ガルダンディーは性格に難ありだがそれ相応の実力を持つ。
相棒のスカイドラゴンのルードはこの場にはいなかったとしても、
魔王軍の軍団長の中でもハドラーですら警戒していたバランが、
少なくとも信頼に値する部下に置く程度には実力を認められた存在である。
そして騎兵でなくとも、その身体は飛べるため空からの攻撃ならば一方的に有利。
加えて抜かなければ永続で力を奪う羽根もあり、制空権と言う優位な場所での戦闘。
しかし。
「フン!」
「すごい!」
呑気な雰囲気が感じられる、ハチワレの褒め言葉が二人の耳に届く。
飛来してくる羽根を、得物を振るい風圧をもってすべてを弾き飛ばした。
弾き飛ばすだけに留まることなく、空中にいるガルダンディーにも風圧が直撃。
落下しそうになるものの竜騎衆で空を担当する以上、墜落したら笑い話にもならない。
その隙に近くの建物を自身の跳躍だけで到達し、飛んでバハムートティアを振り下ろす。
咄嗟にアルベスの槍で攻撃を防ぐものの、ガウェインの猛攻は空中なのに続けられた。
浮遊できるわけでもないのに落下するまでの間に、斧と言う得物で七回もしかけてくる。
いずれも当たれば無事ではすまないのでなんとか防いだはいいものの、ガルダンディーの苛立ちは別問題だ。
憎悪の対象である人間とは思えないほどの動きを前に冷汗すら出ていた。
無理からぬことではある。過去の話ではあると言ってもガウェインは、
ウェールズとの抗争の際にピートの謀略により援軍なしで大軍の対応に迫られた。
たった一人、文字通り孤立したガウェインは一人で多くのウェールズ兵を薙ぎ払っている。
団長のジータであっても成し遂げるのは容易ではないことを彼は一人で成し遂げていて、
封印武器、占星武器(ホロスコープ)と言ったものがなくとも英雄の名にふさわしい強さを持つ。
状況や戦術は違うので、彼が戦ったポップとどちらが上かと言われると、
それは一概には答えられないことではある。魔法使いと戦士に近しい彼では違い過ぎる。
しかし、それだけの武勇を持ちながらも決着がつかないのは、ガルダンディーが慎重になっており、
余り地上に降りようとしないことだ。相手はポップやヒュンケルのように遠くの敵を狙える手段が存在しないのが大きい。
飛べルーラのように空中で戦闘ができる様子もない。ならば制空権を確保してれば相手はやりづらいはずだと。
当然、この思考に対して苛立ちを持つ。バラン達を迫害してきた人間相手に優位に立つ方法がこれしかないと。
人に対する恨みがあるガルダンディーからすれば、チマチマと隙を見つけねばならず苛立ちしかない。
「どうした? 貴様は確か空戦騎と言ったな。
音でしか分からないが、恐らく空の騎兵と言う意味合いなのだろう。
まさか、愛馬たる存在がいなければ勝てなかった、などと言う言い訳はなしだぞ。」
「テメェ……!!」
安い挑発にも顔を歪めるが、すぐには乗らなかった。
それを前に、ガウェインもガウェインで慎重な部分がある。
いつかの傲慢な彼であるならば調子づいてしまうところだが、
今のガウェインにとって発言とは裏腹に、ガルダンディーを評価していた。
苛立ちと殺気を放ちながらも、空中と言う優位な場所をずっと取っている。
臆病と揶揄されそうなものだが、それだけこちらを警戒、慎重に動くのと同じことだ。
「ねえ、できること、あるかな!」
「まず奴の色違いの羽根だけは避けろ!
奴の攻撃の中でも絶対の自信を持っているかのようだ。
何が起きるか分からん以上、その攻撃は避けた方がいい。
攻撃は翼を狙って地上戦に持ち込みたいが……何か策があれば助かる。」
融合種(フュージョン)を屠るガウェインでも、
頭脳派かどうかと言われると、そういうわけではない。
罠にはめられれば愚直に得物で壁を破壊しようとしたりする。
故に今はこの強さだけが取り柄である自分を扱える存在が必要だ。
「えーっと……」
あるかどうかで言えばある。
ガイアドライバーを使いドーパントになれば、
きっといつもよりもずっと強くなれるし空中戦もしやすい。
だが、やはりガイアメモリの力に溺れてしまうのではないか。
その恐怖は拭えず、うんと頷きたくてもそれをすることはできなかった。
「ないなら此処は退く……ではないな。デパートへと逃げ込むぞ!」
ハチワレを過小評価するつもりはないものの、
策が見当たらなければ地の利はならぬ空の利はガルダンディーにある。
なので自分たちが有利な場所へ誘導、或いは逃げ込むことが必要だ。
此処は高層ビルが所せましと並んでいる、現代的なエリアではあるものの、
その近くには城壁で出来た異様な雰囲気のベンガーナ王国のデパートがある。
ビル街の中に古城みたいなものがあるのは異様な雰囲気であるのは確かだが、
デパートに逃げ込めば普通に狭所に入ることができるため、空中戦の優位は減る。
勿論、それを想定してないはずがない。
「アルベスの槍よ、力を示せ!!」
薙ぎ払いながら炎の一閃が飛来。
どちらも戦いの規模はともかくとして経験済み。
ただの遠距離攻撃では一撃はガウェインの薙ぎ払いではねのける。
そのままデパートに入られてしまい、舌打ちをしながら思考を始めた。
(クソッ、ドブくせえ人間に協力するあっちの魔族(ハチワレ)は強さが未知数だ。
と言うよりも、あんな人間なんぞに手を貸しやがって……ぶっ殺してやりたくなる!)
