紅魔館では、日曜の夜には全員が食堂に集って会食をする日となっている。
今週の日曜も、会食が行われて、その食器が片づけられた時だった。
「咲夜、例の物を」
主賓席に座るレミリアが、咲夜に耳打ちをした。
次の瞬間、二人の背後に大きな黒板が出現する。
黒板には、
『リリーホワイト誘導作戦』
の文字が躍っていた。
「お姉様、いったい何が始まるの?」
フランが手を上げて、レミリアに質問した。
レミリアは静かに立ち上がり、
「第三次大戦よ」
黒板を叩いた。
ディスクブレイカー☆フラン『リリーホワイト誘導作戦ッ!』
OP Jesse Frederick『Everywhere You Look』
「先日、霧の湖付近の妖精たちからレティ・ホワイトロックが『春籠り』を始めたという情報が手に入ったわ」
パチュリ―が、黒板の前に立った。
「レティ・ホワイトロックが『春籠り』を始めたということは、そろそろ春が来るということ。そしてその春を持ってくるのが、リリーホワイト」
パチュリ―は、黒板にリリーの絵を描く。
「この時期になると、幻想郷の連中はこぞって花見の準備を始めるわ。しかし、リリーホワイトが来ないと花は咲かないから花見は始まらない」
黒板には、つぼみの絵と花の絵。
「そこで幻想郷の連中は、リリーホワイトを自分たちの近くに誘導しようとするわ。みんな一番に花見をやりたいからね。そして、花見をやりたいがために他の連中への妨害が始まるわ」
黒板の絵は、弾幕戦をする少女たちの絵に変化する。
「当然、私たちも一番に花見がやりたいわ。そこで、いかに周囲の妨害を排除しつつリリーホワイトを上手に誘導するかが必要になってくる」
黒板の絵が変化し、弾幕を少女に放つレミリアの絵と紅魔館へと向かうリリーの姿が描かれる。
「今から始まるのは、そのリリーホワイトを誘導し、なおかつ周囲の妨害を排除するための作戦」
パチュリ―が指を鳴らすと、チョークの絵は形を崩し、一つの文字に変化する。
「その名も、リリーホワイト誘導作戦』よ」
その文字を、レミリアが読み上げた。
「まず、この幻想郷でリリーホワイトを狙っている勢力は、私たち紅魔館を含めて5つあるわ」
レミリアが座り、肘をテーブルについて手を組む。
黒板の左半分に、『敵対勢力』の文字が書かれる。
「1つは西行寺幽々子をトップとする白玉楼」
黒板に、白玉楼の文字と幽々子の絵が出現する。
「次に、八坂神奈子と洩矢諏訪子をトップとする妖怪の山」
白玉楼の下に、妖怪の山の文字が出現し、神奈子と諏訪子の絵が書き足される。
「次に、風見幽香」
妖怪の山の下に、風見幽香の文字と絵が描かれる。
「そして最後に、博麗霊夢をトップとする博麗神社」
風見幽香の下に、博麗神社の文字と霊夢の絵が描かれ、リストが完成した。
そのリストを見て、フランは手を挙げる。
「質問! 何で幽香さんは一人なのに『勢力』なの?」
「いい質問ね! 理由は単純ッ! それは彼女がリリーホワイトを狙い、なおかつ『1勢力』に匹敵するほどの強さを持っているからよ!」
フランの質問にレミリアは即答した。
「そんなに強いの? 幽香さん強そうに見えないけど……」
何も知らないフランは、頭に疑問符をを浮かべた。
レミリアは、ふう、と長い溜息をついた。
「彼女は自分から手を出したりしなければ花を愛するお姉さんでしかないわ。でもね、彼女の花畑を荒らしたりしたら、彼女は惜しげもなくそいつをぶっ潰すわ」
レミリアは、フランと目を合わす。
「どれくらい強いかというと……そうね、怪力自慢の鬼と腕相撲をしていい勝負をし、なおかつパチュリ―でも使うのが難しい魔法を呼吸するように使うぐらい強いわ」
レミリアの言葉に、フランは絶句した。
絶句中のフランを置いて、作戦会議は進行する。
「次に、中立と思われる勢力を幾つかリストアップするわ」
宣言したレミリアの横で、パチュリ―が指を鳴らすと、黒板の右半分に、『中立勢力』の文字が書かれた。
「まずは人里ね。人里にはトップはいないわ」
黒板に、人里の文字が浮かび上がる。
「次に、蓬莱山輝夜をトップとする永遠亭」
