まず、眼にしたのは荘厳なつくりのアーチ。
真っ赤な幕が下り、向こう側は分からない。
アーチのこちら側は客席がいくつも並び、アーチと客席の間には、いくつもの楽器が置かれた広いスペースがある。
真っ赤な幕が下り、向こう側は分からない。
アーチのこちら側は客席がいくつも並び、アーチと客席の間には、いくつもの楽器が置かれた広いスペースがある。
いくつもの明かりと非常に広いその空間は、いわゆる劇場だった。
「…………こういう、ステージ……?」
誰も居ないはずの楽器スペースから、突然音が漏れ始める。
「……!?」
まるでクラシックの序章のようなテンポで、ゆるやかに音楽が場を満たす。
それにつられるように、真っ赤な幕が上がり始めた。
「……これ……」
『落ち着いて……ただの演出みたいだから』
「……!?」
まるでクラシックの序章のようなテンポで、ゆるやかに音楽が場を満たす。
それにつられるように、真っ赤な幕が上がり始めた。
「……これ……」
『落ち着いて……ただの演出みたいだから』
幕が上がりきり、照明がステージを照らす。
「すごいね、こういう演出もあるんだ」
あの声だ。私と、柚子を泣かせた、あの声。
私が、もっとも憎悪する声。
私が、もっとも憎悪する声。
幕の向こう側には、まるで中世の王の間を模したような背景が広がっている。
「お誂え向きにBGMまであるし、楽しめそうだよ……キミ、ともどもね」
「…………黙れ、悪魔」
「悪魔がぼくのモチーフだもん。黙ってなんか、やらないよ?」
エアロ・チャクラムを稼動状態にする。
「もういい…………直接、黙らせてやる」
「…………黙れ、悪魔」
「悪魔がぼくのモチーフだもん。黙ってなんか、やらないよ?」
エアロ・チャクラムを稼動状態にする。
「もういい…………直接、黙らせてやる」
「いいよ、その眼……開幕といこうよ!Avenger(復讐者)!?」
腕を組んで挑発を続ける巨大な悪魔に、チャクラムの腕を大地に接地させ、先端のホイールをドライブ。
脚で地面を蹴り、そのまま地面から放したままホイールによる高速機動。
脚で地面を蹴り、そのまま地面から放したままホイールによる高速機動。
―――潰して、やる。
意外なことに、ヤツは両腕のホイールを器用に使い、ぼくに向かって来た。
近接戦?最初やったときはあんなにボコにされたのに?
疑問符を浮かべる反面、あれだけ酷くやられたのに、再び近接戦闘を挑んでくる、その自信というか意地というか、執念というか。
そういったものにゾクりときた。
「近接で殺れるなら殺ってごらん!?その腕で潰してみなよ!」
チーグルの二刀構え、ぼくもまたヤツに向かって駆け出す。
ごく最近にも聞いた、ブースターとホイール混じる独特の音。
「Let's start the Party!!(さぁ、パーティの始まりだ!!)」
音同士が段々と近づき、ぶつかった。
近接戦?最初やったときはあんなにボコにされたのに?
疑問符を浮かべる反面、あれだけ酷くやられたのに、再び近接戦闘を挑んでくる、その自信というか意地というか、執念というか。
そういったものにゾクりときた。
「近接で殺れるなら殺ってごらん!?その腕で潰してみなよ!」
チーグルの二刀構え、ぼくもまたヤツに向かって駆け出す。
ごく最近にも聞いた、ブースターとホイール混じる独特の音。
「Let's start the Party!!(さぁ、パーティの始まりだ!!)」
音同士が段々と近づき、ぶつかった。
まずは、ぼくによる二本の一撃。
刀身分のリーチを生かして一気に振り下ろす。
速度と自重をかけた一撃、当たれば装甲ごとオシマイだ。
けど、ヤツはチャクラムのホイールの角度を変え、この一撃をかわす。
そうそう、これで終わったんじゃ面白くない!
勢い付いた全身を、ブーツ付きサバーカで強引に減速。石と木の床と、周りに並ぶ客席を抉る。
ターンして側面から、再びぼくに迫るエメラルドブルーの復讐鬼。
チャクラムのネイルが展開している。打ち込んでくるな。
「いいさ、受けてやるよ」
『受けるなら斥力場で一瞬だけガード、ブースターでバックダッシュして体制を崩せ』
「さっすがマスター、わかってる」
刀身分のリーチを生かして一気に振り下ろす。
速度と自重をかけた一撃、当たれば装甲ごとオシマイだ。
けど、ヤツはチャクラムのホイールの角度を変え、この一撃をかわす。
そうそう、これで終わったんじゃ面白くない!