屋上に着地して、周囲を見渡す。
ビルとか並ぶ中で、レンガで出来た場違いなデパート。
入らせるのが目的であると言うのはガルダンディーでも分かることだ。
(中に入ったのは俺を強制的に地上戦に持ち込むためだ。
俺はこの建物の中を知らないし、仮に俺が知ったところで、
高くても室内は二、三メートルだ。簡単にあいつらの間合いに入る。
そのうえ城みてえな場所だ。燃やして外へ追い出すには相当火力がいる……)
冷静に状況を分析するガルダンディーではあるのだが、
考えれば考えるほど人間に対する殺意ばかりが増幅していく。
ラーハルトやバランを迫害してきた人間連中は皆殺しにしなければ気が済まない。
どれが正解なのか。見下していた人間に辛酸を何度もなめさせられているのもあり、
どうするべきかを考えながら空中を軽く出入口周辺を空で彷徨っていると、
「!?」
下から轟音と大きな揺れが発生し、思わずガルダンディーはデパートの屋上に逃げる。
何事かとデパートの入り口周辺を見やる彼だが、玄関が壁も含め派手に破壊されていた。
土煙で姿は細かく確認できなかったが、二人の参加者がデパートへ乗り込んだ。
あれだけ派手な入場だ。殺し合いに乗ってない参加者と言う可能性は皆無。
漁夫の利、或いは共闘を持ちかけることができることも視野に入れておくが、
「伸びなさい。」
「グハッ!」
土煙の中から伸びる何か。
速度と不意を突かれたのも合わせ、
顎にクリーンヒットしたことで大きくのけ反る。
「魔物かその類か……虫でないだけマシではあるが。」
「テ、テメエ……!?」
何をしやがるんだと抗議しようとした彼だが、文字通りの鳥肌が立つ。
華奢な女だ。魔王軍で見ることのない女性ではなく、恐らくだが人間だ。
しかし彼は戦士故か察することができた。この女はとてつもなくヤバイと。
敬愛するバラン、司令のハドラー、最悪バーンに匹敵するレベルを持っている。
そう認識させうることができるのが、冬の女王モルガンであると。
「まあいい。先の攻防のやりとりから、
私たちにとって益となる存在になるのだろう。
邪魔をしなければこの場は見逃す。疾く失せろ。」
モルガンは全容ではないものの、三者が殺し合いのスタンスを軽くだが見届けた。
ならばあの口汚い黄色い鳥人は参加者を減らす、都合のいい存在であると。
いかに2000年國を維持したモルガンと言えど、参加者皆殺しは困難だ。
だから役に立つのであれば、何処へでも勝手に消えても構わないと促す。
話を切り上げて崩れた玄関口から、先ほどまでは汚れもごみも少ない、
綺麗な内観だったのかもしれないが、今は瓦礫やらなにやらで見る影もない。
奥の方で二人は得物を構えながら、慎重に様子を見続けていた。
「貴様は確かモルガン、そしてフジマルか。」
「ガウェイン……やはり異なる世界の騎士か。
だが、その名を冠する存在として違わぬ戦士と見ていいな。」
普段のガウェインとも違うし、グリム(セタンタ)と違って名簿に距離はあった。
何かしらの側面で召喚されたガウェインかとも思ったが、今の反応の薄さから察するに、
ただの同名の人物であると言うことはおおよそ理解することはできた。
「カルデアの。あの愛ら……ふむ、
多分あれは猫と判断しましょう。あれの対処は任せる。
先の連中よりは、おそらく無理難題にはならないでしょう。」
乙骨に逃げられてしまったが、
アレも大分規格外の参加者に分類だろう。
ともすれば、自身とも互角に戦うことが可能な一人。
荷が重いことは重々理解しているが、隣にいる謎の生物。
猫なのかウッドワスみたいな存在なのかは定かではないが、
どちらにせよ、そろそろ彼女の有用性を示してもらうときだ。
「今、愛らしいって言おうとしなかった?」
「……気のせいだ。」
「ハチワレ、さっきの鳥よりもはるかに強い。俺はこの女とモルガンと戦う。
奴を相手に庇いながら戦うことはできず、巻き添えにする危険も伴っている。
俺が止めてる間に、あの白い服のフジマルを相手してもらう。」
「分かった!」
歴戦の戦士であるガウェインも出会っただけで分かる。
今まで様々な武勇を誇る彼だが、今までとは別。規格外の強さだ。
ブラックロッドが伸び、それを武器で受け止めた瞬間戦いの合図。
ハチワレは背を向けて走り出し、窓から外へと出ていく。
ガルダンディーの待ち伏せがある。だとしても戦闘の余波は、
先の一撃で既に自分がこの場の戦いで戦力外なのは認めざるを得ない。
「追いなさい。」
「……分かってる。」
さっきの敵(ガルダンディー)もいることは分かっている。
今度こそ、と決めながら藤丸はハチワレの後を追う。
彼女が通り過ぎるのを横目にそのまま肉薄していく。
蹴った箇所にひびが入るぐらいの勢い。タックルを受ければ重傷は免れない。
「セイッ!」
本当にこの男は斧を持っているのか。
そう疑うレベルに得物を凄まじい速度で振り回す。
ブラックロッドは如意棒のように伸ばすことはできるものの、
モルガンの本質は魔法。白兵戦もできないわけではないが得物の問題だ。
普段使ってる雨と星の童話とは勝手が違い過ぎる。優れた武器なのは間違いない。
(距離を取ってもすぐ肉薄される。ならば足元だな。)
普段ならば内側から自らの身体に突き立て、
相手にそれを転移させると言う魔法もあった。
だが使ってもこの男の胆力はその程度では止まらない。
最悪、相討ち狙いの決死の一撃を繰り出す可能性だってある。
攻撃こそ難なく防げているが、防戦一方であることは否定できない。
よって、自分に突き刺した無数の剣はガウェインではなく、足元に生やした。
まきびしのように生えたそれは、安全な足場ではなくなり動きを止める。
「消えなさい。」
一歩を踏み出せずにいたガウェインが咄嗟に顔をずらす。
ブラックロッドが伸びて顔面に直撃することはなく頬をかすめたが、
横薙ぎの殴打までは防ぎきれず軽く転倒させられる。
すぐに起き上がり反撃の一撃を入れるべく距離を取っていく。
間合いを取っての何かを身構えると、
「転瞬愚断!!」
斧を振るうと同時に、無数の斬撃が地面を、周囲を削りながらモルガンに襲い掛かる。
斬撃はモルガンの仕掛けた剣を砕きながら迫るが、その程度で冬の女王に勝てる道理はない。
ブラックロッドの薙ぎ払いから魔力の斬撃が奥義の一つを容易く相殺されてしまう。
(この女、なんて強さだ。)
曲がりなりにも奥義の一つ。
回避も防御でもなく、真正面から相殺された経験など初めてのことだ。
ともすればその強さはフェードラッヘのジークフリートやランスロット、
ウェールズのパーシヴァルやアグロヴァルと比肩しうる力『以上』になる。
「やはり此処で始末しておくべきだな。」
「この斬撃をすべて杖一本で受け止めるか……貴様、ただの魔術師ではないな。」
「貴様もだ。やはりガウェインの名を持つ者は侮るべきではないと再認識した。」
完全に不利と言うわけではないが、有利とも受け取れない。
実力伯仲とは思わない。ガウェインの武技にまず追いつくのが至難だ。
それを澄ました顔でずっと戦ってるのだから、今後のために手を抜いた状態だろうと。
本気を出すに値しない。随分低く見られたものではあるが自身も否定はできない。
殺し合いが始まって数時間だ。全てを全力で出し切るには余りにも早い時間だ。
「騒ぎがあったのはこっちの方だ……って派手にもう始まってる!」
「おっさんがちんたらしてるからすげーことなってっぞ!」
「仕方ねえだろ! 俺はちゃんと紙があるトイレを入念に確認するタイプなの! 紙やすりでケツ拭くなんてできるわけねえんだよ!」
「どんな例えだよ!」
モルガンの背後、つまり破壊された玄関口に三人の参加者がこの場に参戦する。
時は少し遡って。
オイカッツォと城乃内は月島とことねの二人を置いて黄昏ホテルを出て走る。
二人、と言うよりも月島は一度出血した服を洗うべきだと進言したのもあるので、
多分到着には少し時間がかかるだろうことは分かったが、特にその程度のものだ。
幸いホテルなので設備は整っているし、施設の機能は生きていることは確認済み。
仮に遅れてもそう時間はかからないだろうと判断したのもある。
合流しようとする施設も、そう遠くないだろうから。
その道中で、坂田銀時と出会ったはいい。
カッツォの性別に何かを思い出すように目をそらす銀時。
女装、或いは女体化に思うところがあるのだろうかと首を傾げるが、
遠くから聞こえた音に反応して、三人は向かう……はずだったのだが。
「悪い、俺はトイレ行くから待っててくれ。」
「はぁ!? この状況でかぁ!?」
どう考えても殺し合い、切迫した状況だ。
行く、行かないの二択の中に謎過ぎる三択になっており、
納得できるわけなくカッツォが怒気交じりの声色で答える。
「何でか分からないけど俺の膀胱が急に悲鳴上げてるの!
