脅威の赤い怪人!! ライダー危うし!!

 閑散とした街中、バイクの排気音が響き渡る。太陽は真上を少し降りたあたりに存在し、空の青さが目に沁みた。
 バイクはビルが並ぶ街並みを走り抜ける。まるで、悪夢から逃げるように。
 いや、バイクに乗る男の本心はそうではない。
 着ていたジーンズと黒のライダースジャケットというのラフな姿は、所々が破れ、鍛えた身体に刻まれた傷が垣間見える。
 黒い頭髪は長くもなく、短くもなく。彼が活動しやすい長さにまとめられている。
 無骨な印象を持たせる、ガッチリとした顔の輪郭。しかし、その顔は精悍な印象の方が強い。
 だが、今はその顔は苦痛に歪んでいる。
 傷を負った左目は閉じられ、残った右目は悔しさを浮かばせていた。
 その彼の名は日高仁志。今の名は、『響鬼』である。

(麻生さんの仇をとる。そのために、今は休まないと……)
 それくらいしか、手段を講じれないことにヒビキは歯噛みをする。
 やがて、ファーストフード店と本屋のチェーン店が並ぶ道筋に、人影が現れた。
 ヒビキはバイクを止め、警戒心も露に影を見つめる。
 長身を黒いロングコートに身を包み、ヒビキと同様激戦を繰り広げたのだろう。
 男の身体は傷だらけ。短髪の黒髪の下の厚い唇の右横には青痣がついている。
 ヒビキは彼の名前を知っている。秋山蓮、この殺し合いで珠純子と草加雅人とともに出会った参加者だ。
 バイクを止め、地面に降りる。少し前のヒビキなら、無条件で信頼し、駆け寄るだろう。
 だが、今の彼は冴子に騙されたことにより、先に警戒心が働き、蓮を睨む。
 その様子に気づいたのだろう。蓮も立ち止まり、睨み返す。
「……ヒビキか」
「秋山、草加はどうした?」
「……奴の心配をしているのか? 相変わらずお人好しだな。珠純子を奴に殺されたというのに」
 瞬間、身体に熱が駆け巡り、ヒビキが怒りに震えた。
(やはりこいつらは冴子と同じ、この殺し合いに乗って俺を騙したのか!?)
 ヒビキに無念と怒りが沸き起こり、自分の不甲斐なさを呪う。
 もし、変身できていたなら、我を忘れて襲っていたかもしれない。
「……ちょうどいい。ヒビキ、俺と戦えッ!」
「なに?」
「俺はどうしても最後の一人にならなければならない! たとえ……親友をこの手で殺してもなッ!」
 蓮は叫んで、鉄パイプを上段から振り下ろす。
 だが、勢いも力もない攻撃を、ヒビキは片手で軽々と受け止める。
 ヒビキは蓮の自棄になった行動に呆れ、同時に怒りが静まり冷静になってくる。
「秋山、何があった?」
「黙れ! お前も変身ができるんだろ? なら、俺と戦えッ!!」
(そうか、こいつは今の俺と同じか)
 何か辛いことがあって、自棄になっているのだろう。秋山は自分が変身しないのは、制限のせいだと、この傷だらけの身体を見ても気づいていない。
 ヒビキはその様子を痛ましげに見つめる。
 やがて、鉄パイプを引いて、身体を泳がせる蓮の頬に右拳を叩き込んだ。
 蓮は道路を転がり、仰向けに倒れた。脱力し呼吸を荒くしている彼の姿に自分を重ねる。
 騙されたゆえに多くの知人や友人、この殺し合いで出会った仲間を喪ったヒビキ。
 この殺し合いに希望をかけるしかないため、友をも殺さなければならなかった蓮。
 蓮の事情はヒビキが考えるよりも複雑だが、彼がそれを知る術は無い。
 ヒビキは蓮の横に立ち、青い空を見上げる。麻生が望んだ光はそこにあるのだろうか。
 ゆっくりと、蓮へと向き直る。
「秋山、俺に手を貸してくれ」
「断る。話を聞いてなかったのか? 俺は乗ったんだぞ」
「だからこそだ。お前が優勝するには、どうしても倒さなければならない奴がいる。そして、俺はそいつらを倒して麻生さんの仇をとりたい。
俺一人では勝てなかった。お前一人でも無理だろう。だから、一時的に手を組もう」
「……本気か? 俺は珠純子を……」
「殺してはいない。お前は、人を殺せる奴じゃない」
 ヒビキの言葉に蓮が目を見開いている。
 おかしな事を言ったのかと疑問に思う。しばらくして、蓮は力を抜くようにため息をついた。
「分かった。そいつらを殺すまでだ。いいな」
「ああ」
 悲しみに満ちている男が二人、手を合わせた。


「殺してはいない。お前は、人を殺せる奴じゃない」
 蓮は、ここにきて城戸の言葉を聞けるとは思ってもみなかった。
 友を失った喪失感が蘇る。胸がきしみ、瞳に涙が溜まりかけたため、空を見上げた。
 ヒビキはその自分の顔を覗き込んだ。
(ヒビキが一人で倒せなかった相手か。もし死に場所となるなら、ちょうどいいかもしれない)
「分かった。そいつらを殺すまでだ。いいな」
「ああ」
 差し出された大きく力強い手を、蓮は握り返した。
 蓮は恵理を救う事を諦めてはいない。だが、城戸真司の死は彼に死に急がせてしまう結果になった。


 ガタックゼクターの案内で、氷川と天道は加賀美の墓の前に立っていた。
 辿り着いた二人が作ったものだ。氷川は敬礼を送り、天道は黙って見つめるのみだった。
 瓦礫が崩れる音に、二人は振り向く。視線の先には、リュウガとひよりがいた。
「……天道」
「遅かったな。加賀美に手を合わせておけ」
 無言で頷く、赤いチェックの柄のシャツを着た、スレンダーな身体を天道の前に出す。
 セミロングの黒髪で隠された眉の下の閉じられた瞼の端には涙が溜まっていた。
 小柄な身体が、更に小さく見え、今にも消えてしまいそうだった。
(俺の妹を泣かせるとは。加賀美、罪作りな奴だ)
 墓を見つめる天道の視線は厳しい。この戦いは、犠牲が多すぎる。
 そして、その犠牲は止まる所を知らない。
「どういう奴だったんだ? 加賀美という奴は?」
 黙祷を終えたリュウガが、長髪の下にある険のある眼差しを天道へ向けた。
 スカイブルーのダウンジャケットを着る彼を眩しそうに見つめ、天を仰ぐ。
「馬鹿な奴だった」
「……ああ、馬鹿だ」
 死んだ人間を馬鹿と評す様子に、リュウガと氷川が呆気に取られる。
 だがやがて、ひよりが言葉を継いだ。
「だけど、優しくて暖かかった」
「そして、強かった。まったく、天の道に並ぶ事を許可したのに、お前と言う奴は……」
 氷川とリュウガは黙する。気を遣うこともないのにと天道は思う。
「天道、僕の身体のこと、知っているだろ?」
「ああ、それがどうした?」
「……僕はお前の妹である資格、あるのかな?」
 ひよりの言葉にギョッとする。後ろの二人が息を飲む気配を感じた。
 それに構わず、天道はゆっくりとひよりの隣へと立った。
「ひより、知っているか? 一回目の放送の二時間くらい後、一人の少女が希望を伝えた事を」
「……知らない」
「その時ひよりさんは気絶していたからしょうがないですよ。
その放送は、園田真理という少女が希望を伝えていたんです。
ファイズは、仮面ライダーは闇を切り裂いて、光をもたらすって!」
「俺は、その時仮面ライダーファイズ、乾巧と一緒だった」
「どんな人だったんですか? 本物の、ファイズは?」
 天道は微笑みながら墓の前に出る。
 加賀美を含めてその場にいる人間全てに語りかけ始めた。
「……加賀美、お前に負けないぐらい、面白くて、不器用な奴だったよ。猫舌だがな。
そして、ひよりと同じく、その身体が人間でないことに苦悩していた」
「それって!」
「だが、奴は園田真理が言っていたように、闇を切り裂いて、光をもたらすに相応しい男だ。
ひよりには、あいつのように己の運命と戦って欲しいと思っている」
「僕には無理だよ」
「無理じゃない。俺が傍にいる。そして、リュウガも、氷川もな」
 振り向く自分の妹を安心させる為、墓に向けていた微笑を向け直す。
 氷川が同意するように頷き、リュウガは戸惑っていた。
「そうですよ、ひよりさん。あなたは一人じゃない。僕たちが傍にいます。ね、リュウガさん」
「いいのか? 俺なんかが傍にいて?」
「嫌だといっても付きまとってやれ。それがひよりの為にもなる」
「……なんという兄貴だ。お前」
 天道とリュウガのやり取りに、その場に笑いが満ちる。
 いつもは沈んだ顔のひよりにも、少し不器用な笑顔が出来上がっていた。
 その笑顔を見て、天道は安堵する。彼が見た彼女の最後の姿は、とても寂しげだったからだ。
(加賀美、お前の想いは受け取った。だから、俺がそこに逝くまで安心していろ。
もっとも、次に会う俺の姿は老人だろうがな)
 周りの空気を気にせず、右手の人差し指を天に向ける。
「俺は天の道を行き、総てを司る。氷川、リュウガ、脱出の計画をたてに戻るぞ」
 天道に応え、彼らが拠点としているビルへと踵を返した。


「ほう、面白いな。このカイザのベルトは」
 多くの会社員が仕事に励むであろう部屋で矢車が言い、結城が反応する。
 スーツを着込んだ、青年実業家を思わせる矢車。
 同じくスーツを着込み、渋みを漂わせる科学者然とした結城。
 それに、ノースリーブのシャツを着込んだ、活発な印象の小沢を加えた三人は、支給品を確認している。
「一瞬で強化服を精製する技術。これがあればアンノウンに対抗するのが簡単になりそうね」
「それに加えて、装着者を選ばないともなればな。小沢さんの支給品とリュウガの支給品が装着できた。
どうやら、カイザドライバーの装備だったらしいな」
 いまやカイザドライバーは、矢車の手によって装備を充実させていた。
 こいつは自分が持とう。矢車がそう言い出そうとしたときだった。
「これは小沢さんが持っていてくれ」
「どうしてだ? 結城さん」
「君は今このベルトに興味を持っているだろう? 本当に汎用性があるかどうか分かるまで、彼女に預かっていてもらいたい」
「私は構わないわよ。まあ、矢車くんも落ち着きなさい。まだザビーゼクターは死んだわけじゃないから」
「えっ!?」
 驚く自分に、小沢は壊れたザビーゼクターをデイバックより取り出した。
 小沢の掌にあるザビーゼクターは僅かに瞳を瞬かせた。
「今施してある処置だと、切断した回路を繋げただけよ。まだ変身はできない」
「……それでも、再びザビーになれるかもしれないってだけで、充分です。小沢さん。ありがとうございます」
「ま、気にしないでいいわ。借りは飲み会でみんなに奢るでどう?」
「考えておこう」
 苦笑する矢車は、小沢に心の底から感謝をする。完全調和を目指す彼にはやはりザビーが性にあう。
 だが、それはあくまでザビーゼクターが直った後である。今は小沢の手元にあるカイザドライバーに目を向ける。
(まあ、焦ることはない。脅威が迫れば、嫌でも使わないといけないときも来る。その時に借りればいいさ)
 心の中で呟き、天道たちが戻ってきたのを確認する。
 会議の再開時だと考え、草加を見張っている南を呼びにトランシーバーを手に取る。

