ディスクブレイカ―☆フラン 『電撃決戦! 人里VS博霊神社!』 OPテーマ World's End Girlfriend『BirthdayResistance』
ttp://www.youtube.com/watch?v=JdWMH1XGX30
真夜中の博霊神社勢力本陣にて、霊夢は背伸びをした。
「あの悪霊が一発で決めちゃったし、帰るとしましょうか」
紅魔館勢力の敗北を見届けた彼女は早速帰る準備を始めた。
「流石魅魔様だぜ。私にはできないことを平然とやってのけちゃう……そこに痺れる憧れるゥ!」
うきうきとして魔理沙も霊夢の作業を手伝い始める。
そこで、魔理沙は違和感に気付いた。
いつの間にか、彼女は手袋をはめていたのだ。
「あれ……? 霊夢、私いつ手袋つけたっけ?」
驚きを顔に浮かべて手をまじまじと見つめる魔理沙。
「そんなこと私が知るわけないでしょ……所で、私のお祓い棒知らない? いつの間にかなくなってるんだけど……」
霊夢はきょろきょろと辺りを見回してお祓い棒を探す。
「霊夢、どこ見てるんだ? お祓い棒なら腰にあるぜ」
魔理沙は霊夢の探し物が腰に提げられているのを指摘した。
霊夢の腰には、武士が腰に刀を提げているのと同じようにお祓い棒が下げてある。
指摘されて霊夢はやっと気づき、そして頭に『?』の文字を浮かべる。
「いったい何が起きているのかしら……?」
考え込む霊夢。
「謎の怪奇現象だぜ。どう思いますか解説の露伴さん」
考える霊夢をよそに、箒の先をマイクに見立てて露伴に向ける魔理沙。
「う~ん、書いてない所がいつの間にか書かれていたりするしなぁ……新手のスタンド使いか、妖怪の悪戯か……」
コメンテーターを気取って露伴は答える。
いつの間にかつけられていた手袋。
いつの間にか腰に提げていたお祓い棒。
いつの間にか書かれていた絵。
『奇妙な現象』が起きている。
「一体、何が起きているのかしら……」
不気味に思った霊夢は、空を見る。
月は答えてはくれない。
通信ができない。そのことに紫は疑念を抱いていた。
「通信機を使おうとしたらいつの間にか通信機を元の場所に戻していた……時間干渉系の能力かしら?」
通信機を取り出しても通信できない。
この不思議な状況に紫は首をかしげていた。
「戻すんだったら一回目の通信の時点で通信機は袖の中に戻っている筈……でも一回目の通信が妨害された時は通信機は手の上にあった……」
少し傘を回転させ、空中からディアボロ達を見下ろす。
ちょうど、ディアボロと目が合った。
ディアボロを見て、紫は渋い表情を浮かべた。
「アイツが怪しいわね」
紫がにらみを利かせると、ディアボロも睨み返してきた。
「仕掛けるッ!」
紫は扇子をディアボロに向け、光弾を放った。
ディアボロは光弾を走って避け、『キング・クリムゾン』を出す。
「ちょっとカッコ悪いが……どうだッ!」
走りながら『キング・クリムゾン』で石を掴み、紫に向けて投げる。
石はスキマに吸い込まれた。
「ですよねー」
スキマに吸い込まれた石を見ながらディアボロは光弾を避ける作業に入る。
「ナランチャ! 何とかしろー!」
振り向いてディアボロはナランチャの方を振り向く。
ナランチャも紫の光弾に追われている。
何とかならないようだ。
大妖精も光弾を避けるので精一杯らしい。チルノに至っては弾を凍らせて防御されないよう炎の弾を撃たれている。
「ええい……あてになるのは俺だけか……」
所々に辛うじて形を残しているレンガの壁。そこにディアボロは飛び込み、懐から『ウェザー・リポートのDISC』を取り出して防御用に装備する。
「これで少しは強気に行けるが……それでも心細いなぁ」
薄い雲がディアボロの周囲に出現する。
これが彼に迫りくる弾丸を摩擦熱で蒸発させる『圧縮空気の壁』である。