人里の下に、永遠亭の文字と輝夜の絵が描かれる。
「最後は、幻想郷中の妖精たちかしら」
永遠亭の下に、妖精の文字が書かれる。
「さて、勢力一覧が出来上がったところで、今回の議題を発表するわ。今回の議題は、『中立勢力の取り込み』よ」
レミリアが立ち上がり、黒板を軽く押す。
黒板はどんでん返しのようにひっくり返り、まっさらな黒板が現れる。
「まずは各勢力の特徴から説明するわ。まずは人里」
またもレミリアの横でパチュリ―が指を鳴らす。
チョークがひとりでに動いて黒板に人里、永遠亭、妖精の文字を書く。
「人里には、トップがいないからまとまった思想が無いわ。多分、味方にするとなれば個人レベルでの交渉が必要ね」
人里の横に、個人レベルでの交渉必須の文字が書き足される。
「次に、永遠亭ね。永遠亭は、立地上花見ができないから、交渉次第では味方になってくれるかもしれないけど、他の勢力も永遠亭を誘っている可能性があるわ」
永遠亭の横に、他勢力も交渉している可能性ありの文字が書き足される。
「そして、妖精。誘いやすくて、数も多いけど、話を聞いてくれない子供ばかりだわ」
妖精の横に、要リーダーの文字が書き足される。
「さて、皆はどの勢力を味方につけようと思ってるのかしら? 諸君の意見を聞こう!」
レミリアが宣言すると、咲夜が手を挙げた。
「永遠亭は二重スパイならぬ二重勢力となる疑いがあるので味方につけるには困難だと思われます」
咲夜はチョークを取り出して、永遠亭の文字のところに『二重勢力の疑いあり』の文字を書き足す。
「狙うなら人里です。人里に所属している強力な能力者を味方につけ、少数精鋭で行きましょう」
咲夜は、人里の文字を囲う。
パチュリーの横に立つ蓮見琢磨が、それを鼻で笑った。
「『二重勢力』が怖いなら、それを逆に生かして『三重勢力』にすればいい。相手に間違った情報を流し、なおかつ相手の情報を手に入れるッ!」
琢磨は学生服の袖からチョークを取り出し、『二重勢力』の下に矢印を書き足して『三重勢力』の文字を付け足す。
「いや、そうなれば『四重勢力』の疑いも出てくるわ」
咲夜が目を光らせて反論する。
「だったら『五重勢力』にすればいい」
琢磨も負けじと反論する。
そして咲夜と琢磨の言い争いが始まった。
言い争いをする二人を尻目に、美鈴がチョークを持って妖精の文字を囲う。
「やっぱりここは物量作戦がいいと思います」
それに対してパチュリ―はため息をつく。
「物量作戦には賛成だけど、その軍勢をまとめる指揮官がいないとどうしようもないのよね~」
パチュリ―のつぶやきを聞いた美鈴は、がっくりと肩を落とす。
「ねー、妖精をまとめるんなら、いいアイデアがあるよ」
悩むパチュリ―と美鈴の間に、フランが割って入った。
「「いいアイデア?」」
二人は、フランを覗き込んだ。
「ほら、私人里の寺子屋に通ってるでしょ? そこにいるのよ。妖精のガキ大将が」
フランの言葉に二人は目を丸くした。
「妖精のガキ大将? それって、霧の湖で遊んでいるチルノちゃんの事ですか?」
美鈴の言葉に、フランはうなづく。
美鈴は、唸った。
「確かに、チルノちゃんの周りには妖精がものすごく集まりますけど、肝心の指揮能力はあるんですか?」
美鈴は困った表情を浮かべた。
その言葉を聞いたフランの目が、光った。
「それがあるのよ。体育で騎馬戦やった時、チルノが大将をやってね。その時には私たちは一人も帽子を取られずに、相手全員の帽子を取ったのよ」
得意げに語るフラン。
でも美鈴の表情は変わらない。
「いや、あの氷精はバカだけど、チェスとか将棋はものすごく上手よ」
思い出したかのように、パチュリ―が語り始めた。
「パチュリー、なんでそのこと知ってるの?」
驚いた表情を浮かべて、フランはパチュリ―を見る。
「図書館で騒ぎながらチェスとかやられたら嫌でも気づくわよ」
「あ、そっか」
「それにしてもフランがボロ負けするなんてびっくりしたわよ」
「だって、チルノの次の手が読めないもん」
「う~む、紅魔館一のチェスプレイヤーの目を持ってしても読めないのね。あの氷精のチェスは」