 矢車は、自分の欲求が死へ向かっていることに気づかなかった。


 柱に手を回され、草加は自分を見張る光太郎を前に、脱力していた。
 今はとにかく体力を回復させる。それを済まして、光太郎か氷川を丸め込み、ここから逃げる。
 できれば天道を殺すのが理想だが、それは高望みしすぎだ。
 最低でもカイザドライバーは手に入れたいと草加は考える。
「……草加さん。一つだけ聞かせてください」
 無言で返す。内心は、チャンスだと草加は喜んでいる。
 だがそれを少しでも表に出すと何を思われるか分からない。あくまで、拒絶するような態度をとる。
「あなたは、真理さんの放送で仮面ライダーの一人として伝えられた。なのに、なぜこんな殺し合いに乗ったのですか?」
「お前が知る必要はない」
「答えてください! 俺は、できればあなたに仮面ライダーに戻って欲しいと思っている。
こんなクライシスの策略に乗るのは悲しすぎます!!」
 まっすぐに、前分けした黒髪の下の乾巧を髣髴させる瞳を向けてきた。
 その精神に反吐を吐きそうになるが、表には出さない。
 数分の沈黙の後、草加は根負けしたような演技でため息を長々と吐く。
「君に話した真理と俺が恋人だったという話は本当だ」
「……えっ!」
「もっとも、俺の時間軸ではだが。長年想い続けていた彼女にやっと俺の気持ちが伝わったところだ。
彼女は俺と結ばれる時間軸の前から来たかもしれない。だが、いつの彼女でも関係ない!
彼女は殺された! なら、最後の一人になって彼女を蘇らせる!!」
 本気を混ぜた嘘。矢車や小沢ならともかく、光太郎では見抜くことは不可能だろう。
 案の定、光太郎は哀れみに満ちた目を向けている。
(いいぞ、もっとその哀れみの目を俺に向けろ)
 これはただの布石。光太郎の気を引き、その同情を氷川や結城といったお人好し勢に飛び火させる。
 今はまだ煙も上がらないが、これは重要な仕込みだ。
 しくじるわけにはいかない。光太郎の様子を見れば、今のところ成功しているのが分かる。
 もう一押し……
『南くん、聞こえているか?』
「はい、聞こえます。矢車さん」
『天道も戻ってきたところだし、会議を始めたい。君も参加してくれ。鍵はかけ忘れるな』
「了解」
(いいところでッ! まあいい。これからも機会は何度でもある。その時を逃さなければいい)
 会議室に向かおうとする光太郎は、立ち止まり草加に視線を合わせる。
「草加さん、俺はあなたが仮面ライダーに戻る日を願っています。その時は、ともにクライシスの野望を打ち砕きましょう」
 その言葉を残して、光太郎は去る。
 軋みながら閉まるドアを草加は憎々しげに睨んで、袖を探る。
 ここに来る前に連中が拠点にしていた建物で見つけた、ヘアピンだ。
 手錠は外しておいて損はない。もっとも、ここを逃げ出すのは混乱に叩き込んでからだが。
(待っていろよ。真理。俺が君を救うからな)
 草加の瞳は真理しか映していなかった。


 どこかの企業で使われていたであろう、会議室に、主要メンバーがそろう。
 鏡に相当するものは布で隠され、薄暗い室内で八人は顔を合わせる。それぞれ、首輪の一部には布が縛り付けられている。
 これは盗聴機能を抑える効果がある。ドクトルGのおかげだ。
 四角いテーブルに、上座に天道、その次の左右は席は矢車と小沢。
 続けて、結城と氷川、リュウガと光太郎、最後にひよりの席順となっている。
 テーブルの中央には支給品と地図。みんなが集まった事を確認した天道は、ゆっくりと口を開く。
「おそらく、今の俺たちのグループが一番脱出に近い。これはチャンスだ。
脱出のために今必要な事を話したい」
「その前に確認したいことがある。この首輪について、分かっている事をまとめたい。
まずは、この首輪が爆破する条件だ」
 挙手しながらはきはきと発言するのは矢車。彼の言うことももっともだ。
 天道、結城、リュウガ、小沢、矢車はある程度首輪について話し合っている。
 しかし、残ったメンバーには詳しい事を話してはいない。情報を整理する意味でも、矢車の提案に乗る。
「ああ、まずこの首輪についてだが、前に言った通り神崎は任意に爆破ができない。
理由は、リュウガと小沢の話を統合させた結果、『願いを叶える』という能力に支障をきたすからだ。
奴は多くの命を使って、『願いを叶える』という能力を持つことができる。しかし、あくまでも殺し合いで研磨された命のみ。
そうだったな? リュウガ
「ああ。奴が今まで引き起こしたライダーバトルは概ねそんなところだ。
今回は幾らか毛色が違うが、あくまで基本は俺たちが何度も経験したライダーバトルを基にしている」
「それで、この首輪の爆破条件を推測してみた。
命が研磨される条件。俺はそれを『生きようとする意志』だと考える。
神崎が引き起こしたライダーバトルは、願いを叶える事でしか希望をつむげない人物がほとんどだと聞いた。
願いを叶えるには、生き抜かねばならない。その『意思』は強ければ強いほど、神崎の能力を強力にする。
今まで失敗続きだった奴は、強引に妹に自分の能力を使うため、多くの『意思』を必要としているはずだ。
分解したため分かったことだが、さまざまな技術を詰め込んだ結果、首輪での爆破ではその『意思』を抽出しにくいとのことだ。
よって、奴は首輪での爆死を減らすようにするしか対策はない。
それから推測される爆破条件は、

一、禁止エリアに抵触し、一定時間そこで過ごした時。
二、無理矢理首輪を外した時。

以上の二点のみだ。これらに気をつければ、爆破は起きない」
 天道はため息が氷川、光太郎、ひよりから漏れるのを確認した。
 もちろん、完璧に安心できるわけではない。リュウガからも警告をされたが、真の切り札といえる『オーディン』がまだ使われていない。
 このまま行けば対決は免れないだろう。そのためには首輪を外し、仲間を増やして決戦に備えなければならない。
 やがて、続きを結城が引き継いだ。
「それで、今の目的は首輪や未知の技術の解析だ。これは、俺と小沢さんが引き受けよう」
「結城と小沢には期待している。そして、今の急務は解析できそうな場所を探索することだ。
それで、探索を行いたいのだが……」
「それなら、心当たりがある」
 みんなの視線が集まるのは、リュウガ。小沢、矢車両名の視線は疑惑が、氷川、ひよりには信頼がこめられた視線だ。
「ほう、リュウガ。その心当たりとやらを教えてくれ」
「ああ。俺はこのオーガドライバーをD6エリアの研究施設らしき場所で発見した。
そこなら、この首輪の研究が可能だと思う」
「その言葉、本当に信頼できるの?」
 小沢が疑念の瞳をリュウガに向ける。当然の反応だが、天の道を行く男は慌てない。
 慌ててフォローに入ろうとする氷川を押さえて、天道は悠然と小沢と矢車に視線を向ける。
「俺が信頼する。だから、小沢と矢車も信頼してくれ。
それで問題が起きそうなら、俺が引き受ける」
 静かに言うと、呆れた矢車の顔が眼に入る。
 そういえばこのころの矢車はこういう奴だったと思い出した。
「何でこいつを信頼する? 俺たちをこんな目に遭わせた神崎と組んでいた奴だぞ。それに、二人殺している」
リュウガは、ひよりを守るといった。そして、その言葉を守ってくれている。
ひよりの味方は俺の味方。太陽は皆に平等に降り注ぐ」
 相変わらずの俺様節に、付き合いきれないと矢車が返す。
 小沢は……
「なかなか面白い事を言うのね。いいでしょう、あなたを信頼してあげる」
 ニヤリと、二人は不敵な笑みを返しあった。
 小沢はリュウガに対して疑念を払拭してはいない。だが、自分がいる限りこれが火種になることはないだろう。
 リュウガの話は一段落した。次は、例の研究施設についてだ。
「俺が例の研究施設へ向かおう。リュウガ、案内してくれ」
「待て。天道は脱出の鍵を握る奴だ。もしも、そこに敵がいたりしたらどうする?
それに、悪いがリュウガをまだ信用できない。完全調和の為に、誰か他の人物に変えるのを提案する」
「その提案は却下だ。ここで一番の戦力は、俺、南、リュウガだ。南には他に頼みたいことがある」
「なんでしょうか?」
「結城と一緒に市街地の南部を探索してくれ。怪我で動けない参加者がいるかもしれないし、こちらが襲撃される可能性を減らしたい。
それに、城戸真司とやらと合流もしたい。
あと、これは個人的な頼みだが、ドクトルGの墓を作ってやってくれ」
 天道の頼みに反応したのは結城。彼に残るドクトルGへの罪悪感を減らしてやりたいのと、ドクトルGに敬意を持っているゆえだ。
「ドクトルGなる人物は、ヨロイ元帥と同じデストロンの幹部なんでしょう?
そんなに気をかけるような奴だったの?」
「ああ、奴は敵ながら手ごわく、そして強い男だった。心も、身体もな。敵であるのが残念だ」
「……珍しいな、お前がそこまでベタ褒めするとは」
「奴は自らの首を落として、俺たちに首輪を託した。奴の想いを無駄にしないためにも、絶対脱出する。いいな」
 その場にいる全員が頷く。決意を胸に結束が固まっていった。
「それでは引き続きチーム分けを行う。
この三台のトランシーバーをトランシーバーABCと仮称しする。

トランシーバーAを持つのは、俺とリュウガだ。研究施設へと向かう。
トランシーバーBは結城と南。市街地南部の探索を任せる。
トランシーバーCはここに置いておこう。

ここの主な守りは氷川、お前に任せる」
「そんな大役。僕なんかが勤めても……」
「いいに決まっているでしょ。あなたは氷川誠。一度も逃げなかった男よ。もっと自信を持ちなさい!」
 言いながら小沢は氷川の背中を強く叩く。痛みに涙を浮かべる氷川を見て、皆に笑顔が宿る。
「さて、俺と矢車が料理した麻婆豆腐でも食うか。草加のデイバックに豆腐があるのは幸いだったな。腹も減っているだろう?」
「何なら、どちらの麻婆豆腐が美味いか勝負するか? 天道」
「今度は負けない。なぜなら、俺は光の料理人だからだ」
 対抗心を燃やす二人に呆れながら、ひよりとリュウガによって料理が並べられていく。
 途中、氷川が豆腐を上手く摘めないなどのトラブルはあったが、美味しい料理に舌鼓を打ち、その場には満ち足りた空気が流れる。
 食は人を幸せにする。それを実現させた瞬間だった。