石を数個『キング・クリムゾン』で掴み、レンガの陰から飛び出すディアボロ。
そこに向けて紫は光弾を数発放つ。
光弾のいくつかはは『圧縮空気の壁』に阻まれて蒸発し、残りの壁は『キング・クリムゾン』の拳ではじく。
「これで、どうだ!」
ディアボロの傍に立つ『キング・クリムゾン』は大きく腕を振りかぶり、石の散弾を放つ。
「キング・クリムゾン! 俺以外の時間は吹き飛ぶッ!」
次の瞬間、石の散弾は紫に命中した。
ビシビシと音を立てて紫の体に命中する石。
「何が起きた!? 既に当たっているなんて……あのメイドの時止めとは訳が違うわ!」
紫は体制を崩し、光弾を放つのを止めて体制を整えようとする。
「そこよ!」
紫が見せた隙に大妖精がつけ込み、クナイ弾を放つ。
クナイ弾が紫にクリーンヒットし、完全に自由落下を始める。
「くっ……やるわね。でも……これがいい!」
落ちながら紫はニヤリと笑った。
彼女の真下にスキマが開かれる。
「これが私の『逃走経路』よッ!」
場の全員が「しまった!」と思った時にはもう遅い。
紫はスキマに飛び込み、姿を消した。
彼女が姿を消した途端、紅魔館跡地は静かになった。
「さて、私の通信を妨害し、あまつさえ石を当てることに成功した能力……どんなものかしら?」
ディアボロは自分の背後から声をかけられて、振り向いた。
声の主はいない。
「私のカンでは時間操作系統だと思うけど……」
今度は足元から声がする。
だがディアボロの足元には芝が広がるのみ。
「そこのところ、どうなのかしら?」
ガシッ、とディアボロの頭が白い手に捕まれた。
「なっ……」
ディアボロは驚愕し、掴まれている方向に『キング・クリムゾン』の拳を振るう。
しかし、拳が手の主を捉えることはなかった。
ディアボロは『キング・クリムゾン』のキング・クリムゾン』の目を通してみてしまった。
「俺の拳が……スキマにッ!」
金縛りにあったかのごとくディアボロの腕が動かない。
「右が駄目なら、左があるッ!」
ディアボロは『キング・クリムゾン』の左腕を振るう。それもスキマに絡め取られる。
続けてディアボロの足もとにスキマが開き、彼の両足を縛る。
「あなたの持つ『スタンドDISC』、抜き取らせていただくわ……」
紫の手がディアボロの頭に沈み込む。
「これかしら?」
何かを掴みとったらしく、手に力を込める紫。
手を引き抜こうとする彼女の頭上に、チルノが飛び出した。
「隙あり~ッ! グレートクラッシャーだッ!」
一瞬で巨大な氷塊が出現し、土煙を立てて紫を押し潰す。
「おらおらおらー!」
駄目押しと言わんばかりに氷塊の上で足踏みをするチルノ。
辺りが静かになった。
「ふっ……あたいったら最強ね」
チルノは氷の上でニヒルな笑いを浮かべた。
その下ではディアボロが紅に染まって潰れている。
「少しは人の迷惑を考えろ…………」
どこからどう見ても虫の息である。具体的に言えばHPが1の状態。
「やれやれね。もう少しであの怪奇現象の原因が判明するところだったのに……」
決めポーズを決めるチルノの背後に、紫がスキマから現れた。
「……はッ!」
背後から潰したはずの相手の声が聞こえてきて、チルノはハッとした。
「飛んでけ~」
紫は扇子でチルノの背中を思いっきり叩いて飛ばす。
チルノは放物線を描いて飛んでいき、湖に落ちた。
チルノを助けに大妖精が湖へ飛んでいく。
「さて……お次はあなたね」
傘をくるくる回して、紫はナランチャと目を合わせる。
紫に腕を向けるナランチャの腕の上には、『エアロスミス』があり、エンジン音を立てて飛び立つ時を待っている。
「なるほど。その腕の上においてるラジコン飛行機みたいなのを飛ばそうって魂胆ね」
紫はスキマを経由し、ナランチャの眼前に飛び出す。
