説明する
[参戦時期]:最終編(心のダンジョン攻略済み、ストレイボウの顔を知っている。魔王山に挑む前、オディオとの面識無し)
[備考]:超能力の制限に気付きました。テレポートの使用も最後の手段として考えています。
※
カノンの名をアイシャ・ベルナデット、リンの名をリンディスだと思っています。
※松のメッセージ未受信です。
【
アナスタシア・ルン・ヴァレリア@
WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:ダメージ(中) 胸部に裂傷、重度失血 左肩に銃創 鼻血 精神疲労(極大)
[装備]:アガートラーム@WA2 マリアベルの手記
[道具]:感応石×3@WA2、ゲートホルダー@クロノトリガー、基本支給品一式×2
[思考]
基本:“自分らしく”生き抜き、“剣の聖女”を超えていく。
1:他のみんなと合流する
2:ジョウイのことはとりあえずこの場が全部終わってから考える
3:今までのことをみんなに話す
[参戦時期]:ED後
[備考]:
※名簿を未確認なまま解読不能までに燃やしました。
※アナスタシアの身にルシエドが宿り、聖剣ルシエドを習得しました。大きさや数ついてはある程度自由が利く模様。
現在、セッツァーが欲望の咢を支配しているため、剣・狼ともどもルシエドを実体化できません。
※マリアベルの手記の最後には空白のページがあります。後述。
【ピサロ@ドラゴンクエストIV】
[状態]:クラス『ピュアピサロ』 ダメージ(大) ニノへの感謝 ロザリーへの純愛 精神疲労(極大)
[装備]:クレストグラフ(5枚)@WA2 愛のミーディアム@WA2 バヨネット
[道具]:基本支給品×2、データタブレット@WA2、双眼鏡@現実
点名牙双@幻想水滸伝Ⅱ、解体された首輪(感応石) 天罰の杖@DQ4
[思考]
基本:ロザリーを想う。受け取ったロザリーの想いを尊重し、罪を償いロザリーを傷つけない生き方をする
1:償いの方法を探しつつ、今後の方針を考える
[参戦時期]:5章最終決戦直後
[備考]:*クレストグラフの魔法は、下記の5種です。
ヴォルテック、クイック、ゼーバー、ハイ・ヴォルテック、ハイパーウェポン
*バヨネットはパラソル+ディフェンダーには魔導アーマーのパーツが流用されており魔導ビームを撃てます
*ラフティーナの力をバヨネットに込めることで、アルテマを発射可能です。
※マリアベル・ストレイボウ・アキラ・ちょこ・ゴゴ・ジョウイ・アナスタシア・ニノ・ヘクトル・イスラのデイバックに
首輪解体用工具及び解体手順書が分散して入っていました。
回収できた分量・及び手順書の復元度はお任せします
Ending 04 ヴェルギリウスの未練(天国篇)
Scene Player――――マリアベル=アーミティッジ
さて、言い遺したことはこれで全部じゃ。
長々と語ってすまなんだな。ときに――――
これを最初に読んだのはアナスタシアか?
お前には特に何もない。
言いたいことは言ったし、言われたかったことは言ってくれた。
それで十分じゃ。十分すぎるほどにな。その生に幸いあれ、友よ。
読み終わったら、ここで燃やしてくれ。頼む。
これを最初に読んだのはニノか?
1日そこらじゃったが、お主といて、楽しかった。ロザリーも同じじゃったろう。
お主のような子がおるというだけで、この永い世にも少しは楽しみ甲斐があったというものぞ。
だから、笑っておくれ、永き世で最後に出会えた愛し子よ。
子供が癇の虫を起こすと大人は眠れぬのじゃ。どうかそのまま、涙を拭ってこの言葉を捨ててほしい。
これを最初に読んだのはヘクトルか?
先に逝くことになってすまんな。お主には苦労をかけることになる。
なにせ残っておるのがアナスタシアも含めて子供ばかりじゃ。
この衆をまとめられるのはお主くらいしかおるまい。
じゃが、それでもどうか守ってやってくれ。彼ら子供の未来を。
言いたいことはそれだけじゃ。このまま破り捨ててくれ。
これを最初に読んだのはアキラか?
