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 飛来する斬撃と毒の入り混じった二段構えの攻撃。
 直撃でも掠り傷でも無視できない傷になりうる、上弦の鬼だからこその強さ。
 これと堕姫との共同であることを以てしても上弦の末端でしかない存在だが、
 そも上弦の鬼は長い間顔ぶれが変わらないぐらいに、柱とも戦って生き残っている。
 たとえ二人で末端の席に居座るとしても、それがイコール弱者とは侮るなかれ。
 特に無惨からもある程度の評価を貰うぐらいに貪欲な存在でもある。

「邪魔よ!」

 二人揃って始末せんと迫りくる血の斬撃は、
 信長の一振りである獄炎の大剣から放つ炎が全て蒸発させる。
 結芽もまた見てから避けるほどの機敏さで、近くの岩がスライスされるだけ。
 漁夫の利を狙った攻撃は、どちらを相手にしてもうまくいくことはなかった。

「あ、やっとやる気になってきたんだね。」

 明眼で索敵ができる結芽も存在には気づいていた。
 声をかけなかった理由はただの気まぐれとも言っていい。
 妓夫太郎が何をしたいのかを、単に待っていただけになる。
 ただ先の攻撃の鋭さ。並の荒魂以上に危険な存在なのはすぐに理解する。

「やっぱり強ぇなぁ……柱なんかよりもずっと強い。」

 妓夫太郎の奇襲は失敗した。
 隠れている意味もなくなったので姿を現すと、
 双方から奇異と言うほど悪いものではないものの、強い視線を感じる。

「物の怪の類、であるか?」

「おにーさんすっごく細いね。ちゃんとご飯食べてる?」

 存在自体が化け物じみてる第六天魔王からすればその姿は些事なこと。
 荒魂と言う特殊な生物を見てきた神の宿りし刀使からしても些細なこと。
 容姿に対するコンプレックスに近しいものを持っている妓夫太郎にとっては、
 二人からの反応が思ってるよりも薄いものであり、僅かばかりではあるが面食らう。

「でも、あれだけ強い攻撃ができたってことは、おにーさんも相当強いんでしょ?」

 外見上はとても強いとは思えない風貌をしているものだが、
 攻撃を消し飛ばしたり躱した。それは即ち、当たってはならない攻撃。
 二人を同時に斬撃を飛ばしとしていたことを考えれば、
 相当な自信を持っていたことに変わりはなかっただろう。

 だが此処に来たのは単なる語らいのためではない。
 人の生き死にを決める場。迅移にも負けぬ移動速度で、
 瞬きの間には間合いが詰められ、血鬼術で作られた刃が迫る。
 勿論、この程度で死ぬようならばあの英霊とせめぎ合うことはなく。

「おー問答無用。ニヒッ、信長のおじさんもそれでいいよね?」

 笑みを浮かべ、空中を舞いながら高速で着地、と同時に妓夫太郎へと袈裟斬りを狙う。
 先の戦いで再生力が落ちているのもある為、無駄に攻撃を受けるつもりはない。
 すぐに鎌で防ぐが、銃声と共に耳に風穴が空いた。

「三者による戦か。ならば是非もなし。」

 信長の左手には禍々しい銃を持つ。
 別にここは神聖な御前試合でもなんでもない。
 使えるものを全て使って許される、何でもありの蟲毒。
 第六天魔王でも、神を宿らせた少女でも、上弦の鬼でも関係ない。
 ようは勝ち残ってしまえばそれでいい。バーリトゥードのようなものだ。
 銃だろうと刀だろうと血鬼術だろうと、どれを使うにしたってかまわない。
 そして、相手を選ぶ理由もない。見つかった以上はやるしかないのだから。
 鎌と御刀が、相手の首を刈り取るべく火花を散らしながら切り結ぶ。
 鎌と言う、本来ならば凶器に適しているのか怪しい代物ではあるが、
 攻撃は十数回行われるものの、一度たりとも届くことはなかった。

 割って入るように、炎を纏った刃で迫る第六天魔王の横薙ぎの一閃。
 炎を纏った斬撃は、使用者も相まって不遜な存在を処刑するかの如き一撃。
 互いに得物をぶつけあった反動で距離を取り、首を断たれることはなかった。
 続けざまの一撃となる銃弾を一発放つ。先ほど同様に狙いは妓夫太郎。
 見た目からしてただの銃ではない。藤の花は流石に早計が過ぎるが、
 遊郭での戦いはそうやって油断したから一瞬やられかけたところも大きい。

