「ここが神霊廟か……見事なものじゃ」
今3人は、『入口』を通って神霊廟へと到達したばかりである。
一度写真で見ていたとはいえ、目の前に広がる光景には、ディアボロもマミゾウも射命丸も驚きを隠せなかった。
「新聞記者。どこから見て回る?それとも聖人を先に捜すか?」
ディアボロは射命丸を見ながら彼女に問いかける。
その質問を聞いた射命丸は少し考えて……
「先に聖人を探します。ついてきてください」
そう言って動き始めた。ディアボロとマミゾウもその後についていく。
「(迂闊に動いてひどい目にあわないといいが……)」
ディアボロはそう思っているが、射命丸は取材相手には礼儀正しいことは知っている。
……そう、『取材相手には』である。
白蓮に仕える者がいるように、聖人にも仕える者はいないとは限らない。
その者と射命丸の仲が嫌悪になって、聖人に取材ができなくなるのはディアボロとしても困る話だ。
だから、そのあたりはうまくディアボロとマミゾウでフォローしていかないといけない。
射命丸の後に続き、ディアボロとマミゾウも神霊廟の中に入る。
「初めて入る建物なのじゃ。はぐれてしまわぬよう気を付けなければならぬのう」
「ああ。この年で迷子になるのは勘弁だ」
そんな会話を二人でかわしながら、周囲を見渡す。
「誰も見当たらないが、『呼んでみる』か?」
ディアボロは二人に目配りしながら質問をする。
「勝手にうろついて怪しまれるよりはよいかもしれんのう」
「……そうですね。相手も取材をしに来たと分かれば警戒をしないはずです」
マミゾウと射命丸もその提案に賛成する。
「決まりだな」
ディアボロはそう言ってもう一度あたりを見回す。
「誰かいるか?」
ディアボロはとりあえず、誰かいるかどうか確認するために呼びかけてみる。
………
返事はない。
「どなたかいらっしゃいませんかー?」
射命丸はより大きな声で呼びかける。
………
「……誰か来るぞ」
返事は無かったが、誰かの気配がするのはディアボロには分かった。
「よくぞここにまいられた」
そう言って姿を見せたのは、古風な服をきて、大き目な帽子をかぶった灰色の髪の女性。
「…………」
だが、その直後に彼女は黙ってしまう。
「………?」
射命丸は疑問に思うが、ディアボロはあることに気づいた。
この女性は射命丸を睨んでいる。いや、『睨んでいるだけ』ならまだマシだった。
「(射命丸とこいつは初対面のはずだ。なのになぜ)」
女性が凄まじい量の矢の形をした弾幕を撃ってきて
「(『敵意』を抱いている……ッ!?)」
それに反応してディアボロは動きだした。
ディアボロが予想していた事態は、お互いに何もしていないなのに起きてしまった。
ディアボロは咄嗟に射命丸の前に立ち、弾幕を全てその身で受け止めながらも、なんとか踏ん張って耐えきる。
イエローテンパランスがなければ、ダメージをもろに受けていただろう。
「な……!?」
「!?」
女性はディアボロが射命丸を庇ったことに、射命丸はいきなり攻撃されたことに驚きを隠せなかった。
「新聞記者!早くこの場を離れろッ!何故かはわからないが、あいつはお前に敵意を抱いているッ!」
ディアボロはすぐに闘う構えを取りながら射命丸に警告する。
そしてすぐにマミゾウに目配りをし、
「護衛は任せたぞ」
マミゾウに射命丸の護衛を指示する。
「承知したぞい」
マミゾウはディアボロの言うことに従って、移動する射命丸を庇いつつその場を射命丸とともに離脱しようとする。
「させぬぞ!」
女性はそう言ってもう一度射命丸に狙いを定めるが、その時に移動する対象に集中していたのが失敗だった。
女性の視界から外れたのを理解したディアボロはすぐにイエローテンパランスを両手から引っ込めると、ハーミット・パープルを出して女性に絡みつかせる。
