White or Black? There is no gray.      ? ◆FRuIDX92ew



野生の血が沸き、悪を討てと騒ぎ立てる。
ただひたすらに叫び続ける彼女は止まらない。
己の意思を確かめるように、ただ叫びを闇夜に轟かせる。
木々は共鳴する。大地は揺れ動く。大空は震え渡る。
そして、闇と光の下へと彼女の声と意思が届く。

光は動く。
この殺し合いを止める為に、聞こえた声が信頼できるものだと信じて。
そうでなかったとしても、起こりうる殺人を止める為に。
自分ができる限りのことをするために。
光は動く。

闇は動く。
ただ、仕事として。
この殺し合いを動かすために。
次なる獲物を狩る為に。
闇は動く。




エイラは吼え続けた。
時間も、場所も忘れるほど吼え続けた。
右足の痛みを忘れられるように、別の感覚を呼び覚ましながら。
このままだったなら何時までも叫び続けていたかもしれない。
エイラの研ぎ澄まされた感覚が、気配を察知していなければ。
「お前、お前も、戦うのか?」
エイラは誰もいないはずの森林を見つめながら問いかける。
察知した何かを頼りに、見えない未知の物に対し警戒を怠らない。
気配を感じるのは確かなのだが、それがどこにいるかまでは把握できない。
それでも、エイラはひたすら前を睨み続ける。

すると、目前で煙が上がり始めた。
煙は徐々に広がり空まで上る勢いで木々を覆い隠す。
大物マジシャンでも登場するような演出である。
普通に人間と接するならこんな回りくどいことをする必要はない。
考えられるのは一つ、煙の中からの奇襲。
襲撃者に備えて両拳を強く握りしめ、迎撃の準備を整える。
冷たい風がエイラの肌を撫でるが気にも留めない。
さらに天空へと舞い上がる煙をふと見上げてみた。





煙がおとりだったと気がついたのはそのときだった。
上空から黒を纏った人間がナイフを突き立てながら一直線に向かって来ていたのだから。
おそらく煙に注意が行っている間に横から接近し何かしらの手段で空中へと舞い上がり奇襲をかけるつもりだったのだろう。
しかしエイラは幸運だった、このタイミングで上を見上げることが出来たのだから。
また、自身の持つ驚異的なポテンシャルにも救われたといってもいい。
その襲撃者に対し瞬時に飛び退くことが出来たのは、彼女だからともいえる。
もし、エイラが万全な状況だったなら奇襲は失敗していただろう。
だが、今のエイラは右足に大きな傷を負っていた。故に左に飛び退く際に右足に力を入れるのが一瞬遅れてしまった。
その一瞬の差で、彼女の右腕は大きく切り裂かれたのだ。
頭に突き刺さるよりはマシとも思えるが、右腕がほぼ使えなくなったのは素手を武器とするエイラには致命傷である。

「くっ……エイラ、負けない!」
右腕右足が傷ついたなら、残った左足と左腕でフォローするまで。
襲撃者が再び空へ跳ぶのを見て、その場から素早く離れる。
飛ぶところから見ていたので今度は難なく回避できたが、やはり右足のせいで一瞬行動が出遅れる。
このまま行けば、間違いなく自分がやられてしまう。
かといって自分から踏み込んでいけば間違いなく右足がネックになり大きな隙が生まれる。
それを見逃してくれるほど目の前の敵は甘くはないだろう。
そうなる前に決着をつける。チャンスは次に相手が跳ね、自分をめがけて飛び込んで来たとき。
そこでカウンターパンチを見舞うことが出来れば……追い払うことぐらいは出来るかもしれない。
両者が相手の出方を伺い始める、両者ともその場から動こうとせずただ隙をうかがっている。
エイラは襲撃者の黒い覆面をただ見つめ、襲撃者もエイラの方をじっと見つめていた。
怪しいとは思っていた、その素早さがあればすぐにでも踏み込んで殺せる距離にいたのに。
その怪しさが確信的になったのは、すぐ後のこと。体が鉛のように重くなりつつなってからだった。
「スロウ」
襲撃者の男は、魔法を唱えていた。覆面で口が動いているかどうかが判断しにくかったのだ。
自分の体が動きにくい事以上に、エイラの眼前で起こっている出来事全てがスローモーションのようにエイラには見えた。
首筋へと向かうナイフを止める為に左腕を動かすがいつもよりも遅すぎる。
襲撃者の動きを止める事はかなわず、相手は持ち前の素早さで難なくエイラの抵抗を対処している。
やがて襲撃者はエイラの首筋に、ゆっくりとナイフを当て一気に――――――





リオウはなんとも言い表せない焦りを感じていた。
微かに聞こえた叫び声。それが何の叫び声だったのかは分からない。
死に直面しながらも、死にたくないという気持ちから出た叫びなのか。
それとも誰かを殺してしまったが故の後悔の念の叫びなのか。
それとも、ルカのような殺すことに意義を持つ者の叫びなのか。
確かめる手段は一つ、声の聞こえたほうへ急行することだ。
潮の香りが漂う港町を全力で駆け抜け、平野へと躍り出る。
汗を拭う間も持たずに、力の限りただひたすら駆ける。
最悪の可能性、人が死ぬことを避けることが出来るなら。
自分の手によって誰かの命が救えるならば。もしそれが仲間たちだったなら。
走り続ける理由はそれだけで十分だった。