「血鬼術、跋弧跳梁!」

 だから当たらないことを前提として、
 全方位に斬撃を繰り出す技を駆使して弾丸と接近を許さない。
 流石に相当な量の斬撃を出されては結芽も接近することはできなかった。

 ならば、と言わんばかりに結芽の優先順位は信長に変更。
 タギツヒメと融合した結芽の刃は、にっかり青江でなくとも魔王に劣勢ではない。
 妓夫太郎が襲い掛かる前の時と同じように信長が獄炎の大剣と共にせめぎ合う。
 違うところがあるとすれば、防御を終えた妓夫太郎も追加で攻撃を仕掛けてきた。
 二対一。個々の強さならば遅れはとらぬものの、純粋に敵の手数が増えている。
 剣と銃と言う、普段の信長と同じ戦闘スタイルではあるが、状況は別だ。
 相手は迫りくる雑兵ではない。名のある武将か、それ以上に匹敵するであろう連中。
 結芽は優れた剣技を持ち、妓夫太郎もまた武将に負けず劣らずの覇気を、貪欲さを持つ。
 それが攻撃の糧となり、苛烈な二人相手に信長は反撃をするタイミングを見計らっている。
 かと思えば、結芽が突然妓夫太郎の首を狙って、咄嗟に鎌で防いで剣戟が一度止まる。

「邪魔、しないでくれる?」

「あぁ?」

 彼女は自分の力だけで最強を目指している。
 二対一と言う彼女が最も嫌う群れて戦う行為については嫌悪が強い。
 そんなこと知ったことではないと言わんばかりに両者に鎌を振るっていく。
 さっきそこの男の銃と同時に攻撃していたじゃないかと言いたくもあったが。
 あれは信長が勝手にしたことでもあり、彼女としては納得はいかなかった。

「二人同時でもいいんだよ?」

 自信過剰のような発言だが試しとばかりに二人で肉薄する。
 別にただの結託ではない。信長にとっては余興の一つに過ぎない。
 斬れれば所詮口だけの小娘で終わる。けれどそうはならなかった。
 二人がかりでも明確な傷は与えられない。迅移による大きな加速と写シの防御。
 にっかり青江はなくとも刀使は刀使。使用者に選ばれれば能力は確実に上がる。
 一人で優勢、とまではいかずとも二人の攻撃を捌くぐらいの力は見せていた。

「アハッ、やっぱこうでないとね?」

『戯れが過ぎるがな。』

 内に潜むタギツヒメも呆れ気味だ。
 こいつらはどう見ても衛藤可奈美や十条姫和、
 彼女たちより強い。タギツヒメの目からしてもそうだ。
 そもそも、もう一人の自分がどこかで野垂れ死んでるわけだ。
 別に二人より格上の存在が出てきたところで、大して驚きもしない。
 とは言えやはり三つ巴。隙を見せた相手を集中的に狙う妓夫太郎、
 炎を纏わせて裂こうとする両者を狙う織田信長、負けず劣らずの実力を持つ。

 三人の剣戟の中、信長が距離を取って銃撃を放つ。
 火縄銃と言えば織田信長ではあるが、持ってる銃は別物だ。
 第六天魔王の眼力を模した筒と呼ばれる天魔鬼眼筒に弾の補充は不要。
 ゆえにリロードの間なんてもなのはなく、双方に五発ずつ放つ。
 弾丸は両者は避けたり切り裂く芸当によって防がれていくものの、
 妓夫太郎の方は一発だけ防御し損ねて頭を撃たれ、その場で倒れる。

「あれ、おにーさん終わり? あっけない。」

 ちょっと期待してたのになぁ、なんて思うが背後から迫る炎の刃。
 空中を翻し、頭部に突き立てるかのごとき鋭い突きを見舞う。
 それを背中にでも目がついてるかのように理解しているのか、
 天魔鬼眼筒を横薙ぎに振るって攻撃を防ぐ。

「戦国時代って、こんな強い人がいたんだ。」

 中々一撃が決まらず、普通だったら癇癪や腹立たしく思う状況。
 しかし結芽にとっては強さを証明するためならばその程度問題ではない。
 それに相手は日本で教育を受けたのならば誰もが知っている織田信長だ。
 これが楽しまずにはいられない。セタンタに逃げられてしまったときは、
 消化不良だったのも相まってかつての英傑との戦いができる戦場。
 これが、強さを求めていた彼女にとって嬉しいことしかない。

「血鬼術 円斬旋回・飛び血鎌!!」

 地面に着地して攻めると同時に、妓夫太郎が起き上がった。
 脳天を撃たれて生きていると言うことに反応する二人だがそれどころではない。
 無数の飛び血鎌が迫ってきている。獄炎の大剣の炎でも全てを蒸発は不可能。
 このタイミングを狙って妓夫太郎はあえて脳天に一発だけ食らって死んだふりをした。
 鬼狩りである鬼殺隊以外に、首が弱点だと言うことを知られてないが故の使い道だ。