パチュリ―は、チルノに対するフランの評価を聞いて、今度対局してみようかしら、と考えた。
「その案、お嬢様に聞いてみましょうか?」
フランの考えに納得した美鈴が、彼女に耳打ちをした。
「そうね。咲夜と琢磨が争っている今の内ね」
策士の笑みを浮かべ、フランは言い争いを続けている二人を見る。
「少数精鋭ッ!」
「情報戦ッ!」
「「うぎぎぎ……」」
まだ二人は睨み合っていた。
フランは抜き足差し足でレミリアの前に出る。
「どうしたの? フラン」
「味方につける中立勢力、決まったよ」
フランはひそひそ声でレミリアにささやく。
「ほほう、目の前で咲夜と蓮見が争っているのを見るに、フランは妖精たちを味方に付けるつもりね?」
「そのとおりよ。お姉様」
「さして、統率のとれない妖精たちをまとめる方法はあるのかしら?」
「纏める方法はすでに出来上がっているわ。お姉様は妖精をできるだけ集めて頂戴」
フランは策士の笑みを崩さない。
自身たっぷりな妹の様子に、レミリアは笑みを浮かべた。
「よろしい。ならば今回はあなたに任せようじゃないの」
その声を聴いたフランは、小さくガッツポーズを決めた。
「さて、今回の作戦会議はこれにてお開きとするわ。では、みなさんよい夜を」
レミリアが宣言すると、咲夜と琢磨は正気に戻った。
「……し、仕事に戻らなきゃ」
咲夜はそそくさと食堂から立ち去り、
「なんで僕はこんな下らないことに本気出してたんだか……」
琢磨は頭を抱えながら食堂を後にする。
「さて、私も業務に戻りますか」
美鈴も食堂の扉を開き、
「早速作戦を立てなくちゃね」
パチュリ―も本を開きながら食堂から出ていく。
そして、食堂にはフラン一人になった。
「……ディアボロさん、御苦労でした」
誰もいない食堂で、フランはつぶやいた。
「全く……お前もえげつない手段思いつくもんだな」
テーブルクロスが掛けられたテーブルの下から、『ストレンジ・リレイション』を持ったディアボロが出てくる。
「毎年この時期になるとお姉様はリリーホワイトを捕まえようと躍起になるからね」
「あの学生服のはともかく、なぜメイドまで『ストレンジ・リレイション』の術中にはまったんだ?」
ディアボロが立ち上がり、頭から『ストレンジ・リレイション』のDISCを外す。
「この『ストレンジ・リレイション』は、スタンド使いでなくてもある程度の力がある者なら効くみたいなの」
フランはディアボロからDISCを受け取り、頭に押し込む。
「なるほど。それにしてもあの学生服がスタンドを出さずに済んでよかったな」
「どうして?」
「彼のスタンド、『The・Book』は記憶と想起のスタンドだ。『ストレンジ・リレイション』にかかっていない頃の記述を読めば、彼は簡単に術から抜け出せる」
「なるほど。そこには気を付けなきゃね」
「それにしても、一体何が目的なんだ」
ディアボロの顔が、怪訝になる。
「目的は、リリーホワイト」
フランの笑顔が、黒く染まった。
「今年のリリーホワイト争奪戦は、私の勝利で終わるわ。レミリア・スカーレットの勝利ではなく、このフランドール・スカーレットの勝利で!」
フランの黒い笑顔を見て、ディアボロも黒い笑みを浮かべる。
「なるほど……で、必要な物資はあるか?」
「ええ。もちろん。香霖堂で手に入るスタンドDISCだけじゃ足りないわ。このリストに載ってるDISCを持って着て頂戴」
フランは、ディアボロにメモを渡す。
「ほう、『フー・ファイターズ』と『ホルス神』。射撃DISCが多いな」
ディアボロは、メモを見ても笑みを崩さない。
「持って来れるかしら?」
「よし、やってみよう。それにしても、お主もなかなかの惡よのう……」
「お主もよう、ディアボロ……」
「フン、ではさらばだ。悪魔の妹よ。明日また会おう」
ディアボロは、にやけ顔を崩さず、『ペット・ショップ』のDISCを使って姿を消した。
フランはそれを見送った後、食堂の扉を勢いよく開く。
「この『ストレンジ・リレイション』がある限り、全幻想郷のスタンド使いは私の掌の上よ!」
そして食堂には誰もいなくなった。
