「ウゥ……?」
ㅤそこには奇々怪々とした光景が広がっていた。人の姿をした少女が、鬼面の男と向かい合っている。そして、そのどちらともがそれぞれ困惑しているのだ。
「困ったのお。」
ㅤと、困惑を人語に変えるのは鬼面の男――しかしその実はれっきとした人間、トロデ。
ㅤ殺し合いなるものを命じられ、エイトたちとバラバラの場所に飛ばされた地点で彼にとっては相当な窮地である。何せ、ドルマゲスにかけられた呪いにより、その姿は魔物となっている。以前の旅路でも、普段の感覚で町に立ち入ろうものなら、それだけで大騒ぎとなってしまった。ましてやここは、殺し合いの地。トロデ自身に殺し合う気がなくとも、魔物の姿であることは他者との協力において大きな障壁となることは目に見えている。
ㅤまた、トロデ自身に他者と渡り合えるような実力はない。魔物の姿をした自分と、協力的でない者に出会った場合、抵抗もできず殺される未来は安易に想像できる。一刻も早く家臣たちと合流せねば――
ㅤなどと考えながらとぼとぼと歩いていると、一人の少女と出会った。黒髪のロングヘアーを風に靡かせるその姿は、愛娘のミーティアにとてもよく似ている。あの子もはやく馬の姿から戻してやりたいものじゃ、と感慨を覚えながら、その少女に話しかける。しかし、彼女の瞳は確かに自分を捉えているにもかかわらず、まともな返答がなかったのである。
ㅤそして様々、試行錯誤の末に時系列は現在に至る。
「もしかして、喋れんのか?」
「ウウゥ……。」
ㅤ少女は答えない。こちらの言葉が通じているのかも、分からない。そのような状況、覚えのないトロデではない。
「まさか……この子も何かの呪いにかかっておるのではなかろうな……?ㅤおのれ、フラウィとやら。このような可憐な娘にまで呪いをかけるとは……。」
ㅤどこぞの花に冤罪をかけながら、配られていた名簿をペラペラと捲る。エイトに、ゼシカに、ククールに……すでに確認済みの家臣の名前を読み飛ばし、目の前の少女と顔写真とを照合していく。そして間もなく、目当てのページを見つけた。
「ふむ、この子の名前はネズコ、というのか。」
ㅤその名を呼ぶと、少女は微かに反応を見せた。言葉が分からないというのとは少し違うようだ。少女は物珍しそうに、トロデの周りをぐるぐると周り、全身をまじまじと見つめている。
「おうおう、大丈夫じゃ。お主のことはワシとワシの家臣で守ってやるからの。」
「ウゥ……?」
ㅤ何らかの呪いを見出した事でいっそう、少女――竈門禰豆子をミーティアと重ねるトロデ。そして、その予想は概ね正しいと言える。禰豆子には原初の鬼、鬼舞辻無惨の呪いが掛かっている。人間に見えるその姿とは裏腹、彼女は鬼である。
ㅤただ、彼女に掛けられた呪いは完全にはその効力を発揮しなかった。睡眠を通じ、鬼の性質の変化を見せた禰豆子は、鬼舞辻の呪いの一部を克服した。禰豆子はもはや他人を問答無用に襲うことはなく、むしろ人間の味方となっている。
「うーむ、それにしてもどうしたものかのう?」
ㅤコミュニケーションを取れない禰豆子をどうしたものか、困惑するトロデ。そんな彼の前にそれは突如として現れた。
「――よお、お困りかい?」
「っ……!ㅤだ……誰じゃ!?」
ㅤ新たな声に反応し、サッと振り返るトロデ。そんな彼の視界に映るは、夜の闇に溶け込んだまま凛と立ちはだかる人型の黒い影。トロデは1歩後ずさりしつつも、思い直したかのように禰豆子の前に立ち塞がる。
「まあまあ、そんなにリキむな。チカラ抜けよ。」
ㅤ影の容貌を、月明かりが次第に明かしていく。現れたのは、一体のスケルトン――トロデの世界の常識で言えば、ゾンビ系と呼ばれる類のモンスターだ。"たたかう"手段のないトロデにできるのは、"にげる"ことのみ。しかしこの危機を正しく認識しているか分からない禰豆子がいる手前、その選択肢も無いに等しい。
ㅤただ立ちはだかり、威嚇することによって"おどかす"しか手のないトロデに、スケルトンは1歩、1歩と歩み寄る。そしてその姿が完全にトロデの視界に入るや否や、口という名の空洞を開き、言い放つ。
「――これがホントの、"ホネ"休め――なんてな!?」
ㅤスケルトンは決めポーズをキメた。その見た目と言動、状況と態度の場違いさにトロデは困惑する。
「な、なんじゃあお主は……」
「オイラはサンズ。スケルトンのサンズさ。ほら、せっかく会ったんだ。あくしゅしようぜ。」
ㅤサンズはさらに1歩躙り寄る。トロデも1歩引き下がる。トロデを突き動かすのはモンスターを前にした恐怖感ではなく、得体の知れないものを前にした忌避感。
「安心しろよ。ブーブークッションなんてしかけてないから。」
「そういう心配はしとらんわっ!」
ㅤ声を荒らげ、反論するトロデ。
「こんな時にどこの馬の"骨"とも知らんやつと、気軽に接するわけがなかろう!」
ㅤそれは、無意識の一言だった。しかしそれは、サンズがトロデを気に入るには十分な一言。
「へっ……なかなかやるじゃないか。染みたぜ――ホネ身にな。」
ㅤ再び決めポーズをキメながら、サンズは強引にトロデと握手を交わす。そして、次はトロデの背後にいる禰豆子に手を伸ばす。
「おい、その子は……」
「ウゥ?」
――バキッ!