「やはり物の怪の類、であるか!」

 此処で、初めて防ぐでもなく横へ飛び距離を取る。
 結芽の方は、予備動作もなしに飛んでくる攻撃に回避は間に合わない。
 写シによる肉体に対するダメージを肩代わりしてもらいながら、
 回避した後は地面を軽く転がって身を起こす。

「おにーさん、やっぱり人間じゃないんだ。私達と同じ?」

「俺は鬼だからなぁ……この程度じゃあ俺は殺せねえ。寧ろあれを受けずによく生きてるなぁ。」

 首を日輪刀で斬り落とせば別だがな。
 などと言った有益な情報を与える義理はない。
 同時に写シと言った能力を教える義理も彼女にはなかった。
 まだまだ三人の戦いは楽曲で言う序曲にすぎない。
 三者共にこの殺し合いには乗ったもの同士。
 止める理由なんてどこにもない。

「……誰か来るな。」

 だが止まった。最初に反応があったのは妓夫太郎だ。
 隠れるタイプの足音ではない。その音は逃げるように、
 音を隠すことも、気配を悟らせることもないように駆け抜けていく。
 何かから逃げている。幾多の戦いを経験してきた三者はそう感じる。
 そして三者が争ってる場に、乱入して草木を分けて出てくるのは、二人の男女。
 出てきたのはフレイザードと激闘を繰り広げていた、ジータとホル・ホースの二名。
 この二人が、もこの場に乱入する。

「有象無象のホトトギス……ではない、か。」

「おねーさんも遊びたいの?」

 ホル・ホースはスタンドを出してないので分かりにくいが、
 もう一人の方、ジータは両手に得物が若さの割に様になっている。
 強いかどうかは未知数ではあるものの、多少はやれる相手の認識だ。

「皆逃げて!」

「あぁ?」

 疑問を妓夫太郎がぶつけようとした瞬間、
 彼女の達の後方が明るくなり、すぐにジータはホル・ホースを抱えながらジャンプ。
 同時に彼女が先ほどまでいた場所は燃え上がる、と言うよりは溶けるに等しい。
 離れていても熱気が周囲に拡散され、近くの木がそのまま発火するほどの威力だ。
 戦っていた三者も争ってたが、状況の一辺により一時休戦のように攻撃の手を緩める。
 油断、と言うよりは何か嫌な予感がする。そんな第六感が三者に告げるかのように。
 二人が最初にいた場所にワープする、三メートルはあろう異形の怪物。二人とも気づいており、
 ホル・ホースが頭部めがけて皇帝の弾丸を全弾放つが、掠り傷程度にしかならないでいる。
 少なくとも、互いを敵視をしている場合ではない、と言うところは三人とも察しがついていた。





 ジータとホル・ホースはフレイザードとの戦いの後、
 グランサイファーへと向かいながらの情報交換をしていた。
 と言っても、ホル・ホースが聞いた情報は余りにも膨大なものあり、
 彼が彼女に話せたのはエンシンの件と、承太郎は味方だが色々あって敵と思われてる程度だ。
 釣り合いが取れなさすぎるじゃねえかと内心でごちるものの、こればかりは仕方ないと割り切る。

「えーっと、ジータの嬢ちゃんよ。一体ベリアルにどんだけ恨まれてるんだ?」

「分からないけど、少なくともこの殺し合いがルシファーを呼び戻すためのなのは分かってる。」

 そのルシファーも星や島どころか、世界を全てを消し飛ばすと言う目的。
 気ままな風来坊をして、いい女と出会って、時には仕事をして日銭を稼ぐ。
 彼にとっての人生哲学が、別にやめる気はないにしても小さいものだと感じる。
 神と世界そのものに叛逆を企てる奴の復活なんてスケールが余りにも大きすぎる話だと。

 とは言え、一方で大きな情報は得られた。
 彼女は騎空団の団長をしており、知り合いは多くいる様子。
 情報のアドバンテージとして、これ以上にないぐらい得られている。
 青嶋との二者択一における選択は間違ってなかったことが証明された。
 とは言え、世界がどうだのと言ったスケールのでかい話についてはついていけない。
 スタンド使いではあるものの、言ってしまえば一般人に何かが付属しただけの存在だ。
 DIOみたいな支配も、承太郎のような使命感も持ち合わせているわけででもなく。
 とんでもない事態に巻き込まれてしまったと言うのだけはすんなりと飲み込めた。