 D6エリアの研究施設を前に、蓮とヒビキが立つ。
 見下ろす建物は、風が吹いて異様な雰囲気をかもし出していた。
 これが、ヒビキの言っていた邪気という奴だろうか?
 蓮の考えに答えは返らない。ヒビキが音叉を取り出したのが見える。
「ベルトは使わないのか?」
「これはなるべく使いたくない。麻生さんの力を、奪った感じがしてな」
「そうか」
 蓮はヒビキの気持ちが分からないでもない。サバイブのカードを真司の傍においてきたのも、彼と似た気持ちになったからだ。
 やがて、ヒビキは手近の壁へと音叉を叩く。
 凛とした音と音の波を引き連れた音叉を額へとかざしている。
 鬼の顔が浮かび、紫色の炎にヒビキが包まれた。
「ハァァァァ、ハァッ!!」
 炎が晴れた先には、鍛えた身体を紫色の硬質的な皮膚に変えた、異形の戦士が立っていた。
 顔には隈取に似た、赤い模様が彩り、銀の二本角の間には鬼の顔がある。
 腰に下げているのは、音撃棒・烈火という武器と、もう一本存在していたそれの鬼石をつけただけの、即席音撃棒があった。
 響鬼へと変身を終えるのを見届け、蓮もバイクのミラーへとカードデッキをかざす。
 現れた銀のベルトを確認すると、腰を捻り、ロングコートをはためかせる。
「変身!!」
 空のベルトの中央へカードデッキを装着する。
 黒い西洋騎士の鎧が合わせ鏡に映し出されたように、幾重にも重なる。
 やがて、蓮の身体に集中したそれは、彼を仮面ライダーへと変身させた。
 彼の鉄格子のようなバイザーから、青い瞳を向け、腰に下げていたダークバイザーをとって構える。
「行くぞ!」
 響鬼の掛け声とともに、坂を下りて研究施設へと突進する。
 しかし、その走りは止まった。地面が爆ぜて煙に視界を奪われる。
 煙の晴れた先には、こちらを研究所の上から見下すドラスと冴子がいた。
「やあ、お兄ちゃん。新しいお兄ちゃんを連れてきたんだね?」
「ああ、お前を倒して、麻生さんの仇をとるためにな!」
「ふーん。無駄なのによく頑張るよ。いいよ、相手してあげても。
でも、外でお願いね。研究所を破壊されるのは嫌だから」
 そういい、化け物は降りてきた。
 鋼色の肉体が徐々に赤く染まっていく。逆に赤い複眼は、黒くなっていき、触覚を縮ませていく。
 獣の牙を思わせるクラッシャーを不気味に蠢かせ、ドラスは『変身』を終えた。
「こういう場合は『変身ッ!』って言ったほうがいいかな?」
「お前がその言葉を口にするな!」
「ああ、同感だ。化け物は化け物らしく犬のように吠えていろ」
「ひどいなぁ~。まあいいけどね」
 ドラスは肩を揺らしている。笑っているのだと理解し、人間の感情を醜悪に真似しているように見え、反吐が出そうになる。
「手伝いましょうか? ドラスくん」
「いいよ、冴子お姉ちゃんは見ているだけで。たぶん肩慣らしにもならないんじゃないかな?」

「「舐めるな!!」」

 響鬼と声を重ね、左右から挟み撃ちを仕掛ける。
 ナイトはそのままバイザーにカードをセットした。

 ―― SWORDVENT ――

 鏡より槍に似た大剣を召還する。ウイングランサーの名を持つ剣を両手で持ち、ドラスの身体を切り刻もうと狙いを定める。
 響鬼の方は、音撃棒を両手で構えて駆ける。
「ハァァァァァッ!」
 彼の腹の底からの雄たけびに応えるように、炎が鬼石と呼ばれる赤い石から伸びて、刃となった。
 やがて、二人が交差する瞬間を狙い、剣を思いっきり横一文字に振るう。
 金属がぶつかり合う甲高い音が車道に響いた。
 一瞬の静寂、ナイトの視界には無傷の赤い甲殻があった。
「ドラスくん、あなた頑丈ね」
「ね、言ったでしょ。肩慣らしにもならないって」
 ナイトが全力で剣を押し込むが、赤い肌に傷はつかない。
 向かいでは響鬼も同様に剣で切り裂こうとしているが、結果は虚しかった。
「あんまり引っ付いていると、暑苦しいな」
 まるで、ドラスが蝿でも払うかのように腕を振るったと思った瞬間、ナイトの胸部に重い衝撃を打ち込まれた。
 胸のアーマーを歪ませ、ナイトは天に舞い、青空を目にしながら倒れ伏す。
 ドサッという音は同時に聞こえた。おそらく、響鬼も同じ目に遭っているのだろう。
 痛みに震える身体を無理矢理立たせる。立ち上がるのに五秒ほどたったが、ドラスは何もしない。
「ハンデあげようか? 君たちが一発攻撃を加える度に、僕も一発反撃する。こちらからは攻撃しない。それでいい?」
「ふざ……けるなぁ!!」
「落ち着け!? 秋山!!」
 ナイトは突進し、デッキからカードを取り出す。

 ―― TRICKVENT ――

 電子音がダークバイザーから発せられると同時に、ナイトの姿が二人、四人、六人と分裂する。
 ドラスを囲んで、剣を振り下ろす。金属がぶつかる甲高い音の六重奏。
 中央のドラスは黙って立っている。
(効いたか?)
「ふふ……六発殴っていいんだよね?」
(効いてない!!)
 離れようとバックステップをするが、ドラスの拳が三人のナイトを砕いた。
 続けて、バックステップを終えた二人のナイトを蹴り砕く。
(速い!!)
「本物のお兄ちゃん、み~つけった」
 ドラスは一瞬で距離を詰め、赤のボディに太陽の光を反射させた。
 右拳を音の壁を破りながら迫る。
 しかし、ナイトとドラスの間に、紫の影が割り込んだ。
 稲妻が轟いたような轟音が鳴り響く。
 響鬼が引き千切った車のドアが変形して、彼の身体を痛めつけている。
「すまん!!」
 ナイトは叫んで響鬼の背中を蹴る。同時に、取り出したカードをセットする。

 ―― FINALVENT ――

 鏡より現れた、蝙蝠を模したミラーモンスター・ダークウイングがナイトの背中に取り付き、マントへ変化する。
 ウイングランサーを下のドラスに向けたナイトは、マントに包まれ、円錐状の刃と化す。
 響鬼が離れた瞬間、青空に浮かぶ黒い円錐状の刃は、回転して唸りを上げながら、ドラスを貫かんと突進する。
 ナイトの飛翔斬がドラスを後方に吹き飛ばした。マントの変形を解くと、響鬼がベルトの音撃鼓を敵に投げ飛ばした。
 ナイトが攻撃を加えた場所に張り付いたかと思うと、ドラスを包むように巨大化する。
 響鬼が駆ける。ドラスとの距離まで後三メートル、二メートル、一メートル、零!

「豪火連舞の型!!」

 響鬼が両腕の音撃棒を振り上げ、ドオンと言う音がリズムを作り、奏でられていく。
 連続して響く太鼓の音色。太鼓は赤くなり、確実にドラスにダメージを与える。
 音の波がどんどん激しくなってくる。やがて、響鬼は力を溜めるように再び腕を天に向けた。

「ハァァァァァ、ハァッ!!」

 最後に、一際大きなドオンッ!という轟音を立て、ドラスの左肩を爆砕する。
 ドラスが後退し、響鬼が傍に並び立つ。
「一気に決めるぞ!」
「ああ!」
 響鬼に応え、ウイングランサーを構えて接近する。
 だが、ドラスが右腕をこちらに向け、嫌な予感がして右に跳ぶ。同時に、響鬼も逆に跳んでいた。
 二人がいた地点に赤い腕が飛び、地面を抉り取る。
 その威力にゾッとしていると、瓦礫が浮き上がってドラスの左肩に集まっていく。
 電撃が発生すると、瓦礫は姿を変え、ドラスの左腕となる。
 唖然としている二人に、左腕が問題なく動くのを見せ付ける。
「僕に傷をつけるって、結構やるね。お兄ちゃんたち凄いよ!」
 それはドラスの紛れもない本心だろう。子供が興奮するように、高速で拍手をする。
 金属であるドラスの身体では、硬質的な音しか奏でない。
 それが、堪らなく不快であった。
「でも、もう飽きちゃったな」
 言葉と同時に、ドラスの姿が掻き消える。
「グワッ!」
 ナイトの目に響鬼が錐揉みしながら壁に叩きつけられる様子が映る。
 そのすぐ後だ。ナイトが腹を殴られ、膝をついたのは。
 ナイトの頭が掴まれ、響鬼へと投げ飛ばされる。痛みに震える響鬼とぶつかり、瓦礫がまた生産される。
「ハンデ忘れちゃった。ごめんね。でも、楽しかったよ。バイバイ」
 ドラスの右肩に光が集中する。
 輝きは増していき、太陽かと見紛うほどの光量を作り出していた。
 ナイトの身体は動かない。響鬼も同じだ。
(恵理! 城戸!!)
 終わりが近付き、ナイトは死を覚悟した。
「ハイパーキック!!」


「ハイパーキック!!」

 ―― Rider Kick ――

 太陽より、赤い戦士が羽根を広げて怪人に蹴りを放った。
 ドラスの赤い装甲は砕かれ、破片を飛ばして吹き飛び、発射された光線がビルを砕く。
 十階建てはある建物を二、三まとめて跡形もなく吹き飛ばす威力に戦慄する。
 カニレーザーのレーザーの三倍は威力があるだろう。
 制限されているのに、凄まじい力だ。
「やったか? 天道」
 まだだ、と応える戦士は天に指を向ける。
 カブトムシの角を髣髴させる赤い角。
 銀の兜は太陽を反射させ輝いている。
 青い瞳は自分の敵を見つめ、黒いスウェットスーツには赤と銀の鎧が纏っている。
 仮面ライダーカブト・ハイパーフォーム。
 この参加者で五本指に入る強者だ。
 並び立つのは、頭に扇状の飾りをつけ、王者の風格を漂わせる戦士。
 金のラインが血脈のように全身を包み上げている。
 黒い姿に、マントを羽織る姿。
 仮面ライダーオーガ。
 ほぼ、最強といっていいタッグが駆けつけ、二人のライダーの命を救った。
「ふふふ、なかなか面白そうなお兄ちゃんが来たじゃない」
「ドラスくん。手を貸しましょうか? さすがに四対一は辛いんじゃない?」
「まだいいよ。けど、剣と銃を取ってくれるかな?」
「はい」
 冴子が投げる銃と剣を受け取るドラス。
 それを睨み、カブトとオーガは悠然と構えている。
「お前が放送を行ったヒビキと言う奴か?」
「ああ。君は?」
「天の道を行き、総てを司る男。天道総司
「北岡よりも偉そうな奴だ」
 四人は赤い怪人と対峙し、それぞれの武器を構える。
 いや、カブトだけ、天に指を向けていた。
「行くぞッ!!」
「「「おう!!」」」
 四人は散り、それぞれの方向から攻撃を仕掛けていく。

