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「あ、あの!」

 イグニスをメーアに任せ、荒野を只管に駆けていたラガッツォとリコ。
 彼女に合わせて速度を落としてるとは言え、これまでもペースが落ちることはなかった。
 見かけの若さとは裏腹に身体能力は随分高い方なのだと言うことでわずかに感心する。
 エクスプローラーズから逃げたりフィールドワークが彼女の主な行動だったのもあり、
 少なくともそれなりの身体能力があるということがよく伺える。

「大丈夫、なんですよね?」

 大丈夫と言う意味が何なのか。
 分かり切っている。メーアのことだ。
 派手にやると、何か作戦があるから二人を遠ざけた。
 勝算があるからこそ自分たちを巻き添えにしたくなかったと。
 だいばくはつのようなものかもしれない不安があるのは拭えない。

「悪いが、俺からはそれは答えられねえな。」

 当然、助けてくれた側の生存を願う。
 人間そういうものだし、彼とて願ってないわけがない。
 とは言え、イグニスを一人で倒す。それはどうにも想像ができなかった。
 あの男の実力は今身を置いてる騎空団の中でも、かなり限られてくるレベルになる。
 だから彼も半ば生存を諦めているが、そういった現実を教えたところで意味はない。
 とにかく今は走る以外にない。放送があったもののほぼ聞きそびれていた二人には、
 地図も見れてない以上、何処へ向かってるのかさえ分からないまま走り続けている。
 比較的遮蔽物のない荒野では後方から追ってくる敵を視認しやすいのはありがたいことだが、
 言い換えれば向こうも視認してくる可能性があるので、早めに何とかこのエリアを抜けたい。

(さっきよりも岩陰が増えてるな……あいつの強さから、
 仮に先回りしても不意打ちをすることはねえからましか。)

 無論、ここら一帯で隠れてイグニスをやり過ごそうなどとは考えはしない。
 だからこのまま突き進む以外にない。幸い走るペースはそれなりに維持できており、
 相手がいかれた速度で動けば別だが、このまま走って身を隠しやすい場所に隠れるのも手だ。
 ……地図を見れてない以上、森の多い北へ向かうという発想がないのが問題ではあるが。

(にしても何人なら勝てるんだ? あいつに……)

 メーアの敗北前提で考えるのはいかがなものかと思うが、
 だからと言って彼女の強さに全幅の信頼を置く程の交流も何もなかった。
 無策で挑める相手ではないだろうし、今の人数でも勝てるとは思っていない。
 ラガッツォの想定では五人もいれば(あの謎の攻撃を除けば)勝てる見込みはあると踏む。
 問題は、メーアのように犠牲を払わなければならないと言うことに軽く舌打ちしていた。
 多対一に十分に慣れてる相手に、どういう手段を用いれば突破できるのだろうか。
 自分の頭の悪さにかきむしる。あれは魔法か何かの類だろうと言うことは分かっても、
 答えが見つからない。やはり自分には魔術に関する素養はないのが恨めしく思う。
 ヤンキーやそっち系の仕事をしているような風貌に見えるし、事実その手のことをしてたが、
 外見とは裏腹に、ラガッツォは宮廷に仕える魔術師の家系に当たる人物でもある。
 初歩的な魔術もろくにできず、親からは虐待を受けた苦い過去を思い出す内容だが。

「ッ! てめえら伏せろ!」

「え?」

 突然身を翻し逆走し、近くの岩陰に抱えたリコごと滑り込む。
 石ころも散見するので多少の掠り傷があるが、幸い義手なので怪我は少ない。
 それとほぼ同時に、ガトリングガンの如く銃弾が二人がいた位置の地面が穿たれる。

「も、もうあの人に追いつかれたんですか!?」

「違う。あいつは銃なんてもん使う必要がねえ。別の敵に出会っちまったみてーだ。」

(先ほどの車といい、やはり一筋縄ではいかないようですわ。)

 秤の賭場に置いていた飯豊朔太郎の支給品を回収した後、
 クラッシュタウンに向かっていた異能肉とロットンではあったが、
 会話内容は別として、別の参加者がいることに気づくことはできた。
 父から虐待のレベルで鍛えられた彼女は、並の兵士よりも遥かに優れる。
 ロットンと言う一般人では気づけないようなことにも簡単に気づき、
 彼を待機させて岩陰に隠れれば、走っていた二人を見つけた。

