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  • ぶそしき! これから!? 第4話 『シッパイ』4-3

武装神姫SSまとめ@wiki

ぶそしき! これから!? 第4話 『シッパイ』4-3

最終更新:2014年08月03日 21:58

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ぶそしき! これから!? 4話 『シッパイ』

4-4


 バトルが始まり、高級そうな内装の空間が展開される。
 天上には巨大なシャンデリアが輝いている。 
 大きなテーブルに白くきれいなテーブルクロス、その上には華美な食器類に花に燭台が飾られ、周りには様々な絵や壺に石像が配置されている。
 そんな今にも晩餐会が始まりそうな華やかな舞台に、互いの神姫達がデジタルな身体を与えられて出現する。

「バトル開始だ!」

 ヒイロがハンドアクスを構える。
 その背にはヒモでマシンガン(鈍器)やバズーカをくくっている。

「どうぞ、遠慮なく――」

 ヒイロの姿を見とめたラミエが微笑を浮かべたまま、一瞬固まる。

『これは、ある意味予想外ですね……』

 占部が思わず呟く。
 もし友大が実際に彼女の顔を見ることができたなら、なにか難しい悩ましいできごとに直面したような困った様相を見ることができただろう。

「……手加減は無用、そう言ったはずですわ」

 心なしか、ラミエの笑顔が引きつっているように見える。

『デフォルト装備に、+αぐらいかと予想していましたが……』

 相手のあまりに予想外な惨状に、占部がつい胸中のぼやきをもらしてしまう。
 まさかバトルを挑んできた相手が防具なし、武器はなにかプラモから剥ぎ取ったと思しき物のみで出るとは思ってもいなかったので、対応にどうしたものか困ってしまう。

「気にすんな! オレこれだけしか武装持ってないからよ!」

 なぜか胸を張り、あっけらかんとのたまう。
 別にやけくそになっているわけではない。

『設定ミス……ではないんですね?』

『ごめんなさい。別にふざけていたりなめていたりしているんじゃないんです。ヒイロの言うとおり、あれだけしか武装がないのは事実です。ろくに武装をあげられない僕が悪いんです。ごめんなさい』

 相手の問いに友大は謝りたおす。
 占部自身は責めるつもりはなくただ確認しただけなのだが、友大は糾弾されいるかのように感じてしまう。
 むしょうに胸中が申し訳なさでいっぱいになる。

『……そう、ですか』

 友大の耳に届いた呟きは、こころなしか同情のようなものの響きがある。

「お姉様、どうしましょうか?」

「……」

 困ったラミエが自身のマスターに指示を求める。
 なにか、そのまま殴り倒すのは気が引けてしまうというか、弱いものいじめをするようなもんにょりとした気分になってしまう。

『速やかに、バトルを開始しましょう。しっかり相手をしてあげて』

「承知しましたわ、お姉様」

 マスターからの指示を受け、ラミエがヒイロを真っ直ぐ見据え、手に持った武器を構える。

「やる気になったな。いくぜ!」

 相手の戦意を見たヒイロが駆ける。
 ハンドアクスを大きく振りかぶる。

「くら――」

「残念――」

 短く、呟く。
 ラミエの持つ武器の先端が展開する。
 瞬時に大きな光刃が形成されて、それが流れるような動きでハンドアクスを叩きつけようとするヒイロの身体に叩き込まれる。

「――がぁっ!?」

 光刃になぎ払われ、大きなショックを受けたヒイロの体が崩れ落ちる。
 思わず左手を床に伸ばし、崩れ落ちそうになる身体を支えようとする。

「――失礼しますわ」

 武器を振り勢いのままくるりと回転したラミエが、振り向きざまに今度はその大きな光刃で叩き落とす。

「ぐぅあ!」

 ラミエの下した一撃が、ヒイロの背負っていたマシンガンやバズーカを破壊し、その身体を地面に這いつくばらせる。

「……」

 ラミエの手に持った武器から光刃が消え、展開していたパーツが閉じて元の形状に戻る。
 後には何事もなかったかのように宮殿の広間に立つラミエと、床に這いつくばるヒイロの姿が残る。