こうすれば、『エアロスミス』を発進させてから紫に狙いをつけるまで大きなスキができる。
なぜなら『エアロスミス』を発進させた後、振り返って機首を紫に向けなければならないからだ。
「子供は寝る時間よ」
紫は傘を一瞬でたたみ、ナランチャをそれで殴ろうとする。
「甘いッ!」
大きく傘を振りかぶった紫に、弾幕が降りかかった。
もろに弾幕を浴びた紫は吹き飛ばされ、空中で体制を整える。
「引っかかったな……オレの『エアロスミス』は別に飛ばなくたって弾を発射することぐらいできるんだぜ……」
ドヤ顔を浮かべるナランチャ。彼の腕で待機している『エアロスミス』の銃口からは煙が立ち上っている。
「距離を取ったな……そこは、オレの距離だッ!」
次の瞬間、『エアロスミス』がナランチャの腕から猛烈なスピードで飛び立つ。
弾をばら撒きながら紫に迫る『エアロスミス』。
「私に距離の概念は無いわ!」
紫はスキマに入って弾幕を回避した。
スキマはナランチャの前に開かれ、そこから紫が足を踏み出してくる。
「そんな近寄り方じゃ、いつまでたってもオレには近づけねぇぜ!」
至近距離に躍り出てきた紫に対してナランチャが取った行動、それは紫が出てきたスキマに飛び込むことだった。
結果、紫とナランチャの立ち位置は入れ替わるという結果になってしまった。
『エアロスミス』に近い場所に飛び出したナランチャは、腕に『エアロスミス』を着地させ、それを紫に向ける。
マシンガンを撃つ要領で腕の上の『エアロスミス』から弾幕を放ち、紫を牽制する。
颯爽と着地したナランチャは、再び『エアロスミス』を発進させる。
弾幕を放って紫に肉薄する『エアロスミス』。
傘を開いて弾幕を防ぎつつ、紫は飛んでナランチャに迫る。
紫の頭上を通り抜ける『エアロスミス』。すれ違いざまに『エアロスミス』爆弾を投下した。
大量の爆竹が爆ぜたような音がして、爆風が吹き荒れる。
「なっ……爆弾ですって!?」
爆風を受けて傘は紫を引っ張り、ナランチャの眼前に彼女を持ってくる。
ナランチャは飛び上がり、無防備に急接近してくる紫の傘を踏んで紫の背後に回り、『エアロスミス』を回収する。
「や~い! ばーかばーか!」
更に小学生並みの悪口で紫を囃し立てるナランチャ。
完全に調子に乗っていた。
ぶちっ、と音を立てて紫の堪忍袋の緒が切れた。
「深弾幕結界‐夢幻泡影‐」
子供に対して本気を出す大人げない妖怪の姿が、そこにはあった。
反則ギリギリの弾幕に囲まれてオロオロするナランチャの姿を見て、滅びゆく国を高みから眺める魔王のごとき表情と笑い声をあげる少女がそこにいた。
ピチューン、とおなじみの音を立てて地に倒れるナランチャ。
「……何かスッキリしないわね……」
何やってんだ私……と心の中でつぶやいて紫はため息をついた。
謎の敗北感を味わいつつ紫はスキマを開く。
「通信機が通じないなら最初っからこうすれば良かったじゃない……」
二回目のため息をついてスキマをくぐり、湖の対岸にある本陣へ移動する。
スキマを潜り抜けると、そこには射命丸のカメラフラッシュを気持ちよさそうに浴びているフランの姿があった。
目の前の情景に目を丸くする紫。本当の本当に何が起きたか分からないようだ。
「ね、ねぇこれ何?」
豆鉄砲を喰らった鳩みたいな表情をして霊夢に質問する紫。
紫に話しかけられて振り返った霊夢の表情は、般若だった。(ttp://www.youtube.com/watch?v=J-lukNkbEsY)
「あんた……今まで何やってたの…………?」
「ひっ…………」
年頃の女の子とは思えない低い声を出す霊夢。
おそらく若本紀夫と内海賢二の声を合成したらこの声になるのだろう。
この世の者とは思えぬその声に射すくめられた紫。