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今週の日曜も、会食が行われて、その食器が片づけられた時だった。
「咲夜、例の物を」
主賓席に座るレミリアが、咲夜に耳打ちをした。
次の瞬間、二人の背後に大きな黒板が出現する。
黒板には、
『リリーホワイト誘導作戦』
の文字が躍っていた。
「お姉様、いったい何が始まるの?」
フランが手を上げて、レミリアに質問した。
レミリアは静かに立ち上がり、
「第三次大戦よ」
黒板を叩いた。
ディスクブレイカー☆フラン『リリーホワイト誘導作戦ッ!』
OP Jesse Frederick『Everywhere You Look』
「先日、霧の湖付近の妖精たちからレティ・ホワイトロックが『春籠り』を始めたという情報が手に入ったわ」
パチュリ―が、黒板の前に立った。
「レティ・ホワイトロックが『春籠り』を始めたということは、そろそろ春が来るということ。そしてその春を持ってくるのが、リリーホワイト」
パチュリ―は、黒板にリリーの絵を描く。
「この時期になると、幻想郷の連中はこぞって花見の準備を始めるわ。しかし、リリーホワイトが来ないと花は咲かないから花見は始まらない」
黒板には、つぼみの絵と花の絵。
「そこで幻想郷の連中は、リリーホワイトを自分たちの近くに誘導しようとするわ。みんな一番に花見をやりたいからね。そして、花見をやりたいがために他の連中への妨害が始まるわ」
黒板の絵は、弾幕戦をする少女たちの絵に変化する。
「当然、私たちも一番に花見がやりたいわ。そこで、いかに周囲の妨害を排除しつつリリーホワイトを上手に誘導するかが必要になってくる」
黒板の絵が変化し、弾幕を少女に放つレミリアの絵と紅魔館へと向かうリリーの姿が描かれる。
「今から始まるのは、そのリリーホワイトを誘導し、なおかつ周囲の妨害を排除するための作戦」
パチュリ―が指を鳴らすと、チョークの絵は形を崩し、一つの文字に変化する。
「その名も、リリーホワイト誘導作戦』よ」
その文字を、レミリアが読み上げた。
「まず、この幻想郷でリリーホワイトを狙っている勢力は、私たち紅魔館を含めて5つあるわ」
レミリアが座り、肘をテーブルについて手を組む。
黒板の左半分に、『敵対勢力』の文字が書かれる。
「1つは西行寺幽々子をトップとする白玉楼」
黒板に、白玉楼の文字と幽々子の絵が出現する。
「次に、八坂神奈子と洩矢諏訪子をトップとする妖怪の山」
白玉楼の下に、妖怪の山の文字が出現し、神奈子と諏訪子の絵が書き足される。
「次に、風見幽香」
妖怪の山の下に、風見幽香の文字と絵が描かれる。
「そして最後に、博麗霊夢をトップとする博麗神社」
風見幽香の下に、博麗神社の文字と霊夢の絵が描かれ、リストが完成した。
そのリストを見て、フランは手を挙げる。
「質問! 何で幽香さんは一人なのに『勢力』なの?」
「いい質問ね! 理由は単純ッ! それは彼女がリリーホワイトを狙い、なおかつ『1勢力』に匹敵するほどの強さを持っているからよ!」
フランの質問にレミリアは即答した。
「そんなに強いの? 幽香さん強そうに見えないけど……」
何も知らないフランは、頭に疑問符をを浮かべた。
レミリアは、ふう、と長い溜息をついた。
「彼女は自分から手を出したりしなければ花を愛するお姉さんでしかないわ。でもね、彼女の花畑を荒らしたりしたら、彼女は惜しげもなくそいつをぶっ潰すわ」
レミリアは、フランと目を合わす。
「どれくらい強いかというと……そうね、怪力自慢の鬼と腕相撲をしていい勝負をし、なおかつパチュリ―でも使うのが難しい魔法を呼吸するように使うぐらい強いわ」
レミリアの言葉に、フランは絶句した。
絶句中のフランを置いて、作戦会議は進行する。
「次に、中立と思われる勢力を幾つかリストアップするわ」
宣言したレミリアの横で、パチュリ―が指を鳴らすと、黒板の右半分に、『中立勢力』の文字が書かれた。
「まずは人里ね。人里にはトップはいないわ」
黒板に、人里の文字が浮かび上がる。
「次に、蓬莱山輝夜をトップとする永遠亭」