『つ、つよい……』

 鮮やかとも言える手並みで下したラミエの姿に、友大は思わずうめく。

『まあ、それなりに、ですね』

 占部が苦笑しながら、その声に答える。

『ラミエ。それはもしかして噂に聞くレイディアントBS(バスタードソード)ですか? 本物だとしたら結構な掘り出し物ですけど』

『レイディアントBS?』

 ふと気になる言葉を聞く。
 初めてのバトルでヒイロが試着していた装備一式が、そんなような名前だったことを友大は思い出す。

『レイディアントと名の付く武装は知っていますか? 
 アーマーは光学系の武器に対して強力な耐性があり、ウェポンは光学兵装といったものです。特にウェポンで展開式のものは、見た目が良くて人気があります。
 そんなレイディアントシリーズに、実は大剣タイプもあるという噂があります。販売元のカタログには存在しませんけど』

『へぇ……』

 感心する。
 思い返してみると、ラミエが使ったレイディアントBSらしきものの展開、光刃発生のギミックに友大は心動かされるものを感じる。

「よろしいですか、お姉様? 
 これはレイディアントBS・FA――ご丁寧に名前に偽造品なんて付いていますわ」

『そうですか。やはり都市伝説的なものでしたか』

 自身の神姫の進言に特別落胆する様子もない。
 ユーザーの中には噂を聞いて、再現しようと作ってみる者もいる。
 ラミエが今試着して使っている武装も、その類だろうと納得する。

「でも、これはなかなか良いものですわ。偽造品だとしても掘り出し物ですわ」

 そう言いラミエが微笑む。
 まるでお気に入りの花を手折って持った乙女のように華やいだ様子だ。

「おい――」

 そんなラミエに声がかけられる。
 声はマスター達ではない。

「バトルの相手を放っておいて、おしゃべりはないんじゃねーか?」

 ヒイロが身体を起こし、立ち上がろうとする。

『ヒイロ! 大丈夫なの?』

「ああ、一休みして良くなった」

 マスターの言葉に強がる。
 動きは少し緩慢になっており、受けたダメージの大きさをうかがわせる。

「まだ、やりますの?」

「あったりまえだろ?」

 すました表情のラミエに、ヒイロは当然のごとく答える。
 手を床につき、ひざを立てる。

「あなたとわたくしとの差が分からないほど、愚かではないでしょう? サレンダーをお勧めしますわ」

「ははは、いいじゃん。強いのと戦うのは、オレ好きだぜっ、と!」

 気合とともにヒイロが飛びかかる。

「呆れましたわ」

 ため息をつく。
 少しだけ身を逸らし、容易くヒイロのハンドアクスを避ける。

「くそっ!」

「……」

 ヒイロはハンドアクスを振り回すが、それもラミエは少し身を引いて回避する。
 ヒイロがラミエに斧を叩きつけようとするが、いずれも容易く回避される。

「……ふぅ」

 ため息。
 ヒイロの攻撃はラミエに当たるどころか、そのドレスの裾に掠らせることさえできない。
 せいぜい回りの調度品やテーブルに傷をつける程度だ。

『ぜんぜん当たらない。何で――』

 全く攻撃が当たる素振りがない様子に、友大は思わず呟く。

『君の神姫、ヒイロといいましたか。当然ですよ。始めから受ける気でもなければ、あんな大振りで単純な攻撃に当たる子なんてそうはいません』

『え?』

 至極当然という様子で指摘する占部の言葉に驚いてしまう。

『今回が初めてのバトルというわけでもなければ、憶えはないですか?』

『そ、そういえば――』

 今までのバトルを思い起こす。
 ミッションのNPC神姫にはごり押しで勝った。
 初めての対戦相手のクラハには、レーヴァテインが折れ飛んで偶然当たった隙を突いて殴りつけた以外には、全て易々と捌かれるか回避されている。
 初めて勝利した対戦相手のチャオも、そのマスターの成行から回避に専念するよう指示を受けてからヒイロは途端に当てることができなくなった。
 今日神姫センターで対戦したゼルノグラードには、そもそも攻撃するチャンスすら得ることができなかった。