「なんだ、その。大変だなおたくも……」

 情報量の多さには頭痛がするものの、なんにしても得られるものは得た。
 ベリアルとも交戦経験あり。ならばついて行けば自分の生存はかなり高いはずだと。

「……えーっと、ジータ。マジか? マジに言ってるのか?」

「うん。ベルゼバブは敵だけど、相手がベリアルなら協力すると思う。」

 元はベリアルと手を組んでいた星の民。
 今は謎の塔で鍛えては自分たちと戯れているが、
 その気になれば彼個人でも世界の危機になる状況だ。
 味方、と言うよりは利害の一致で仲間になる可能性はある。
 勿論、一筋縄ではいかないのは分かっている。この舞台においても、
 彼女が知る限りでは最強の一角の存在を成しているわけだから。
 当面の目的は仲間を集めてベルゼバブにも協力を持ちかける。

「でも、問題は殺し合いに乗らないわけじゃないんだよね。
 あくまでベリアルとルシファーを倒す。その為に近いかな。」

 ベルゼバブは自身が唯一無二の特異点を目指す男だ。
 言葉だけならば耳障りはいいものだが、利用価値がないと判断すれば躊躇なく殺せる。
 もう既に一人か二人殺していてもおかしくはない可能性だって既にありえる話だ。
 ジータとしては構わない。アスタロトの部下であるメイガスやら元殺人鬼のロベリア、
 問題ばかりを抱えている団員がいるため半ば感覚麻痺してると言う自覚は持っている。
 あくまで自分ならだ。一般的な倫理観を持っていたらまず反対されてしまうのだと。
 そこを何とかしなければならないのが、若くして団長であるジータの役目でもある。
 まずは団員に伝えないといけないが為にも、一番仲間が集まるであろうグランサイファー、
 そこに向かっていたのだが、道中で地面ごと焼き尽くすような炎が数発、二人を襲う。
 方角から熱気を感じていたのでジータは先に気づいてホル・ホースを引っ張りながら走る。
 数歩後ろを見やれば、燃えてると言うよりは溶けているに等しい熱を持っており、
 躱した後も冷汗ではない、暑さによる汗が二人の頬を伝う。

 そして続けてくる第二射。手の内は分かったので一先ず二人は逃げを選ぶ。
 森の中だから火災に気を付けなければならない、と言うのも確かにある。
 だがあれは参加者ではない。レデュエの言うにはその手の存在はすでにいないので、
 あれが支給で召喚された存在であると言うのは、首輪がないことから察している。
 とにかく、二人で挑んでも勝てそうにない。だから一度逃げて、仲間を探す。
 ……その筈だったのだが。

「なら、俺は退くとするかぁ。」

「え。」

 妓夫太郎は後方へ跳躍して即座に森の奥へと逃げる準備をする。
 元々漁夫の利で逃げられないと判断して、先の戦いに参加していただけ。
 人間と共闘するなんてものは、無惨の命令がなかったとしても断る姿勢だ。

「血鬼術 飛血鎌!!」

 試しにこれで倒せるかと思って、
 飛血鎌を放っては見るが、ゼットンがバリアを張って周囲を守る。
 『やっぱ効かねえなぁ』などと呟きながら、森の奥へと彼は消えてしまう。

「……行っちゃった。」

 バリアみたいな技があると分かったのは収穫ではあった。
 だが肝心の戦力が減ってしまっていては困る状況でもある。

「引き際を見極めていていいんじゃない?
 あ。どうせだし私は参加するよ。信長のおじさんは?
 このまま最後まで殺し合ってもいいけど、アレ邪魔に見えるし。」

「余の障害となりうるならば、滅するのみよ。無論、貴様等小童もだ。」

 一応協力の姿勢を見せてくれてるのはいいが、
 両方とも殺し合いには乗ってるのが分かるジータ。
 この状況ですぐ逃げた相手も、恐らくは乗ってると。
 二人とも殺意と言う名のプレッシャーが凄まじく感じる。
 多くの仲間や敵を見てきたがゆえに理解できることでもあった。
 聞いてくれるだけありがたいことであるのは事実だが。

「……ホル・ホースさん! 後で追うから現地で集合してください!」

「ま、役に立たねえんじゃそりゃそうだな!」

 銃弾をものともしないし、急所を狙ってもバリアがある。
 自分の戦力外通告は当然のことであり、本人の意志的にも逃げたかった。
 逃げる口実を作ってくれたのはありがたいと言わんばかりに全力で走っていく。
 残されたのは三人で、あの三メートルはあろう巨獣を相手を倒さなければならない。