先に述べた通り、お主の力を借りなければ収まらん状況になった。
妾が不甲斐ないばかりに申し訳ない。
なに、心配はない。妾達のフォースと同じよ。
己を信じよ、疑うな。妾の言葉なんぞ捨て去っていけ。
駆け抜けよヒーロー、その足跡こそが道となる。
これを最初に読んだのはストレイボウか?
開口一番、お主の友を罵倒してすまなんだな。
悔しかったか? だったならそれでよい。その想いのまま、友と向かい合ってやれ。
忘れるな。お主は生きておる。お主の友も然り。
まだ遅くはない。妾を振り返るくらいなら捨て置いて急げ。
きっと、お主の友も待っておるよ。
これを最初に読んだのはちょこか?
見ての通り、アナスタシアは子供じゃ。ひょっとしたらお主よりもな。
ひとりでは危なっかしいから、目を光らせておかねばならんのじゃが。
頼む。もう少し、やつとともにいてやってくれんか。
妾の代わりではなく、アナスタシアが大好きなお主として。
……ありがとう。この書はここで閉じて、あやつの傍に行くが良い。
これを最初に読んだのはゴゴか?
もうこれが最後と思うが故に言うが、カエルの前例から考えると、恐らくお主とセッツァーは時間平面上でズレておる。
この真実がお主の中のオディオを刺激することを恐れ、言えなかったことを許してほしい。
それでも行くか? ……この書を捨ててでも行くのじゃろうな。止めはせぬよ。
だが、どうか憎悪に呑まれてくれるな。
お主が全てを失っても守りたかった者達が遺したお前を、あ奴らの手で殺させないでくれ。
これを最初に読んだのはイスラか?
お主が会わせたかった娘にも会ってみたかったが、叶わんことになった。
代わりと言ってはなんじゃが、お主が、伝えてくれぬか。
マリアベルという、そやつと似合う娘がおったと、お主が伝えてくれぬか。
なに、お主も捨てたものではないよ。そう言ったであろう。案ずるな。
……ここで書を捨てよ。よいな。必ずじゃ。お主は、特に。
これを最初に読んだのはカエルか?
絶対に許さん。お主には何度煮え湯を飲まされたことか。許すわけなかろう。
たとえ妾以外の誰もが許そうと許さん。少しでも罪を自覚するなら重みに潰されて朽ち果てよ。
…………運が良かったな。そんな妾はもうここにはおらん。
妾はもう知らぬ、死ぬも生きるも好きにせよ。
ただ、ストレイボウだけは、裏切るなよ。分かったならこれを捨ててさっさと去ね。
これを最初に読んだのは魔王か?
お主とは戦中で戟を交えるのみであったな。ブラッドとリルカの件は無論蔑ろにはできぬが、
それを差し引けば……うむ、貴様との戦いはなかなかに心躍ったぞ。
チャンバラで切った張ったも悪くはないが、貴人の決闘としてはいささか品位に欠けるからのう。
機会があれば心行くまで術理戦をしてみたかったが……もはや詮無きこと。
さらばだ魔導の頂点よ。その髄でこの書を灼き、後方を欠いた皆の役に立ててやってくれ。
これを最初に読んだのはピサロか?
……多くは語るまい。お主がこれを読んでおると言うことはロザリーの言葉が届いたということじゃからのう。
手放すなよ。失ったものは真には還らぬ。だが、それは全てが無意味となるのではない。
ほれ、いつまでも死人を見るでない。行くがいい。
その道にロザリーの祝福があらんことを。
これを最初に読んだのはセッツァーか?
直接見えた訳ではないが、ひとかどのことは聞いておる。
……お前の手に掛かれば、この書さえも交渉と謀略の道具になるのじゃろう。
お前だけは、お前だけにはかける言葉が見つからぬ。
お前とゴゴはあまりに近くて遠すぎる。どう転んでも破滅的な結末しか見えぬ。
だが、それでもじゃ。破り捨てて構わぬから、一つ言わせてくれぬか。
もしも、もしも奇跡が起きたのならば、それを素直に受け止めてほしい。
それだけよ。
これを最初に読んだのはジャファルか?