 ―― Ready ――

 カブトの耳に聞き慣れた電子音が届く。
 光の刃がオーガの持つ柄から伸びて、ドラスの右方向から斬りかかっている。
 ドラスはオーガストランザーを怪魔稲妻剣で受け止めている。
 そのまま左手の銃でナイトと響鬼を牽制する。
 自分には肩よりレーザーを放ってきた。
「ハイパークロックアップ」

 ―― Hyper Clock Up ――

 時を支配し、レーザーの横を通り過ぎてドラスの腹に拳を一発叩き込んだ。
 鋼がぶつかり合う音が響き、痛みで痺れる拳を無視して飛び回し蹴りを四連続当てる。
 ようやくドラスの身体が浮かび上がったとき、カブトの『時間』は終わりを告げた。

 ―― Hyper Clock Over ――

 ドラスはビルに叩きつけられ、崩壊する壁の瓦礫に埋もれていく。
 その様子を見つめ、カブトは思考する。
(クロックアップよりも使える時間が短い。やはりかなり厳しく制限されているようだな)
 そう思うカブトの傍に、三人のライダーが並び立つ。それぞれ、クロックアップの能力は戦ったり、使ったりしてある程度把握している。
 この程度ではもう驚きはしない。そして、終わりでないのは四人全員が気づいている。
 油断無く見つめる仮面ライダーたちの前を、冴子が無視してドラスを助け起こす。
「なに? 冴子お姉ちゃん。僕はまだ助けを求めていないよ?」
「分かっているわ。ただ、お願いがあるの」
 冴子が妖艶に唇を蠢かし、ドラスの耳に何かを囁く。
 やがて、彼女が離れると、ドラスが肩を揺らして笑い始めた。
「ハッハッハッハ、いいアイディアだよ。冴子お姉ちゃん。分かった、任せて」
「頼んだわよ。ドラスくん」
 ドラスがゆっくりとこちらを向く。
 あれだけ攻撃をくらっても平然としているあたり、強敵なのは明白だ。
「いくよ」
 ドラスが突進し、オーガがオーガストランザーで受け止めた。
「ぐぅぅぅぅぅ!」
 オーガが力ずくで動きを止め、横から響鬼とナイトが攻撃を加えようと前進する。それに合わせて、カブトが飛翔する。
 ドラスの銃が発射され、ナイトを撃ちぬく。
「ちぇっ、弾が切れちゃった」
 銃を恐れる必要がなくなり、響鬼が加速、音撃棒を叩きつける。
 少し揺れたドラスは、剣を手放して横回転しながら響鬼を殴り飛ばす。
「オオッ!!」
 オーガがその隙を逃さず、袈裟懸けに剣を振り下ろし、ドラスの右腕を斬り飛ばした。
 オーガの頭上をカブトは飛び越え、蹴りを食らわして、そのまま停滞する。

 ―― Maximum Rider Power ――
 ―― One ――
 ―― Two ――
 ―― Three ――

 カブトは、ハイパーゼクターの角を倒してエネルギーをチャージする。
 その後、ボタンを順番に押し、最後にカブトゼクターの角を反転後元に戻した。
「ハイパーキック」

 ―― Rider Kick ――

 零距離で放たれるハイパーキック。
 稲妻に似たエネルギーがドラスを駆け巡り、よろめかせて後退させた。
 やがて、ドラスは膝をつく。初めてダメージらしいダメージを与えたことに、仮面ライダーは闘志が湧き立つ。
「ふふ」
 しかし、ドラスの余裕は崩れない。それなら、滅ぶまで攻撃を続ける。
 その場にいる仮面ライダーが思ったそのときだった。
「ガァッ!」
 オーガ、いや、金のラインの光が瞬いて、リュウガに戻った男が悲鳴をあげたのは。
 錐揉みし、地面に倒れ伏す。奪われたオーガドライバーは、赤いドラスの腕に握られている。
 そのまま右腕を装着したドラスは、オーガドライバーを冴子に渡した。
「それは……リュウガに斬り落とされた腕!」
「わざとだよ。後ろからなら、君たちでも対処しきれないでしょ?」
 オーガドライバーを受け取った冴子が妖艶に微笑む。
 その様子を目の前に、ナイトが叫んだ。
「城戸! お前……死んだはずだろ!!」
「城戸が死んだだと!? 本当か!?」
「油断するな! リュウガ、早く変身しろ!!」
「くっ! 変身!!」
 慌てて窓にカードデッキを掲げ、鏡像が重なる。
 リュウガより聞いていた、赤い龍の戦士とは対照的に、凍てつく黒の龍の戦士が鏡より顕在したのだ。
 城戸と呼んでいた人物とは似ていて、僅かに違うライダーにナイトは落胆する様子が見て取れた。
 おそらく、城戸が死んだことが強調されているのだろう。
「ふふっ、私も遊びに混ざろうかしら? いいでしょ、ドラスくん」
「冴子お姉ちゃんはしょうがないなぁ」

 ―― 0・0・0・ENTER ――
 ―― Standing By ――

「変身」
 冴子がオーガフォンを畳み、待機音を引きつれベルトに差し込む。
 眩い金のラインが冴子の身体を駆け巡り、光に満ちていく。

 ―― Complete ――

 黒い帝王のスーツが赤い宝玉を引き連れ、姿を現す。
 仮面ライダーでないオーガは、最悪最凶の敵として立ちふさがった。


 リュウガがバイザーを開け、カードをセットする。

 ―― SWORDVENT ――

 黒龍の尻尾を模した青竜刀を構えるリュウガ
 一瞬の静寂。瓦礫が崩れた音が聞こえ、その場の六人は爆発して駆けた。

 ―― Ready ――

 オーガより精製された光の刃が横一文字に薙ぎ払われ、リュウガを斬り飛ばす。
 その横をすり抜け、響鬼が音撃棒を逆袈裟懸けにオーガに振るう。
 オーガは後退するが、すぐさまオーガストランザーを突いて、響鬼の身体を浅く抉る。
 リュウガは脇をすり抜け剣を振るうが、あっさりと受け止められる。
「どうしたの? さっきと違って、太刀筋に鋭さがないわ」
 そのまま剣を跳ね上げられ、オーガの袈裟懸け、続けて勢いそのままに回転しながら横一文字をくらった。
 よろめく自分が突き飛ばされる。光の刃を受け止める、炎の刃が視界に入る。
 響鬼はそのままオーガを蹴りで突き飛ばし、リュウガに並ぶ。
「レディを蹴るって、なかなか酷いわね」
「よく言う。おい、リュウガとやら。ボサッとするな! 死ぬぞ!!」
「分かっている!!」
 腹の底から返すと、響鬼は満足そうに頷いている。
 戦士二人の目は死んでいなかった。


(城戸は死んだ! なら、あいつはいったい……)
 ナイトは心乱れながら、ドラスの剣を捌いていた。
 しかし、驚異的な怪力で繰り出される斬撃は、そんなナイトを容赦なく斬り刻む。
「早く死になよ。騎士のお兄ちゃん」
 左手を切り離し、ナイトを押し続ける。その腕が、カブトによって跳ね飛ばされた。
 咳き込むナイトの前に、カブトが立つ。
「何があったかは知らない。だが、今は戦え。無理なら下がっていろ」
「……いや、戦う。あいつには後で聞きたいことがあるしな」
 無言でカブトは頷き、ドラスを睨む。
 倒すべきは、あいつだ。


「そろそろ決着をつけようか。冴子お姉ちゃん」
「そうねえ。私もこのベルトの力は大体把握したし」
 二人が呟き、ドラスの肩にエネルギーが集中するのが見える。
 オーガはベルトのボタンを押して、エネルギーをチャージしている。

 ―― EXCEED CHARGE ――

 仲間が息を呑むのが分かる。しかし、自分は天の道を行く。
 全員を救い、反撃する為に行動に移す。
「ハイパークロックア……」
 否、移そうとした。突如、銃声が響いて左腕が爆ぜる。
「ゴメンね。弾切れしたの……あれ嘘なんだ☆ でも、今回ので正真正銘の弾切れ」
 カブトが視界を銃声の方向に向けると、ドラスの外れた腕が落ちた銃を握っている。
 歯噛みをして、光を見つめる。間に合わない。
「ハハハハハハハハッ!!」
 不快な笑い声に、光が住宅街を支配した。


 光が晴れ、視界が戻ってくる。
 自分の身体が熱い。全身が沸騰しているのだろう。
 身体は光の刃を途中で止めている。これ以上後ろには行かせない。
 仲間は自分が作った陰に隠れて、やり過ごせただろうか?
(みんな、無事か?)
 その後、視線を敵に向ける。ここは一歩も通さないと、気合を込めた視線だ。
「ヒビキッ!!」
 蓮の叫び声が聞こえる。と、いうことはちゃんと彼らを守れたということだ。
「やっとだ。やっと、俺は人助けができた……」
「おいっ! 何で俺なんかを庇った!」
「そう、悲しい事を言うなよ、秋山。お前は、俺にとっては仲間だよ。ごめんな、草加なんかと二人っきりにさせて。
俺がちゃんと気づけていたら、お前が純子さんのことに罪悪感を持たなくていいのに」
「もう喋るな!」
 ベルトを掴んで、右手を差し出す。誰かに麻生の理想を受け継いで欲しいと、万感の想いを込める。
「頼む。このベルトを、誰か……闇を切り裂く人に……」
 呟き、内心あきらと明日夢に謝る。だが絶望はしていない。
 二人を守る、闇を切り裂き、光をもたらす戦士はきっといるから。


 それっきり、響鬼は喋らなくなった。
 だが、彼は死んでも立ったままだった。変身を解かなかった。手を広げたままだった。
 仲間を守るため、彼は鬼らしい最期を迎えて消えていく。
 彼の望み、『人助け』を叶えた姿は、まさに彼の職業に相応しかった。


「ヒビキ……」
「ボサッとするな。退け!」
 カブトが叱咤する。敵は肩をすくめて現れた。
「まだ生きているなんて、しぶといね」
「でももう、限界のようね。ヒビキくんが庇ったとはいえ、相応の傷は負ったのでしょう?」
 悪魔が笑いて、目の前で立ちふさがる。
 カブトは、一つの決心をする。
「俺が奴らを食い止める。お前らは逃げろ!!」
「お前にはひよりがいる。脱出の能力もある。ここに残るのは……」
「お前では逃げるだけの時間を稼げない! ここは逃げて、戦力を整えろ!!
秋山! そのベルトを矢車に渡せ! そいつはそのベルトの本来の持ち主だ!!」
 ナイトはベルトを掴み、悲しげに見つめている。
 やがて、二人の鏡像のライダーはバイザーにカードをセットする。

