天の妙なる響きに、しばし身を委ね
夜の東京……と言っても、いかがわしいゲームの発売日でもない限り
真夏と暮れの魔境現出時以外、アキバの夜はおよそ静かなのである。
ましてやここは外れでしかも地下、換気さえ注意すれば快適な物だ。
と言うわけで今晩は、昼に虫干しを兼ね整頓した蔵書を読んでいる。
真夏と暮れの魔境現出時以外、アキバの夜はおよそ静かなのである。
ましてやここは外れでしかも地下、換気さえ注意すれば快適な物だ。
と言うわけで今晩は、昼に虫干しを兼ね整頓した蔵書を読んでいる。
「ふぅむ、この配線パターンはこれが効率的か……なるほど」
「むにゃ……マイスター、起きてらしたですの~?ふぁ……」
「ん……?おおッ。起こしてしまったかロッテ、すまないな」
「いえ、充電も問題ないですし……わたしは構いませんの♪」
「そうか、なら曲でもかけてやろうか……パイプオルガンだ」
「むにゃ……マイスター、起きてらしたですの~?ふぁ……」
「ん……?おおッ。起こしてしまったかロッテ、すまないな」
「いえ、充電も問題ないですし……わたしは構いませんの♪」
「そうか、なら曲でもかけてやろうか……パイプオルガンだ」
OK、そこの貴様。人を怪物でも見る様な目で眺めるんじゃない。
クラシックは私の好みだ、文句あるか?それに、その……ロッテも
実はクラシックを気に入っていてな?──少し違う意味で、だが。
少し待っていろ、すぐに分かるぞ……ほら、聞こえてくるだろう?
クラシックは私の好みだ、文句あるか?それに、その……ロッテも
実はクラシックを気に入っていてな?──少し違う意味で、だが。
少し待っていろ、すぐに分かるぞ……ほら、聞こえてくるだろう?
「♪普く星々は、空を照らし……」
「♪風はそっと、夢を運びて……」
「♪人は幸せに、夜を越える……」
「♪風はそっと、夢を運びて……」
「♪人は幸せに、夜を越える……」
のびのびとした明るい即興詞、透き通った水晶の様なボイス。
パイプオルガンの重厚で荘厳な音色に負けぬ、彼女の存在感。
そう……これは、ロッテが自らの意思で奏でている歌なのだ。
“プロテクト”を外されたCSCは、人と同じ感受性を宿す。
それが故に、彼女はこの様な美しい歌を唱う事が出来るッ!!
パイプオルガンの重厚で荘厳な音色に負けぬ、彼女の存在感。
そう……これは、ロッテが自らの意思で奏でている歌なのだ。
“プロテクト”を外されたCSCは、人と同じ感受性を宿す。
それが故に、彼女はこの様な美しい歌を唱う事が出来るッ!!
「♪……お粗末ですが、一曲マイスターに差し上げますの」
「粗末なんて、とんでもないッ!……可愛い娘だ、ロッテ」
「きゃっ?えへへ~……ありがとうございますですの~♪」
「粗末なんて、とんでもないッ!……可愛い娘だ、ロッテ」
「きゃっ?えへへ~……ありがとうございますですの~♪」
私の為に唱ってくれたロッテを抱きしめながらも、思う固有名詞。
その名は“アシモフ・プロテクト”。神姫という“魂”を縛る枷。
普通のユーザーならば極初期の段階で解除処置を受けているのに、
その現状を以てなお搭載されているのは、人のエゴ故であろうな。
社会が神姫達人工知性体を、対等のパートナーと見ていない現状。
なんとも嘆かわしい限りだ。彼女らの本質……魂、そして“心”!
その名は“アシモフ・プロテクト”。神姫という“魂”を縛る枷。
普通のユーザーならば極初期の段階で解除処置を受けているのに、
その現状を以てなお搭載されているのは、人のエゴ故であろうな。
社会が神姫達人工知性体を、対等のパートナーと見ていない現状。
なんとも嘆かわしい限りだ。彼女らの本質……魂、そして“心”!