「なっ……!?」
絡みついたハーミット・パープルは、すぐに女性を縛り、締め付ける。
手首も足首も縛ったことで、物を投げつけるなんてことも女性にはできなくなった。
前兆の無かったその感触に女性は驚きの声を上げ、そちらに気を取られた隙に射命丸とマミゾウはその場から逃げることができた。
「いきなり何をする!?」
ディアボロはハーミット・パープルを緩めることなく、突然射命丸に攻撃してきたことについて女性に問いかける。
「お主の方こそ、何故妖怪をかばう!?」
女性の方は、先ほどのディアボロの行動が理解できないとばかりに彼に問い詰める。
「護衛をすることになったなら、目的の場所まで送り届けるまでその仕事をするのが常識だ」
ディアボロはそう言って女性を睨む。
「送り届けた後に護衛の対象がどうなろうがもう関係ないが、今はまだ仕事は終わっていないからな」
『元』とはいえギャングらしい考えだが、部下に自分の娘を護衛させておいて送り届けてもらったらすぐに殺そうとしたのはこの人です。
「あいつが目的の場所に辿り着けるまで、俺がお前の相手をしてやる」
ディアボロはそう言って、クレイジー・ダイヤモンドを出す。
弾幕はイエローテンパランスのおかげで全く効かず、何か道具をディアボロにぶつけようにも、精々造形が少し崩れるぐらいだ。
なんせこのスタンド、変装時にスタープラチナにぶんなぐられても中の人は平然としていられるほどの高い防御性能を持っている。
女性は自分が『何かに縛られている』のは目の前の男の仕業だと考え、先ほど射命丸に攻撃を仕掛けたときよりも多い量の弾幕を撃ってくる。
だがディアボロは焦ることなく、ハーミット・パープルの縛りを緩めずに耐え続ける。
「くっ……放さぬか!」
先ほどの大量の弾幕を軽傷で凌ぎきったことで、女性はなんと炎を出してきた。
「!!」
ディアボロにとっては予想外だが、女性からすれば、相手が物理攻撃に耐性を持っていて、かつ自身が拘束されていて動けないときには自身が使える最善の一手だろう。
「放さぬというのなら、これでもくらうがいい!」
女性はそう言って、炎をディアボロに向けて浴びせる。
流石にそれはマズい。イエローテンパランスのない両手は火傷を負うだろうし、イエローテンパランスがはじけ飛んでディアボロの制御から離れ、ハーミット・パープルにくっついてディアボロにダメージを与える事態になるのは避けたかった。
ディアボロはハーミット・パープルを解くと、その炎を回避しながらイエローテンパランスに両手を覆わせる。
自らを縛る『不可視の何か』が無くなったことを理解した女性は、すぐに浮遊する。
「(炎を使ってくるとは思わなかったが、こいつが俺に気を取られるようになったのは幸いだな……)」
幸い、イエローテンパランスと炎の相性は良い。
熱による火傷を防ぎ、時にはじけ飛ばして相手に傷を負わせることはできるからだ。
彼女がディアボロを敵として攻撃し続ける限り、かなりの時間は稼げるだろう。
「一つ聞きたいことがある。何故お前は突然新聞記者を攻撃してきた?」
誰の記憶にも乗っていなかったこの女性の情報を得るためには、直接この女性と対話するしかない。
そのため、ディアボロはこの女性との対話を試みる。
「お主の方こそ、何故あの天狗をかばった?お主は後であの天狗に襲われるなどとは思わぬのか?」
女性の方は、説明されても未だにディアボロの行動が理解できないようだ。
「……何を言っている」
ディアボロは皮肉を込めた笑みと鋭いままの眼光で女性をにらむ。
「お前を縛り上げれる実力を有している時点で、俺があの新聞記者に殺されると思っているのか?」
笑みを浮かべたのはほんの僅かの間。
ここからは、真剣に目の前の敵を倒すために行動を開始する。