当たり前である。誰だってこんな声で迫られたらビビる。筆者だってビビる。
立ちすくむ紫に歩み寄る霊夢。
彼女の右手には、数えきれないほどの人間を斬り殺してきた妖刀のように輝くお祓い棒が握りしめられていた。
「ねぇ、聞いてるのよ。答えなさいよ。あんた紅魔館見に行って何 を し て た の?」
「い、いや……ちょっと魅魔がやりすぎてたから……」
バシッ、霊夢がお祓い棒で紫の頭を叩いた。
「ちょ、ちょっと何を……」
何か言おうとした紫を叩いて止める霊夢。
更に続けて2回目、3回目と叩く。
4HIT。
5HIT。
6HIT。
7HIT。
8HIT。
1UP。
「アンタがもたもたしたせいで負けたわ。敵が行ったなら連絡ぐらいよこしなさいよ」
「あ、ありのまま今起こったことを話すわよ! 連絡をしようと思ったらできなかった……な、何を言っているのかさっぱりわからないと思うけど……痛い!」
紫の言い訳をお祓い棒で叩いて黙らせる霊夢。
これ以上叩かれないためにも紫はスキマを開いて逃げようとする。
「生かして返さん! 私の『春一番花見で賽銭倍増素敵計画』を失敗させた罪は償ってもらうッ! 賽銭払って死ぬか、賽銭払わずに死ぬか、どちらか選べいッ!」
霊夢は紫をひっ掴んでスキマに引きずり込んだ。
夜の空に紫の悲鳴が響き渡っていった……
「嫌あああああああああ! 誰か助けてえぇぇ!」
と。
そして話は紫が本陣に返ってくる少し前に戻る。
「博麗霊夢ウゥゥゥ!」
本陣で考え込む霊夢の耳に、フランの大声が飛び込んできた。
びっくりして声がしてきた方向を見る霊夢。
その方向には右手にレーヴァテインを持ち、ものすごいスピードでやってくるフランの姿があった。
「その春水晶、刺し違えて貰い受けるッ!」
「へ?」
突っ込んでくるフランに霊夢は素っ頓狂な返事をした。
「WRYYYYYYYYYYYY!」
そして、中央に安置している春水晶にレーヴァテインが差し込まれる。
「あ…………」
そう呟いたのは魔理沙。
「ん? 何が起きたって……あ~ッ!」
絵を描いている途中に起きた異変に気づき、その異変の源を見て叫ぶ露伴。
紅く光る剣を挿し込まれた春水晶は、
“ギャ――z__ン!”
と、石を切る丸鋸みたいな音を立てて火花をまき散らす。
突然すぎる出来事に開いた口がふさがらない霊夢、魔理沙、露伴。
春水晶からレーヴァテインを引き抜くフラン。
フランは春水晶の爆発を背にレーヴァテインと左腕を振って『f』の字を描いた。
全ての決着がついた瞬間だった。
「決まった……完璧ね」
前々からやりたかったポーズを決め、ドヤ顔を浮かべるフラン。
そんな彼女に白い光が浴びせられる。
「春水晶争奪戦優勝おめでとうございます! 撮るのも早い、駆け付けるのも速い、射命丸文でございます!」
フランに白い光を浴びせたのは、射命丸。
「いやぁ~まさか『6つ目の勢力』があるとは驚きでした。一言どうです?」
いきなりカメラフラッシュを浴びて目をちかちかさせるフランに射命丸はマイクを向けた。
「してやったりって感じね」
快くインタビューに答えるフラン。
「記念にもう一枚どうです?」
「いえ~い!」
射命丸のカメラに向けてダブルピースと白い歯を見せるフラン。
その顔は悪戯が成功した子供の顔だった。
「仲間もいるからそっちも撮ってよ!」
「わっかりました~♪ レッツゴー!」
すっかり上機嫌のフランは飛び立って紅魔館跡地へと向かう。
それについていく射命丸。
2人の後ろでは魔理沙と露伴がいまだ信じられないという表情を浮かべ、紫が霊夢に引きずられて悲鳴を上げていた。
翌日、幻想郷中にばら撒かれた『文々。新聞 号外』にはフラン達の写真が大きく写っていた。
見出しには、
“今年の花見は人里で!”