支給品について突っ込みしまくって喉乾いちゃって、
その結果水の飲み過ぎが原因なんだろうけどさぁ!」
「俺初めて膀胱で人が離脱するイベント見ることになるんだが……」
「いやこれ現実ゥ! VRのアバターだけど生身だからねそっちも!!」
「っとそうだった。しゃーねえ。
用を足してる時逃げられないよう見張るか。」
銀時と出会ってまだ初対面だ。
目を離して何か企んでるのではないか。
そういう可能性も危惧しなければならない。
だから三人は別れる、と言う選択はできなかった。
「ちょっと待て女体化とは言え見られたくないんですけどぉ!!
男子トイレと女子トイレ間違えた女性が悪いだけの行為に、
猥褻物陳列罪として逮捕されたくないんだけど!! 後結構やばいから早く行かせて!」
「んなことで捕まえねえよ! あーもう、城乃内に頼むから俺は外で待ってる。」
なんでこんな所で女体化の弊害あるんかね、
と軽くぼやきながらカッツォは適当に待つことになり、
銀時は破裂寸前の膀胱は解放されたことで社会的に死ぬことはなくなって、
無事……と言うほどではないにしても窮地には参戦できた形で今に至る。
(新手か。この手の数だと……)
「これ、どっちが敵なんだ?」
「信じるかどうかはお前たち次第だが、このモルガンが敵になる。」
「そっちの言い分は?」
「もう心で決めてることでしょう。私と相対した時点で。」
銀時達三人をモルガンは味方にするつもりはなかった。
と言うよりも、三人ともおおよそ気づいてしまってるのだ。
シャンフロにしろビートライダーズにしろ、そして白夜叉にしろ。
それぞれ戦いの経験値は(種類は異なれど)十分にある側になる人物だ。
だから彼女から発せられるプレッシャーを感じており、敵味方の区別はついていた。
「火緋彩!」
区別が分かった途端、カッツォが最初に動き出す。
ある意味この中でもっともプレッシャーに弱いのはカッツォだ。
格闘ゲーム大会みたいなプレッシャーではなく、文字通りの命のやり取り。
そういう経験が一番乏しく、自分を鼓舞するためにも魔法で緋色のオーラを纏う。
火緋彩はSTR、つまり火力に直結するステータスを得られる魔法だ。
それが合図で続けざまにガウェイン、銀時、城乃内による連続攻撃。
地面に生えた剣をガウェインが再び転瞬愚断で地面の刃をすべて破壊する。
流石に宙に舞う剣の破片の中を突破することは、イコールダメージに繋がってしまう。
この中で最もそれを気にせず一番動くことができるのは、アーマードライダーの城乃内だけ。
得物となる槍、影松による刺突のラッシュだが、軽やかな動きでモルガンは躱していく。
敏捷Bもあれば、これぐらいは造作もなくブラックロッドで側頭部を叩きつける。
寸前、ガウェインと銀時が動き狙いを定める。
モルガンの周囲を舞っていた破片が落ちて、負傷する心配がなくなった。
真打・無命切とバハムートティア。どちらも極めて優れた業物ではあるが、
「伸びなさい。」
どちらも槍術のようにそれぞれの一撃を丁寧に防いでいく。
いくら敵の数が増えようと、今すぐ完璧な連携を求めるのは難しい。
加えてただの杖ではなく、ロンベルクが制作した傑作の一つだ。
どちらの武器にも劣らぬ業物であり、攻撃を何度も受けてひびが入らないのも、
彼がポップのために手塩にかけて作った代物だと言うことが伺えるものだ。
「まだ俺が残ってんだよ!」
後方へ回り込みながら、緋色の拳のラッシュを叩き込む。
ラッシュが届く瞬間、身を翻すようなジャンプで拳を交わし、
距離を取りつつ背中にブラックロッドを突き立て、血反吐を吐かせる。
当たらない。即席の連携としては十分なもので、悪いものではなかった。
それは四人とも分かってはいるが、それにしたって厄介が過ぎる強さだ。
ベリアルやレデュエはこれに勝てと言う無茶を要求しているわけであり、
とんだクソゲーだと銀時とカッツォの内心において意見が合致する。
「流石に数が多くて手狭だな。」
やれやれと首を横に振り、一人ごちる。
別にこのまま戦っても四人に負ける気はしない。
だからと言って、一々建物の倒壊を気にするのも問題だ。
外へ出て戦いたいものだが、ガルダンディーが近くにいる中、
他の参加者の邪魔者を警戒するしなければならないと言うのは厄介だ。
その間も4VS1による攻防を暫く繰り広げていく。
何度目だろうか。
モルガンの攻撃をしのぎながらなんとか食らいつく四人、
しかし冬の女王は悉く勝利の一手となる攻撃に対応している。
どうしたものかと四人が悩ませていると、状況は一変する。
上階の方から物音と共に、一階へと何かが天井を突き破って落ちてくる。
まだ増えるのかとモルガンは辟易するものの、今回ばかりは話が別であり、すぐに身構えた。
虫を見た時ほどではないにせよ、警戒に値する存在だとは、相手の見てくれですぐに分かった。
瓦礫の中から現れたのはガルダンディーではあった。ただし、瓦礫の上に倒れて白目を剝いている。
つまり、元凶はそこに居合わせて立っている、偉丈夫の男───
「よもや、此処まで小蠅が多いとはな。」
ベルゼバブによるものだ。
もう一度時は遡る。
ベルゼバブは魔王を討伐した後、ベリアルのことを考えていた。
ベリアルのことだからルシファーの帰還を目的としているはずだ。
だがどうやってだ? 歴史を改竄できるアーカーシャとかではない。
それならば態々このような殺し合いを開く意味が何処にもなくなってしまう。
噂で聞いたアーカルムシリーズでもない。何を使ってルシファー帰還を叶えるのか。
