英語で言うならアサイラント
「いや~すごかったねー。まさかあのときああするとは思わなかった! ああもうホント、ドキドキしっぱなしだったよ!」
日が暮れて、私と華凛は帰り道を歩いていた。
「どう? 神姫に興味わいた?」
「……わかない」
「……わかない」
強がってみせた。ここで興味が出てきたと言ったら、ものすごい敗北感を味わうことになるだろう。
「ふ~ん、そっか~……」
華凛がニヤニヤしながらこっちを覗きこんでくる。なにが言いたいのだ。
「顔赤いよ?」
「っ……夕日のせい」
「ふ~ん、そう……」
「っ……夕日のせい」
「ふ~ん、そう……」
そう言って、サッと引き下がる華凛。多分、華凛はこれ以上追求してこない。でもその代わり……
「あ、そうそう。あたしの親戚にホビーショップ経営してる人がいるんだよ」
こういうことは言ってくるのだ。
「……初耳」
「そりゃそうよ。1週間くらい前にお店出したんだもん。いやぁ、中々客入りが悪いってぼやいてたよ」
「……そう」
「そりゃそうよ。1週間くらい前にお店出したんだもん。いやぁ、中々客入りが悪いってぼやいてたよ」
「……そう」
行かない、決して、二人では。
「ねぇ、ちょっと公園寄ってかない?」
「……また唐突」
「いいじゃん、ちょっとだけ、ね?」
「……また唐突」
「いいじゃん、ちょっとだけ、ね?」
別にやぶさかではなかった。この時間帯なら、まだ両親は帰って来ない。家にいても暇だ。
「別にいいけど」
「オッケー、じゃ、寄り道寄り道~♪」
「オッケー、じゃ、寄り道寄り道~♪」
公園は、時間のせいで人はいなかった。夕日によって赤く染められた遊具が、すこし憂い帯て見えるのは気のせいだろうか?
「ブランコか~、懐かしいなぁ~」
華凛はブランコに乗りながら言う。確かに、小学生くらいの時は乗った気がする。
「樹羽は乗らないの?」
「私はいい」
「私はいい」
短パンの華凛と違って、私はワンピースなのだ。その……落ち着かない。
「だれもいないって。それに、気を付けてこげば大丈夫でしょ?」
ブランコに乗るのに、いちいち気を付けなければならないのか。難儀だ、いろいろと。
華凛はブランコを止める。そして、少し真面目な顔になった。
華凛はブランコを止める。そして、少し真面目な顔になった。
「樹羽、ホントに神姫に興味わいてこなかったの? なにか感じなかった?」
私は答えに詰まった。さっきは強がったが、興味があるのは事実だ。どうする、本当のことを言うか?
「やっぱり興味あるんでしょ。わかりやすい子ね」
言う必要もなかった。
「……バレた」
「やっぱりね~、そうじゃないかと思ってたわ」
「……カマかけ?」
「決定打がなかったからね。最後の確認」
「やっぱりね~、そうじゃないかと思ってたわ」
「……カマかけ?」
「決定打がなかったからね。最後の確認」
ブランコから降りて、華凛は私に近付く。そして、おもいっきり抱きついてきた。身長差的に、覆い被さられる形になる。
「もう、素直じゃないんだから~♪ あぁ、でもそういうところも可愛いっ! あとちっこくって可愛いっ!」
「……暑い」
「……暑い」
それにちっこいは余計だ。
「だ~め、素直に言わなかった罰よ~♪ もう少しおとなしくしてなさい♪」
どうやら、おとなしくしている他ないようだ。こうなった華凛は、もう止められない。ただ黙って過ぎ去るのを待つしかないのだ。
「樹羽ってば可愛いな~♪」
「……舐めないで」
「……舐めないで」
「ふぃ~、満足♪」
ベンチにどっかりと座りながら、華凛は言った。華凛が止まったのは、すっかり日も落ちて、街灯が路面を照らす時間になってからだ。
「華凛、そろそろ帰らないと、お母さんが心配するよ?」
私はハンカチで顔を拭きながら尋ねる。
「ん、そだね。帰ろっか!」
華凛がベンチから立ち上がる。
その時、華凛の後方の茂みの中で、何かが光った。
第6感が告げる。あれは、危険だと――。
第6感が告げる。あれは、危険だと――。
「華凛っ!」
走りだし、押し倒す。瞬間、華凛がいた場所を何かが高速で通り抜けていった。その何かは、公園の遊具に当たってかん高い音を立てる。
「立って華凛!」
「な、なに今の!?」
「わからない。でも、今のは……」
「な、なに今の!?」
「わからない。でも、今のは……」
あの音から当たったのは堅いものだとわかる。あの早さから石とは考えにくい。まさか、銃弾? そんな訳ない……しかし、あり得ない話じゃない。でも、なんだ、この言いようのない違和感は。
その時、空を切る音が僅かに聞こえた。
その時、空を切る音が僅かに聞こえた。
「痛っ」
肩に鋭い痛みが走る。当たったのだろう。触って確かめる。血は……でていない。
「樹羽っ!?」
「当たったみたい。大丈夫、外傷はない」
「当たったみたい。大丈夫、外傷はない」
それよりも、探すものがある。それはすぐに見つかった。
「あ……」
手に取り、確認する。思った通りだ。
大きさ5mm程度の鉛玉だ。多分、もう少し勢いがあったら肉を貫いただろう。こんな鉛玉を高速で撃ち出すことが出来るのは……。
大きさ5mm程度の鉛玉だ。多分、もう少し勢いがあったら肉を貫いただろう。こんな鉛玉を高速で撃ち出すことが出来るのは……。
「あっ!」
華凛が驚きの声をあげる。茂みから現れたそれは、ゆっくりと銃口をこちらに向けた。
「神……姫?」
そう、彼女達しかいない。
「だよね、普通じゃなさそうだけど」
ゲームセンターでも見たが、あの鳥の羽に酷似したリアパーツは多分エウクランテ型のそれだろう。
神姫は人のようだと、喜怒哀楽を見せる神姫を見て思った。
しかし、こちらに銃口を向けているそれは、ただの人形と変わらない気がした。
神姫は人のようだと、喜怒哀楽を見せる神姫を見て思った。
しかし、こちらに銃口を向けているそれは、ただの人形と変わらない気がした。
「ど、どうするの?」
「とにかく、相手の出方を見るしかない」
「とにかく、相手の出方を見るしかない」
神姫は、その虚ろな瞳でこちらを見据えている。銃口は下ろしていない。安心は出来ない。いつまでも続くかと思われた睨み合いは、神姫が破った。
突如、銃口は下ろされ、耳障りなエラー音が鳴る。その後、機械的な声が響いた。
突如、銃口は下ろされ、耳障りなエラー音が鳴る。その後、機械的な声が響いた。
『エネルギー不足、強制スリープモードへ移行します』
そのとき、気付いた。
あの子、泣いてる?
瞳から流れるそれは、涙に見えた。
そうして、神姫は仰向けに倒れて動かなくなった。
あの子、泣いてる?
瞳から流れるそれは、涙に見えた。
そうして、神姫は仰向けに倒れて動かなくなった。