「えっと、ユメちゃんとノブナガさんでいいんだよね。」

「あ、そっか。名簿で知ってるんだっけ。」

「何用だ、小童。」

「とりあえず、ありがとうございますとだけ!」

 態々手伝ってくれる。人がいるだけでも救いだ。
 一人ではどうにかならないことも、誰かがいれば変わる。
 彼女にとってはいつものことではあるし、これが終われば敵かもしれない。
 それでも、残ってくれた人にも感謝をしないと言う選択肢はなかった。
 真っすぐゼットンへと向かって走り、傑剣への憧刃を振るう。
 ゼットンが両手の鋏のような腕を上げると、バリアが張られる。
 刃はバリアに弾かれてしまい、まず本体に届くことはなかった。
 二回、三回、四回と続けざまに攻撃を放っても届かない。だが攻撃をやめない。
 これが無駄な行為だと理解しているのにも関わらず攻撃する理由は何なのか。
 結芽が木の枝の上へ着地して、ちょうどゼットンの頭上を取る形となった。
 四方には展開されるゼットンシャッターだが、唯一頭上からのバリアが出ていない。
 攻撃することは容易となっており、頭部に刃を振るわれる。
 あくまで召喚されただけで本物ではないゼットンだとしても、
 外殻装甲で出来ているゼットンの身体は、彼女の一太刀でもダメージが軽微だ。

「かった……! 何で出来てるのこれ!?」

 生物において最も固いのは一体何か。
 そう問われたら『これ』と答えそうなほどに頑強だ。
 信長もバリアの破壊、と言うよりはジータごと斬りにかかってきていた。
 殺気には気づいていたので回避しながらもゼットンのバリアへの攻撃は止めない。
 まさか、協力せざるを得ないこの状況であっても狙ってくるのかと冷汗をかく。
 まだその時ではないとから襲わない、団にもそういった人いる経験はある。
 けれどそれでも手を出さず、なし崩しの共闘があったので今回も大丈夫、ではなく。
 それがなかったら確実に上半身と下半身が両断されてる姿が脳裏をよぎる程鮮明な殺気。
 少し引きつった顔になりながら、バリアが硬くない部分を必死に探すように得物を振るい続ける。
 それでもバリアを解除させることはできず、結芽が只管に頭を狙っていると、
 突如ゼットンが消滅して、三人の攻撃は全て空振りに終わる。
 ワープや瞬間移動などの類かと思って三者は辺りを見渡す。

『試しに使ったが、時間制限も存在するか。』

 別の存在がいたことを最初に捉えたのは信長だ。
 異様な気配が、他の二人も気配を感じ存在を確認する。
 ゼットンとは違う。白い、人型ではあるが異形の存在。
 三人がかりでもゼットンには致命傷を与えられなかった。
 それだけこの支給品が人によっては破格の性能の証左となる。
 再度呼び出すとしても、これは相当な制限はかけられているとみていい。
 だがオーバーロードの、フェムシンムの王たるロシュオが落胆はしない。
 人の道具の使い方を学んだ。ありふれたことであり、些事でしかなかった。

 新たに現れた異形の怪物を前に、三者は警戒を怠らない。
 ロシュオは休息のため人の寄り付かない端のエリアを目指してみたものの、当ては外れたようだ。
 相手は三人。先ほどよりはできるとみていいだろう。

「先の物の怪。奴は貴様による茶番と言うことか。」

 あれは強い分、再度呼ぶまでに時間を要するのだろうか。
 となれば、アレを相手に本気で戦うのは愚策に等しいもの。
 一定時間逃げていればどうとでもなったのだから。
 ……もっとも、魔王である信長が逃げに徹するのも、
 おかしな話ではあるのだが。

「えー、何それすっごくむかつくんですけど。」

「ううん。無駄じゃなかったと思う。ノブナガさんも加わったおかげで、
 ずっと防御してくれてたから、攻撃を受けないで済んだって受け取れる。」

 不意打ちはともかくとして、
 信長も攻撃に参加したから時間稼ぎができたのは事実。
 呉越同舟かどうかは分からないが、今はとりあえず味方らしい。
 いつ殺しに来るか分からない、と言う点を除いて。

「フン、一端の小娘が余を語るか。」

 時間稼ぎで何とか森が延焼していく可能性は減った。
 使役していた人物も飛び出してきた。ならばあとはやることは一つ。
 出てきた相手をなんとかする……だが、不安要素はいまだ多い。