人里の下に、永遠亭の文字と輝夜の絵が描かれる。
「最後は、幻想郷中の妖精たちかしら」
永遠亭の下に、妖精の文字が書かれる。
「さて、勢力一覧が出来上がったところで、今回の議題を発表するわ。今回の議題は、『中立勢力の取り込み』よ」
レミリアが立ち上がり、黒板を軽く押す。
黒板はどんでん返しのようにひっくり返り、まっさらな黒板が現れる。
「まずは各勢力の特徴から説明するわ。まずは人里」
またもレミリアの横でパチュリ―が指を鳴らす。
チョークがひとりでに動いて黒板に人里、永遠亭、妖精の文字を書く。
「人里には、トップがいないからまとまった思想が無いわ。多分、味方にするとなれば個人レベルでの交渉が必要ね」
人里の横に、個人レベルでの交渉必須の文字が書き足される。
「次に、永遠亭ね。永遠亭は、立地上花見ができないから、交渉次第では味方になってくれるかもしれないけど、他の勢力も永遠亭を誘っている可能性があるわ」
永遠亭の横に、他勢力も交渉している可能性ありの文字が書き足される。
「そして、妖精。誘いやすくて、数も多いけど、話を聞いてくれない子供ばかりだわ」
妖精の横に、要リーダーの文字が書き足される。
「さて、皆はどの勢力を味方につけようと思ってるのかしら? 諸君の意見を聞こう!」
レミリアが宣言すると、咲夜が手を挙げた。
「永遠亭は二重スパイならぬ二重勢力となる疑いがあるので味方につけるには困難だと思われます」
咲夜はチョークを取り出して、永遠亭の文字のところに『二重勢力の疑いあり』の文字を書き足す。
「狙うなら人里です。人里に所属している強力な能力者を味方につけ、少数精鋭で行きましょう」
咲夜は、人里の文字を囲う。
パチュリーの横に立つ蓮見琢磨が、それを鼻で笑った。
「『二重勢力』が怖いなら、それを逆に生かして『三重勢力』にすればいい。相手に間違った情報を流し、なおかつ相手の情報を手に入れるッ!」
琢磨は学生服の袖からチョークを取り出し、『二重勢力』の下に矢印を書き足して『三重勢力』の文字を付け足す。
「いや、そうなれば『四重勢力』の疑いも出てくるわ」
咲夜が目を光らせて反論する。
「だったら『五重勢力』にすればいい」
琢磨も負けじと反論する。
そして咲夜と琢磨の言い争いが始まった。
言い争いをする二人を尻目に、美鈴がチョークを持って妖精の文字を囲う。
「やっぱりここは物量作戦がいいと思います」
それに対してパチュリ―はため息をつく。
「物量作戦には賛成だけど、その軍勢をまとめる指揮官がいないとどうしようもないのよね~」
パチュリ―のつぶやきを聞いた美鈴は、がっくりと肩を落とす。
「ねー、妖精をまとめるんなら、いいアイデアがあるよ」
悩むパチュリ―と美鈴の間に、フランが割って入った。
「「いいアイデア?」」
二人は、フランを覗き込んだ。
「ほら、私人里の寺子屋に通ってるでしょ? そこにいるのよ。妖精のガキ大将が」
フランの言葉に二人は目を丸くした。
「妖精のガキ大将? それって、霧の湖で遊んでいるチルノちゃんの事ですか?」
美鈴の言葉に、フランはうなづく。
美鈴は、唸った。
「確かに、チルノちゃんの周りには妖精がものすごく集まりますけど、肝心の指揮能力はあるんですか?」
美鈴は困った表情を浮かべた。
その言葉を聞いたフランの目が、光った。
「それがあるのよ。体育で騎馬戦やった時、チルノが大将をやってね。その時には私たちは一人も帽子を取られずに、相手全員の帽子を取ったのよ」
得意げに語るフラン。
でも美鈴の表情は変わらない。
「いや、あの氷精はバカだけど、チェスとか将棋はものすごく上手よ」
思い出したかのように、パチュリ―が語り始めた。
「パチュリー、なんでそのこと知ってるの?」
驚いた表情を浮かべて、フランはパチュリ―を見る。
「図書館で騒ぎながらチェスとかやられたら嫌でも気づくわよ」
「あ、そっか」
「それにしてもフランがボロ負けするなんてびっくりしたわよ」
「だって、チルノの次の手が読めないもん」
「う~む、紅魔館一のチェスプレイヤーの目を持ってしても読めないのね。あの氷精のチェスは」