やがて遠くの二人分の人影がリオウの目に映る。
その人影が近くまで来たとき、リオウは驚いた。
リオウが見たもの、それはまさに襲撃者が女性の首を掻っ切ろうとする瞬間。
「やめろォォォォォ!!」
反射的に男に向かって槍を投げつける。
男もそれを察知したのか、瞬時にその場から飛び跳ねる。
槍は外れた、しかし襲撃者にが想定もしていないことが一つだけあった。
「逃がさ……ない!」
スロウがかかっているはずの女性が驚くべき速度で宙へと繰り出したことである。
瞬間的に襲撃者との距離を詰め、必殺の一撃を見舞う。
襲撃者もとっさのガードが精一杯で、腹部にほとんど直撃してしまう。
女性はそのまま勢いを失い重力に従って地面へと落ちる。
襲撃者も攻撃によりバランスを失い地面へと落ちる。

「だ、大丈夫ですか!」
リオウは思わず女性へと駆け寄り、女性の体を引き起こす。
すると、女性はリオウの手を振り払い自力で起き上がってきた。
「エイラ……まだ、闘え――――――」

声は途切れた。いや途切れたように聞こえただけなのかもしれない。
女性が立ち上がったと思えば、地面に倒れ伏していて。
自分の体にはついているはずのない大量の返り血が付いていて。
一本の槍が、女性の体を貫いていた。

一瞬だけ頭が真っ白になる、その状況を飲み込むのに時間はかかった。
その槍は、間違いなく自分が投げた槍。
襲撃者を外しどこかへと飛んでいったはずの槍。
それがなぜここにあるのか? 答えは簡単だ、襲撃者は「物を投げる」エキスパートだったからだ。

無意識のうちに再び女性の下へ駆け寄るリオウ。するとまだ微かに動いていることに気が付いた。
胸を貫かれている、助かるわけはない。自分でもそれは分かっているのに。
「大丈夫ですか?!」
誰がどう見てもそうではない状況なのに、なぜかそんな言葉しか出てこない。
「あ……ああ」
女性の目がだんだんと空ろになっていく。そんな状況をただ見るだけしか出来ない。
「クロ……クロ……」
何かを呼んでいるように天へと左手を伸ばし、そして倒れた。
「黒……? 黒がなんなんですか?!」
疑問を投げかけても、もう答えてくれはしなかった。

こうやって立ち尽くすしか出来なかった自分が無力で惨めで。
「ちくしょう、ちくしょおおおおおおおおお!!」
どうすればいいのかも、わからなくて。

【エイラ@クロノトリガー 死亡】

【残り47人】

【C-3 平野 一日目 黎明】
【リオウ(2主人公)@幻想水滸伝Ⅱ】
[状態]:健康
[装備]:閃光の戦槍@サモンナイト3
[道具]:魔石『マディン』@ファイナルファンタジーⅥ、、基本支給品一式
[思考]
基本:バトルロワイアルに乗らず、オディオ打倒。
1:「黒」……?
2:信頼できる仲間を集める。ジョウイ、ナナミビクトールビッキーを優先。
3:ルカ・ブライトを倒す。
4:首輪をなんとかしたい。
[備考]:
※名簿を確認済み。
※参戦時期は獣の紋章戦後、始まりの場所へジョウイに会いに行く前です。



一方、襲撃者シャドウは槍を投げた後にすぐさま竜騎士の靴でその場から飛び退いた。
魔法やありとあらゆるものを組み合わせた奇襲だったが、最後の力だけは予想外だった。
もっと冷静になる必要がある、もっと確実に殺していく必要がある。
「…………俺もまだまだだな」
シャドウは闇を纏い闇の中を進む。仕事を進めるために足を進める。
彼は止まらない、止まれない。
闇に生き闇に死ぬもの、「アサシン」なのだから……。

【D-3 森林 一日目 黎明】
【シャドウ@ファイナルファンタジーVI
[状態]:左肩にかすり傷、腹部にダメージ(中)
[装備]:アッサシンズ@サモンナイト3、竜騎士の靴@FINAL FANTASY6
[道具]:エイラのランダム支給品1~3個(未確認)、基本支給品一式*2
[思考]
基本:殺し合いに乗り優勝する。
1:ひとまず逃走
2:参加者を見つけ次第殺す。ただし深追いはしない。
3:知り合いに対して……?
[備考]:
※名簿確認済み。

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006:ダブル・ナイトメア シャドウ 051-1:エドガー、『夜明け』を待つ
027:天魁星の意志 リオウ 050:三人でいたい
015:Wild Lady,Strange Scientist エイラ GAME OVER


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最終更新:2010年06月25日 23:24