「なるほど、確かにあれは侮れぬものだったが、どこまでも伸ばせるわけではなかろう?」
女性はそう言って炎をもう一度出してきた。
「お主の行動から、これならば有効と我はみたぞ」
それを見たディアボロは、再び構える。
「さあ、今度こそくらうがいい!」
女性はそう言ってもう一度炎を放ってきた。
それをディアボロは、背中の部分を構築している肉の部分を壁として目の前に構築して対応する。
そして、炎が迫ってこなくなったのを確認すると、肉壁をすぐに自身に戻す。
「ぬう……まさか容易く防がれるとは」
女性は不満そうにディアボロを見る。
「そしてその壁がお主にまとわりついたということは、お主には炎は効かないということか」
「Exactly。その通りだ」
ディアボロはそう言ってクレイジー・ダイヤモンドを出す。
「……だが、こちらが得意なのは接近戦だ。遠距離攻撃を得意とするお前とは少し相性が悪そうだな」
「しかし、お主は我の弾幕や炎では倒せん」
女性はどこからともなく弓と矢を取り出す。
「だが、これならばどうだ!」
自信満々な表情で女性はそう言いながら弓を引き絞る。
「(成程、イエローテンパランスを射抜くつもりか)」
その意図に気づいたディアボロは、先ほどと同様に背面に纏っているイエローテンパランスを再び肉壁として展開する。
そして視界を妨げることに成功すると、今度は手の部分を除いて全て肉壁の構成に回す。
「(早めに切り替えないといけないな……行けるかと思っていたが、予想以上に『負担が大きすぎる』)」
ディアボロはそう思いながら、自分から4枚ものDISCを取り出す。
……ところで、気づいた者はいるだろうか。
妖怪の山でカメラを取ってきた天狗に、ディアボロはヘブンズ・ドアーを使った。
だが、その時には彼はそれとは別に4枚のDISCを装備していたのだ。
ハーミット・パープル、クレイジー・ダイヤモンド、イエローテンパランス、ジャンピン・ジャック・フラッシュ、そしてヘブンズ・ドアー。
そう、あの時の彼は、全てを同時に使っていなかったとはいえ、なんと5体のスタンドを制御していたのだ。
スタンドは『精神力の具現体』。故に本来は群生型などの一部のスタンドを除いて一人一体である。
だがディアボロは、DISCを用いることで他人のスタンドを自分のものにしている。
他人のスタンドを制御するのは容易いことではなく、大抵の場合は他人のスタンドは制御できずに暴走させてしまう。
その事態に陥るのを防ぐ方法は一つ。
エンポリオ・アルニーニョがやってみせたように、『強い精神力を持って、暴れ馬をならすようにうまく制御しきること』である。
ディアボロはそうやって、今まで最大で4つのスタンドを制御してきた。
だが、その状態でありながらスタンドをより多く同時に制御しようというのなら、1枚追加した瞬間から彼の精神の負担が大幅に増加するのは避けられない。
それでもなお、一見すると何でもないように振る舞える時点で、彼の精神力は『異常』といってもいいのだ。
そしてその異常なまでの精神力は、今もなお経験や闘いによって成長を続けている。
住む場所が変わったからといって、彼の精神力が成長を止めるわけではないのだ。
イエローテンパランスを除く4つのスタンドのDISCを全て自身から抜き取ったディアボロは、すぐに3枚のDISCをケースから取り出す。
そこに肉壁を越えて矢が飛んできたが、ディアボロはそれをDISCで弾き落とす。
流石に5体ものスタンドの制御はこれ以上続けられないと判断したのだろう。
そして深く息を吐いて取り出した3枚のDISCをまとめて装備する。
弾いた音を聞いて届いたと判断されたらしく、次の矢が再び肉壁を超えて飛んできたが、それはスタープラチナによってキャッチされる。
その後すぐに時間を止めて、イエローテンパランスを再び自分に覆わせる。
