「あなた、私の人形にならない?」
ㅤ目の前に佇む子どもに向けて、アリス・マーガトロイドは第一声、語りかけた。
「えっと……どういうこと?」
ㅤそれを受けた子ども、フリスクは疑問で返した。アリスが出会い頭に振り翳したのは、人の基準で言えば怪しさ――或いは妖怪としての、妖しさ。端的に言えば、関わらないのが最も無難な選択だろう。しかしそれでもフリスクは『にげる』選択を取らず、『はなす』ことを選んだ。
「私、人形遣いなの。一人じゃあまり強くはないのだけれど、支給品に人形が無かったから困ってて。」
ㅤアリスは、一目見たときからフリスクを操りやすい子だと感じた。このような殺し合いを命じられた手前、他者とのエンカウントは本来、警戒して然るべき事態だ。しかしあろうことか、フリスクは出会った自分の顔を見て、安心したかのように表情を緩ませたのだ。
ㅤ突然こんな場所に飛ばされて不安だったのだろう。誰かに縋りたかったのだろう。スペルカードルールが制定され、本当の命のやり取りとは比較的無縁だった幻想郷の住人としてそれも理解できる感情だ。
その上で――甘いのよ、とアリスは内心で毒づく。この殺し合いはこの異変はスペルカードが適用された弾幕ごっこという遊びではない。間違いなく、自分の命を賭けた決闘だ。そして、同じ実力の参加者同士がぶつかるのなら――先に戦力確保に乗り出していた方が勝つのは道理。霊夢や魔理沙をはじめとする幻想郷の強者たちと渡り合うには、人形や、それに与するものが是非とも欲しいところだ。
「簡単よ。私の言う通りに動いてくれたらそれでいいわ。その代わり、あなたを殺そうとする敵に立ち向かえるよう指揮してあげる。」
ㅤ動かす人形ひとつひとつの位置を把握する必要のある人形遣いは多角的に戦場を俯瞰する必要があるため、指揮する能力には長けている。こんな幼い子供でも、駒は駒だ。せいぜい私が生き残るのに利用させてもらおうじゃないか。
ㅤなどと考えているアリスに、伏し目がちにフリスクは尋ねる。
「立ち向かうって……フラウィに言われた通り、みんなを殺すの?」
ㅤ気のせいかその震えた声は、他者を殺すことへの躊躇とは少し、違った気がした。その裏にはこの子の信念、或いはそれに関係する何かが滲み出ているように思える。しかし、アリスのすることは変わらない。
「私だってそんなことしたくないわよ。でもね、しなきゃいけないことだってあるわ。でも……」
ㅤ赤子をあやす様に、またはたしなめるように。落ち着いたトーンでアリスは告げていく。懐柔するための甘言――しかし同時に、それはアリスの本心でもあった。霊夢も魔理沙も、本音では殺したくなんかない。魔法の森で一人静かに暮らしている中でずけずけと入り込んできて、鬱陶しく思うことだってたくさんあった。だけど――同様に楽しく思うことだって少なくはなかった。
自分でも気付かぬ内に視線を落としながら、簡潔に、述べる。
自分でも気付かぬ内に視線を落としながら、簡潔に、述べる。
「……この世界、殺すか殺されるか、なんだもの。」
「――そんなことないっ!」
ㅤフリスクの唐突な大声に一瞬、気圧されるアリス。驚くままにフリスクの顔を見遣る。
「ボク……知ってるんだ。ヒトとモンスター、どうしようもない種族の垣根があったとしても、戦うさだめにあったとしても、手を取り合って分かり合うことができるって。トモダチにだって、なれるって。」
ㅤ細く見開かれたその目は、『ケツイ』に満ち溢れていた。それは人形には――そして、周りに流されず、どこであろうとも個を貫く幻想郷の者たちには決して達せぬ境地。
「だから、ボクはお姉さんの人形にはならない。」
ㅤふと、アリスの脳裏にある光景が過ぎる。異変を解決し、誰が始めたかも分からない宴会に、自分も、かつて敵だった者たちも含め、皆が賑やかに騒ぎ合って――ああ、それこそが幻想郷の良いところだったはずだ。異変が終われば誰もが盃を交わすことができる。悪も敵も全てを受け入れる温床は、確かにそこにあった。異変でスペルカードを交えれば、誰も死なず誰も欠けず、しかし公正かつ厳正に紛争は解決するのだから。
ㅤこの殺し合いは違う。生き残れるのはたった一人。他者を決して受け入れず、拒み、そして殺す。たとえ、やりたくなくても――
「そう。あんた、つくづく頭が春だね。」
ㅤ頭を支配する光景を、戦いへの迷いを、振り払うように首を横に振る。
「やっぱり人形には向いてないわ。ここで糸を切ってあげる。」
ㅤアリスは、人形遣いである前に魔法使いである。その出力は火力バカの魔理沙なんかには一歩及ばないが、しかし子どもひとりを屠るには充分過ぎる。フリスクを怖がらせないよう仕舞っていた支給品の杖を取り出し、構える。
「人形に向いてるヒトなんて、いないよ。」
ㅤそしてフリスクもまた、戦いに備える。その手には武器を、その胸には防具を、そしてその眼には――ケツイを。
「だってみんな、みんな……ボクの大事なトモダチだもの。お姉さんも、ボクのトモダチになろうよ。」
ㅤ戦い、或いは、戦いとも言えない何かが、始まる。
【E-8/平原/1日目/深夜】
【アリス・マーガトロイド@東方project】
[状態]:健康