「……童共。なにゆえ、退かぬ。」

 信長が一歩前進しながら銃口をロシュオへ向ける。
 あれは自分が処するべき敵であると言う考えを持つが、
 残る二人はその殺気に充てられても退くことはしなかった。

「私? ちょっとむかついたから。」

 強敵と戦えることを望むのはこちらの結芽も同じ。
 消化不良で終わらせてしまったのでフラストレーションが貯まる一方だ。
 『戯れが過ぎるぞ』と、タギツヒメも言ってるが、悪い気分ではない。

「あの……人? でいっか。あの人が殺し合いに乗るなら、私は止めないといけないから。」

 問題児となる人物に対して和解や協力をするジータではあるが、
 アレは無理だ。ゼットンと言う殺意の塊みたいなものに殺されかけた。
 此処で倒さなければ、より多くの人の犠牲になる。それぐらいの強さ。
 呉越同舟。敵の敵は味方。そう楽観視していたところ、信長が走り出す。
 二番手は結芽、三番手にジータの順番で肉薄していく。

「三人か。ならば問題はないか。」

 青い衝撃、否念動力が襲い掛かり信長を吹き飛ばす。
 後続の二人は即座に飛来する信長を回避するべく散開。
 迅移で加速を続ける結芽による、目潰しの斬撃。
 何処に目があるのか判断しがたいところだが、とにかく目に近い部分だ。
 人間がどれだけ鍛えようとも、急所である目は鍛えようがない。
 怪物にこの理屈が通るのかどうかは別として、やる価値はあると。
 近づく結芽に対してヘルヘイムの蔦が彼女を捉えんとするが、
 スピードであれば負けておらず、蔦を悉く回避し続けて間合いに入る。
 人間でいう目に当たる部分に横薙ぎの一撃を叩き込むものの、
 ぶつけても火花が散る程度。とてもではないが失明させるのは不可能だ。
 人体における急所を狙ってもこの頑強さを前に、驚くのは当然のことだった。
 持っている自前の剣で、薙ぎ払うことにより結芽を一瞬にして両断していく。
 普通なら此処で死ぬものだが、写シのお陰でダメージは軽い鈍痛程度だ。
 最後にジータによる剣戟。大剣相手にぶつけあうのは当然不利であり、
 ダンサーやマスカレイドで培った柔軟な動きで剣を躱しつつ、
 攻撃を仕掛けるものの、残念だが業物である傑剣への憧刃と言えど、
 八幡力で強化された御刀の一撃で傷かどうか怪しいのにダメージなるはずもなく。
 周囲を吹き飛ばすような熱源のオーラを放ち、ジータも二人同様に大地を転がる。

(フレイザードよりも固い……! でも短剣だと火力の高い技は出せない!)

生き残るのも楽じゃない、ね……!」

「フハハハ、ハハハハハ!!」

 三人の攻撃が大して決まっていない。
 信長に至っては攻撃すらできていない状況。
 しかし、信長は笑う。戦国乱世に英傑がひしめく中、
 アレはどの将の何者であっても負けないであろうと言う確信が持てていた。
 武田も、上杉も、豊臣や本多忠勝であってもあれには単独では勝てないだろう。
 織田信長と言えば魔王として恐れられることはあるものの、ユーモアもなくはない。
 蘭丸をある程度は気に入っているし、ザビー教の南蛮のものに興味を持ったりする。
 一方で、そういうお茶目なところがあっても魔王の肩書きは揺らぐことはない。

「是非もなし! 余の力、貴様を越えてこそ焦土に立つ第六天魔王に相応しい者ぞ!」

 一度気圧された程度でなんだと言うのか。五体満足、動けぬ部位もどこにもない。
 第六天魔王を名乗るであれば『あの程度』を乗り越えずしなければ名折れだ。
 ダメージを無力化した結芽、最小限に抑えたジータを置いて、一人再度肉薄する。
 人を容易に持ち上げる念動力と言えども、完全不可視で見えるものではない。
 飛ばされる青い歪をよけながら、白兵戦にまで持ち込み、剣戟が始まる。
 凄まじい衝撃のぶつかり合いで、周囲の小物は震えては飛んでいく。

(ベルゼバブもだけど、そりゃそうだよね……!)