現在、ディアボロが装備しているDISCはイエローテンパランス、スタープラチナ、ウェザー・リポート、エアロスミス。
炎と弾幕への耐性を持ち、近接戦も遠距離戦もこなせる組み合わせである。
女性との戦いにおいては、相性は悪くないだろう。
「何と!?」
目の前の肉壁が何の前兆もなく一瞬で消えたことに、女性は驚きを隠せなかった。
だが、今まで自分が体験したこともない現象にも怯むことなく、女性は再び弓を構えて引き絞る。
「…………」
ディアボロは動かず、何も語らない。
ただ、女性の動きを警戒しているだけである。
女性はそれを好機ととらえ、引き絞る力を強めて狙いを定める。
数秒の後、放たれた矢はディアボロ目掛けて一直線に飛んでいく。
だがその矢は、彼の右肩に命中する前にスタープラチナによって受け止められる。
リボルバーから放たれた銃弾を発射直後に指で挟んで受け止められるスタープラチナにとって、矢を受け止めることなど容易いことである。
「どうやら、完全に相性が悪くなったようだな」
ディアボロはそう言いながらスタープラチナに槍投げの要領で2本の矢を投げさせる。
「まだだ!」
女性は矢をたやすく受け止められ、投げ返されながらもそれを回避し、相性の悪さを宣告されながらも戦意は折れることはない。
「我が物部の秘術と道教の融合、その全てを我はまだ出し切ってはおらん!」
「それは俺だって同じだ。今までが俺の出せる全てだと思うな」
女性は今度は大きな皿を出し、ディアボロはエアロスミスを右腕に出し、その腕を女性に向ける。
片や妖怪に敵愾心を持ち、片や妖怪と一緒に生活をしている。
二人がお互いのことを詳しく知ったら、ディアボロは何とも思わないかもしれないが、この女性はどう思うのだろうか。
妖怪を庇う者として、彼を憎むだろうか。それとも、彼を助けようとして奮闘するだろうか。
……その答えは今は分からない。
今3人は、『入口』を通って神霊廟へと到達したばかりである。
一度写真で見ていたとはいえ、目の前に広がる光景には、ディアボロもマミゾウも射命丸も驚きを隠せなかった。
「新聞記者。どこから見て回る?それとも聖人を先に捜すか?」
ディアボロは射命丸を見ながら彼女に問いかける。
その質問を聞いた射命丸は少し考えて……
「先に聖人を探します。ついてきてください」
そう言って動き始めた。ディアボロとマミゾウもその後についていく。
「(迂闊に動いてひどい目にあわないといいが……)」
ディアボロはそう思っているが、射命丸は取材相手には礼儀正しいことは知っている。
……そう、『取材相手には』である。
白蓮に仕える者がいるように、聖人にも仕える者はいないとは限らない。
その者と射命丸の仲が嫌悪になって、聖人に取材ができなくなるのはディアボロとしても困る話だ。
だから、そのあたりはうまくディアボロとマミゾウでフォローしていかないといけない。
射命丸の後に続き、ディアボロとマミゾウも神霊廟の中に入る。
「初めて入る建物なのじゃ。はぐれてしまわぬよう気を付けなければならぬのう」
「ああ。この年で迷子になるのは勘弁だ」
そんな会話を二人でかわしながら、周囲を見渡す。
「誰も見当たらないが、『呼んでみる』か?」
ディアボロは二人に目配りしながら質問をする。
「勝手にうろついて怪しまれるよりはよいかもしれんのう」
「……そうですね。相手も取材をしに来たと分かれば警戒をしないはずです」
マミゾウと射命丸もその提案に賛成する。
「決まりだな」
ディアボロはそう言ってもう一度あたりを見回す。
「誰かいるか?」
ディアボロはとりあえず、誰かいるかどうか確認するために呼びかけてみる。
………
返事はない。
「どなたかいらっしゃいませんかー?」
射命丸はより大きな声で呼びかける。
………