『心当たりはあるようですね。
 攻撃する際の動作を小さくする訓練をするか、攻撃を当てるための工夫をすることをお勧めします。
 ラミエ、そろそろ終わらせなさい』

「はい、お姉様」

 ラミエの持つレイディアントBS・FAが展開し、光刃を形成する。

「ぐぅ!」

 光刃は一瞬翻り、ヒイロのハンドアクスをその手から叩き落す。

「強くなったら、またお相手をしてあげますわ」

 静かに告げると同時に切り返し、その光刃をヒイロに向かって叩きつける。

『ヒイロ!』

「くっ、ぅおオーー!!」

 自身のマスターの叫びに応えるように動く。
 相手にぶつかる勢いで踏み込む。

「――なっ!」

 自身から攻撃にぶつかりにいくような行動にラミエは驚く。
 光刃がヒイロの左の肩口に突き刺さる。

「っ!」

 それでも足を止めずにヒイロはさらに前進する。
 レイディアントBS・FAの実体のある光刃の根元の部分にヒイロの左肩が当たる。
 光刃が身体に食い込む動きが止まる。

「くらえぇーー!!」

 ヒイロが無事な右腕を振りかぶる。
 驚きで一瞬硬直したラミエの身体に、ヒイロの豪腕が叩き込まれる。

「――っ!」

(捨て身で! 仕方ありませんわね。一撃、食らってあげますわ)

 瞬時に、一撃食らって反撃で沈めることを決意する。
 攻撃に備え、自身の武装である白百合のケープのエフェクトを使用する。
 ラミエが身に着けている白百合の意匠が施されたケープにはデータチップが付けられており、バトル上では微弱なバリアでダメージを軽減することができる。

「がっ、はぁ!?」

 ヒイロの豪腕がガードのために構えられたラミエの左腕を容易く弾き、そのみぞおちに叩き込まれる。
 想像以上の打撃と衝撃にラミエははしたなく声をあげる。
 しかしダメージは大きいが、その意識を刈り取るほどではない。

『ラミエ!』

 自身のマスターの声が少し遠く感じる。
 ラミエの体が吹き飛ばされ、ようとして引き戻される。

「へへ、悪いなぁ……」

「――っ」

 見やれば、ヒイロの右手がラミエのドレスの胸下の部分を握り締めている。

「先に謝っとくぜ。片手だけだと、こんな手荒い手段しかねぇ」

 ヒイロの左腕は、力なく垂れ下がっている。
 先ほどの無茶の結果、ダメージの大きさに左腕が動かなくなっている。
 武器も、全部ない。

「なにを――」

「オオオラァーーっ!!」

 ラミエの疑問に行動をもって応える。
 ヒイロの右腕がラミエの体を浮かせ、引っ張る。
 先が焼けた赤いマフラーが翻る。

「かはぁ!?」

 ラミエの体が壁に叩きつけられる。
 ちょうどそこにあった絵画が、その衝撃を受けて割れ落ちる。

「ッラァ!!」

「こふぅ!!」

 ヒイロの気合とともにラミエの体が振り回され、今度は大きなテーブルを砕きながら床に叩きつけられる。
 テーブルに設置された食器類や調度品が吹き飛び、砕けていく。

『引き剥がしなさい!』

「こ、この――」

 自身のマスターの声を聞いて何とか引き剥がそうとするが、ビクともしない。
 まるでストラーフのリアアームに掴まれたと錯覚するほどだ。

「オラァ!!」

「――っはぁ!!」

 再びラミエの体が叩きつけられる。
 赤いマフラーが翻り、ラミエの体が叩きつけられるたびに巨大なシャンデリアが震え、調度品が破壊されていく。
 今にも晩餐会が始まりそうだった華麗な舞台が、またたくまに破壊されていき、ただの廃墟と化していく。

『ひ、ヒイロ――』

 ヒイロの暴れぶりを見て、友大は思わずヒイロの行動を止めたくなる。
 そこまでしなくてもいいじゃないかという言葉が出そうになる。

「――ォラァ!!」

 赤いマフラーを翻して叩きつける。
 ヒイロの顔は必死だ。
 武装がない。
 その身に受けたダメージは大きい。
 あと一撃でも受ければ、立ち上がることはできない。
 バトルにおける相手との実力差は、大きな開きがある。
 左腕はもう動かない。
 残った右腕で相手を壁や床に叩きつける以外の、確実にダメージを与えられる攻撃方法はない。
 今、手放せば、もう勝機はない。