 考えてみればそれはそうだ。
 ベルゼバブ一強では一方的なワンサイドゲーム。
 偏ってる方が好みとベリアルは言っていたけれど、
 ある程度ベルゼバブに届きうる実力を備わった参加者もいる。
 少なくともあの二人ならば、一人でも到達できるかもしれない。
 どんなバランスを想定しているんだと、少しばかりのイラつきと共に起き上がる。

「私も混ぜて!」

 あの中に割り込める参加者はそうはいない。
 少なくとも、ホル・ホースでは衝撃だけでKOだろう。
 ジータも混ざるべきかを悩んでるところ、結芽は直行していく。
 どちらも格上。だからと言って挑まず逃げるのは性に合わない。
 迅移から間合いを詰め、二人による剣戟をロシュオは剣一つで対応していく。

「小娘、疾く失せよ!」

「やだ! おじさんもこいつも倒せないのは癪だし!」

 同時に攻撃を仕掛けたり時おり隙を与えない攻撃をするが、
 隙あらば信長は持っている銃で結芽を狙わんとしている。
 此方は当たることはないものの、ロシュオの放つ熱波により吹き飛ばされていく。
 倒れる地面を転がる結芽へとロシュオの剣がつきたてられる寸前に迅移で回避。
 ならばと同じように倒れる信長に念動力を使うも、転がる形で起き上がって避ける。

(これ、このまま放っておいた方がいいのかな……あんまり好きなことじゃないけど。)

 あの三人は殺し合いに乗った側だ。ならば三つ巴では好都合なこと。
 慈善事業みたいに人を助けるジータでも三人とも止められそうにない。
 ゼットンを使役する者なら、他の参加者にだって脅威となりうるが、
 その後をどうする? どちらも我が強いので敵同士でもありうることだが、
 最悪二対一で戦わなければならない可能性がある。

(一度退避するべき……だけど!)

 彼らの殺意は本物だ。説得も不可能だ。
 だからと言って、皆を放置することはできなかった。
 残せばそれだけ敵は増えてしまう。全員は無理でも、
 一人でも多く倒しておきたい。それが捨てきれない彼女の性分なのだから。
 残りの二人にも攻撃を受けないよう、気を配りながら短剣の二刀流で攻める。

(しかし、先の状態からの連戦は無謀か。)

 三人の猛攻を大剣で防いだり、
 強化された骨格で無視しているが、
 一方でロシュオは十刃、鳳蓮と連戦の勝者ではあるが、
 だからと言ってそのダメージを無視できるものではない。
 確かに今は二人の得物では傷をつけても痛手ではないが、
 それが十、百と刻まれていけば流石のロシュオにも倒されかねない。
 これ以上の時間をかけて三人を倒すのは、現実的な話ではなかった。
 フェムシンムの王と言えども、流石に力の使い過ぎになっている。
 休息は少なくとも、必須の状態であることは否めない。

「仕方あるまい……『大嵐』。」

 攻撃を防がれ、一度同時に振るって距離を取った三人。
 そして、ロシュオが翳したカードは文字通り大嵐を発生させる。
 互いの魔法、罠をすべて破壊するカードなのだが、使用目的はそれではない。

「しま……」

 どちらかと言えば副次的な効果。
 大嵐の名を冠するだけあって、全員が暴風に飲み込まれてしまう。
 ロシュオも例外ではなく、全員が嵐の巻き添えとなりどこかへと飛ばす。
 最悪飛んだ先が空の底に落ちるかもしれないが、これ以外に今の彼に手段は選べなかった。
 フェムシンムの王と言う強さはあれども、彼もまた妻のために死ぬわけにはいかないのだ。

 四人は風にさらわれて、どこかへと散ってしまう。
 だが、いずれも百戦錬磨の戦士達だ。何処へ散ろうとも無事だ。
 ロシュオは何となくだが、それを感じ取ることができた。

【???/黎明/1日目】

【織田信長@戦国BASARAシリーズ】
[状態]:憤怒(極大)、疲労(大)
[装備]:獄炎の大剣@ドラゴンクエストウォーク、天魔鬼眼筒@御城プロジェクト:Re
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~1
[思考・状況]
基本方針:皆殺し
1:参加者を見付けて殺し、最後にはベリアルも殺す
2:結芽、ジータ、ロシュオを殺す。
[備考]
※参戦時期とどのナンバリング出典かは後続の書き手に任せます。
 人間だった頃なので少なくとも3出典ではありません。
※大嵐でどこかへと飛びました。

【燕結芽(Another)@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火】
[状態]:疲労(大)
[装備]:水神切兼光@刀使ノ巫女
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2(確認済み)
[思考・状況]基本方針:優勝して総浸食計画の邪魔になるベリアル(と言うよりその能力)を奪う。
1:にっかり青江を探す。
2:セタンタのおにーさんとはまた戦いたい。
3:信長のおじさんとも戦うつもり。あのガリガリの人(妓夫太郎)もいいし、怪物(ロシュオ)でもいいかも。
[備考]
※参戦時期はAnotherバージョン、可奈美と姫和と交戦中。
※写シなどは使えますが、能力は本来の御刀より劣化します。
 ただしタギツヒメと融合してるので差はそこまでないのかも。
※名簿上では燕結芽です。
※大嵐でどこかへと飛びました。