 ―― ADVENT ――

 モンスターを召還する電子音が重なり、蝙蝠と黒い龍のモンスターが現れ、二人は去る。
 空を追撃される恐れは少ない。その様子に安堵して、カブトは敵を睨む。
 ドラスたちは二人を追いかける様子は無い。
「お兄ちゃんは脱出できる能力を持つんだ。なるほど、そのベルトと銀色のアイテムが時間を操作しているのか」
「なら、捕まえるのかしら?」
「調子に乗るなよ」
 怒り込めた言葉。カブトは響鬼の亡骸を見つめ、敵に視線を戻す。
「お前らが光を掴むことはない。俺が、仲間が、仮面ライダーが砕いてみせる。
俺たちは、闇を切り裂き――――」
 カブトの心に浮かぶのは、麻生が叶えたがり、ヒビキも命をかけた一人の少女の言葉。
 彼が最初に出会った仮面ライダー。
「光をもたらす――――」
 自分に遺言を託したドクトルG。彼の宿敵に相応しい男たち。
 それが、世界が覚えておくべき名前。
「仮面ライダーだ!」
 三人がぶつかり、轟音が轟き、世界が震えた。


 結城は、一つの墓の前で手を合わせていた。
 公園で作られた、簡易な墓。デストロンの勇者が眠るにしては、粗末すぎるような気がした。
 だが、今はこれ以上の墓を作っている暇はない。
「結城さん、花を添えませんか?」
「そうすると、自分に似合わないと怒りそうだ。むしろ剣や斧を傍に置いておくのがいいかな」
「了解ッ!」
 光太郎は頷き、拾ってきた斧と盾を添えた。穏やかな光景である公園には似つかわしくない。死後は戦いに無縁であって欲しい。
 もっとも、当の本人が聞けば怒るだろうが。
「……ライダーマンの話は聞いています。デストロンにいたのでしょう?」
「ああ。だが俺は……」
「分かっています。あなたは正義の為に戦っている。
だからこそ聞きたい。なぜ、正義の為に戦う気になったのか。それが分かれば、俺は……」
 瞬時に、結城は理解した。自分たちを襲ったシャドームーンの話を聞いて、彼を自分のように仮面ライダーにしたいと願っているのだろう。
 やがて正直に、自分の身の上を語った。
「俺はデストロンに拾われた。V3に出会うまで、ヨロイ元帥と首領の言葉を聞くまでデストロンにもいい奴がいると思っていた。
だが、とうのデストロンは世界制服を目指す、悪の組織だった」
「結城さんの考えは間違っていませんよ」
「え?」
「ドクトルGは首輪を結城さんの為に託した。デストロンにもいい奴はいる。その通りじゃないですか。
ただ、俺たちとドクトルG。目指すものが違っただけです」
 結城は呆気にとられ、光太郎を見つめる。
 やがて、ふっと力を抜く。
(まさか南に諭されるとはな。いや、南だからこそ、本質を掴んでいるのかもしれない)
 多少失礼な考えが浮かんだ結城は、内心で光太郎に謝りながら、墓を見つめる。
 ドクトルGは自分たちを……いや、デストロンに役に立つ自分を守るため、あの場で一人残り、戦い散っていった。
(俺はあなたを誤解していたようだ。立場は違えど、あなたもまた信念の元に戦っていた。
俺は、あなたに報いることができない。だから、そっちに逝ったら好きなだけ切り刻んでくれ)
 やがて、デストロンの勇者の墓を後にする。ここでグズグズしては逆に叱咤されるだろう。
 光太郎も並び、歩く。
「……結城さん。俺があなたの事情を聞いたのはシャドームーン……いえ、信彦の為だけじゃないんです。
カイザ……草加さんを仮面ライダーに戻せないか考えていたんです」
「草加を?」
「はい。彼も元は真理さんに期待されていた仮面ライダー。そして、彼の時間軸では真理さんは彼と交際をしていた。
彼もまた、クライシスの犠牲者なんです。どうにか、仮面ライダーに戻せないでしょうか?」
「……難しいな。復讐心って言うのは、時間でしか解決しないんだ。俺と風見は幸いにも立ち直るきっかけがあった。
彼が立ち直るきっかけを掴めるか、俺には分からない」
「なら、俺が草加さんを立ち直らせるきっかけになります。仮面ライダーを悪の道に引き込む、クライシスの野望を打ち砕く為に!」
 力強く宣言する光太郎を結城は眩しそうに見つめる。
 何もかもクライシスの所為にするのは悪い癖だが、その熱さは誰も真似できない。
 燃え上がる光太郎に水を差すほど結城は無粋でない為、今は黙る。
 落ち着いたころにゆっくりと諭せば言い。問題は、光太郎が落ち着く機会が持てるかだ。
 結城が難しい問題だと思案していると、
「さて、城戸くんを探しに……」
『結城さん、応答してください!!』
 トランシーバーBから切羽詰った矢車の声が聞こえてきた。
 ただ事ではないと、光太郎と顔を見つめ合わせる。
「何が起きた?」
『天道が、敵に捕まってしまった!!』
 一瞬、時間が止まったような錯覚が結城を襲った。
 光太郎も同じだろう。目を見開き、大口を開けている。
城戸真司の行方も分かった。一刻も早く戻ってくれ!』
 その言葉を聞き、二人は駆け出す。
 空は不穏な雲が覆っていた。


 剣崎の記憶が刺激される喫茶店に、神代剣はいた。
 『Jacaranda』。剣崎と始の思い出の場所であり、始が人と触れ合った場所。
 そこに、ワームである剣は、身体を休めていた。
 白い燕尾服には血が滲み、身体は青痣が覗いている。
 茶髪の下の視線は厳しい。彼に休む時間は無いからだ。
 一刻も早く優勝し、理想の世界を創る。もっとも、休めねばその願いが叶わない為、素直に休息をとる。
 ワームであるこの身体は徐々に傷を癒していく。
 剣崎の記憶では、ここで始と栗原親子は過ごしていた。
 あの、剣崎と始の別れの日まで。
 もう二度と、その日は来させはしない。
 全てを無かったことにするため、みんなが幸せに暮らせる世界を創るため、剣は決意を新たに立ち上がる。
 万全とまではいかないが、戦えるまでは回復している。
 急がねばならない。始が手を汚すかもしれない。
 ドアを開け、外を出ようとして剣は後ろを振り返る。

「「行ってきます」」

 その声に、一人の英雄が重なって聞こえた。

 剣が道を進む。猥雑にビルが立ち並び、空気が汚れている印象を受けた。
 車は存在していないのにである。それほど、自己嫌悪が激しいのだろう。
(そういえば、まだカ・ガーミンの墓を作っていなかった)
 剣はその事実を思い出し、人を探すついでに自分が親友を殺したところへ向かう。
 やがて、立ち並ぶビル群の一つに駆け込む男たちの姿が見えた。
 身体を隠し、聞き耳を立てる。どうやら、多くの人間がここに集まっているらしい。
 サソードヤイバーを取り出し、静かに様子を伺う。
(クロックアップで突入し、二、三人殺してもう一度クロックアップを使って逃げる。
……俺も随分、人の道を外れたようだ。天道に言わせれば、俺は天の道に背いたってところか)
 剣は自嘲し、柄を握る手に力を込める。
 今更戻れはしない。殺すために、ただ機会を待ち続けた。


「矢車さん! 先程の言葉は……」
「聞いたとおりだ」
 矢車が歯噛みする姿が眼に入り、光太郎は膝を崩す。
 肩は怒りに震え、眉間は無数の皺を刻んだ。
「そんな……」
 結城が呟き、壁を殴りつける。乾いた音が虚しく響いた。
 ボロボロのリュウガと蓮も、悔しげに俯いている。
 和やかだった室内は、通夜のような雰囲気に包まれていた。
 それも当然だ。天道は脱出の要である。彼がいなければ、首輪を解除できたとしても、ここから抜け出す手段が無い。
 矢車は、その事実と天道でさえ勝てない敵の存在に絶望していた。
 氷川は自身も悲しみながら、ひよりを気遣う。ひよりは身体を震わせている。
 リュウガはそんなひよりを見つめ、視線を逸らした。天道を守れなかったことを悔いているのだろう。
 蓮は、腕にある銀のベルトをひたすら見つめていた。
 そんな中、小沢は毅然と立ち、皆を睨みつけた。
「なによ! 情けない!! 大の男が揃いも揃って、辛気臭い顔をしない!!」
「今がどういった状況か……」
「分かっているから言っているのよ! 大体南くん、いつものクライシスの仕業だ!のあなたはどうしたわけ!
こんな状況なら、奪い返す!!ぐらい言いなさいよ!!」
 ポカンとする光太郎を尻目に、小沢は視線をリュウガに向けた。
「あなたも、この事を悔しがっているなら全力で奪い返しなさい。
まだ、私は信じていないけれど、あなたを信じた人に報いるチャンスよ! 頑張りなさい!!」
 続けて、氷川に向けると、彼は頷いた。さすが付き合いが長いだけはある。
 こちらの言いたい事を理解したらしい。小沢は身体ごと結城に向き、視線に力を込める。
「奪い返すわよ。気合を入れなさい!!」
「分かっている。俺たちは、捕らわれた天道くんを救いに行くぞ!!」
 蓮を除いて皆の心が一つになり、天道を助ける決意の雄たけびを上げようとした時だった。
 白い影が、ドアを乱暴に開いて、結城の襟を掴んだのは。