『……っ。がんばれ!』

 ろくに武装を与えられず、代わりの戦術を指示することもできないマスターは、自身の神姫を応援することしかできない。


『――形勢逆転ですか。侮りすぎましたね』

 もう1人のマスターは状況を見定める。
 自身の神姫が傷ついていく姿を見るのが辛くないわけではないが、状況を打開するために思考を冷静に保ち、対処法を考える。
 白百合のケープの効果で多少のダメージを軽減しているが、それも今の状況が続けばラミエに限界が訪れるのも遠くはない。

『引き剥がすのは無理。となれば――』

 武装の状態を確認する。
 ラミエがまだ武器を手放していないことも把握する。
 無茶苦茶に振り回されている状態では、相手に振るうことは難しいかもしれない。
 しかし――

『――』

 速やかに、冷徹に指示を出す。

「お、お姉様。それは……っかふ!!」

 自身のマスターの指示に、ラミエが一瞬ためらいを見せる。
 その一瞬のためらいの間に再び壁に叩きつけられる。

『やりなさい』

 短く、それでいて有無を言わせない圧力でもって命令する。
 ラミエの限界は、もう近い。

「は、はい」

 ラミエは覚悟を決める。
 体が浮く。
 振り回され続けて方向感覚や平衡感覚が麻痺し始めているが、力を振り絞って行動に移す。
 かろうじて持っている武器を握る手に力を入れる。

「オ――」

 ヒイロが振り回し、叩きつけようとする。

 その瞬間、ラミエが武器の柄頭を自身の胸元に突きつける。

「くぅ――」

 柄頭から光刃が発生する。

「オ、オオおおお!?」

 ヒイロが大きく体勢を崩す。
 倒れこみそうになり、思わずひざと右手をつく。
 その右手に、ラミエの姿はない。

「ぅぅ……ぁ、はっ」

 放り投げられた形のラミエは受身をとって、残骸が散らばる床を転がっていく。
 開放され、立ち上がろうとするが、何度も振り回されて混乱した方向感覚や平衡感覚がすぐには戻らないのか、上手くいかない。

『どうして!? ――あ……』

 友大は思わず叫び、2姫の状況を見て気づく。
 ヒイロの手には白い布切れが握られている。
 ラミエの胴体部分のドレスが大きく裂けて千切れている。
 ケープによってその慎ましやかな胸部は隠れているが、その腹部は裂け目から見える。

『自分の武器で、ドレスを……』

『そうです。ラミエには悪いですが、ああする方法しか思いつきませんでした』

 ため息をつきながら占部がぼやく。
 マスターとして、女性として、酷いことを命令したという気持ちが少なからずある。
 特にイーダ型のマスターとして、彼女達のコンプレックスを把握しており、それをさらけ出させるような命令をしたことに罪悪感すら感じないでもない。

「くっ、そぉ……っ!」

 ヒイロは力を振り絞って立ち上がり、駆け出す。
 その右手からドレスだった布切れが落ちる。

「……っ!」

 ラミエがヒイロの動きに気づき、無理やり立ち上がろうとするが、上手くいかない。
 しりもちをついて倒れてしまう。

(互いに飛び道具はなく、相手は瓦礫を投げつけるなど考える様子はなし。互いに接近戦か格闘戦で先に一撃を入れた方が勝ち。しかし、ラミエはまともに立つこともできない、ですか)