パチュリ―は、チルノに対するフランの評価を聞いて、今度対局してみようかしら、と考えた。
「その案、お嬢様に聞いてみましょうか?」
フランの考えに納得した美鈴が、彼女に耳打ちをした。
「そうね。咲夜と琢磨が争っている今の内ね」
策士の笑みを浮かべ、フランは言い争いを続けている二人を見る。
「少数精鋭ッ!」
「情報戦ッ!」
「「うぎぎぎ……」」
まだ二人は睨み合っていた。
フランは抜き足差し足でレミリアの前に出る。
「どうしたの? フラン」
「味方につける中立勢力、決まったよ」
フランはひそひそ声でレミリアにささやく。
「ほほう、目の前で咲夜と蓮見が争っているのを見るに、フランは妖精たちを味方に付けるつもりね?」
「そのとおりよ。お姉様」
「さして、統率のとれない妖精たちをまとめる方法はあるのかしら?」
「纏める方法はすでに出来上がっているわ。お姉様は妖精をできるだけ集めて頂戴」
フランは策士の笑みを崩さない。
自身たっぷりな妹の様子に、レミリアは笑みを浮かべた。
「よろしい。ならば今回はあなたに任せようじゃないの」
その声を聴いたフランは、小さくガッツポーズを決めた。
「さて、今回の作戦会議はこれにてお開きとするわ。では、みなさんよい夜を」
レミリアが宣言すると、咲夜と琢磨は正気に戻った。
「……し、仕事に戻らなきゃ」
咲夜はそそくさと食堂から立ち去り、
「なんで僕はこんな下らないことに本気出してたんだか……」
琢磨は頭を抱えながら食堂を後にする。
「さて、私も業務に戻りますか」
美鈴も食堂の扉を開き、
「早速作戦を立てなくちゃね」
パチュリ―も本を開きながら食堂から出ていく。
そして、食堂にはフラン一人になった。
「……ディアボロさん、御苦労でした」
誰もいない食堂で、フランはつぶやいた。
「全く……お前もえげつない手段思いつくもんだな」
テーブルクロスが掛けられたテーブルの下から、『ストレンジ・リレイション』を持ったディアボロが出てくる。
「毎年この時期になるとお姉様はリリーホワイトを捕まえようと躍起になるからね」
「あの学生服のはともかく、なぜメイドまで『ストレンジ・リレイション』の術中にはまったんだ?」
ディアボロが立ち上がり、頭から『ストレンジ・リレイション』のDISCを外す。
「この『ストレンジ・リレイション』は、スタンド使いでなくてもある程度の力がある者なら効くみたいなの」
フランはディアボロからDISCを受け取り、頭に押し込む。
「なるほど。それにしてもあの学生服がスタンドを出さずに済んでよかったな」
「どうして?」
「彼のスタンド、『The・Book』は記憶と想起のスタンドだ。『ストレンジ・リレイション』にかかっていない頃の記述を読めば、彼は簡単に術から抜け出せる」
「なるほど。そこには気を付けなきゃね」
「それにしても、一体何が目的なんだ」
ディアボロの顔が、怪訝になる。
「目的は、リリーホワイト」
フランの笑顔が、黒く染まった。
「今年のリリーホワイト争奪戦は、私の勝利で終わるわ。レミリア・スカーレットの勝利ではなく、このフランドール・スカーレットの勝利で!」
フランの黒い笑顔を見て、ディアボロも黒い笑みを浮かべる。
「なるほど……で、必要な物資はあるか?」
「ええ。もちろん。香霖堂で手に入るスタンドDISCだけじゃ足りないわ。このリストに載ってるDISCを持って着て頂戴」
フランは、ディアボロにメモを渡す。
「ほう、『フー・ファイターズ』と『ホルス神』。射撃DISCが多いな」
ディアボロは、メモを見ても笑みを崩さない。
「持って来れるかしら?」
「よし、やってみよう。それにしても、お主もなかなかの惡よのう……」
「お主もよう、ディアボロ……」
「フン、ではさらばだ。悪魔の妹よ。明日また会おう」
ディアボロは、にやけ顔を崩さず、『ペット・ショップ』のDISCを使って姿を消した。
フランはそれを見送った後、食堂の扉を勢いよく開く。
「この『ストレンジ・リレイション』がある限り、全幻想郷のスタンド使いは私の掌の上よ!」
そして食堂には誰もいなくなった。
←To be contined...