(義手にペット……随分多彩な人を招いたようで。)

 彼女は十二大戦前から招かれてるので、
 鳥や兎のような生物や死体を操る能力と言った既視感はない。
 (もっとも、最初に脱落する未来の彼女が能力を知るすべなどないが)
 先の二人は逃がしてしまったが、今度は走ってると言うことは移動手段は皆無。
 いや、仮にあっても割と周囲は岩によって身を隠せるレベルの場所が充実している。
 だから車と言った大人数走らせるのは困難、と言うことでもあるのだろう。

(今度は逃がしませんわ。)

 先の装甲車ばりに硬かった車とは違う。
 地の利もいいとは言えないが攻撃の優位性はある。
 RABBIT―224式拳銃の速射性は凄まじいもので、
 本来ならば一瞬にして空にしてしまうものではあるものの、
 ノンリロードで弾数が無限と化してる今、逃がさないように撃ち続ける。


「クソッ、飛び道具かよ!」

 相手の様子を確認しようとするが、
 大量に飛び交ってる銃弾を前には確認すらできないでいた。
 ラガッツォの戦闘スタイルは義手から出す炎と、徒手空拳が基本戦術。
 当然遠距離から届く攻撃に対しては自身の義手ならはじくことはできる。
 だが、数が余りにも多い。弾切れなんてこと一切考えてない乱射ではあるが、
 これが厄介だ。流石に全てを弾き飛ばすほどの弾丸は流石に難しい状況だ。
 湯水のように弾丸を放っている以上、その内終わるかリロードのタイミングを待つ。

(……いや、いくらなんでも長すぎるだろうが!!)

 そう思いつつも三分程時間が経った。
 ガトリングガンではないのは視認できた。
 だからいつか弾切れを起こすはずなのに、未だに終わらない。
 追加でロベルタの傘の銃撃もあるが、此方も弾切れの概念はなかった。

(どう見てもリロードいるだろうが! 錬金術師か何かで弾が尽きないのか!?)

 当然、相手の能力などイグニス同様に知ったことではない。
 向こうが当たる当たらない以前にこうして乱射してる以上、
 自分は当然として、マスカーニャの搦め手が一切通用しない。
 マジカルリーフやトリックフラワーではこうも乱射の前では攪乱の意味をなさない。
 ならばふいうちとも思うが、先行させた後続けてラガッツォの連携が間に合うかどうかだ。
 下手をすればマスカーニャが攻撃の対象にされてしまう可能性だって十分にある。
 距離にして15メートルほどの距離。ラガッツォが間に合うかどうかの選択肢を突きつけられる。

(……いや、何で無駄に撃ち続けるんだ?)

 もう片方に持つロベルタの傘の強さを知らないラガッツォに浮かぶ疑問。
 出てきそうな素振りを見せたら撃てばいいのに、全くその気配はない。
 ただ撃ってるだけ。そこに殺意と言った感情らしいものはなかった。

「どうしたのマスカーニャ……え、上?」

 マスカーニャに肩を何度も叩かれ、上をさす方角に何事かと空を見上げる。
 見上げた瞬間、絶句するリコを見てラガッツォも空を見上げ、唖然としてしまう。
 全長10メートルはあろう、氷の鎧のようなものを纏った長い龍が空を舞っていた。
 氷のような翼や鱗と思しき姿は夜にも相まってとても幻想的な姿をしているとも言えるものの、
 これが敵が放った何か支給品だと想像するのに、時間をかけることはなかった。

(相手の目的はこいつだ! 何だよあの魔物! 星晶獣か何かかよ!?)