【ジータ@グランブルーファンタジー】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)
[装備]:傑剣への憧刃(デュクスラム)×2@シャングリラ・フロンティア(アニメ版)
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~1
[思考・状況]
基本方針:ベリアルの企みを、ルシファー復活を阻止する。
1:よし、やるぞ!
2:みんな……無事でいてほしい。
3:ベルゼバブは、危険だけど頼りになるから困る。何とか説得しないと。
4:グランサイファーに向かいたいけど、それどころじゃない。

[備考]
※参戦時期は少なくともApocrypha:After the Fall終了後以降。
※容姿は原作におけるファイター・オリジンのものとしてます。
※制限で素では涯てにはなれません。
※大嵐でどこかへと飛びました。

【ロシュオ@仮面ライダー鎧武】
[状態]:ダメージ(中破状態)、疲労(中)、火球の火傷
[装備]:ダークリング、怪獣カード[パンドン]@ウルトラマンオーブ、大嵐(使用不可)@遊戯王OCG、ジョエシュイム@仮面ライダー鎧武
[道具]:基本支給品一式、不明支給品x2~3(鳳蓮2、自身1)
[思考・状況]
基本方針:優勝し、王妃を甦らせる。
1:…暫し休息を取る。
2:フェムシンムの裏切り者(レデュエ)には罰を。

[備考]
※ゼッパンドンの力により、流魂街は半壊状態となっています。
※怪獣カード[ゼットン]を使用しました。
 ゼットンを再使用する場合は12時間の制限があります。
 怪獣のサイズは3メートル、また呼んでも一定時間で消えます。
※大嵐でどこかへと飛びました。


「ジータの嬢ちゃん、大丈夫かねぇ。」

 後方で起きた大嵐は、
 少なくとも遠巻きにも見えた。
 まああんな怪物(フレイザードなど)にも物怖じすることなく戦っていた上に、
 団員にも慕われるぐらいの人間だ。多分大丈夫だろうと言う謎の確信はあった。
 一先ず、近くまで来れたので、ホル・ホースはグランサイファーで休息をとることにする。


【B-8/黎明/1日目】

【ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:顔面打撲(軽微)、鼻血(小)、全身にダメージ(中)、出血(小)、疲労(大)
[装備]:薄刃乃太刀@るろうに剣心
[道具]:基本支給品一式×3、不明支給品×1~5、ネオタチカワスペシャル@TOUGH
[思考・状況]
基本方針:とにかく生き残る。脱出最優先。優勝? 無理無理
1:ジータ側につく。俺は女に世界で一番優しいんだ
2:相棒になり得る参加者を探す。No.1よりNo.2だぜ、俺は。
3:できることなら女は殺したく無い。
4:承太郎はどうする? DIO様もいねーし、ほっとくか?
5:グランサイファーまで行く。

[備考]
※参戦時期は少なくとも承太郎と面識がある以降
※ジータのヒールオールで(ついでで)怪我がいくらか軽微になってます


【???/黎明/1日目】

【妓夫太郎@鬼滅の刃】
[状態]:疲労(小)
[装備]:血鬼術で作った鎌
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考・状況]
基本方針:優勝して妹を幸せにする。
1:あいつ(フレイザード)とは当分会わないでおく。
2:鬼狩りを優先。
3:なるべく不意打ちを狙う。

[備考]
※参戦時期は死亡後。
 ですが肉体は鬼です。
 再生力は落ちています。
※血液の毒の効果はかなり落ちています。
※まだスマホを確認していません。
※どの方角へ向かったかは後続の書き手にお任せします。

【天魔鬼眼筒@御城プロジェクト:Re】
信長に支給。第六天魔王の眼力を模した筒。天魔の睥睨が武威となり敵を討ち滅ぼす。
余談だが、裏小牧山城のモチーフ武器。つまるところ信長ゆかりの城が持つ銃でもある。

【大嵐@遊戯王OCG】
ロシュオに支給。お互いの魔法・罠を全て破壊する効果だが、
本ロワにおいては、全員を吹き飛ばす目的で使用されている。
(本来の使い方も可能だが、今回は全員その程度で壊れる武器を持っていなかった)
使用後、10時間は使用不可能。



033:その点アウラちゃんは立派やね。男の三歩後ろをついて来とるわ 投下順 035:[[]]
時系列順
001:一体いつから ジータ
ホル・ホース
012:Ignited Night 燕結芽(another)
妓夫太郎
織田信長
016:Alone for the Final Battle ロシュオ

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最終更新:2026年06月23日 00:09