顛末はニノやヘクトルから聞いておる。部外者が口を出すのは野暮じゃが言わせてもらおう。
闇だ光だの、青い嘴でピーピーさえずるでない小僧。
たかが20年さえも生きておらぬ分際で、世界など語るでないわ恥ずかしい。
お前のこれまでの世界に光が無かろうが、それが光の無意味を示すものにはならぬ。
世界は広く真理は遠い。妾の言葉さえも真理ではない。屑籠行きじゃ。
故に生きよ。傍らの娘と、生を全うせよ。闇を語るのは、それからで遅くない。
さらばじゃ。皆の衆。頼んだぞ。
できることならば、遺したくはなかった。
だが、どうにも妾の欲望は、書き遺さずにはおれんようじゃ。
最初に読むのは………………やはりお前なのか、ジョウイ。
お前がこれを最初に読むということは、お主はもうアナスタシア達のもとにはおるまい。
妾が死んだ今、お主がこの場に留まる理由もメリットもないからな。
逆に考えれば、お主がこのタイミングで妾を切るということは、
妾達の中に潜むメリット以上の何かがあったということ。
お前が乾坤一擲の大勝負を仕掛けるに足る何かが生じたということ。
だがあの時点でまだセッツァー達は来ておらん。
つまり、お主が真に待っておったのは、魔王とカエル。狙いは、魔鍵ランドルフか……紅の暴君か。
素直に完敗じゃよ。
疑いを持たなかった訳ではないが、仮にセッツァーと協力して裏切ったとしても、
お主がここから全部をひっくり返す手が思いつかんかった。
妾は、最後の最後を読み切れなんだわさ。
死の狭間で、お主の癒しの光の中にあった暗い感情を受けるまではな。
……不思議に思うか?
なぜそれを誰にも、アナスタシアにも言わなかったか。
自惚れるでない小童。妾の時をなんと心得る。
残された友との語らいにくらぶれば、貴様の叛意なぞ時間を割くも勿体ないわ阿呆。
本当、本当に阿呆よ。
もう少し手を抜ききっておれば、感応石での会話も欲望を書き記すことも叶わなかったろうに。
力を半端に強めよって……おかげで死の苦しみが無駄に延びたわい。
お主が優勝して何を願うのかは分からぬ。じゃが、恐らくろくでもないことじゃろう。
皆殺しだ破滅だととか、そういうレベルで収まらぬ何かをな。
あえて言おう。止められぬか。
その先には何もない。お主がその手に何かを掴むことはない。
だから止めてくれぬか。貴様のためなどとは言わん。
アナスタシアやニノ、ちょこ達のために、我慢してくれぬか。
あの雷を、人の心の光を見たじゃろう。
人はいつかそこにたどり着く。それを信じてやってくれぬか。
……それで止まるなら、最初からこのような真似はせんか。
ああ、面倒くさい。本当に面倒くさい奴よの。
なぜそうも面倒なんじゃお主達は。ほんに、よく分からん奴よ。
妾は長い年月、さまざまな人間を見てきた。いい人間も悪い人間もいた。
お主はいい人間か? 違うじゃろう。妾を目的のために見殺すのだから。
ならば悪い人間か? そうでもない。ならばリルカの死を悼むまい。
ああ、分からぬ。この血の気の足りぬ精神ではとんと分からん。
命を想えるくせに、死を良しとする。非道を選べながら、それでも痛みを感じる。
何も言わず、ただ己のみに十字架を背負いたがる。
身の程を知りながら欲しいものを我慢できぬ。人を愛していながら信じられぬ。
何故なのよ。いくら叡智を捻ろうが、この問題だけは最奥にかすりもせぬ。
誰の手も振り払ってでも道を進む強さがありながら、誰の手も掴むことのできぬほど弱い。
賢しくも愚かで、愚かで、愚かすぎて愛おしさすら感じるよ。
なんと矛盾に満ち溢れた存在よ、ジョウイ。分からん。本当に分からんよ貴様達――――『人間』は。