 二人そろって脳裏で警鐘が鳴り響く。
 何処へ逃げればいいのか。出たところで銃弾の雨。
 だが今すぐ逃げなければ、氷の龍が今にも襲い掛かってくる。
 残された時間はほんの数秒。限られた時間の中、二人は行動を起こす。

「嬢ちゃん、そいつで葉っぱをばらまけ!」

「え?」

「いいからやれ!」

「は、はい! マスカーニャ、マジカルリーフいっぱい!!」

 切羽詰まった状況なのは見ての通りだ。
 大量の葉を周囲にまき散らし、周囲の視界を塞ぐ。
 同時にラガッツォがダッシュしていき、リコもそれに続く。
 先ほどいた場所には龍のブレスにより地面が急激に凍っており、
 いくら炎の力を扱えるラガッツォでも正面から受けたくはない。

(視界を覆っても無駄ですわ。)

 視界を覆うほどではあるが、異能肉の能力を前にしては攪乱にはならず
 向こうも出してる草は恐らくただの葉っぱ程度のもの。弾丸を防ぐことは不可能だ。
 両手に得物を構え、右にも左にも出ても対象を撃ち漏らすことは決してない。
 同時に、空を舞う龍からの氷のブレスもある。逃げる場所などどこにもない。





 そう思っていたのは、彼女だけだ。
 マジカルリーフで攪乱してきた以上、避けて近づきつつも別の岩陰に隠れる。
 それを繰り返すことによって自分へと接近していく、短い時間でそう判断した。
 傘の方を使わなかったのは、銃器を二種所持していることを隠すためのブラフだ。
 もし二人が左右に分かれて岩陰から飛び出しても、両方に撃つことができる。
 傘を構え、両手の銃で左右双方へと狙を定めず乱射し始めるが、

「マスカーニャ、トリックフラワー!」

 二人が選んだのは右でも左でもない、
 岩をそのまま飛び越えて、ラガッツォはリコを抱えながら跳躍。
 すぐさま空中に身を乗り出した二人を狙いに両方の銃口を合わせるも、
 マスカーニャの出した蕾が爆発し、迎撃には失敗し吹き飛ばされる。

(……ッ!)

 爆発物ではあるものの、手榴弾といった殺傷性と比べると特別高いわけではない。
 だから吹き飛ばされこそすれども、転ぶことなく姿勢を整えて二人を狙う。
 異能があるからと言って、それに甘んじて胡坐をかいてきたわけではない。
 家族の期待に応えるべく鍛えた戦士としての矜持も持ち合わせているのだから。

「右後方! 隠れてるもう一人の方を頼んだぜ!」

「はい!」

 態々跳躍したのには理由がある。
 異能肉の両手を見ればどちらも銃(と銃を仕込んだ傘)だと分かった。
 その上でずっと銃撃していたとなれば、両手が塞がっていることになる。
 他の支給品を取り出す暇なんてない。近くに伏兵がいて、そいつが召喚したと。
 相手がルリアみたいな体質なら話は別だろうが、敵が一人だと考えるべきではない。
 その相手を探す為にジャンプして、リコ達が作った隙を見て居場所を特定する。

「はい! マスカーニャ!」

 着地と同時に降ろして、指示通りの方角へと向かうリコ。
 舌打ちしながら逃げる男の姿を捉え、リコは急いで向かう。
 そして拳の射程に入ったことで、異能肉へと右ストレートを叩き込む。
 間一髪距離を取り、拳の風圧を顔面に浴びせられる程度だ。

 ノンリロードで銃弾は無限に用意できる。
 だからと言って、彼女が完全に能力依存の弱者には非ず。
 銃を手にしたのは父からの教えではあり、別に徒手空拳に弱いわけではない。
 虐待と言っても差し支えのない教育を持った彼女の強さは、当然折り紙付きだ。
 ナビスの構成員の一人であったラガッツォも強いが、まともに受ければ危険であり、
 義手の両腕をクロスさせることで防ぐことに成功するが、軽く後退させられる。

「ハッ、やるじゃねえかよ!」

 女性蔑視とかそういう感情は彼にはない。
 同じ元ナビスのフィオリトだって鍛え上げられた拳は凄まじいものだ。
 今更体術が強い相手を前にしたところで、それが女性でも男性でも変わらない。
 常在戦場の如く鍛えられた彼女は、銃がなくとも鍛えられたスペックは並の戦士を凌駕するものだ。
 とは言え、二人はボクサーのようなエンターテイメントの試合をするつもりはない。
 全てが許容されるバーリトゥード。当然金的と言った普通ならば反則行為も許される。

(チィッ!)