「……誰か来るぞ」
返事は無かったが、誰かの気配がするのはディアボロには分かった。
「よくぞここにまいられた」
そう言って姿を見せたのは、古風な服をきて、大き目な帽子をかぶった灰色の髪の女性。
「…………」
だが、その直後に彼女は黙ってしまう。
「………?」
射命丸は疑問に思うが、ディアボロはあることに気づいた。
この女性は射命丸を睨んでいる。いや、『睨んでいるだけ』ならまだマシだった。
「(射命丸とこいつは初対面のはずだ。なのになぜ)」
女性が凄まじい量の矢の形をした弾幕を撃ってきて
「(『敵意』を抱いている……ッ!?)」
それに反応してディアボロは動きだした。
ディアボロが予想していた事態は、お互いに何もしていないなのに起きてしまった。
ディアボロは咄嗟に射命丸の前に立ち、弾幕を全てその身で受け止めながらも、なんとか踏ん張って耐えきる。
イエローテンパランスがなければ、ダメージをもろに受けていただろう。
「な……!?」
「!?」
女性はディアボロが射命丸を庇ったことに、射命丸はいきなり攻撃されたことに驚きを隠せなかった。
「新聞記者!早くこの場を離れろッ!何故かはわからないが、あいつはお前に敵意を抱いているッ!」
ディアボロはすぐに闘う構えを取りながら射命丸に警告する。
そしてすぐにマミゾウに目配りをし、
「護衛は任せたぞ」
マミゾウに射命丸の護衛を指示する。
「承知したぞい」
マミゾウはディアボロの言うことに従って、移動する射命丸を庇いつつその場を射命丸とともに離脱しようとする。
「させぬぞ!」
女性はそう言ってもう一度射命丸に狙いを定めるが、その時に移動する対象に集中していたのが失敗だった。
女性の視界から外れたのを理解したディアボロはすぐにイエローテンパランスを両手から引っ込めると、ハーミット・パープルを出して女性に絡みつかせる。
「なっ……!?」
絡みついたハーミット・パープルは、すぐに女性を縛り、締め付ける。
手首も足首も縛ったことで、物を投げつけるなんてことも女性にはできなくなった。
前兆の無かったその感触に女性は驚きの声を上げ、そちらに気を取られた隙に射命丸とマミゾウはその場から逃げることができた。
「いきなり何をする!?」
ディアボロはハーミット・パープルを緩めることなく、突然射命丸に攻撃してきたことについて女性に問いかける。
「お主の方こそ、何故妖怪をかばう!?」
女性の方は、先ほどのディアボロの行動が理解できないとばかりに彼に問い詰める。
「護衛をすることになったなら、目的の場所まで送り届けるまでその仕事をするのが常識だ」
ディアボロはそう言って女性を睨む。
「送り届けた後に護衛の対象がどうなろうがもう関係ないが、今はまだ仕事は終わっていないからな」
『元』とはいえギャングらしい考えだが、部下に自分の娘を護衛させておいて送り届けてもらったらすぐに殺そうとしたのはこの人です。
「あいつが目的の場所に辿り着けるまで、俺がお前の相手をしてやる」
ディアボロはそう言って、クレイジー・ダイヤモンドを出す。
弾幕はイエローテンパランスのおかげで全く効かず、何か道具をディアボロにぶつけようにも、精々造形が少し崩れるぐらいだ。
なんせこのスタンド、変装時にスタープラチナにぶんなぐられても中の人は平然としていられるほどの高い防御性能を持っている。
女性は自分が『何かに縛られている』のは目の前の男の仕業だと考え、先ほど射命丸に攻撃を仕掛けたときよりも多い量の弾幕を撃ってくる。
だがディアボロは焦ることなく、ハーミット・パープルの縛りを緩めずに耐え続ける。
「くっ……放さぬか!」
先ほどの大量の弾幕を軽傷で凌ぎきったことで、女性はなんと炎を出してきた。
「!!」