「どういうことだ! 天道が、捕まったというのは!?」
 白い燕尾服に血を滲ませた若い男。
 その男と因縁があるのか、蓮が声をかけた。

神代剣!!」

 先程の無気力な姿を蓮は吹き飛ばし、敵意に満ちた視線を向けている。
 しかし、小沢の目には剣が蓮にすら気づく様子が見えなかった。
「聞いたままだ。天道くんは負けて、ドラスという化け物に捕まった。俺たちは、彼を助けるために策を練る」
 ゆっくりと、驚愕の表情を浮かべたまま剣は手を離す。
 やがて、怒りの表情を浮かべ、踵を返した。
「おい! どこに行く気だ!!」
秋山蓮。お前とは後で決着をつける。だが天道を助けてからだ」
「お前は優勝するつもりじゃなかったのか?」
「もちろんそのつもりだ。勝ち残り、全てを無かったことにする。
だが、俺を倒した天道が負けたなど信じられん! そして、奴が俺以外の者に負けるなど許さん!
助けて、天道が身体を癒した後一騎打ちを申し込む。それが、昔の俺の望みを叶えた男に対する礼だ!!」
「ふざけるなよ。そう簡単に、ここを通すと思うか?」
「なら、力ずくで向かうまでだ」
 蓮と剣に一瞬即発の空気が流れる。だが、それも長くは持たなかった。
 呆れる小沢の前を、リュウガが横切る。
「お前たち、天道を助けるのに手を貸してくれるのか?」
「城戸ッ! お前は俺が殺したはずだぞ!」
「なんですって!!」
 小沢の頭が怒りで沸騰する。なんだかんだ言いながら、この男は城戸を殺したのだ。
 余りの自分勝手さに、反吐が出そうになる。
 怒りに震えながら、糾弾しようとする小沢をリュウガが制した。
「小沢、今は落ち着け。俺は城戸の影、リュウガ。神崎と同じ存在だ」
「……なるほどな。オーディンとやらと一緒で、神崎の手先か」
「今は違う。そして、俺は天道を助けたい。俺たちが戦った相手は強すぎる。
一人でも力が欲しい。頼む、今だけでいいから、俺に力を貸してくれ! 秋山、神代!!」
 いい終わり、リュウガは土下座をする。
 小沢は呆気にとられた。そこまでするとは思ってもいなかったのだ。
 やがて、ひよりがリュウガに並ぶ。
「僕からもお願いする。あいつは、天道は世界でたった一人のお兄ちゃんなんだ。
樹花ちゃんを悲しませたくないし、何よりもう加賀美のような奴を増やすのは嫌なんだ!
だから、お願い。僕に、力を貸してください」
 男女二人、ただ一人の人間を救いたいため、頭を下げる。
 この場にいる全員は息を呑み、成り行きを見守っていた。
 やがて、剣は小沢の目の前を横切り、二人に近付き、膝を折る。
「顔を上げてくれ。ひより、リュウガ。天道は俺の好敵手。助けるのは当たり前だ。
だが、一つ言わせてもらう。俺は、親友のカ・ガーミンを殺している。そしてこの身体はワームという化け物なんだ」
 ひよりが顔を上げ、剣を見つめる。リュウガが心配そうにしているが、ひよりは無言だった。
 小沢が驚くほど、剣がひよりを見つめる眼は優しい。城戸を殺したなど、信じられないほどに。
「そんな俺なんかに、頭を下げるんじゃない。共に戦ってくれと頼むんじゃない。
姉をも殺した俺にはそんな資格はない。だから、今から一人で助けに行く。お前たちは待っていろ」
「僕もお前と一緒だ」
「……そこまで自分を卑下するんじゃない。お前は、天道の妹なんだぞ」
「違う。僕も、ワームなんだ……」
 呟き、ひよりの姿が一瞬変わる。それを認めた剣は驚き、すぐに表情を引き締め彼女の肩に手を置いた。
「やはり、君はワームではない」
「……え?」
「そんな可憐な妖精が、ワームであるはずがない。醜い化け物は、俺だけのようだ」
 告げると、彼は立ち上がり、出口に向かう。彼の言葉と共に見えた表情は、小沢の知る氷川や仮面ライダーたちの姿と重なってしまった。
 城戸を殺した張本人であるのに。
「少し、待ってもらえないか?」
「矢車、先程も言った通り……」
「手を、組もう。神代剣
 その場で驚愕の声が上がる。小沢は比較的冷静に矢車を観察したが、彼は正気だ。
 そして、小沢も歯噛みしながら、矢車の提案に乗らざる得ない状況だと理解する。
「俺たちは天道を助けたい。君はその上、優勝したい。そこにいる秋山くんも優勝をしたい。
なら、ドラスという怪人は現状では一番の壁だ。一時的に同盟を組もう。
期限は、天道を救い、ドラスを倒すまで。利害の一致なら、お互い気兼ねもしないで済むだろう?」
「いいだろう」
 即座に乗ったのは、秋山蓮。彼は銀のベルトを矢車に向けながら近付く。
「あの怪人は邪魔だ。リュウガとやらに聞きたいことは終わってないし、神代を逃がす気もない。一度だけ、手を組んでやる。
これはその証拠だ。お前に渡す。天道とやらが言うには、お前がキックホッパーの本来の持ち主らしい」
 蓮の行動に安堵が広がり、矢車は驚愕の表情を浮かべている。
 小沢や、氷川にキックホッパーの戦いの顛末を聞いているのだ。闇を切り裂く救世主の狼煙となった男。
 その彼と、同じ力を持つべき人間と言われ戸惑うのも無理はない。
 矢車はフッと力を抜いて、受け取る。その顔には、キックホッパーの名に恥じないよう根性を入れる男の顔だ。
 その様子を満足気に見て、小沢は頷いた。
 蓮は手を貸してくれる。皆の視線は剣に注がれた。
「……いいだろう。天道は俺が救う。そして、秋山の決闘を受けねばならぬ立場だ。
今だけ、俺でよければ力を貸そう」
 やがて、どこかの企業の会議室に笑顔が広がる。
「反撃開始よ! みんな、気合を入れなさい!!」
 雄たけびが答えとして返ってくる。皆の士気は落ちていない。
 早速、全員は会議を始めた。


 声にならない悲鳴が、研究所の一室であがった。
 肌を鋼色に戻したドラスが、ベルトとハイパーゼクターを興味深げに見つめている。
 続けて、天道へと視線を移した。かつて、望月博士に施した拘束処置と同じ方法を、彼にとっている。
 機械の束に取り込まれ、研究所の壁と一体化したような天道総司。これも、ZOを取り込み、得た能力の結果だ。
「それにしても、ドラスくん。あなた強くなったわね。このベルトの力も凄まじいけど、あなたに勝てる気がしないわ」
「そのことについては、一つ推論があるんだ」
「あら、何かしら?」
 天道をドラスが持っていた剣で突き刺して、拷問を行っていた冴子が手を一旦休める。
 傷口に突き刺した剣先を回転させ、抉られた痕が天道には無数にあった。
 その様子に苦笑しながら、ドラスは麻生の首輪を冴子に見せた。
「お兄ちゃんの首輪、異物として出されたでしょ? つまり、僕は『制限が解かれたZO』をエネルギーにしているんだ。
供給される巨大なエネルギーのおかげで、首輪の制限装置が誤作動を起こして、僕の制限がだいぶ緩んでいるんだ。
再生能力は特に強く制限されていたんだけどさ、今ではほら、左腕を短時間で作り上げるほどまでになっている」
「と、言うことは、首輪をつけている限りここではあなたは最強というわけね?」
「飲み込みが早くて助かるよ。ここさえ抑えていれば首輪の制限を解除して、僕に対抗できる奴が出てくるのを抑えれる。
他にも研究施設があるかもしれないけど、それは今から阻止してくるよ」
 言いながら、ドラスは拡声器を手に階段を上る。
 冴子が天道のへそに剣を突き刺して、傷口を抉っている様子が見えた。
「眠くなる。……もっと、気合を入れろ」
「ふふっ、あなたは楽しませてくれるわね」
 その言葉を背に、ドラスは階段を踏み続ける。
 やがて、赤茶色に錆びたドアが見え、蹴り飛ばす。
 風が吹き抜け、ドラスの触角を揺らした。
「あーあー、マイクテスト中。みんな聞こえてるー!?」
 その音が園田真理と同様、全エリアに届いているだろう事を確認して、満足気に頷く。
「さぁて、天道総司のお仲間さん。彼はまだ生きているよ。
助けて欲しかったら、科学者一人と交換ね。何で僕が科学者を欲しがっているかって?
答えは簡単。首輪を外して究極生命体に進化するためさ!!
この条件に乗るよね? だって天道は脱出できる能力と、アイテムを持っているんだもん。
僕もここから脱出したいからなるべくは殺したくないんだけど、次の放送まで何もなかったら殺しておくから覚悟してね。
そうそう、何で僕がこの拡声器を使っているか、不思議な参加者がいるかもしれないけどね、まず謝っておくよ。
ごめんね。これ使ったお姉ちゃんの死体、僕たちが灰にしちゃった♪
怒ったんなら来てもいいよ。僕に勝てないだろうけどね。それじゃ、またね~」
 いい終わり、ドラスは拡声器を投げ捨てた。スキップでもしたい気分に彼は駆られている。
「実にお兄ちゃんの身体が馴染んでテンションが上がっちゃうよ。おかげで余計なことも言っちゃったかな?
でもま、これが最高に『ハイ!』っていう奴か。ハハハハハハハハハハハハハハハハハーーーー!!」
 愉快で堪らないと言うように、ドラスは身体を揺る。
 もし彼の表情があれば、虫を嬲り殺す子供の表情が浮かんでいただろう。
 傍から見れば不気味な笑い声を、ドラスはあげ続けた。
 しかし、一瞬だけ左肩の傷口が火花を散らした。
 響鬼が音撃を行った箇所である。清めを乗せた音が、傷の治りを遅くしているのである。
 だが、ドラスは気づかない。彼は慢心しているからだ。

 それがどうなるか、まだ分からない。


 草加は手錠の鍵穴に、ヘアピンをねじ込み、どうにかこじ開けれないかを試し続けている。
 ドアに動きはない。今がチャンスだ。
(大体、鍵をかけただけで安心するなんて、甘いんだよ。なにやらトラブルが起きているらしいが、これは逃げるチャンスだ)
 カイザドライバーを奪い取るには光太郎あたりを騙さねばなるまいが、ひとまず置いておき、今は拘束を解くのに全力を注ぐ。
 やがて、カチリと、小さい音が鍵穴から聞こえてきた。
(よし、もう少しだ)
 彼がこの集団を陥れる算段を始めたころ、三度拡声器を通した声が聞こえてきた。
 最初は、天道が捕まったという情報にほくそ笑み、手の動きが軽快になった。
 だが、続けてもたらされた言葉は、草加の思考を停止させた。

『ごめんね。これ使ったお姉ちゃんの死体、僕たちが灰にしちゃった♪』

 獣の唸り声のようなものが、草加の口から漏れる。低すぎる唸り声は、本人の耳にしか届かない。
(真理の……真理の身体を……灰にしただと?)
 ゆっくりと、ドラスの言葉が草加の胸に染み渡る。
 彼の大切な女。今はいない彼女。自分が蘇らせる事を誓った彼女。
 その彼女の、神聖な身体を放送の主は弄んだ。
(許せない。許せるはずがない! お前、いい度胸だな。
真理の身体を弄んだこと、後悔させながら殺してやるッ!)
 彼の口の端からは、奥歯を噛み締め続けた結果、血が流れ落ちる。
 眉間の皺は無数に刻まれ、怒気を宿し、険を厳しくする。
 見開ききった眼球に、爛々とした狂気が満ちている。
 今の草加の表情を見たものがいれば、こういっただろう。
 『修羅』。冥府魔道に生き、世界の闇に落ちたる者。
 草加雅人は、復讐の対象を見つけた。