思うところは多数あれども、行きつくには情報が足りないのが現状だ。
特異点であるジータが参加してるあたり、かなり遊んでることは伺える。
別に構いはしない。特異点も既に首輪や場所が何処かを調べてるところだろう。
それまでの間に首輪のサンプルの一つや二つ集めておくのが話が早い。
支給されていたエナドリを軽く飲み干し、原型をとどめないほどに圧縮して潰す。
一通り方針は見つけたはいいものの、此処はビル街で建物が多すぎる上に広すぎる。
いかにベルゼバブが空を駆けようとも、内部全てを確認するには余りにも広い。
辺り一帯を更地にしてしまうと言う、どこぞの錬金術師の方が話が進みやすいと思えるが、
それをやって首輪まで手に入らないのでは割に合わず、仕方なく飛ぶことを選んだ。
飛んで音を聞きつけて向かう。ただそれだけだ。それだけでこのデパートに現れた。
「あ、何だテメエ───」
なお屋上で屯してたガルダンディーは、
ベルゼバブを見かけた瞬間に問答無用で攻撃を仕掛けたが、
容易く躱されて、頭を片手でホールドしたまま、デパートの屋上に叩きつけて今に至る。
彼からすればこの程度の壁など、クッキーのように砕くことができる程度の脆さだ。
「小蠅共よ。首輪を差し出せ。さすれば余は此処から去ろう。」
唯一無二の特異点になろうとする、別の王者が月明りに照らされる。
希望か、絶望か。そのどちらとも受け取れるような存在に全員は身構えた。
一方、同時刻のハチワレと藤丸はと言うと。
ハチワレの逃げ足が思ってるよりも早く、中々追いつけない。
ハチワレだって何も無力な参加者と言うわけではない。
ラッコから稽古をつけて貰ったり、セイレーンなど強敵とも戦った。
常日頃洞窟で寝る以上、セキュリティも不安定で敵との遭遇も決して珍しくはない。
こうして逃げているのも、ガウェインが戦いやすいように、
気遣わせないように距離を取っているのだから。
「此処までくれば……わーッ!?」
今いる場所はビル街の道路。
デパートから十分な距離を取ったし、大丈夫。
そう思った矢先、振り返れば迫りくるのは刀を持った影。
召喚できるシャドウサーヴァントでも、スピードに長ける怨の武者を召喚して、斬りかかる。
ハチワレは咄嗟に自分の杈を使って防御するものの、同時に派手に吹き飛んで転がっていく。
いくらシャドウサーヴァントとして大幅な弱体化を受けていると言えどもこれの元は景清。
元の敏捷がA+なら大幅に弱体化したところで、ハチワレに追いつけるのは難しくない。
(あれ、何なんだろう。)
藤丸が軽く思うのは、謎の種族。
別に恐竜やサメが喋ったり、妖精と交流を深めたり、様々なエネミーも見てきた。
しかしこれは猫なのか、それとも何か違う生物なのか。全く理解できないでいた。
名前は名簿の画像を見るにハチワレ、猫と思うのが正しいのかもしれない。
或いはフォウみたいに謎めいた存在かもしれないが、そういうことを考えるのはやめにする。
相手の生態がなんであれ、相手は参加者。彼女が取り戻す為に必要な犠牲者の一人。
モルガンが話した妖精の真実もあり、荒み切った目で次は竜の魔女を呼び出す。
正面から近接戦闘をするのであれば、シャドウサーヴァントの中でもトップクラスだろう。
「お願い。あいつを殺して。」
淡々と、サーヴァントを道具のように扱うかのような指示。
普段の彼女であれば、絶対にありえない行為が狂装覇王により、
増幅した憎悪が全てを殺す決意の一線を、容易に超えてしまう。
命令を受けた魔女は右手に持った剣を手に肉薄する。
景清ほどではないにせよジャンヌ・オルタも敏捷は元がAだ。
低下してるステータスと言えど、ハチワレ以上の速度を出すには十分になる。
「ヤァーッ!」
起き上がると同時にさすまたを振りかざして相殺……にはならない。
召喚可能なシャドウサーヴァントでも最も近接戦闘を得意とするジャンヌ・オルタに、
今まで戦ってきた討伐対象とは違う強さを前にはじき返されて左手の旗槍の先端が頬を掠める。
散々危険な生物と戦い続けたのだ。仮に躱せずとも大きなダメージを防ぐ動きは可能だ。
「ウウ……」
ハチワレは司令塔となる藤丸さえ止めることができれば、
このシャドウサーヴァントの勢いは止まると確信しているが、
今の実力のままではそれらを乗り越えて彼女を止めることもできない。
殺すではなく、止める、だ。彼女の顔は誰が見ても荒んでしまっている。
ちいかわが草むしり検定に落ちた時を筆頭に何度も見てきた表情と近いのだ。
「な、なんとかなれーッ!!」
だから止めてあげたい。
けれどもそれができる手段はたった一つ。
ハチワレには、これ以外の武器は持ち合わせていないのだから。
『スミロドン!』
ガウェイン達が救出しにくる頃には戦いは絶対終わる。
だからこれを使用すること以外に、ハチワレに勝機は見いだせない。
暴走することがないことを願いながら首輪にベルトを着け、ガイアメモリを差し込む。
スミロドンの内包した記憶により、ハチワレは姿を大きく変えていく。
エネミーの姿が変わることは珍しくなく、藤丸は攻撃を一度やめさせる。
ハチワレが経験したパラレルワールドの時と違って、
腕や顔に生える毛並みは黄土色とも言うべきで、姿は思ってたのとは大分違う。
パラレルワールドでは(ちいかわの見た夢なので)姿は見れなかったがここは夜のビル街。
近くのビルの窓から、自分が怪物になっていることを自覚させられる。
(やっぱり。からだ、おっきい!)