ディアボロにとっては予想外だが、女性からすれば、相手が物理攻撃に耐性を持っていて、かつ自身が拘束されていて動けないときには自身が使える最善の一手だろう。
「放さぬというのなら、これでもくらうがいい!」
女性はそう言って、炎をディアボロに向けて浴びせる。
流石にそれはマズい。イエローテンパランスのない両手は火傷を負うだろうし、イエローテンパランスがはじけ飛んでディアボロの制御から離れ、ハーミット・パープルにくっついてディアボロにダメージを与える事態になるのは避けたかった。
ディアボロはハーミット・パープルを解くと、その炎を回避しながらイエローテンパランスに両手を覆わせる。
自らを縛る『不可視の何か』が無くなったことを理解した女性は、すぐに浮遊する。
「(炎を使ってくるとは思わなかったが、こいつが俺に気を取られるようになったのは幸いだな……)」
幸い、イエローテンパランスと炎の相性は良い。
熱による火傷を防ぎ、時にはじけ飛ばして相手に傷を負わせることはできるからだ。
彼女がディアボロを敵として攻撃し続ける限り、かなりの時間は稼げるだろう。
「一つ聞きたいことがある。何故お前は突然新聞記者を攻撃してきた?」
誰の記憶にも乗っていなかったこの女性の情報を得るためには、直接この女性と対話するしかない。
そのため、ディアボロはこの女性との対話を試みる。
「お主の方こそ、何故あの天狗をかばった?お主は後であの天狗に襲われるなどとは思わぬのか?」
女性の方は、説明されても未だにディアボロの行動が理解できないようだ。
「……何を言っている」
ディアボロは皮肉を込めた笑みと鋭いままの眼光で女性をにらむ。
「お前を縛り上げれる実力を有している時点で、俺があの新聞記者に殺されると思っているのか?」
笑みを浮かべたのはほんの僅かの間。
ここからは、真剣に目の前の敵を倒すために行動を開始する。
「なるほど、確かにあれは侮れぬものだったが、どこまでも伸ばせるわけではなかろう?」
女性はそう言って炎をもう一度出してきた。
「お主の行動から、これならば有効と我はみたぞ」
それを見たディアボロは、再び構える。
「さあ、今度こそくらうがいい!」
女性はそう言ってもう一度炎を放ってきた。
それをディアボロは、背中の部分を構築している肉の部分を壁として目の前に構築して対応する。
そして、炎が迫ってこなくなったのを確認すると、肉壁をすぐに自身に戻す。
「ぬう……まさか容易く防がれるとは」
女性は不満そうにディアボロを見る。
「そしてその壁がお主にまとわりついたということは、お主には炎は効かないということか」
「Exactly。その通りだ」
ディアボロはそう言ってクレイジー・ダイヤモンドを出す。
「……だが、こちらが得意なのは接近戦だ。遠距離攻撃を得意とするお前とは少し相性が悪そうだな」
「しかし、お主は我の弾幕や炎では倒せん」
女性はどこからともなく弓と矢を取り出す。
「だが、これならばどうだ!」
自信満々な表情で女性はそう言いながら弓を引き絞る。
「(成程、イエローテンパランスを射抜くつもりか)」
その意図に気づいたディアボロは、先ほどと同様に背面に纏っているイエローテンパランスを再び肉壁として展開する。
そして視界を妨げることに成功すると、今度は手の部分を除いて全て肉壁の構成に回す。
「(早めに切り替えないといけないな……行けるかと思っていたが、予想以上に『負担が大きすぎる』)」
ディアボロはそう思いながら、自分から4枚ものDISCを取り出す。
……ところで、気づいた者はいるだろうか。
妖怪の山でカメラを取ってきた天狗に、ディアボロはヘブンズ・ドアーを使った。
だが、その時には彼はそれとは別に4枚のDISCを装備していたのだ。
ハーミット・パープル、クレイジー・ダイヤモンド、イエローテンパランス、ジャンピン・ジャック・フラッシュ、そしてヘブンズ・ドアー。