の文字が躍っていた。
←To be continued... EDテーマ ふぉれすとぴれお『春風』
ttp://www.youtube.com/watch?v=JdWMH1XGX30
真夜中の博霊神社勢力本陣にて、霊夢は背伸びをした。
「あの悪霊が一発で決めちゃったし、帰るとしましょうか」
紅魔館勢力の敗北を見届けた彼女は早速帰る準備を始めた。
「流石魅魔様だぜ。私にはできないことを平然とやってのけちゃう……そこに痺れる憧れるゥ!」
うきうきとして魔理沙も霊夢の作業を手伝い始める。
そこで、魔理沙は違和感に気付いた。
いつの間にか、彼女は手袋をはめていたのだ。
「あれ……? 霊夢、私いつ手袋つけたっけ?」
驚きを顔に浮かべて手をまじまじと見つめる魔理沙。
「そんなこと私が知るわけないでしょ……所で、私のお祓い棒知らない? いつの間にかなくなってるんだけど……」
霊夢はきょろきょろと辺りを見回してお祓い棒を探す。
「霊夢、どこ見てるんだ? お祓い棒なら腰にあるぜ」
魔理沙は霊夢の探し物が腰に提げられているのを指摘した。
霊夢の腰には、武士が腰に刀を提げているのと同じようにお祓い棒が下げてある。
指摘されて霊夢はやっと気づき、そして頭に『?』の文字を浮かべる。
「いったい何が起きているのかしら……?」
考え込む霊夢。
「謎の怪奇現象だぜ。どう思いますか解説の露伴さん」
考える霊夢をよそに、箒の先をマイクに見立てて露伴に向ける魔理沙。
「う~ん、書いてない所がいつの間にか書かれていたりするしなぁ……新手のスタンド使いか、妖怪の悪戯か……」
コメンテーターを気取って露伴は答える。
いつの間にかつけられていた手袋。
いつの間にか腰に提げていたお祓い棒。
いつの間にか書かれていた絵。
『奇妙な現象』が起きている。
「一体、何が起きているのかしら……」
不気味に思った霊夢は、空を見る。
月は答えてはくれない。
通信ができない。そのことに紫は疑念を抱いていた。
「通信機を使おうとしたらいつの間にか通信機を元の場所に戻していた……時間干渉系の能力かしら?」
通信機を取り出しても通信できない。
この不思議な状況に紫は首をかしげていた。
「戻すんだったら一回目の通信の時点で通信機は袖の中に戻っている筈……でも一回目の通信が妨害された時は通信機は手の上にあった……」
少し傘を回転させ、空中からディアボロ達を見下ろす。
ちょうど、ディアボロと目が合った。
ディアボロを見て、紫は渋い表情を浮かべた。
「アイツが怪しいわね」
紫がにらみを利かせると、ディアボロも睨み返してきた。
「仕掛けるッ!」
紫は扇子をディアボロに向け、光弾を放った。
ディアボロは光弾を走って避け、『キング・クリムゾン』を出す。
「ちょっとカッコ悪いが……どうだッ!」
走りながら『キング・クリムゾン』で石を掴み、紫に向けて投げる。
石はスキマに吸い込まれた。
「ですよねー」
スキマに吸い込まれた石を見ながらディアボロは光弾を避ける作業に入る。
「ナランチャ! 何とかしろー!」
振り向いてディアボロはナランチャの方を振り向く。
ナランチャも紫の光弾に追われている。
何とかならないようだ。
大妖精も光弾を避けるので精一杯らしい。チルノに至っては弾を凍らせて防御されないよう炎の弾を撃たれている。
「ええい……あてになるのは俺だけか……」
所々に辛うじて形を残しているレンガの壁。そこにディアボロは飛び込み、懐から『ウェザー・リポートのDISC』を取り出して防御用に装備する。
「これで少しは強気に行けるが……それでも心細いなぁ」
薄い雲がディアボロの周囲に出現する。
これが彼に迫りくる弾丸を摩擦熱で蒸発させる『圧縮空気の壁』である。
石を数個『キング・クリムゾン』で掴み、レンガの陰から飛び出すディアボロ。