 だが、魔術師の才覚はない彼もまた格闘センスを磨いているので対応力も一級品だ。
 迫る拳を、義手に備えている火の力で防御するだけでも異能肉にダメージを与えてくる。
 おかげで攻撃する猶予はあっても、そうはさせない。義手以外を狙おうにも、
 その義手からバーナーのように溢れる炎が攻撃させる手段を奪っていく。
 銃も使えず、格闘戦も圧倒的に不利。ならば彼女のできる選択肢は少ない。

(また時間稼ぎってところか? 裏をかいた策かもしれないが。)

 攻めの一手が明らかに減り、回避に専念し始めた。
 徒手空拳ならばラガッツォに分があるのは確かだが、
 別に十天衆のシスのような最強格の力があるわけではない。
 だから逃げに徹されると膠着状態になることはよくあることだ。

 ただ、動きから意図的に置いた銃から自分を距離を取らせているのは伺える。
 となれば、気を付けなければならないのはリコに任せたもう一人の相手の方。
 リコを振り切って銃を回収、そして背後からの挟撃。ありえない話ではない。
 最低限の殺し合いのルールとして、支給品があるというのはベリアルが言っていた。
 銃が二丁転がってるとして、何か他にも持っているのかと、把握するすべは存在しない。
 武器を回収して相方との反撃の可能性を摘もうとして、三つめの銃の可能性もありうる。
 或いは、リコがやられて先ほどの龍が襲い掛かってくるパターンも考えなければならない。
 優位な状況におかれてるからと言って、油断するつもりもない。空の底に落として殺した、
 義父であるフェルディナンドはなぜか生き返っていたというありえないものを目撃した。
 流石に殺し合いである以上復活なんてものそうはないだろうが、警戒するに越したことはない。

「どうやら、形勢逆転のようで。」

 不敵な笑みを浮かべながら自分の勝利を確信した異能肉。
 根拠はどこにあるのか。今の状況で何を見てそう思えたのか。
 銃ではない。自分が壁になる可能性があるとはいえ、誤射すれば味方に当たる。
 となれば、何を以って勝利を確信したのか。おおよそ予想はついて突如ジャンプ。
 相手は攻撃をしていないので余りにも無意味に見えるが、地面が凍らされていく。
 空を見上げれば、先の氷のドラゴンがラガッツォの上空を徘徊している状態だ。

(やっぱあいつに無理させたのはまずかったか!)

 体格差は当然として、常に制空権を持っている状態だ。
 いくら誰かが使役していたとしても、いるだけで圧をかけられる。
 しかも氷のブレスは瞬間で凍結している。当たれば無傷ではいられない。
 使用者を倒せば消えると判断したが、リコを制したと思しき相手は出てこない。
 かといって状況確認で捜索なんかしようものなら、異能肉は即座に銃を回収してくるはず。
 そうなれば二対一、ドラゴンも含めれば三対一。どうあがいても詰みの状況だ。

(だが言い換えればまだチャンスはある。)

 リコが戻ってこないなら、複数敵がいることが確定だ。
 あのドラゴンは目の前の相手でない奴が使役しているのなら、
 もう一人の方からそれを使役できるアイテムを奪えばいい。
 問題はどこにいるのか見当がつかないこと。仮にラガッツォが移動し、
 相手が銃を回収して狙いをつける。そこまでの時間にどれだけの猶予があるか。
 このまま戦っては勝てない。考える猶予は残されてないためあらぬ方向へと走り出す。
 一瞬異能肉も虚を突かれて行動に遅れたが、時間にしても一、二秒程度の違いだ。
 銃を放置して動いたのならば回収のチャンスとなる。ラガッツォの炎もあるので、
 攻める手段を失っていた以上、銃の回収は半ば必須であるためロットンより其方を優先する。

 空高くジャンプし、周囲を見渡す。
 見渡した中に人影の姿はあり、躊躇なく炎の弾を飛ばす。
 黎明とは言えまだ夜間。炎が灯されれば存在を示す材料になり、
 ロットンも気づいて飛び出るように回避し、距離を取ろうと全力で走る。

