ピアノを除いた3人はペリクルの中央部にある原始教の総本山「ファーストフォレスト」へと向かった。ファーストフォレストはあまりに巨大な透明のドームで、中央に「ムタビリス山」があり、その頂上には巨木「コスモ杉」が生えている。ムタビリス山の周りは鬱蒼とした樹海で囲まれている。厳重なセキュリティをエステリのクラッキングによって突破し、侵入に成功した。
内部は太古の原生林が根ざし、バイオテクノロジーによって復元した恐竜やマンモスなどの絶滅生物が闊歩していた。また、原始教の信者はまさに原始人のような出で立ちで、危険なスローライフを営んでいた。3人は原始教の教祖
キヅツキーがいるというムタビリス山頂の祭壇を目指した。
道中、植物の密集した壁の奥にひらけた空間を見つけた。真ん中にはひどく汚濁した小さな沼があった。他の生物は一切見当たらず、辺りは静寂に包まれていたため、なにやら神秘的に感じられた。沼はあぶくを吹き出し、見るからに猛毒だったので近づけず、探索はできなかった。
ムタビリス山頂は雲海の上にあり、神聖な雰囲気だった。祭壇に辿り着くと、コスモ杉に純白に赤い模様のある巨大なクジャクがとまっていた。扇状の飾り羽にある百もの目玉模様がこちらを睨みつけているようだった。怪鳥は落ち着いた関西弁で自己紹介をした。彼こそが原始教の教祖キヅツキーだったのである。キヅツキーは人間に対する不平不満の講釈を垂れ、動物だけでなく人間の豊かな生活を取り戻すためにも、この原始爆弾の爆発が重要だと説いた。しかし、3人はピアノのために戦闘開始。
キヅツキーは死の一歩手前で原始爆弾を置いて逃げ出してしまう。とはいえ、原始爆弾の爆発阻止という目的は果たした。しかし息はつけない。3人は爆発すると何が起こるかわからない次元爆弾の爆発を阻止するために、ロウジャックのグリムのラボへと舞い戻る。
エステリは数列にあらゆる情報が含まれているという円周率こそがこの世の真理ではないかと考えた。しかし、パスワードの入力方法は物理キーボードのみだったので、「3.14159265359・・・」とひたすら手打ちで円周率を入力していった。ハイバーは当てにならないので、フラックスとエステリが交代で入力するが、百万桁を超したところで、「爆発準備完了、起爆します。」というナレーターの声がした。それでもキーボードを叩き続けるフラックスに、ハイバーは「爆発しますよ!!」と避難を呼びかけるが、フラックスは「俺のことは置いて逃げてくれ!!」と答える。ハイバーはフラックスの腕を掴むが、フラックスは「やめろ!!・・・最後までやってみないとわからないだろ!!」と払いのけた。愛想を尽かしたハイバーはエステリの腕を引っ張って駆け出すが、次の瞬間、白い閃光が視界を奪った。
やっと目を開ける明るさにまで収まった時、そこにいたのは、身体が緑色のドロドロした液体へと融けゆくフラックスと、目をトロンとさせて口を半開きにしたエステリと、直立二足歩行の顔に紅色の隈取をした灰色のゴリラのような生物だった。
「フラックス!!大丈夫ですか!?エステリ!!フラックスが!!」と、灰色のゴリラが叫んだ。ハイバーは自分の腕が毛むくじゃらになってしまったのを見て唖然とした。フラックスもエステリも口がきけないようになってしまった。その時、
モンスターと化したフラックスがハイバーに襲いかかってきた。フラックスの酸による攻撃に、ハイバー1人ではまったく歯が立たなかった。
ピアノは
ペリクル病院の病床の上で、奇怪な爆音に目を覚ました。部屋のどこからかうめき声が聞こえる。その声はモンスターと化した看護師のものだった。ピアノは戸惑いつつも襲いかかってきたモンスター看護師を倒した。
ピアノはベッドに腰掛けながら、頭を駆け巡るさまざまな思考の渦を止めようにも、止めることができなかった。ピアノのアイデンティティは完全に拡散していた。とりあえずピアノは、おそらく親が名づけた本当の名前「メルヴィナ」をこれから名乗ることだけを決めた。