そこに向けて紫は光弾を数発放つ。
光弾のいくつかはは『圧縮空気の壁』に阻まれて蒸発し、残りの壁は『キング・クリムゾン』の拳ではじく。
「これで、どうだ!」
ディアボロの傍に立つ『キング・クリムゾン』は大きく腕を振りかぶり、石の散弾を放つ。
「キング・クリムゾン! 俺以外の時間は吹き飛ぶッ!」
次の瞬間、石の散弾は紫に命中した。
ビシビシと音を立てて紫の体に命中する石。
「何が起きた!? 既に当たっているなんて……あのメイドの時止めとは訳が違うわ!」
紫は体制を崩し、光弾を放つのを止めて体制を整えようとする。
「そこよ!」
紫が見せた隙に大妖精がつけ込み、クナイ弾を放つ。
クナイ弾が紫にクリーンヒットし、完全に自由落下を始める。
「くっ……やるわね。でも……これがいい!」
落ちながら紫はニヤリと笑った。
彼女の真下にスキマが開かれる。
「これが私の『逃走経路』よッ!」
場の全員が「しまった!」と思った時にはもう遅い。
紫はスキマに飛び込み、姿を消した。
彼女が姿を消した途端、紅魔館跡地は静かになった。
「さて、私の通信を妨害し、あまつさえ石を当てることに成功した能力……どんなものかしら?」
ディアボロは自分の背後から声をかけられて、振り向いた。
声の主はいない。
「私のカンでは時間操作系統だと思うけど……」
今度は足元から声がする。
だがディアボロの足元には芝が広がるのみ。
「そこのところ、どうなのかしら?」
ガシッ、とディアボロの頭が白い手に捕まれた。
「なっ……」
ディアボロは驚愕し、掴まれている方向に『キング・クリムゾン』の拳を振るう。
しかし、拳が手の主を捉えることはなかった。
ディアボロは『キング・クリムゾン』のキング・クリムゾン』の目を通してみてしまった。
「俺の拳が……スキマにッ!」
金縛りにあったかのごとくディアボロの腕が動かない。
「右が駄目なら、左があるッ!」
ディアボロは『キング・クリムゾン』の左腕を振るう。それもスキマに絡め取られる。
続けてディアボロの足もとにスキマが開き、彼の両足を縛る。
「あなたの持つ『スタンドDISC』、抜き取らせていただくわ……」
紫の手がディアボロの頭に沈み込む。
「これかしら?」
何かを掴みとったらしく、手に力を込める紫。
手を引き抜こうとする彼女の頭上に、チルノが飛び出した。
「隙あり~ッ! グレートクラッシャーだッ!」
一瞬で巨大な氷塊が出現し、土煙を立てて紫を押し潰す。
「おらおらおらー!」
駄目押しと言わんばかりに氷塊の上で足踏みをするチルノ。
辺りが静かになった。
「ふっ……あたいったら最強ね」
チルノは氷の上でニヒルな笑いを浮かべた。
その下ではディアボロが紅に染まって潰れている。
「少しは人の迷惑を考えろ…………」
どこからどう見ても虫の息である。具体的に言えばHPが1の状態。
「やれやれね。もう少しであの怪奇現象の原因が判明するところだったのに……」
決めポーズを決めるチルノの背後に、紫がスキマから現れた。
「……はッ!」
背後から潰したはずの相手の声が聞こえてきて、チルノはハッとした。
「飛んでけ~」
紫は扇子でチルノの背中を思いっきり叩いて飛ばす。
チルノは放物線を描いて飛んでいき、湖に落ちた。
チルノを助けに大妖精が湖へ飛んでいく。
「さて……お次はあなたね」
傘をくるくる回して、紫はナランチャと目を合わせる。
紫に腕を向けるナランチャの腕の上には、『エアロスミス』があり、エンジン音を立てて飛び立つ時を待っている。
「なるほど。その腕の上においてるラジコン飛行機みたいなのを飛ばそうって魂胆ね」
紫はスキマを経由し、ナランチャの眼前に飛び出す。
こうすれば、『エアロスミス』を発進させてから紫に狙いをつけるまで大きなスキができる。