勢い付いた全身を、ブーツ付きサバーカで強引に減速。石と木の床と、周りに並ぶ客席を抉る。
ターンして側面から、再びぼくに迫るエメラルドブルーの復讐鬼。
チャクラムのネイルが展開している。打ち込んでくるな。
「いいさ、受けてやるよ」
『受けるなら斥力場で一瞬だけガード、ブースターでバックダッシュして体制を崩せ』
「さっすがマスター、わかってる」
障壁展開。チーグル二刀を目の前でクロスして防御体制に。
けど、ぼくとマスターはまだこの二人のこと舐めてたのかもしれない。
けど、ぼくとマスターはまだこの二人のこと舐めてたのかもしれない。
読みどおり、ヤツは飛び掛って、殴りつけてきた。
ホイールの回る拳をこちらに二本突き出して。
けど、その先端には見知った形状の大型ナイフ、グフロートゥが取り付けられていた。
さらに接触する瞬間、チャクラムの後方からロケットのような噴射音が轟く。
ホイールの回る拳をこちらに二本突き出して。
けど、その先端には見知った形状の大型ナイフ、グフロートゥが取り付けられていた。
さらに接触する瞬間、チャクラムの後方からロケットのような噴射音が轟く。
接触、インパクト。ジェネレーターに想像していたより強い負荷がかかる。
ウイングからアラストルのパックにかけて、激しい紫電が走った。
「嘘ッ!」
『まさか!』
アラストルからの警告、【過負荷につき推進剤誘爆の危険アリ】
ウイングからアラストルのパックにかけて、激しい紫電が走った。
「嘘ッ!」
『まさか!』
アラストルからの警告、【過負荷につき推進剤誘爆の危険アリ】
未だヤツは障壁と接触したまま。引き剥がさないと!
『強引でいいから横にダッシュ!離れた後はアラストルを切り離せッ!』
「くそぉッ!」
指示通り、かなり強引に側面方向へブースターを全開にしようとする。さらに負荷がかかり、ジェネレーターが焼け付きそう。
「…………逃がさない」
ヤツの本体側の右腕だけに取り付けられたチーグルがこちらに伸び、さらに障壁に接触。
左手で保持したシュラム・リボルビンググレネードがこちらを向いた。
マズイ!この距離で撃たれたら間違いなく負荷限界で誘爆する!
自らも、グレネードとこちらの爆発に巻き込まれるというのに、自分へのダメージを完全に無視したムチャな攻撃。
まさに、「潰す」という単語が当てはまるようなコンボ。
しかし、ぼくの中ではマズイという焦燥感と同時に、楽しいという恍惚感が全身を駆け巡っていた。
自分で自分が制御できなくなるような、何かの中毒にも似た感覚。
『フランッ!』
そして、グレネードの炸裂と同時に、背中側から強烈なGが襲い掛かった。
『強引でいいから横にダッシュ!離れた後はアラストルを切り離せッ!』
「くそぉッ!」
指示通り、かなり強引に側面方向へブースターを全開にしようとする。さらに負荷がかかり、ジェネレーターが焼け付きそう。
「…………逃がさない」
ヤツの本体側の右腕だけに取り付けられたチーグルがこちらに伸び、さらに障壁に接触。
左手で保持したシュラム・リボルビンググレネードがこちらを向いた。
マズイ!この距離で撃たれたら間違いなく負荷限界で誘爆する!
自らも、グレネードとこちらの爆発に巻き込まれるというのに、自分へのダメージを完全に無視したムチャな攻撃。
まさに、「潰す」という単語が当てはまるようなコンボ。
しかし、ぼくの中ではマズイという焦燥感と同時に、楽しいという恍惚感が全身を駆け巡っていた。
自分で自分が制御できなくなるような、何かの中毒にも似た感覚。
『フランッ!』
そして、グレネードの炸裂と同時に、背中側から強烈なGが襲い掛かった。
『……なんで、まだ、立っている…………』
『……なんでって?……それは、ねぇ……』
私はいささか、目の前の光景が信じられない。
確かに望んでいたことではあったが、これはいったいどんな奇跡だというのか。
アラストルの誘爆とグレネードで終わった、と思ったのに。
『それはねぇ……ふふ、ふふふふふふ……』
アイツ、ブースターの角度変えた上に、爆発の前にアラストルを自ら切り離して、爆風で無理矢理前に飛びやがった!