最初に自分の変貌した姿を見たら、少しばかり驚いて数歩引く。
不安を煽る凶暴さが伺えるが、ガイアドライバーを経由してるため、
いつも鎧を着た人達と同じか、それ以上の身長に驚かざるを得なかった。
少なくとも今はあの話と同じように強さに溺れるほどではなく精神は維持できてる。
だからと言って、長い間変身し続けるのも不安があることは否定できないのもあり、
早期決着を望み、ハチワレからすれば巨腕となった爪による斬撃を振るう。
「防いで!」
藤丸の指示によりジャンヌ・オルタが武器をクロスさせて防ぐ。
最初は暫く拮抗していたが、勢いも相まって弾かれて投げ飛ばされる。
急いで景清のシャドウサーヴァントの剣戟で倒そうとするものの、
ゴールドメモリと言う通常のメモリよりも性能が高いガイアメモリ故か、
景清の苛烈な斬撃を前にしても、一歩も後退せず剣戟に持ち込めている。
「なら……サリエリ!」
基本白兵戦が二人で済むのもあって使いどころを悩んでいたが、
今ならばまだ非公開の状況。不意打ちのために残していた滅びの調べ。
ハチワレの背後に回り込んで、刺突による攻撃をしかける。
「ウグッ……!」
素早く動いて剣戟をしていたため狙いは逸れて脇腹を突く。
胴体を貫く痛みはあれど、まだハチワレは諦めることをしない。
「何とか……なれじゃない、なるっ!」
狙ったわけではないが、振り向きざまに裏拳がサリエリの顔面を直撃。
慟哭外装でステータスを底上げしてても低下したステータスでは、
ドーパントとなったハチワレの攻撃では非常に重いものとなっている。
顔面の鎧がボロボロと崩れていき、いくらサリエリでも一撃で倒されたことに困惑してしまう。
指示を忘れたことにより、そのまま景清の方も爪で切り裂いて影を焼失させる。
「ねえ。」
シャドウサーヴァントをある程度倒して、
一人になってる藤丸へとハチワレは声をかける。
声をかけられて一歩後ずさる彼女ではあるものの、彼に殺意はない。
だから彼(彼女?)の問いに受け答えすることを決めた。
「その、殺さないと、ダメなの?」
彼のいた世界では独特な雰囲気の喋り方が多い。
何を言ってるか端からは分からないちいかわやうさぎよりかは、
人間らしい言葉を使ってるが、ハチワレも割と分かりにくいものだ。
とは言え言いたいことは伝わる。殺さないと願いが叶えられない。
それ以外で、何とかできる方法は存在しないのかと問いかけてるのだと。
「……何も知らない貴方に、止められないよ。
たとえ知っていたとしても、私は止まるつもりはないから。」
罪悪感、慚愧。そう呼べるものが彼女にだってまだある。
でなければ、あの失意の庭で折れそうになることはなかった。
だが、あの惨劇を思い返せば結局燃え上がるような復讐心が覆う。
それを成す為であれば、たとえ冬の女王を相手にしてでも叶えて見せる。
これが、彼から出された答えを聞くこともないままやってきた彼女の心情だ。
昏き炎を心に宿した彼女は最早止まる術を知らないのだ。様々な復讐者を知っていながら。
いや、いたのかもしれない。だが彼女がその道に行くことはないと誰もが思っていたはずだ。
唯一の例外があるとするならば、影に潜む『彼』ぐらいだろうか。
「そっか……じゃあ、絶対止めないと!」
相手は人間であり、擬態型でもない。
つまりハチワレにとって討伐対象の類ではない。
だからどれぐらいの加減なら気絶させられるのかが悩む。
最悪一発で死んでしまうかもしれない彼女に、なんとかなれの感覚でやれるわけもなく。
どうするべきか、拘束できるものもないので、仕方なく気絶させるべく振り上げる。
不安しかない。ただの人間相手に力を、その上こちらは初めて使う力だ。
どれぐらい加減するべきか、悩みながら拳を振り上げるハチワレ。
「───巌窟王。」
その呟きと同時に、ハチワレののどに風穴が空けられた。
何が起きたか理解できない。ただ、彼女の影から帽子を被った黒い影が顔を出している。
まだ伏兵が潜んでいて襲い掛かってきた。ハチワレにとっては、そういう経験は皆無だった。
そういう不意打ちをするのは、基本的に擬態型のタイプであり隠れるのは少なかった。
喉を貫かれ、焼き尽くすような痛みにハチワレは立っていられない。
形容しがたい言葉で痛みで悶えていたところに、ジャンヌ・オルタも戻ってくる。
景清とサリエリはやられたからか、暫く呼べそうにない。
「……さよなら。」
ジャンヌ・オルタの影が手に持つ剣によりハチワレの首を断つ。
怪物だった存在は使用者の生命が途絶えたからか、元に戻る。
人によっては十分愛らしい、マスコットのような存在。
でも、殺した。人じゃないからセーフだとかアウトだとか、
そんなもの関係ない。藤丸立香は、明確な殺意を持って殺した。
この事実があればよかった。どこかで殺すのに躊躇う可能性だってある。
でも、それはない。それが証明できただけ、彼女にとって大事な一歩だから。
人理修復のマスターはいない。此処にいるのは、ただの呪われた復讐者でしかない。
「モルガン、多分派手にやってるんだろうな……」
遠巻きからでも聞こえてくる破壊の音色。
一体どんな戦いをしているのか、苦戦しているのか。
それがどうかは分からないが、合流できるようにはしておきたかった。
ほぼ同時刻、ベルゼバブが乱入したデパートでは。
「今ならば首輪一つの献上で余は此処から去ろう。
貴様ら小蠅を相手にするほど、余は暇ではないのでな。」
必要なのは適当な首輪を二つか三つ。
それと機械に対して強い奴を探せばいい。
少なくともこの中に機械に強そうなタイプはいない。
なので彼からすれば、好きに殺していいのと同義である。
ガルダンディーは足元でまだ生きてるようだが、ほぼ一つとカウントしていた。
「それで話通ると思ってんのどういう神経してんだよ!