「逃がさねえ!」

 上空へと炎の弾をバスケットボールのように放ち、着弾箇所はロットンの目の前だ。
 かろうじて直撃する前に足を止めたことで燃やされるという心配は必要ない。
 一方で尻もちをついて大きな隙を見せてしまったところを見逃すはずもなく。
 再度逃げ出そうとしたところを、左腕を掴むと同時に躊躇することなく力を入れ腕をへし折る。

「グッ、アアアアア……!!」

「テメエか、あれの持ち主は。随分便利そうじゃねえか。」

 思いのほかあっさり捕まえられて呆気にとられそうになるが、能力や支給品で抵抗の可能性もある。
 ラガッツォが義手でロットンの首を絞めながら立たせて壁にして、一応人質として使うことにする。

(使い物になるか怪しいがやるだけやっておくか。)

 相手は殺し合いに乗ってるような連中だ。
 当然、優勝は一人である以上いつかは相手を切り捨てるための共闘程度の関係。
 このまま人質にしても、一緒にハチの巣にされてしまう結果を想像するのは容易だ。

「あの飛んでる龍を止めねえならこのまま首をへし折られるか、
 この面の俺と一緒に女に撃たれて心中するかの二択だがどうすんだ?」

 提示こそするが別に心中する気は一切ない。
 それでも顔立ちから脅しの材料に使うことはできる。
 一先ず邪魔さえなければ、彼女と戦うことは可能だ。 
 いかつい顔と元々が裏社会で活動していたナビスの一員。
 その光景はどっちが悪党なのか判断がつかないところだ。
 ただ問題なのは、

「チッ、やっぱりか!!」

 銃を回収した異能肉は、予想通りロットンごとハチの巣にするつもりだ。
 咄嗟に一緒に倒れるように岩陰に転がり込むつもりだったおかげで、
 二人とも多少の弾丸は掠る程度のダメージになる。
 無論、ロットンを逃がさないように首は絞めたままだ。

「おい、オメエの使ってるドラゴン! あれで女を氷漬けにするなら助けてやるぜ!」

「……それよりもいいのかよ? 連れのガキはどうしたのかって───イデデデデデ!」

 余裕ぶったところ、先ほど折った左腕に力を籠めて悲鳴を上げるロットン。
 あいにくと団長程危険な連中に甘い性格はしてしてないため行動にも躊躇がない。
 リコのことは心配なのはそうだが、いまだ姿を見せないとなれば死んでいる可能性もある。
 ただ、その辺のことは彼女に悪いとは思うが後回しだ。目の前の状況の打開をしなければならない。
 何とかさっきの銃撃は躱せたがロットンと言う文字通りのお荷物を抱えて逃げるのは不可能。
 時間はもって数秒。支給品の奪い合ってる間に銃の射線に到達するのは目に見えている。

「異能肉! ちょっと待て! こいつはやばい爆弾を抱えてる! 下手に撃つとテメエも死ぬレベルだぞ!」

(……は? ああ、いや、そういうことかよ。)

 ロットンの突然の叫び。
 何を言ってるんだとなりかけたが、すぐにはったりだと気付く。
 彼なりの生存戦略。銃弾の嵐を受けないようにするための、リスクの提示。
 だが、その程度彼女は止まるつもりはない。当たり前の話だ。ラガッツォは炎を使役する。
 万が一爆弾があるなら、さっきの戦いのように爆発する恐れがある中で炎など扱うわけがない。
 自殺願望者ならまだしも、人質を取って生存を図っている相手にそんなのあるはずがなかった。

「ロットン、貴方は所詮その程度ってことで。」

 哀れみを見ながらロットンには聞こえないよう小さく呟く。
 考える時間もなくあっさりと見限った。当然と言えば当然だ。
 龍を使役していたのは多少驚かされたが、言い換えるとその程度でしかない。
 彼自身に期待できるものが何かあるのかと思ってみれば邪魔な荷物になるだけ。
 ドラゴンを駆使して一人は排除できたようだが、それぐらいは出して当然の結果だ。
 けれどもう人質になってるのならば意味は薄い。此処で切り捨てるのが一番だと。
 二人殺せば支給品はほぼ二倍確保できる。人質を利用した戦術に時間をかける意味はない。
 多少は哀れみの眼差しを向けながら、傘を向けて引き金を引こうとする。
 人二人を貫通できる可能性の銃の方が、まとめて殺すことができるので気が楽だ。