 拡声器より通された声を聞いた一同は、それぞれ怒りを示す。
「タイムリミットは次の放送まで。迅速に完全作戦を纏め上げるぞ。いいな!」
 矢車は皆が頷くのを確認し、作戦を練るのを再開する。
 話は、各支給品の配分だ。広げられた支給品を、効率よく使える人物に配分する。
 ラウズアブゾーバーとラウズカードは剣に与えた。
 この殺し合いに乗った人物を強化するのは躊躇ったが、蓮とリュウガの話に聞いた怪人は強い。
 擬態した剣崎という人物の能力もあり、彼は今一番の戦力だ。
 GX-05ケルベロスは氷川に渡す。
 ガトリング弾を発射できるこの武器なら、ガタックの力になれる。
 それに、これはもともと彼の装備だった。これ以上の適任はいない。
 ディスクアニマルは使える人物が分からない為、暫定的に小沢に渡す。
 使い方が分かれば、聡明な彼女の力になるはずだ。
 そして、キックホッパーのベルトとゼクトマイザーは自分が持つ。
 ベルトを受け取った瞬間、即座にホッパーゼクターが現れ、自分の足元で瞳を瞬かせていた。
 これで、自分も戦力になる。
 あとは、装備が揃ったカイザのベルト。詳細が分かるまで、このベルトは置いておくしかないだろう。
 そう思い、机においてあるカイザのベルトに視線を向けていると、誰かの手が伸びた。
 矢車が視線を手に追いかけると……
草加雅人ッ!?」
 全員が視線を向ける。氷川や自分などは、ゼクターを構える。
 迂闊だった。天道が捕まったという知らせは矢車を含む、このメンバーにとって大きな衝撃だったのだ。
 見張りを用意しておくべきだったと、臍を噛む。
 その自分たちの様子を草加が確認し、ベルトを肩にかけ、こちらに声をかけてきた。
「あの放送の主を殺す算段だろ? 俺も一枚噛ませろ」
「どういうつもり?」
 小沢の言葉に、草加がゆっくりと視線を向けた。
 矢車は彼女の前に立ち、庇うように身構える。
「この声の主は、真理を汚した!? 一分一秒でも長く存在させたくない!
だが、そこにいる秋山の様子を見ると、一人では勝てない相手らしい。なら、俺はあいつを殺すため、お前たちを利用する。
代わりに、今は俺を利用しろ。真理の仇をとるまでは、手を組んでやる」
 勝手な言い草に矢車は呆れてしまう。しかし、草加の瞳は真剣そのものだ。
 それほどまでに、この放送の主が憎いのだろうか?
 答えあぐねているメンバーの中、動く人物がいた。
「分かりました、草加さん。ともに戦いましょう」
「本気か! 南くん。こいつは、君を騙して、我々を襲ったんだぞ!?」
「分かっています。ですが、草加さんの真理さんへの気持ちは本物です。それを、俺は信用します。
もし、草加さんが裏切り、ドラスに協力するようであれば、俺が責任を取ります」
「俺は南の案に賛成だ。とりあえず、一時的に協力をしよう。草加雅人
 光太郎の意見に結城が同意する。そこまで言われると、矢車は何もいえない。
 他のみんなも、自分と同じ意見らしく、腑に落ちない顔で草加を見つめている。
 やがて、草加が前に一歩出た。
「ドラスという怪人の能力を教えろ。組んでいる奴もな。負けるのだけは、許さん」
 草加の発言を合図に、会議が再開される。
 その中で草加は、一つ一つの意見の検討、却下及び採用を理論的に組み立てていった。
 草加の作戦立案能力の高さに驚き、矢車は彼が殺し合いに乗ってしまったのを残念に思ってしまった。
(それにしても、ボードという組織はワームの組織ではなかった。
ただの、他の世界の仮面ライダーを支援する組織。それだけか)
 剣を見つめ、矢車はそう思考する。自分の考えは外れだった。
(まあいいさ。何が正しいか、何が間違っているか、完全調和で見極めながら、進もう)
 そして、矢車は一つ提案した。


 連中と話し合い、草加は必死にドラスを殺す方法を思案していた。
 あっさりとこちらの要求を呑んだのは意外だが、光太郎が原因なら、彼が行った『仕込み』が役に立ったのだろう。
 だが、今はそんなことはどうでもいい。
 ドラスという化け物を一分、一秒でも早く殺す。
 真理を生き返らせる上でも邪魔になるため、それが、今の草加の願いだ。
 装備が全て揃ったカイザドライバーを見つめる。
 カイザショットでなく、ファイズショットであったことが少し気に入らないが、どうせ色が違うだけだ。
 グランインパクトを放つには問題はあるまい。
 ファイズアクセルも持つが、これは少しいらないと思った。
 だが、放送を聞きつけた乾が来れば別だ。
 あの馬鹿を騙して、自分に協力させる。
 利用するものは何でも利用する。草加はその決意を胸に、復讐へと走り続けた。


 草加を見つめ、蓮はため息を吐いた。
(まさか、こいつともう一度組むことになるとはな)
 正直、今度会えば殺しあうかないと考えていた。
 だが、奴にも自分以外に大切な存在がいたらしい。
 園田真理、丘で起きた出来事と、二回目の放送の内容を聞いた蓮は、彼女の事を凄いと素直に尊敬できる。
 そんな城戸と代わらないお人好しを、一番大切だと宣言する草加を意外に思う。
 もっと、他人など信用せず、誰も愛さないのが奴には似合っていると思ったからだ。
 草加の建設的な作戦を聞きながら、彼は自分を庇った一人の男を思い出す。
(ヒビキ、礼は言わない。だが、仇はとる。それくらいいだろ? 城戸)
 心の中で親友とヒビキに声をかける。
 彼もまた、ドラスに復讐を誓ったのだ。


 草加が一時的とはいえ、自分たちの仲間になってくれることに、光太郎は喜んでいた。
(クライシス、仮面ライダーを闇に引き込もうとしても無駄だぞ!
草加さんは、絶対仮面ライダーに戻す! そして、天道さんを助ける。
クライシスの怪人、ドラスめ! このRXが成敗してくれる!!)
 太陽の子は、戦いを決意する。
 クライシスの野望を阻止する為に。
 もう二度と、自分と信彦の悲劇を繰り返さない為に。


 ガタックゼクターが、自分の主に凶悪な顎を向けている。
 そうはさせないと、サソードゼクターは剣の肩に乗り移る。
「構わない。ガタックゼクターは怒る権利がある」
 剣の言葉を無視し、ガタックゼクターを牽制する。
 そういうのは予想していた。だが、退くわけにはいかない。
 剣は悲しみの中、罪を背負いながらも全員を助ける道を選んだのだ。
 その願い、自分が理解しなければ誰が理解できるのであろう。
「ガタックゼクター、思うところはあると思うけど、今は退いてください」
 新たなガタックの資格者、氷川の肩にガタックゼクターが止まる。
 瞳を瞬かせ、お互いに牽制しあう。
「……なぜ、あなたは加賀美さんを殺したのですか?」
「親友だからこそ、俺の手で殺した。優勝せねばならないからな」
「だったらあなたの願いは何なんですか?
その身体を、人に戻すことですか?」
「俺の願いは、ワームの存在を消すこと。そして、この殺し合いも含めて全てを無かったことにする。それだけだ」
「そんなこと……」
「叶える! どんな手を使ってでもな」
「あなたの願いを叶えたら、あなたは……」
「消えてしまうな。だが、それがどうした? 俺は神代剣に代わって剣を振るうワーム。
だから、彼の親友を殺しても心を痛めない。それだけだ」
「違う。あなたは苦しんでいる」
「そうだよ。加賀美を殺したって、僕に言ったとき、お前はとても苦しそうな顔をしていた。
悲しんでいないって、嘘をつくな」
「優しいのだな、お前たちは。カ・ガーミンにも負けない。
氷川が第二のガタックに選ばれた理由が分かった。お前は、カ・ガーミンに似ている」
 悲しい笑顔を浮かべる主人を、サソードゼクターが見つめる。
 この殺し合いで彼は磨耗しすぎている。
 だからこそ、自分が全力で力にならねばならない。
 かつて、自分はこの手で主を殺した。それが、剣の望みだったからだ。
 全てのワームを殺す。その願いを叶えるために。
 じいやと、岬と、自分の涙を飲み込んで、パーフェクトゼクターへエネルギーを供給した。
 だから、今も彼の望みを叶える剣となる。
 それが、たった一つの約束だから。
「神代さん。一つ約束をしてください」
「何だ?」
「この戦い、天道さんを助けたら、僕と決闘をすると。あなたを、僕が仮面ライダーに戻して見せます!」
「いいだろう。天道、秋山が先だが、その決闘を受けよう」
 氷川が真剣に主を見つめ、主もまた微笑み返した。
 サソードゼクターは、少し氷川が主を仮面ライダーに戻すのを、期待した。
 同時に、戻さないようにも願った。
 主が仮面ライダーに戻るのは、願いを諦めたときだ。
 それは、主にとって残酷すぎる。
 サソードゼクターは、ただ主の傍に仕えるだけだった。


城戸真司が死んだのか)
 リュウガは一つの事実を受け止め、冷静な自分を意外に思った。
(もう、俺は奴と一つになることに意味を見出せなくなっているのか。
まあ、今は天道を救い出すことからだ。その後で、城戸の死んだ場所へ行ってみるのもいいな)
 そして、彼は剣と、氷川、ひよりの三人を見つめた。
(天道は絶対救う。この感情、俺は知りたいが、それよりもひよりを悲しませたくない。
だから、無事でいろよ。天道!)
 黒龍は天を仰ぎ、表情を引き締める。
 ただ、仲間の無事を祈る姿があっただけだった。


(まったく、大変なことになったわね)
 小沢は、周りの面子を見ながら内心呟いた。
 殺し合いに乗った者と、脱出を目指す者。それらがたった一つの目的に邁進している。
 もちろん、何らかのきっかけがあれば、崩れてしまう危うさがある。
 それに自分が気をつけなければならない。
(城戸くん、この場にあなたがいて欲しかった)
 彼はもういない。しかし、彼の分まで戦い抜かねばならない。
 それが、一番彼に報いる答えだと思うから。
リュウガだの神代だのドロドロしたのは後回し!
今は、天道くんを救うわよ。小沢澄子、今が根性の見せどき。踏ん張りなさいッ!!)
 彼女また、戦う者だった。


(天道くんを救う)
 風見のときは間に合わなかった。今度だけは、遅れるわけにはいかない。
 脱出の能力を持っているということもあるが、彼はこの殺し合いで出会った、初めての仮面ライダー。
 そして、ドクトルGが遺言を託した男。
 彼と、ドクトルGに報いる為にも、彼を殺されるのを見過ごすわけには行かない。
 結城はその頭脳をフル稼働させ、作戦を練り続ける。
 彼の仮面ライダーとしての戦いは、今始まったばかりだ。