なぜなら『エアロスミス』を発進させた後、振り返って機首を紫に向けなければならないからだ。
「子供は寝る時間よ」
紫は傘を一瞬でたたみ、ナランチャをそれで殴ろうとする。
「甘いッ!」
大きく傘を振りかぶった紫に、弾幕が降りかかった。
もろに弾幕を浴びた紫は吹き飛ばされ、空中で体制を整える。
「引っかかったな……オレの『エアロスミス』は別に飛ばなくたって弾を発射することぐらいできるんだぜ……」
ドヤ顔を浮かべるナランチャ。彼の腕で待機している『エアロスミス』の銃口からは煙が立ち上っている。
「距離を取ったな……そこは、オレの距離だッ!」
次の瞬間、『エアロスミス』がナランチャの腕から猛烈なスピードで飛び立つ。
弾をばら撒きながら紫に迫る『エアロスミス』。
「私に距離の概念は無いわ!」
紫はスキマに入って弾幕を回避した。
スキマはナランチャの前に開かれ、そこから紫が足を踏み出してくる。
「そんな近寄り方じゃ、いつまでたってもオレには近づけねぇぜ!」
至近距離に躍り出てきた紫に対してナランチャが取った行動、それは紫が出てきたスキマに飛び込むことだった。
結果、紫とナランチャの立ち位置は入れ替わるという結果になってしまった。
『エアロスミス』に近い場所に飛び出したナランチャは、腕に『エアロスミス』を着地させ、それを紫に向ける。
マシンガンを撃つ要領で腕の上の『エアロスミス』から弾幕を放ち、紫を牽制する。
颯爽と着地したナランチャは、再び『エアロスミス』を発進させる。
弾幕を放って紫に肉薄する『エアロスミス』。
傘を開いて弾幕を防ぎつつ、紫は飛んでナランチャに迫る。
紫の頭上を通り抜ける『エアロスミス』。すれ違いざまに『エアロスミス』爆弾を投下した。
大量の爆竹が爆ぜたような音がして、爆風が吹き荒れる。
「なっ……爆弾ですって!?」
爆風を受けて傘は紫を引っ張り、ナランチャの眼前に彼女を持ってくる。
ナランチャは飛び上がり、無防備に急接近してくる紫の傘を踏んで紫の背後に回り、『エアロスミス』を回収する。
「や~い! ばーかばーか!」
更に小学生並みの悪口で紫を囃し立てるナランチャ。
完全に調子に乗っていた。
ぶちっ、と音を立てて紫の堪忍袋の緒が切れた。
「深弾幕結界‐夢幻泡影‐」
子供に対して本気を出す大人げない妖怪の姿が、そこにはあった。
反則ギリギリの弾幕に囲まれてオロオロするナランチャの姿を見て、滅びゆく国を高みから眺める魔王のごとき表情と笑い声をあげる少女がそこにいた。
ピチューン、とおなじみの音を立てて地に倒れるナランチャ。
「……何かスッキリしないわね……」
何やってんだ私……と心の中でつぶやいて紫はため息をついた。
謎の敗北感を味わいつつ紫はスキマを開く。
「通信機が通じないなら最初っからこうすれば良かったじゃない……」
二回目のため息をついてスキマをくぐり、湖の対岸にある本陣へ移動する。
スキマを潜り抜けると、そこには射命丸のカメラフラッシュを気持ちよさそうに浴びているフランの姿があった。
目の前の情景に目を丸くする紫。本当の本当に何が起きたか分からないようだ。
「ね、ねぇこれ何?」
豆鉄砲を喰らった鳩みたいな表情をして霊夢に質問する紫。
紫に話しかけられて振り返った霊夢の表情は、般若だった。(ttp://www.youtube.com/watch?v=J-lukNkbEsY)
「あんた……今まで何やってたの…………?」
「ひっ…………」
年頃の女の子とは思えない低い声を出す霊夢。
おそらく若本紀夫と内海賢二の声を合成したらこの声になるのだろう。
この世の者とは思えぬその声に射すくめられた紫。
当たり前である。誰だってこんな声で迫られたらビビる。筆者だってビビる。
立ちすくむ紫に歩み寄る霊夢。