そう、あの時の彼は、全てを同時に使っていなかったとはいえ、なんと5体のスタンドを制御していたのだ。
スタンドは『精神力の具現体』。故に本来は群生型などの一部のスタンドを除いて一人一体である。
だがディアボロは、DISCを用いることで他人のスタンドを自分のものにしている。
他人のスタンドを制御するのは容易いことではなく、大抵の場合は他人のスタンドは制御できずに暴走させてしまう。
その事態に陥るのを防ぐ方法は一つ。
エンポリオ・アルニーニョがやってみせたように、『強い精神力を持って、暴れ馬をならすようにうまく制御しきること』である。
ディアボロはそうやって、今まで最大で4つのスタンドを制御してきた。
だが、その状態でありながらスタンドをより多く同時に制御しようというのなら、1枚追加した瞬間から彼の精神の負担が大幅に増加するのは避けられない。
それでもなお、一見すると何でもないように振る舞える時点で、彼の精神力は『異常』といってもいいのだ。
そしてその異常なまでの精神力は、今もなお経験や闘いによって成長を続けている。
住む場所が変わったからといって、彼の精神力が成長を止めるわけではないのだ。
イエローテンパランスを除く4つのスタンドのDISCを全て自身から抜き取ったディアボロは、すぐに3枚のDISCをケースから取り出す。
そこに肉壁を越えて矢が飛んできたが、ディアボロはそれをDISCで弾き落とす。
流石に5体ものスタンドの制御はこれ以上続けられないと判断したのだろう。
そして深く息を吐いて取り出した3枚のDISCをまとめて装備する。
弾いた音を聞いて届いたと判断されたらしく、次の矢が再び肉壁を超えて飛んできたが、それはスタープラチナによってキャッチされる。
その後すぐに時間を止めて、イエローテンパランスを再び自分に覆わせる。
現在、ディアボロが装備しているDISCはイエローテンパランス、スタープラチナ、ウェザー・リポート、エアロスミス。
炎と弾幕への耐性を持ち、近接戦も遠距離戦もこなせる組み合わせである。
女性との戦いにおいては、相性は悪くないだろう。
「何と!?」
目の前の肉壁が何の前兆もなく一瞬で消えたことに、女性は驚きを隠せなかった。
だが、今まで自分が体験したこともない現象にも怯むことなく、女性は再び弓を構えて引き絞る。
「…………」
ディアボロは動かず、何も語らない。
ただ、女性の動きを警戒しているだけである。
女性はそれを好機ととらえ、引き絞る力を強めて狙いを定める。
数秒の後、放たれた矢はディアボロ目掛けて一直線に飛んでいく。
だがその矢は、彼の右肩に命中する前にスタープラチナによって受け止められる。
リボルバーから放たれた銃弾を発射直後に指で挟んで受け止められるスタープラチナにとって、矢を受け止めることなど容易いことである。
「どうやら、完全に相性が悪くなったようだな」
ディアボロはそう言いながらスタープラチナに槍投げの要領で2本の矢を投げさせる。
「まだだ!」
女性は矢をたやすく受け止められ、投げ返されながらもそれを回避し、相性の悪さを宣告されながらも戦意は折れることはない。
「我が物部の秘術と道教の融合、その全てを我はまだ出し切ってはおらん!」
「それは俺だって同じだ。今までが俺の出せる全てだと思うな」
女性は今度は大きな皿を出し、ディアボロはエアロスミスを右腕に出し、その腕を女性に向ける。
片や妖怪に敵愾心を持ち、片や妖怪と一緒に生活をしている。
二人がお互いのことを詳しく知ったら、ディアボロは何とも思わないかもしれないが、この女性はどう思うのだろうか。
妖怪を庇う者として、彼を憎むだろうか。それとも、彼を助けようとして奮闘するだろうか。
……その答えは今は分からない。