『は、は、ははははははははははははッ!』
半狂乱気味に笑い転げるフラン。
現状から言えば、飛び道具が使えない上に、防御能力が激減したフランが不利になってしまったというのに。
おまけに、ああやって笑っていても、背中側には爆風による若干のダメージがきてる。
だというのに私自身も、予想だにしていなかった展開に若干興奮気味。
楽しませてくれるようになったじゃないか、あの二人。
『キミとの戦いが楽しくなってきたからだよ!あんなんで負けたらつまんない!』
『ッ……舐め、るな、悪魔…………ッ」
憎悪と殺意のまなざしでフランをにらみつける、ルリカラクサとかいう神姫。
『……なんでって?……それは、ねぇ……』
私はいささか、目の前の光景が信じられない。
確かに望んでいたことではあったが、これはいったいどんな奇跡だというのか。
アラストルの誘爆とグレネードで終わった、と思ったのに。
『それはねぇ……ふふ、ふふふふふふ……』
アイツ、ブースターの角度変えた上に、爆発の前にアラストルを自ら切り離して、爆風で無理矢理前に飛びやがった!
『は、は、ははははははははははははッ!』
半狂乱気味に笑い転げるフラン。
現状から言えば、飛び道具が使えない上に、防御能力が激減したフランが不利になってしまったというのに。
おまけに、ああやって笑っていても、背中側には爆風による若干のダメージがきてる。
だというのに私自身も、予想だにしていなかった展開に若干興奮気味。
楽しませてくれるようになったじゃないか、あの二人。
『キミとの戦いが楽しくなってきたからだよ!あんなんで負けたらつまんない!』
『ッ……舐め、るな、悪魔…………ッ」
憎悪と殺意のまなざしでフランをにらみつける、ルリカラクサとかいう神姫。
―――私とフランも、初めて打ち負かされた「あの男」に出会ったらこんな顔するのかな。
打ち負かしただけじゃない、あの男は私とフランを……。
打ち負かしただけじゃない、あの男は私とフランを……。
―――やめよう、今はこの勝負。
『来いよ!復讐の悪魔狩人(デビルハンター)!もっともっともっと、ぼくを楽しませてよ!燃えさせてよォッ!」
『ふざける、なぁ……ッ!』
『ふざける、なぁ……ッ!』
相変わらず、火のついたフランは挑発に次ぐ挑発。
ムラクモのときと同じ、きっと早く続きをやりたくてたまんないんだろう。
「アツくなってるところ悪いけど、武器は降魔と銘なしのセットでいい?」
『どうして?ぼく、アレで斬りたいのに。ムラクモの時だって』
「あの時は向こうも相応に装備捨てたからね。今回はまだ、相手は五体満足だ。とっておきは最後まで」
『でも、とっておいて結局使わなかったら?』
「途中でそうなりそうだったら、自分で判断して使えばいい。それくらいはなんとかできるだろう?」
『しょうがないなぁ……オーケイ、マスター』
左右のラックから二本の刀を抜き放つ。
右はリボルバー機構の付いた刀。
左はごく普通の打刀。
すこしだけ異様な二刀流。
「グレネードあたりを降魔で斬ると、面白いかもよ?」
『かもねぇ、誘爆で同じ目にあわせてやるのもいいなぁ、ふふ……』
フランはその二刀を十字に構える。
ムラクモのときと同じ、きっと早く続きをやりたくてたまんないんだろう。
「アツくなってるところ悪いけど、武器は降魔と銘なしのセットでいい?」
『どうして?ぼく、アレで斬りたいのに。ムラクモの時だって』
「あの時は向こうも相応に装備捨てたからね。今回はまだ、相手は五体満足だ。とっておきは最後まで」
『でも、とっておいて結局使わなかったら?』
「途中でそうなりそうだったら、自分で判断して使えばいい。それくらいはなんとかできるだろう?」
『しょうがないなぁ……オーケイ、マスター』
左右のラックから二本の刀を抜き放つ。
右はリボルバー機構の付いた刀。
左はごく普通の打刀。
すこしだけ異様な二刀流。
「グレネードあたりを降魔で斬ると、面白いかもよ?」
『かもねぇ、誘爆で同じ目にあわせてやるのもいいなぁ、ふふ……』
フランはその二刀を十字に構える。
『Com'n winp!(来なよ!ノロマ!)』
コンソールに表示されるステータス。注目すべきはバッテリー残量。
そして、あの二人が最終的に狙ってくるのは……。
ヒートアップするフランとは対照的に、私の心には、微妙な焦りが出始めていた。
ヒートアップするフランとは対照的に、私の心には、微妙な焦りが出始めていた。
なんなんだアイツは。自慢のバックパックを破壊されたというのに、あの狂った笑い。
自分が不利になっているというのに、「面白い」だなんて。
自分が不利になっているというのに、「面白い」だなんて。
―――馬鹿にして!