彼女の右手には、数えきれないほどの人間を斬り殺してきた妖刀のように輝くお祓い棒が握りしめられていた。
「ねぇ、聞いてるのよ。答えなさいよ。あんた紅魔館見に行って何 を し て た の?」
「い、いや……ちょっと魅魔がやりすぎてたから……」
バシッ、霊夢がお祓い棒で紫の頭を叩いた。
「ちょ、ちょっと何を……」
何か言おうとした紫を叩いて止める霊夢。
更に続けて2回目、3回目と叩く。
4HIT。
5HIT。
6HIT。
7HIT。
8HIT。
1UP。
「アンタがもたもたしたせいで負けたわ。敵が行ったなら連絡ぐらいよこしなさいよ」
「あ、ありのまま今起こったことを話すわよ! 連絡をしようと思ったらできなかった……な、何を言っているのかさっぱりわからないと思うけど……痛い!」
紫の言い訳をお祓い棒で叩いて黙らせる霊夢。
これ以上叩かれないためにも紫はスキマを開いて逃げようとする。
「生かして返さん! 私の『春一番花見で賽銭倍増素敵計画』を失敗させた罪は償ってもらうッ! 賽銭払って死ぬか、賽銭払わずに死ぬか、どちらか選べいッ!」
霊夢は紫をひっ掴んでスキマに引きずり込んだ。
夜の空に紫の悲鳴が響き渡っていった……
「嫌あああああああああ! 誰か助けてえぇぇ!」
と。
そして話は紫が本陣に返ってくる少し前に戻る。
「博麗霊夢ウゥゥゥ!」
本陣で考え込む霊夢の耳に、フランの大声が飛び込んできた。
びっくりして声がしてきた方向を見る霊夢。
その方向には右手にレーヴァテインを持ち、ものすごいスピードでやってくるフランの姿があった。
「その春水晶、刺し違えて貰い受けるッ!」
「へ?」
突っ込んでくるフランに霊夢は素っ頓狂な返事をした。
「WRYYYYYYYYYYYY!」
そして、中央に安置している春水晶にレーヴァテインが差し込まれる。
「あ…………」
そう呟いたのは魔理沙。
「ん? 何が起きたって……あ~ッ!」
絵を描いている途中に起きた異変に気づき、その異変の源を見て叫ぶ露伴。
紅く光る剣を挿し込まれた春水晶は、
“ギャ――z__ン!”
と、石を切る丸鋸みたいな音を立てて火花をまき散らす。
突然すぎる出来事に開いた口がふさがらない霊夢、魔理沙、露伴。
春水晶からレーヴァテインを引き抜くフラン。
フランは春水晶の爆発を背にレーヴァテインと左腕を振って『f』の字を描いた。
全ての決着がついた瞬間だった。
「決まった……完璧ね」
前々からやりたかったポーズを決め、ドヤ顔を浮かべるフラン。
そんな彼女に白い光が浴びせられる。
「春水晶争奪戦優勝おめでとうございます! 撮るのも早い、駆け付けるのも速い、射命丸文でございます!」
フランに白い光を浴びせたのは、射命丸。
「いやぁ~まさか『6つ目の勢力』があるとは驚きでした。一言どうです?」
いきなりカメラフラッシュを浴びて目をちかちかさせるフランに射命丸はマイクを向けた。
「してやったりって感じね」
快くインタビューに答えるフラン。
「記念にもう一枚どうです?」
「いえ~い!」
射命丸のカメラに向けてダブルピースと白い歯を見せるフラン。
その顔は悪戯が成功した子供の顔だった。
「仲間もいるからそっちも撮ってよ!」
「わっかりました~♪ レッツゴー!」
すっかり上機嫌のフランは飛び立って紅魔館跡地へと向かう。
それについていく射命丸。
2人の後ろでは魔理沙と露伴がいまだ信じられないという表情を浮かべ、紫が霊夢に引きずられて悲鳴を上げていた。
翌日、幻想郷中にばら撒かれた『文々。新聞 号外』にはフラン達の写真が大きく写っていた。
見出しには、
“今年の花見は人里で!”
の文字が躍っていた。
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