一時のテンションに身を任せる奴は身を滅ぼすんだぞ!!」
長谷川が無職になった時のことを思い出すほどの行動力の化身だ。
そんな無茶苦茶なことがまかり通ってたまるかとしか言いようがなかった。
要するに俺のために死んでくれとしか言われてないのだから。
「そっちが首輪欲しさなら、悪いがこっちもやる気で行くぜ? 赤衝!」
赤く染まる手はシンプルにVITとSTRを上げ、臨戦態勢に入るオイカッツォ。
ただ、戦うために赤衛を選んだかと言われると、それは違う。
「おい新八MK2! 元参謀なんだろ策あんだろ。」
「新八って誰だよ!? と言うか分かってるだろそっちも!」
誰に言ってるのかさっぱり分からないが、
少なくとも銀時が顔を向けたのは城乃内の方だ。
分かってるとは何か。アレは無理だ。勝てないと言うことが。
モルガンは攻撃を防いだり避けたりしてるので耐久力は高くないと見える。
だが今落ちてきたベルゼバブは難儀していたガルダンディーを軽く蹴散らした。
しかもモルガンが険しい顔つきで彼を見ている。今までずっと冷めた顔をしていた彼女が、
初めて真面目と言うべきか、雰囲気が変わったかのような感じに見える。
だから防御力が上がる赤衛に変えて、生存率を高めた方針に変えていた。
「あのー、ベルゼバブさん? 背後にいらっしゃる方とかお勧めですよ?」
銀時が両手の人差し指で背後に立ってるモルガンを指す。
正直、全員が悟ってる状態だ。これに勝てる確率が一番高いのはモルガンだと。
こっちが今四人いたとしても、此処で同士討ちさせるのが一番手っ取り早い。
なんて見え見えの囮作戦、通用するわけがない。
「ほう。障害は排除しておくに越したことはない、か。」
『え、嘘? マジで?』なんて言葉が銀時から零れた。
本当に狙いがモルガンに定まり、ラッキーなんて思ったが、
「全員離れ───」
歴戦の猛者であるガウェインと、白夜叉と呼ばれた銀時だけが即座に対応できた。
ベルゼバブの翼の薙ぎ払いとモルガンの魔法攻撃が同時に繰り出されて相殺を起こし、
居合わせていた四人は揃って相殺時の衝撃波によってまとめて吹き飛ばされ、
近くの壁に激突する。無論、そこに気絶していたガルダンディー含む。
「小蠅程度の者ばかりかと思ったが、やはり貴様のような存在もいるようだな。」
「同感だ。所詮、あの程度の連中では私は殺せるはずがない。」
どちらも理解している。自分のような圧倒的強者を、
ジャイアントキリングできる参加者などほぼほぼいないのだと。
だからいるだろうと言う予測はできた。匹敵する参加者か支給品を。
まさか、最初からこんな存在と戦えるとは思いもしなかったが。
「いいだろう、ベルゼバブ。此処で片づけておくに越したことはない。」
「最初はつまらん余興をされ興が削がれていたところだ。貴様でこの溜飲を下げるとしよう。」
距離を取ると、翼を弾丸のように放つ。
速度から考えてもほぼ弾丸としか言えないレベルだが、
モルガンが障壁のようなものを張って、弾を弾いていく。
弾丸をばらまいた後は拳を突き出していき障壁を破壊。
顔面に届くかと思われたが、ブラックロッドが伸びて防がれる。
「これもう完全に怪獣大決戦とか人外魔境バトルのそれだよ!
此処は退いて立て直すのが正解だと俺は思うんだけど良いよな!」
一撃一撃が、普通の参加者ならまず死を予見させる戦いだ。
だと言うのに互いの表情は一切自分の死を、敗北を恐れない。
どうしたらこんな人外博覧会みたいなことを従ってるのかベリアルに問いたい。
「ああ、貴様の言う通りだ。
此処は仕切り直しだ。一人で戦ってるハチワレも回収しておきたい。」
「それで行くしかねえよな城乃内。」
「右に同じ。」
四人揃って意見は一致。
このまま同士討ちでも何でも勝手にやってくれ。
此処にい続けても建物の崩落に巻き込まれかねない。
「じゃ、今のうちに窓から───」
今ならば二人の戦いの余波で窓ガラスは粉々に砕けて簡単に出られる。
早速出ようと思ったカッツォだったが、何かがぶつかると同時に、
腹部に感じる異様な感覚と、見下ろしたことで見えたものに注視してしまう。
腹から槍が突き出ている。それが何を意味するかなど、分かり切っていたことだ。
アルベスの槍が、ガルダンディーがカッツォを背後から突き刺していた。
「テメエらみてえな人間がいるから、ラーハルトやバラン様は……アルベスの槍よ、力を示せぇ!!」
ガルダンディーには一人で逃げる手もあった。
二人の戦いで警戒度が落ちている今ならば外にでて飛べば逃げ切れる。
だが人間の醜さを知るガルダンディーに、人間相手に逃げるつもりなんかない。
口先だけではない、心底人間を憎んでいるからこそ攻撃を選んだのだ。
血は焼けて止まったものの、同時に焼けるような痛みに声にならぬ声を上げる。
「こいつ、生きてたのか!?」
「カッツォ大丈夫か!?」
「貴様ぁ!」
「まだやられるつもりはねえ!」
槍を強引に引き抜き、赤い絨毯や瓦礫に血が飛沫する。
無理やり引き抜いた為傷口は余計に開き、鮮血が流れていく。
シャンフロでこんなことは起きない。ある意味身をもって、
カッツォはこのゲームはリアルで動いていると言う認識を改めて感じた。
「逃がすか!」
「バカめ! 逃走ルートは決めてたんだよ!」
ガウェインが走り出すが、ガルダンディーは炎を壁に空を飛ぶ。
天井が二、三メートルの場所で飛行したところで優位性はない。
だから突入しなかった。だが、唯一の例外がそこには存在している。
(さっきベルゼバブが作った穴か!)