 ZOを吸収したドラス。
 この脅威の赤い怪人に、脱出をかけた決戦が繰り広げられようとしていた。
 戦いは、クライマックスへと向かう。

日高仁志 死亡】
残り29人
【ドラス@仮面ライダーZO】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:市街地D-6】
[時間軸]:仮面ライダーZOとの戦闘で敗北し死亡した直後
[状態]:軽傷。左肩に音撃傷(本人は気づいていない)。最高に『ハイ!』って気分。二時間戦闘不可?
[装備]:怪魔稲妻剣
[道具]:首輪(麻生勝)。配給品一式×4(ドラス、立花藤兵衛、麻生勝、天道)。
    ラウズカード(ダイヤの4、8。クラブの7。ハートの3、4、7。スペードの4)。
    ハイパーゼクター。ベルト(カブト)
[思考・状況]
1:第三回放送まで天道の仲間を待つ。
2:望月博士なしで神になる方法を考える。
3:首輪を外しこの世界を脱出する。
4:首輪の解除のため、冴子を利用する。
5:他の参加者は殺す。ただし、冴子には興味あり。
6:可能ならこの戦いに関する情報を得る。
[備考]
※1:ドラスの首輪は胴体内部のネオ生命体本体に巻かれています。(盗聴機能は生きています)
※2:ドラスはドクトルG、ヨロイ元帥、ジェネラルシャドウ、マシーン大元帥の情報を得ました。
※3:麻生は首輪が外れたため、死亡扱いになりましたが、ドラスの中で生きています。
ただし、ドラスが死ぬと麻生も死にます。
※4:赤ドラス化は能力発揮中のみ使用可能です。通常時は普通のドラスに戻ってしまいます。
※5:GM-01改4式(弾切れ)と拡声器はD-6エリアに放置されています。
※6:制限が緩められ、戦闘時間、戦闘不能時間に影響があるかもしれません。

影山冴子@仮面ライダー555】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:市街地D-6】
[時間軸]:本編最終話あたり
[状態]:肩にかなりの深さの裂傷。2時間は変身不可。
[装備]:オーガドライバー(オーガストランザー付属)
[道具]:首輪(園田真理)。アドベントカード(SEAL)。配給品一式。
[思考・状況]
1:生への執着。ドラスくんなら、自分の望みを叶えてくれる?
2:ドラスくんとの取引にのり、首輪の解除方法を探す。
3:あきらと巧に復讐。
4:ドラスくん、ご機嫌ね。
5:天道を拷問して時間を潰す

天道総司@仮面ライダーカブト】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:市街地D-6】
[時間軸]:ハイパーゼクター入手後。
[状態]:拘束状態(ZO本編の望月博士と似たような状態)。全身に拷問の痕。重症。二時間変身不可。
[装備]:なし。
[道具]:なし。
[思考・状況]
1:この拘束状態から脱出する。
2:ドラスたちを倒す。
3:乾、あきらをはじめ、皆の守りたい人との合流。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。
小沢が求める設備はD-6エリアの研究所が有力ですが、他に存在するかは後の書き手さんに任せます。

矢車想@仮面ライダーカブト】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:市街地F-4】
[時間軸]:8話 ザビー資格者
[状態]:傷はだいぶ癒えてきた 。全て応急処置済み。
[装備]:ライダーブレス(ザビーゼクター破壊)、
[道具]:ホッパーゼクター&ホッパー用ZECTバックル。ゼクトマイザー。四人分のデイバック(佐伯、純子、草加、矢車)
    マイザーボマー(ザビー、ホッパー)
[思考・状況]
1:天道を救い、ドラスを倒す。
2:仲間を集めてパーフェクトハーモニーで脱出!
3:戦闘力の確保。カイザドライバーに興味。
4:リュウガに僅かに不信感。
[備考]
※1:矢車はBOARDに対する誤解が解かれました。
※2:クライシスと神崎士郎が利害の一致で手を組んでいる可能性が高いと考えています。
※3:ゼクトマイザーは制限により弾数に限りがあります。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。
小沢が求める設備はD-6エリアの研究所が有力ですが、他に存在するかは後の書き手さんに任せます。

日下部ひより@仮面ライダーカブト】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:市街地F-4】
[時間軸]:本編中盤 シシーラワーム覚醒後。
[状態]:右肩に重傷。応急処置済み。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
1:天道を助けたい。
2:シャドームーンはどうしているだろう?
3:加賀美の死に深い悲しみ。
[備考]
※1:第二回放送の情報を得ました。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。
小沢が求める設備はD-6エリアの研究所が有力ですが、他に存在するかは後の書き手さんに任せます。

神代剣@仮面ライダーカブト】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:市街地F-4】
[時間軸]:スコルピオワームとして死んだ後。
[状態]:中程度の負傷。始への憤り。
[装備]:サソードヤイバー。剣崎の装備一式。
[道具]:陰陽環(使い方は不明)。ラウズアブゾーバ。
    ラウズカード(スペードのA、2、3、5、6、9、10。ダイヤの7、9、J。クラブの8、9)
[思考・状況]
1:天道を救い、傷が癒えたところで決闘を申し込む。ドラスは倒す。
2:始と再会し、手を汚す前に自分の手で殺す。
3:この戦いに勝ち残り、ワームの存在を無かったことにすることで贖罪を行う。
4:さらに、自分以外が幸せになれる世界を創る。
5:秋山蓮といずれ決着をつける。
6:氷川の決闘の申し出を受ける。
[備考]神代は食パンを「パンに良く似た食べ物」だと思ってます。
※1:剣崎と神代剣両方の姿に切り替えることができます。剣崎の記憶にある人物と遭遇しそうなら、剣崎の姿に切り替えるつもりです。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。
小沢が求める設備はD-6エリアの研究所が有力ですが、他に存在するかは後の書き手さんに任せます。

草加雅人@仮面ライダー555】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:市街地F-4】
[時間軸]:ファイズ終盤。
[状態]:背中に切り傷。胸に強度の打撲。参加者全員への強い憎悪。ドラスに特に強い憎悪。
[装備]:カイザドライバー(カイザブレイガン、ファイズショット、カイザポインター)
[道具]:ファイズアクセル
[思考・状況]
1:このメンバーを利用して、ドラスに復讐。
2:ゲームの参加者の皆殺し。
3:馬鹿を騙し、手駒にする。
[備考]
※1:珠純子の死を秋山蓮に擦りつけようと考えています。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。
小沢が求める設備はD-6エリアの研究所が有力ですが、他に存在するかは後の書き手さんに任せます。

リュウガ@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:市街地F-4】
[時間軸]:劇場版登場時期。龍騎との一騎打ちで敗れた後。
[状態]:中程度の負傷。特に背中。応急処置済み。天道を救えなかった後悔。2時間変身不能。
[装備]:リュウガのカードデッキ。コンファインベント。
[道具]:なし
[思考・状況]
1:天道を救い、ひよりを安心させる。ドラスは倒す。
2:自分の今の感情の名を知りたい。
3:ひよりと天道を守るために戦う。
4:神崎に反抗。
5:城戸の死んだ現場に行きたい。
[備考]
※1:ドラグブラッカーの腹部には斬鬼の雷電斬震の傷があります。
※2:第二回放送の情報を得ました。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。
小沢が求める設備はD-6エリアの研究所が有力ですが、他に存在するかは後の書き手さんに任せます。

秋山蓮@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:市街地F-4】
[時間軸]:34話龍騎サバイブ戦闘前後。
[状態]:中度の負傷。深い悲しみ。2時間変身不能。
[装備]:カードデッキ(ナイト)
[道具]:配給品一式。
[思考・状況]
1:ドラスを倒し、ヒビキの仇をとる。
2:戦いを続ける。
3:神代を逃がしはしない。
4:リュウガに話しがある。
[備考]
※1:第二回放送の情報を得ました。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。
小沢が求める設備はD-6エリアの研究所が有力ですが、他に存在するかは後の書き手さんに任せます。

氷川誠@仮面ライダーアギト】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:市街地F-4】
[時間軸]:最終話近辺
[状態]:中程度の負傷。応急処置済み。
[装備]:拳銃(弾一つ消費)。手錠等の警察装備一式(但し無線は使えず、手錠はF-4のビル内に放置)。
    ガタックゼクター&ベルト。GX-05ケルベロス(但し、GX弾は消費)
[道具]:但し書きが書かれた名簿。デザートイーグル.357Magnum(4/9+1) 。
    デイバック五人分(氷川、ひより、リュウガ、岬、明日夢) 。
[思考・状況]
1:天道を助け、ひよりを安心させる。ドラスを倒す。
2:リュウガを信頼。
3:木野薫、津上翔一との合流。
4:此処から脱出する。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。
小沢が求める設備はD-6エリアの研究所が有力ですが、他に存在するかは後の書き手さんに任せます。

小沢澄子@仮面ライダーアギト】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:市街地F-4】
[時間軸]:G3-X完成辺り。
[状態]:多少の打撲と火傷。相変わらず沈着冷静。
[装備]:精巧に出来たモデルガン。
[道具]:壊れたザビーゼクター。ディスクアニマル(ルリオオカミ、リョクオオザル、キハダガニ、ニビイロヘビ)
[思考・状況]
1:天道を救い、ドラスを倒す。
2:城戸を救えなかった後悔。
3:首輪の解析(道具と仕組みさえ分かれば分解出来ると考えています)
4:ザビーゼクターを修理する(パーツと設備、時間さえあればザビーゼクターを修理可能だと考えています)
5:津上翔一と合流する。
6:リュウガに僅かに不信感。神代に怒り。
[備考]
※1:クライシスと神崎士郎が手を組んでいる可能性は低いと考えています。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。
小沢が求める設備はD-6エリアの研究所が有力ですが、他に存在するかは後の書き手さんに任せます。

南光太郎@仮面ライダーBLACK RX】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:市街地F-4】
[時間軸]:第1話、RXへのパワーアップ直後】
[状態]:健康。
[装備]:リボルケイン
[道具]:カラオケマイク(電池切れ)
[思考・状況]
1:天道を救い、ドラスを倒す。
2:打倒主催。その後、元の世界に戻ってクライシス帝国を倒す。
3:シャドームーンを捜す。
4:草加を始め、闇に落ちた仮面ライダーを救う。
[備考]
※1:黒幕はクライシス帝国、神崎はその手の者であると勝手に確信しています。
※2:ガタックゼクターへの誤解は解けました。
※3:ドラスをクライシスの怪人だと思っています。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。
小沢が求める設備はD-6エリアの研究所が有力ですが、他に存在するかは後の書き手さんに任せます。

結城丈二@仮面ライダーV3】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:市街地F-4】
[時間軸]:仮面ライダーBLACLRX終了後。
[状態]:中度の負傷。応急処置済み。ドクトルGに罪悪感。
[装備]:カセットアーム
[道具]:トランシーバー×3(現在地から3エリア分まで相互通信可能)、名簿を除くディパックの中身一式
[思考・状況]
1:天道を救い、ドラスを倒す。
2:首輪の解析。首輪の解析のための施設を探す。
3:死んだらドクトルGに謝りたい。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。
小沢が求める設備はD-6エリアの研究所が有力ですが、他に存在するかは後の書き手さんに任せます。

[その他共通事項]
HONDA XR250は制限により、あらゆる能力で変化することが出来ません。
HONDA XR250は市街地D-6に放置されています。
ドラスの放送は全エリアに届きました。

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最終更新:2018年11月29日 17:37