 占部が状況を整理する。
 勝てる手段、指示を思案する。

「これでぇ――」

 ヒイロが真っ直ぐに飛びかかる。
 腕を大きく振りかぶる。

『ヒイロ!』

 友大が思わず叫ぶ。
 ヒイロが腕を振り下ろそうとする。

『――! 正面上40度、武器起動!』

「っ!」

 名前を呼ぶのももどかしいといった自身のマスターの指示に、ラミエはとっさに反応する。
 レイディアントBS・FAが展開する。

「っ」

 ヒイロの手が、ラミエに触れる。
 光刃が――

『ヒイロ!』

 弾けるような音と、弾けるように離れるラミエとヒイロの姿を友大は見る。
 赤いマフラーと、白いドレスのスカートが翻る。

『……ラミエ』

 自身の神姫の姿を確認した占部が自身の神姫の名前を呟く。
 こころなしか、声に沈痛の響きがある。

「っぐ……ぅ、ぁ」

 ヒイロがテーブルや食器類などの残骸を散らしながら仰向けに倒れる。
 赤いマフラーの先が床の上に落ち、右手が力なく落ちるように床を叩く。
 手に続き、白い布がヒイロの上に落ちて被さり、その上半身を覆う。

『ヒイ、ロ……?』

 それは死者に被せる白い布のような、不吉なもののようにも見える。

「……ぅぅ」

 倒れた神姫からうめき声があがる。

「お姉、様」

 ラミエが気づき、その身を起こそうとする。

「勝負は、いっ、たい……?」

『もうすぐ判定が下ります。それと――』

 そこで言葉を区切る。
 少し間をおき、占部は自身の神姫に告げる。

『ごめんなさいね。その、色々と……』

 一言謝罪し、あとは言葉を濁す。

「? お姉様、何を――」

『――あれ?』

 友大が違和感を覚えて、思わず声をもらす。
 もう一度、よく周りを見渡す。
 窓や絵は割れ、砕けるか傾いている。
 豪華なテーブルに食器類や調度品類は砕け、その欠片がぶちまけられている。
 白く清潔なテーブルクロスは破片や埃で汚れ、場所によっては千切れている。
 叩きつけに叩きつけられた床や壁は、ひびが入っているところや砕けているところがある。
 唯一無事なのは天上にあり、ヒイロの暴力から難を逃れた大きなシャンデリアのみだ。
 元は晩餐会が開かれるかのような場は、元の形を思い出すのが難しいほど荒廃と破壊を極めた廃墟と化している。
 唯一、大きなシャンデリアのみがかつての華麗な場の名残を残している。

『……あれ?』

 ヒイロの姿を見て、妙なことに気づく。
 ヒイロに被さっている白い布、それはテーブルクロスとは違うもののように思える。

「? おかしなお姉様……ぁ?」

 ラミエが、身を起こしてひざをつく。
 そこでふと気づく。
 何か違和感を覚える。
 何か、色々と足りないような気がする。

「ぁ、ら?」

 ラミエの視界に、自身の大腿部まで白いストッキングに覆われた脚部とブーツが見える。
 白いドレスに合い、かつ動くのに邪魔にならないデザインも良いものだ。

「『あ』」

 同時に気づく。
 ラミエはヒイロを見て、友大はラミエを見て、気づく。

「――っ」

 ラミエはドレスを着ていなかった。
 いや、正確に言うならば、脱げた。

『ヒイロがラミエのスカートを掴み、同時にラミエが武器の光刃を発生させました。その結果、光刃でヒイロが吹き飛ばされ、その手に握られていたドレスも運命をともにしたと言うわけですか。
 ヒイロに散々に振り回され、叩きつけられてドレスそのものがボロボロになっていました。肩が出るデザインの上、ヒイロの手から脱出するために胸部を無理やりちぎるような真似をしたのも原因の1つでしょうか』

 占部が努めて淡々と分析する。
 自身の指示がなければ、今のラミエの姿はないことに気づいているが、そこは口には出さない。
 自身の神姫の散々たる姿を一瞥する。

 端正な顔を赤く染め、その身を震わせている。
 ドレスが残っている部分は腕の袖のところだけだ。
 別パーツのケープが、その慎ましい胸をかろうじて隠している。
 スカートがないため、白いフリルのついたインナーが白日のもとにさらけ出されてしまっている。
 しかもローライズ気味のデザインのため、胸同様慎ましいおしりが半分ほど見えてしまっている。

「ぃ、いやぁーー!?」

 乙女の悲鳴が、廃墟と化した宮殿の広間に響きわたる。


――WINNER RAMIE




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