その時、突然病室の扉が開いた。入ってきたのはビクタだった。しかし、何やら様子がおかしい。鼻息が荒く、しかめ面なのだ。「フラックスはどこだ!!殺してやる!!」ビクタは叫んだ。メルヴィナは知らないと言うと、ビクタに訳を尋ねた。「アイツは昔、俺をイジメてやがったんだ!!」と怒鳴った。メルヴィナはそんなこと初耳だったので詳しく聞いた。ビクタによると、フラックスとビクタは小学校時代、お互いをビッくん、フラさんと呼び合い、毎日遊ぶほどの仲だったが、クラスメイトがビクタをイジメはじめると、フラックスも同調してビクタをイジメるようになったという。(回想シーン)
メルヴィナはビクタをなだめ、殺しをやめるよう説得を試みるが、「お前も僕のモノにしてやるよ!!」とビクタが迫り来る。メルヴィナは襲いかかってきたビクタに説得を続けたが、ついにビクタは言葉を話せなくなり、うなるだけになってしまった。やるせなく戦闘開始したが、ビクタはただの人間なので簡単に殺してしまう。メルヴィナは泣き崩れてしまった。
悲しみに暮れていると、ドアからまた人が入ってきた。神経質そうな目をした中年男性である。彼は、自分はモンスターではないから安心してくれと言い、マグナス・エレクトラと名乗った。マグナスはメルヴィナの涙のわけを聞いた。メルヴィナは泣きながらも、なぜかすんなりとすべて話せてしまった。その結果、マグナスはメルヴィナについていくことにした。マグナスは先ほどの爆発で、エネルギーを一点に集める超能力「一点集中」を手に入れた。泣き止んだメルヴィナはマグナスと力を合わせ、白衣を着たモンスターたちを倒し病院を後にした。
街はまさに地獄絵図だった。大量のモンスターが人々に襲いかかっていたのだ。愛らしかった猫ですら化け猫と化していた。ビクタのように凶暴化している人間もいた。メルヴィナはフラックスたちに会うため、ひとまずロウジャックへ向かうことにした。ニクスゲイザーの隠し扉を開け、ロウジャックを突き進んでいると、奥からハイバーらしき叫び声が聞こえた。メルヴィナとマグナスは急いでグリムのラボの扉を開いた。
そこには驚くべき光景が広がっていた。倒れた灰色のゴリラと、顔が緩んだエステリ、そして身体が緑色にとろけたモンスターがいた。そして部屋の奥の一点からは虹色の光がかすかに漏れていた。メルヴィナは、「もしや叫び声の持ち主は倒れているゴリラ?いや、今ならそうでもおかしくない」と思った。
とろけたモンスターが襲いかかってきて、戦闘開始。しかし、メルヴィナとマグナスの2人をしても太刀打ちできなかった。マグナスは「ダメだ・・・逃げるぞ!!」と呼びかけ、灰色のゴリラを背負い、メルヴィナはエステリの手を引っ張って部屋を出た。とろけたモンスターは、周りの物を酸で溶かすと、それを吸収して東洋の龍のような姿になり、身体をうねらせながら、北の方角へと飛び去った。緑色の龍は酸性雨を降らせ、金属をも溶かしていった。
さしあたり灰色のゴリラを休ませ、エステリに事情を聞いたが、まったく話にならなかった。その時、政府から緊急速報が発令された。それは「理性を失った人間は排除措置、知性を失った人間は隔離措置を採る。」というものだった。知性を失ったエステリはファーストフォレストへと移送されてしまった。メルヴィナはエステリとの別れにむせび泣いた。
目を覚ましたゴリラのような生物は、やはりハイバーだった。彼によると、あのとろけたモンスターはフラックスらしい。ハイバーはメルヴィナに一部始終を話した。自分のために原始爆弾の爆発阻止に奮闘してくれたことや、自分の暴走が大惨事の根源だったことなどを知り、ひどい自己嫌悪にさいなまれた。フラックスが最後までパスワードを打ち込んでいたことを聞いて、心臓がキュンと締めつけられた。メルヴィナは鼻の奥がツーンと痛んだが、今は泣いている場合ではないと、なんとか涙を呑んだ。
さらに、ハイバーは次元爆弾によって、他人と精神を分かち合う超能力「精神共有」を手に入れていた。ハイバーは精神共有によって、BR-EAKに読み込んだイメージデータを他人に感じさせることが可能となった。
エステリを救い出そうにも、緊急速報を撤回させようにも、ファーストフォレストも政府もセキュリティが厳しく、エステリの技術がなければ侵入できなかった。メルヴィナ、マグナス、ハイバーの3人はとりあえずフラックスを追って北を目指した。
最終更新:2013年11月01日 17:54