そう、ベルゼバブによって先ほど天井から一階まで叩き落された場所。
此処だけは夜空が広がる世界への逃走ルートが用意されていた。
「これが俺の逃げ道だ! 怪我の功名って奴だヒャハハハハハ───」
高笑いしながら空へと飛翔していく。
通路に穴が空いてる形で一階まで落ちたので2階の通路、
3階の通路と飛んで逃げるのを追跡することは可能だろう。
だが追跡しても空へ逃げられれば何もできないのと同じだ。
それではベルゼバブとモルガンの戦いに巻き込まれる危険も跳ね上がる。
早急にこの場から去らねばカッツォの回復もままならないが、
「……あ?」
それは、本当にたまたまであった。
ただ、現在ベルゼバブが空中を舞っていて、
モルガンが斬撃を飛ばす魔法を向けただけだ。
それを避けた先にいたのが、ガルダンディーなだけ。
本当に、ただそれだけの事故のようなものである。
その事故が、デパートを破壊しながら彼の翼を両断して墜落させる。
「ギャアアアアア!! こんな、こんなことでぇ!!」
瀕死のところに両翼を失い、高所からの落下。
空戦騎と言う肩書を持ちながらも、彼の死因は高所からの落下と言う、
余りにも救いのない、ただ運が絶望的にない惨めすぎる末路で幕を閉じる。
もっとも、彼の死を気にしてる余裕など此処には誰もいないのだが。
「仕方がない……埒が明かないのなら、いい加減終わらせるとしよう。」
「余興も長続きすれば冷めるものだ。」
おおよその相手の強さは分かった二人。
互いにとって今ここで倒さねば障害となり厄介極まりない敵だと。
ならばやるものは一つしかない。此処で本気で殺すための大技を。
デパートには余りにも不釣り合いな、赤い宝玉のような力が収束していく。
同時に、最果てに最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)が降り注ぐ。
施設一個では飽き足らず、周囲一帯を粉々にする気かと疑うレベルに力を使う。
「ケイオス・レギオン!!」
「はや辿り着けぬ理想郷(ロードレス・キャメロット)!!」
互いの持ちうる、最大級の攻撃で相手を滅する。
どちらも本気であれば世界を滅ぼすこともありうる力ではあるが、
流石にこの舞台それがまかり通ることはなく、威力は想像以上に控えめだ。
しかし、城壁で出来たデパートなんて施設は、跡形もなく消えていく。
近隣のビルの窓ガラスが耐え切れず砕けで、いたるところにガラスのシャワーを降らせる。
此処だけ災害が起きたかのように、残るは瓦礫の山と、
辛うじて難を逃れた特定の商品ぐらいのものだ。
周囲が荒れに荒れまくってしまっているが、モルガンはかけらも気に留めない。
しかし、ベルゼバブの姿はない。いれば再戦かと思ったが、一応彼は空中にいた。
衝撃か何かで飛んで行った、そう考える方が自然だ。倒せたとは思っていない。
「分かるまでは時間がかかりそうだな。
ガウェイン達も逃げたか巻き添えか……まあ、致し方あるまい。」
あの状況でも生きてる可能性はあるだろう。
願うならば、巻き添えで死ぬことを望むが。
「モルガン。」
そんな彼女に声をかけるのは藤丸だ。
この惨状を見ても彼女は何も言わない。
普段だったら『派手にやったね』とか言うものではあるが、
今の彼女には、そういった感情は持ち合わせてはいなかった。
「カルデアのマスターか。首尾は?」
「一応、一人殺せた。」
その証明として、ハチワレの首輪を見せる。
まるで何かの大会とかで賞を受賞して、メダルを得たかのように。
死体を確認させるのも手間だと判断し、ハチワレの首を切り落として手に入れた。
「そうか。有用性は見ていない以上何も言えないが、
少なくとも、貴様がカルデアのマスターと言う肩書を捨てたと、認識を改めよう。」
殺した。滅ぼしたではなく、殺した。
滅ぼさざるを得なかったではなく、殺した。
全て自分の我欲のためだけに彼女は殺したのだ。
「うん。」
もう後戻りはできない。人類最後のマスターなんて存在はもういない。
最早そのような存在は、この舞台のどこにもなかった。
「瓦礫であえて埋もれるは、正解だったな……」
モルガン達が去ってからしばらくして、
瓦礫の山から出てくるガウェインと銀時。
だがそんな悠長なことを言ってる場合ではない。
二人が去るまでの間に、ずっとオイカッツォが血を流し続けてきているわけだ。
そのままで身を隠す為十数分も出血しているカッツォの方の体力が限界を迎えていた。
「貴様らに回復できる薬とかはないのか? 俺にはない。」
「こっちはギャグのオンパレードで何もできん。
俺の術式を開示されたらふざけてるのかと言われる。」
「術……なんだそれは。魔法の類か。」
煉獄さん探知機に煉獄さんメガネにネオry。
正直笑い話にしたかったが、とても今はできそうにない。
ギャグもシリアスでやるにはタイミングと言うものがある。
当然今の状況で、そんなことできる空気ではないのだ。
「俺の方にもそういうのはなかった。カッツォは……あったら使ってるか。」
「俺もだ……探そうにもモルガンが来ては全てが終わる以上、人も呼べない。」
誰か人を探したいところではある。
ガウェインならばまだ体力に余裕があるが、
それで敵を呼び寄せたら本末転倒である。
「クソッ、視界がぼやける。マジで死ぬのかよ……」
寒い、痛い、震えが止まらない。
ゲームでは軽い程度で済まされていたものが、
今は現実の痛みとして襲い掛かってきている状況。
一瞬食事もできる神ゲーと思ったが、とんだクソゲーだと内心ごちる。
死んだら復活することもない、一発の死ですべてが終わってしまう。
「サンラク、って奴を探せ。あいつならこのクソゲー、攻略するはずだから……」
『なら、あいつならクリアできるじゃん』と、
痛みのせいでわけのわからないことを考え出す。
ことクソゲーにおいては、彼以上の適任はいないのだと。
生きていることを願いたい。俺にとっては友人でもあるから。
そんなことを願いながら目を閉じ、脈がなくなったことを確認し、彼の死を受け入れる三人。
全員出会って間もないほぼ初対面だ。話す内容もうまく見つけられない。
「……えっと、ガウェインだっけ。」
沈黙を破ったのは城乃内。
この中で一番関係が浅い二人だ。
「何だ?」
「カッツォの首輪、頼めるか? 後どっかに落ちてそうな鳥のも。」
頼めるか、と言うのは首輪のことだ。
死体に対する尊厳のない行為はしたくないが、
今後必ず必要になる。最悪戦極に渡す必要があるかもしれない。
その時のために取っておきたくもあり、得物が斧の方が簡単だろうと言う判断だ。
「構わんが、お前自身はいいのか?」
「このクソゲー攻略が、あいつの頼みだからな。」
会って数時間。恋愛感情とか友情とか、
そういったこともないただの協力者に近い。
でも、せめて遺言だけでもやり遂げておきたい。
パティシエとゲーマー。何ら関係ない二人で最初に決めたことだ。
「分かった。死体を操るとかの可能性もあるだろう。瓦礫を墓地代わりにするぞ。」
「この辺コンクリで埋める場所ねえもんな……」
カッツォのアイテムを回収したのち、
外からは見れないように瓦礫で埋めていく。
せめて安らかに眠ってほしいが、それができるのは、
きっとこの殺し合いが終わってからだろうなと思う城乃内だった。
【ハチワレ@ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ 死亡】
【オイカッツォ@シャングリラ・フロンティア~クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす(アニメ版) 死亡】
【ガルダンディー@ドラゴンクエスト -ダイの大冒険- 死亡】
【E-4 デパート跡地周辺/黎明/1日目】
【藤丸立香(女)@Fate/Grand Order】
[状態]:疲労(中)、ラプソディ・イン・バーサークによる精神への暗示(極大)、憎悪(極大)、諦念
[装備]:
[道具]:基本支給品一式×2(自分、ハチワレ)、不明支給品×1~2、No.80狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク@遊戯王ZEXAL、青いさすまた@ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ、スミドロンメモリ&首輪型ガイアドライバー@仮面ライダーW、ハチワレの首輪
[思考・状況]
基本方針:優勝して、家族をーーキリエと取り戻す。
1:邪魔をするなら、誰も容赦はしない。
2:モルガンに「利用されるに値する」価値を示す
3:妖精どもは救われるべきじゃなかった。
4:キャメロットにティンタジェル……テノチみたいな感じなのかな?