ㅤすると禰豆子は、唐突にサンズの腕の骨を1本、抜き取った!
「うおっ、これは驚きのアプローチだぜ。」
「だ、大丈夫なのかお主?」
ㅤそして禰豆子は、サンズから引き抜いたホネを横に倒して持ったかと思うと――
「むー!」
――それを、おもむろに口に咥えた!
「むー!ㅤむー!」
「……こいつ、イヌかなんかなのか?」
「……ワシもよくわからん。名前だけならネコに近いんじゃがな。」
「むー。」
「まあいいか。ところでどこをめざしてるんだ?」
ㅤ身体を抜き取られておいて、まあいいかで済ませても良いものなのだろうか。疑問は尽きないが、ひとまず質問の答えとして行き先の宛てはトロデにはひとつしか無かった。
「ひとまずはトロデーン城を目指そうと思うのじゃ。ワシの住んでいた城なんでな。家臣との合流もできるかもしれん。」
「しかたないな、それじゃああんたについていってやるよ。わるいニンゲンとモンスターじゃなさそうだし。」
「むー。」
「言っとくが、ワシは戦えんからな。……って誰がモンスターじゃ!ㅤ誰が!」
「え?ㅤあんたどっからどう見てもモンスターだぜ?」
「ええい、ワシはれっきとした人間じゃ!」
「むー。」
ㅤ印象というのは大部分が見た目に由来するため、呪いにかかったトロデを人間であると認識するのは、サンズにとっても当然難しい。トロデも魔物であると誤解されることは仕方ないと割り切っており、そこを深く追及するつもりも毛頭ない。
「まったくもうよい、早く行くぞ!ㅤあと言っとくが、ワシは戦えんからな!」
「だいじょうぶ。オイラがバック"ボーン"になってやるからさ。ホネだけに!?」
「それはもうええわい!」
「むーむー。」
ㅤツッコミを入れつつトロデが試しに歩き始めてみると、禰豆子はとてとてと、背後をついてくる。それを見たトロデはホッとしつつ、そして3人(?)はトロデーン城に向けて歩き出した。
――ところで、この場ではある奇跡が起こっていることには、誰も気付いていない。
『――人間は皆、お前の家族だ』
『――人間を守れ、鬼は敵だ』
『――人を傷つける鬼を許すな』
ㅤ禰豆子には、鱗滝左近次による暗示がかかっている。それにより、人間を襲わず鬼舞辻無惨やその配下の鬼には対抗する唯一の鬼と化した。
ㅤしかし、トロデという魔物の姿をした男と、れっきとしたモンスターであるサンズ。そのどちらにも、禰豆子は攻撃しなかった。暗示など、所詮気休めに過ぎないのだと言うこともできるだろう。鬼の知能で人間と鬼の正確な識別は不可能だと、言ってしまうこともできるだろう。
ㅤしかし、可能性の話ならばこう語ることもできる。禰豆子は、普通の人よりもいっそう温かい心を持った2人を、敵でない存在であると認識したのだ、と。
【B-1/平野/1日目/深夜】
【トロデ@ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君】
[状態]:健康
[装備]:いつもの服装
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本行動方針:トロデーン城に向かう
1:エイト達と合流したいのう
2:禰豆子を保護する
【備考】
参戦時期は少なくとも呪いが解ける前です。
[状態]:健康
[装備]:いつもの服装
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本行動方針:トロデーン城に向かう
1:エイト達と合流したいのう
2:禰豆子を保護する
【備考】
参戦時期は少なくとも呪いが解ける前です。
【竈門禰豆子@鬼滅の刃】
[状態]:健康
[装備]:いつもの服装 サンズのホネ@Undertale
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本行動方針:むー
1:緑の人は敵じゃない。
2:青と白のホネは敵じゃない。
【備考】
参戦時期は太陽克服前(喋れるようになる前)です。
[状態]:健康
[装備]:いつもの服装 サンズのホネ@Undertale
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本行動方針:むー
1:緑の人は敵じゃない。
2:青と白のホネは敵じゃない。
【備考】
参戦時期は太陽克服前(喋れるようになる前)です。
【サンズ@UNDERTALE】
[状態]:健康 右腕のホネ1本喪失(自然に治るかもしれません)
[装備]:いつもの服装
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3個
[思考・状況]
基本行動方針:トロデーン城に向かう
1:トロデはデキるヤツだな。
[状態]:健康 右腕のホネ1本喪失(自然に治るかもしれません)
[装備]:いつもの服装
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3個
[思考・状況]
基本行動方針:トロデーン城に向かう
1:トロデはデキるヤツだな。
【備考】
参戦時期は後続の書き手にお任せします。
参戦時期は後続の書き手にお任せします。
PREV | 010 | NEXT |
生殺与奪の権 | 投下順 | 本物のヒーローの戦い |
時系列順 | ||
GAME START | トロデ | |
竈門禰豆子 | ||
サンズ |