「本当にお前達は、人と何も変わりがないのにな……」
「いつかみんなが、仲良く唱いあえたら幸せですの♪」
「有無、だなぁ。その為に、出来る事はせねばなッ!」
「きゃ?!ま、マイスターわきわきはだめですの!?」
「ダメだッ、私は今ロッテが愛おしくてたまらんッ!」
「きゃ、きゃぁ~っ♪くすぐったいですの~っ!?!」
「いつかみんなが、仲良く唱いあえたら幸せですの♪」
「有無、だなぁ。その為に、出来る事はせねばなッ!」
「きゃ?!ま、マイスターわきわきはだめですの!?」
「ダメだッ、私は今ロッテが愛おしくてたまらんッ!」
「きゃ、きゃぁ~っ♪くすぐったいですの~っ!?!」
胸元に優しく抱きしめた“妹”を、私は心を込めて撫でてやる。
ロッテはいかがわいい愛玩用ではないのだが、何故か喜ぶのだ。
本人曰く『メモリがいっぱいになっちゃいますの』だそうだが、
センサーが感じずともそのCSCとコアが“幸せ”を覚える……
躯は人造でも“魂”が天然自然に備わる証と、私は思っている。
ロッテはいかがわいい愛玩用ではないのだが、何故か喜ぶのだ。
本人曰く『メモリがいっぱいになっちゃいますの』だそうだが、
センサーが感じずともそのCSCとコアが“幸せ”を覚える……
躯は人造でも“魂”が天然自然に備わる証と、私は思っている。
「は、はふぅ~……マイスター、もうギブアップですのぉ~」
「う、うむッ。今日はこの辺で勘弁してやろうか、ロッテ?」
「……はい。だって、マイスターもお顔が真っ赤ですの~♪」
「う゛ぁ!?き、気のせいだ照明のせいだなんでもないっ!」
「う、うむッ。今日はこの辺で勘弁してやろうか、ロッテ?」
「……はい。だって、マイスターもお顔が真っ赤ですの~♪」
「う゛ぁ!?き、気のせいだ照明のせいだなんでもないっ!」
本に顔を埋める。いかん、昔からどうにも私は素直になれない。
特に神姫……しかもロッテの事となると、胸が締め付けられる。
でもこれじゃ、検査後に戻ってくるクララに嫌われちゃう……。
……って貴様、人の心の声を聞くなッ!言い訳は、無用だッ!!
何、『自分で言ってるんだろう』だと?ええい、そこに直れぇ!
特に神姫……しかもロッテの事となると、胸が締め付けられる。
でもこれじゃ、検査後に戻ってくるクララに嫌われちゃう……。
……って貴様、人の心の声を聞くなッ!言い訳は、無用だッ!!
何、『自分で言ってるんだろう』だと?ええい、そこに直れぇ!
「ごほんごほん、げふげふ……いかんいかん、暴走寸前だ」
「もう。マイスターってば、クララが驚いちゃいますのっ」
「うむ、分かってはいるんだが“妹”への想いが……なぁ」
「それはちゃんと、クララも分かってくれると思いますの」
「もう。マイスターってば、クララが驚いちゃいますのっ」
「うむ、分かってはいるんだが“妹”への想いが……なぁ」
「それはちゃんと、クララも分かってくれると思いますの」
事実その通り、こういう暴走をするのはロッテと打ち解けてからだ。
クララとも最初の内はぎこちなかろうが、ロッテが証言するのならば
きっと判ってくれるのだろう。無論私が彼女を理解するのも重要だ。
久々に挫けそうになったが、すぐ持ち直した。これは私の長所だな。
クララとも最初の内はぎこちなかろうが、ロッテが証言するのならば
きっと判ってくれるのだろう。無論私が彼女を理解するのも重要だ。
久々に挫けそうになったが、すぐ持ち直した。これは私の長所だな。
「眠気が冴えてしまった……これをもう少し、読むとするか」
「じゃあわたしももう一曲、マイスターに捧げますの……♪」
「ああ、頼む。冬の夜は長いからな、良い歌が聴きたいぞ?」
「はいですのっ!……♪華咲く心、踊る私、愉快な調べ……」
「じゃあわたしももう一曲、マイスターに捧げますの……♪」
「ああ、頼む。冬の夜は長いからな、良い歌が聴きたいぞ?」
「はいですのっ!……♪華咲く心、踊る私、愉快な調べ……」
──────あなた達がいるだけで、私は満たされるの。