5:殺しちゃったな……あれが人じゃなくても、自分のために。
[備考]
※参戦時期は不可逆廃棄孔イド第十三節、鏡の向こうの自分自身に『キモチがよかった?』と問われた直後
※ラプソディ・イン・バーサークによって精神が影響を受けています。本来の藤丸立香(女)ではあり得ない行動や言動を取るようになっています
※ラプソディ・イン・バーサークの影響で四体のシャドウサーヴァントの操作精度が上がっています。
扱えるシャドウサーヴァントは『竜の魔女』『滅びの調べ』『怨の武者』『恩讐の男』の四体です。ただしオリジナルよりだいぶ弱体化しています。
※モルガンからモルガン自身の最後の前後で起こった出来事を知りました。
【モルガン@Fate/Grand Order】
[状態]:ダメージ(大)、魔力消費(大・回復中)
[装備]:ブラックロッド@DRAGON QUEST -ダイの大冒険ー
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~2
[思考・状況]
基本方針:願いを手にする。全ては愛しきパーヴァン・シーの為
1:一切の容赦しない。敵は滅ぼす。利用できるものは利用する。
2:付いていくなら勝手にするがいい、カルデアのマスター
3:キャメロット城へ向かう、余り期待はしていないが、念の為だ。
4:あの少年(乙骨)は、一応警戒しておく。
5:我が城も人になったと言うのか。汎人類史ならありうるか。
6:ベルゼバブはどうなったか。
[備考]
※ブリテン異聞帯でのモルガンです
※参戦時期は退場後
※全体的に出力に制限がかけられています。
※藤丸立香(女)に、異聞帯での自身の最期の前後で起こった事を話しました。
【坂田銀時@銀魂】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:追尾機能付きアプリ@オリジナル、真打・無命切@グランブルーファンタジー
[道具]:基本支給品、煉獄杏寿郎のメガネ@鬼滅の刃
[思考・状況]
基本方針:殺し合いするわけねえだろ。
1:煉獄さんを探す。どうやら北らしい。
2:モルガンとかバブさんとかどうすりゃいいんだよ。
[備考]
※参戦時期は原作の方は少なくとも吉原編以降。
※グラブルは少なくともコラボイベントと4アビフェイトエピソード経験済み。
グラブルに限らずメタ知識などについてはやりすぎない程度ならある程度自由です。
ジータ、セルエルについて覚えており、煉獄杏寿郎、虎杖悠仁、乙骨憂太、夏油傑についてある程度知識があります。
セルエルからの派生でヘルエスがセルエルの姉だろうと見当をつけています。
【城乃内秀保@仮面ライダー鎧武】
[状態]:疲労(中)、仮面ライダー黒影に変身、健康
[装備]:戦極ドライバー+マツボックリロックシード@仮面ライダー鎧武、それに付随する槍
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2(回復系、籠手などなし。自分×0~2、オイカッツォ×1~3)
[思考・状況]
基本方針:とりあえず乗らない。
1:初瀬ちゃん、また力貸してくれ。
2:にしてもオイカッツォといい師匠といい、
そういう男性に会うのは何か理由でもあるのか?
いや、カッツォの場合はそういうのとは違うんだけども。
3:戦極には会いたくないが、早いとこ何とかした方がいいとこもあるよな……
4:師匠何してるんだろうなぁ……
5:モルガン達に警戒。こええよ。
[備考]
※参戦時期はテレビ本編終了後。
【ガウェイン@グランブルーファンタジー】
[状態]:疲労(中)
[装備]:バハムートティア@テイルズオブシンフォニア
[道具]:基本支給品×2(自分、ガルダンディー)、アルベスの槍@グランブルーファンタジー、ランダム支給品×1~4(自分×0~2、ガルダンディー×1~2)、オイカッツォの首輪
[思考・状況]
基本方針:ベリアルを倒す。
0:ハチワレの仇のフジマルも倒す。
1:騎空団メンバーと合流する。現状はグランサイファーが目的地の候補。
2:モルガンには要警戒。フジマルは未知数だ。
[備考]
※参戦時期は少なくとも光フェイト以降。
※ハチワレの名前を正しく認識しました。
「モルガン、と言ったか。」
モルガンの攻撃をケイオス・レギオンで相殺したと言っても、
ベルゼバブの攻撃と違ってあちらは面の攻撃が非常に広いものだ。
無論、威力は殺し合いが破綻しないレベルで調整こそされているが、
その差は意外と侮れず、思わぬ手傷を負ったことを少しばかり侮っていた。
現にデパートから大きく離れた位置に、彼は立っていたのだから。
「アスタロトのような魔力を持ち、ルシファーのような智恵者と言ったところか。」
最高評議会でも名のある三人の内二人を内包させた存在。
それがモルガンと言う女性。であれば、強いのも納得である。
肉体は脆いからか、攻撃は避けたり防ぐ傾向があったのも大きな情報だ。
とは言え自分の強さを改めて実感できた。それだけでも十分な収穫だった。
【???/黎明/1日目】
【ベルゼバブ@グランブルーファンタジー】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3
[思考・状況]
基本方針:狡知も参加者もすべてを屠り、余こそが唯一無二の存在となる。
1:何はともあれ首輪のサンプルが必要だ。
2:特異点についている場合はどう対処するか。
3:狡知は必ず殺してくれる。復活するならルシファーもだ。
4:モルガンか。余興としてはちょうどいい。
[備考]
※参戦時期は少なくともバブ・イールの塔ができて身体が復活してから。
※ロワを破綻させるだけの力はありません。
※どこへ飛んで行ったかは後続にお任せします。
※デパートは壊滅しました。漁れば何か使えるものはあるかもです。
E-4の周辺がかなりあれています。また瓦礫で埋めてますがハチワレ、オイカッツォ、ガルダンディーの死体が見つけられるかもしれません。
最終更新:2026年07月25日 17:36