[装備]:魔封じの杖@ドラゴンクエストVIII 空と大地と呪われし姫君、いつもの服装
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2個
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを生き残る
1:フリスクを殺す
2:人形代わりになるもの(者)を探す
3:……。
[状態]:健康
[装備]:魔封じの杖@ドラゴンクエストVIII 空と大地と呪われし姫君、いつもの服装
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2個
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを生き残る
1:フリスクを殺す
2:人形代わりになるもの(者)を探す
3:……。
【備考】
参戦時期はご想像におまかせします。
参戦時期はご想像におまかせします。
【フリスク@UNDERTALE】
[状態]:健康
[装備]:いつもの武器、いつもの防具、いつもの服装
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:ケツイ。
1:たたかう。
[状態]:健康
[装備]:いつもの武器、いつもの防具、いつもの服装
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:ケツイ。
1:たたかう。
【備考】
参戦時期は
参戦時期は
「そう、みんなみんな、大事なトモダチ。」
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤざ
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤし
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤゅ
ㅤㅤㅤㅤ。
「だㅤかㅤらㅤ殺ㅤしㅤがㅤいㅤがㅤあㅤるㅤんㅤじㅤゃㅤなㅤいㅤかㅤ。」
「えっ……?ㅤあっ…………。」
ㅤアリスの華奢な身体に、斜めに閃光が走った。違和感に気付いた時には、時、既に遅し。胸に咲いた鉄製の刃を、ただただ眺めることしかできない。
ㅤ脚の力が抜けて崩れ落ちていく。視界が、真っ赤に塗り潰されていく。
ㅤその様を見下ろしながら表情を崩さぬまま嗤う執行者へと、アリスは、最後となる問いを投げかける。
「あん、た……ほん、と……に……ニン、ゲン、な、の……?」
「さあ?ㅤモンスターではないと思うよ。」
ㅤフリスクの返事は、その命を散らしたアリスには届かない。
ㅤ予測なんて、できようはずがなかった。
ㅤどこか迷いを脳裏に残しつつも、それでもフリスクを殺すと豪語していたアリス。そんな彼女に比べても、奴には一切の躊躇というものがなかった。まるで、おやつのバタースコッチシナモンパイにフォークを突き立てるかの如く、ナイフを振りかざし、そして突き刺していた。
ㅤその脳内でトモダチとなれるまでの筋道を導きながらも、あらゆる他者に暴力を振りかざし、あらゆるものを破壊していき、モンスターの住む地底を恐怖と絶望に陥れた人間。それが、フリスクという子どもの歩んできた道筋だ。その生き方は、この世界でも変わらない。ジャマなやつも、カモも、全てを破壊していくだけだ。
ㅤそれにこの世界にやってきてから、妙にスッキリしている気分だ。モンスターをぶち殺してLOVEが上がるたびに頭の中で蠢いていた何かの存在を、もはやまったく感じない。殺戮をも躊躇わない、人の形を模した怪物の歩みを唯一止めていた存在が消えたことで、もはやフリスクを止めるものは何もなかった。
ㅤそれに――支給品のデイパックを開くと『いつも』の装備品だけがぽつんと入っていたのも、そういうことなんだろ?ㅤフラウィ。
【アリス・マーガトロイド@東方Project 死亡確認】
【* 35体ㅤのこっている。】
【E-8/平原/1日目/深夜】
【フリスク@UNDERTALE】
[状態]:健康
[装備]:ほんもののナイフ@UNDERTALE、ロケット@UNDERTALE、いつもの服装
[道具]:基本支給品、魔封じの杖@ドラゴンクエストVIII 空と大地と呪われし姫君、ランダム支給品1〜2個(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:ケツイ。
1:たたかう。
[状態]:健康
[装備]:ほんもののナイフ@UNDERTALE、ロケット@UNDERTALE、いつもの服装
[道具]:基本支給品、魔封じの杖@ドラゴンクエストVIII 空と大地と呪われし姫君、ランダム支給品1〜2個(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:ケツイ。
1:たたかう。
【備考】
参戦時期はGルートの、ニューホーム訪問より後です。
参戦時期はGルートの、ニューホーム訪問より後です。
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