なるほど、このノーブルレッドたる妾が“2度も”読み間違えるのも道理か。
……2つ、頼みがある。
1つは、この書を、あ奴らに届けてやってほしい。
それが貴様にとって恐らく不利となることは承知しておる。その上でじゃ。
対価……とは言わぬが、代わりに、一つ面白い話をしてやろう。
ある男の話を。お主の先に疾走した、全てを掴んで全てを失った莫迦の話を。
私見も感情も交えぬ。その男が何を為し、何を成したのかをくれてやる。
あ奴と同じ道を進まんとするお主が、せめて同じところで転ばぬための杖として。
それを語る前に、もう1つじゃ。
お主の道の果てを、妾に見せよ。お主の末路を、お主の滅びを、お主の結末を見せよ。
あの時、妾たちが掴み取った選択は真に正しかったのか。
妾たちが掴み取らなかった選択の先に、何があるのか。
限りなく『人間』たる貴様の往く道が、どうなるのか。それをノーブルレッドに示せ。
いやとは言わせぬよ。貴様には、責任があるゆえの。
殺した責任? まさか。妾はあの選択に後悔はない。責任も糞もないわい。
じゃあ何かと? まさか本気で分からんというわけなかろうな。
あの時――――天から降り注ぐものが全てを滅ぼそうとしたあの時、
わらわはほんの少し……ほんの、ほーんのちょっぴしじゃ……ドッキリしたのよ。
分かるか? 分からんかなー。分からんのかこのバカチンがッ!
あーもー、つまりじゃな、つまりじゃなあ、
―――――妾を抱いた責任、とってくれるな?
くくく、ははははははっ!!
ああ、まったく、馬鹿馬鹿しい。なんで妾が、こんな嘘に引っかかったのか、まったく。
さ、それでは語るとしようか。わらわが消えゆくまで、子守唄のように。
懐かしいな……この感覚は、ああ、こそばゆい……あの時のようじゃ……
知らぬものと、手探りで触れ合うような……
災厄の前、アナスタシアと逢う前にこうしておったように……
なあ……お主の後継に渡したこの手紙は……
お主のところにまで届くであろうか……手紙をやりとりしている間……
妾達は、確かに……友であったのじゃ……
どうして、妾達は……最後まで、友ではいられなかったのかのう……
なあ、アーヴィング……始まりの友に連なる最後の友よ……
※マリアベルの手記の中から、
ジョウイに当てられた文節のみ(できることならば、遺したくはなかった~から最後まで)
不滅なる始まりの紋章に吸収されました。空白以上の痕跡は残っていません。
※ジョウイがアーヴィング=フォルド=ヴァレリアの原作中の行いを知りました
NEXT PHASE
Scene Player――――Mastar Scene
『魔族の王』が、『狂皇』が、『魔王』が、『破壊』が、
絆を砕き、心を壊し、怒りを、憎悪を、嘆きを、死を増やす。
それは瞬く間にこの島を覆い、『焔の災厄』となる。
焔は消え、雨が降り、世は暗雲に包まれる。
『闇黒』は『虚言と姦計』を以て霧雨の如く島へと染み込む。
染み込んだ雨は島の深く、深くへと伝わり、やがて一つの泥と交わる。
泥は、『島の意志』は、かつて『大きな火』と崇められたものは、
闇を喰い、憎悪を喰い、力を喰らい『災いを招く者』となる。
それこそが泥の海の墓標――――死を喰らうものに至る地獄巡り。
そして、ついに八界の地獄巡りは終わった。
どのような形であれ、世界最期の日の終わりに、煉獄山は現れる。
この先どう転ぶかなど、観測者でも読めはしない。視えるのはただ一つ。
「――――時間だ」
次の6時間こそが、最後の分岐点であるということだけだ。
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最終更新:2013年05月03日 10:52