「ルリ!潰せ!余裕そうにみえるけど、こっちが有利なことに変わりないんだから!」
『…………今度こそ、潰す……ッ』
『…………今度こそ、潰す……ッ』
『Com'n winp!』
左右非対称の刀を両手に構え、十字にしている。
また接近戦狙い?なんで銃を使わない!
「距離をとるようにして、遠距離から攻撃!ガトリングとシュラムで押し込め!」
『……了解』
指示通りに、チャクラムホイールで現在の場所から移動を開始する。
『逃げるの?潰すって言ったクセにぃ』
左右非対称の刀を両手に構え、十字にしている。
また接近戦狙い?なんで銃を使わない!
「距離をとるようにして、遠距離から攻撃!ガトリングとシュラムで押し込め!」
『……了解』
指示通りに、チャクラムホイールで現在の場所から移動を開始する。
『逃げるの?潰すって言ったクセにぃ』
「挑発に乗らないで、こちらのペースで攻めるの」
『わかってるよ…………柚子』
後方に走行しながら、グレネードとガトリングによる掃射を始めるルリ。
向こうはサバーカでステップして、ソレを回避していくけど。
『ダンスは得意なんだよ?Shall we dance?(踊らない?)』
『…………』
また挑発。どこまでも憎らしい悪魔。
「斥力場にハイパワーブースター、チーグル、さらにあれだけ逃げ回ってるんだ。よほど大きい外付けのバッテリーでもなきゃ、そろそろ危ないはずだよ」
『…………動きが鈍る、頃合いを見て?』
「そう―――そしたら、ルリのしたいように、できる」
『…………うん』
『わかってるよ…………柚子』
後方に走行しながら、グレネードとガトリングによる掃射を始めるルリ。
向こうはサバーカでステップして、ソレを回避していくけど。
『ダンスは得意なんだよ?Shall we dance?(踊らない?)』
『…………』
また挑発。どこまでも憎らしい悪魔。
「斥力場にハイパワーブースター、チーグル、さらにあれだけ逃げ回ってるんだ。よほど大きい外付けのバッテリーでもなきゃ、そろそろ危ないはずだよ」
『…………動きが鈍る、頃合いを見て?』
「そう―――そしたら、ルリのしたいように、できる」
『…………うん』
コイツにやりたいようにやられてから、ルリは神姫に対して物凄い恐怖感を感じるようになってしまった。
街中で一目、別の神姫を見かけるだけでも極端に恐がる。
私自身、ストラーフを見ること自体、苦痛になってしまったところがあった。
今では私もルリも、そこまでひどくはないけれど。
特に相沢くんのムラクモちゃんは、ルリも心を開いてくれるみたい。
相沢くんと一緒に居るときは、不思議だけど、なんだかとても楽になれた。
なぜかは判らないけど、私とルリはあの二人に救われてる気がする。
街中で一目、別の神姫を見かけるだけでも極端に恐がる。
私自身、ストラーフを見ること自体、苦痛になってしまったところがあった。
今では私もルリも、そこまでひどくはないけれど。
特に相沢くんのムラクモちゃんは、ルリも心を開いてくれるみたい。
相沢くんと一緒に居るときは、不思議だけど、なんだかとても楽になれた。
なぜかは判らないけど、私とルリはあの二人に救われてる気がする。
そう、治りつつあったんだ。私と瑠璃唐草の心の傷。
―――なのに、いまさらになってアイツらは私の前に再び出てきた。
あのときの恐怖がよみがえる。あのときの怒りがよみがえる。
あのときの恐怖がよみがえる。あのときの怒りがよみがえる。
バッテリー切れで判定負けなんかにさせない。
もう二度と、私の前に現れないようにしなきゃいけない。
二度と!