 引き金を引くその寸前、月の光で動く影が見えたことで銃と視線は背後に向けた。
 迫る二振りの得物。銃弾すら防げる防弾繊維で出来ているはずのロベルタの傘。
 生半可な一撃などこれで防げると傘を広げるものの、それは容易に切断される。
 続けざまにくる木剣による鋭い一撃を不意打ちでも避けられたのは、教育の賜物か。

(新手! しかもこんな距離まで近づかれたのに影がなければ気づけなかった!)

 当然だ。彼女も血の滲むような努力で鍛錬をしていたと言えど、
 諜報活動も行う御庭番衆の御頭である四乃森蒼紫に、気配を消して接近など造作もない。
 それでも気づかれたのは、両親の期待に応えた異能肉の能力の高さによるものと、
 咲季に手当てされたとはいえ、蒼紫の足の負傷で対応が僅かに遅れているのがある。






 二組が交戦を始める少し前に、
 蒼紫は咲季の約束に則って二人で行動している。
 ただ、蒼紫と咲季の間にさしたる会話と言うのは見受けられない。
 元々余り語らない蒼紫なのと、年代も時代も違う二人が雑談で盛り上がるはずもなく。
 精々その時代の差から、過去や未来にもベリアルは干渉できているということが理解できただけだ。
 それ以外はない。と言うより、呑気に雑談で油断していれば危うい状況になるのを避けたくもある。
 殺し合いの経験なんてものはない。空を飛んだり、炎を操ると言った異能も持ち合わせない。
 あくまで一般人……と呼ぶにはスペックが高すぎると思われるが、咲季も一応人間である。
 だから少なくとも、戦闘に長ける蒼紫に索敵を任せるのが一番現実的なものだ。
 雑談で会話してたら撃たれて死にました、などと言う笑えない冗談が待っている。
 あくまで借りを返す為に暫く行動している。貸し借りの関係なのも拍車をかける。

「銃声か。」

 先に気づいた蒼紫が静かに呟く。
 その言葉に立ち止まり耳を済ませれば、彼女にも微かに音が聞こえる。

「来るなら細心の注意を払え。」

「え?」

 たった一言呟いて、咲季を置いて一人で向かった。
 一方的に会話を終え困惑する咲季だが、一応彼女を気遣っての行動ではある。
 銃声に龍と既にレベルの違う戦いの場。武器が銃だけでは心もとないからだ。
 ……あるいは、無数の弾丸と言うところが、嘗て仲間を死に追いやったガトリングが、
 辛うじて修羅ではなく人であることを示す最後のブレーキを無意識にやっているのか。
 奇襲は失敗し、即座に近くの岩陰へと転がり込んで銃撃を防ぐ。

(三人。片方は人質、片方は銃か……)

 なお、どちらが敵なのかの判断したのは二人の方だ。
 殺し合いが肯定されてる中、人質を取る意味は壁か交渉材料でしかない。
 だがロットンのハッタリについては大声もあり聞き取れたことが決定打だ。
 協力している人物二名。一見すればこちらの方が納得できるやもしれないが、
 ロットンの叫びは巻き添えにしたくない発言は巻き添えにしたくない正義感とは違う。
 今爆破されたら自分に当たらなくても重傷になるからやめろと言う、保身のための声色だ。
 そして誰が敵か見定めて優先順位となった異能肉へ、陰陽交叉によって得物を両断に至らせた。
 鋼鉄のトンファーすら簡単に断ち切ることができる蒼紫の小太刀二刀流は並の剣技に非ず。
 加えて、斬刀「鈍」の切れ味は少なくとも、この刀が存在した世界で斬れぬものはなかった。
 傘が両断されると残された方で迎撃と共に距離を取るも、流水の動きで回避と攪乱を同時に行う。

(早い。しかも殺気に気づけたのもほぼギリギリ。そんな戦士もいると。)

 十二大戦に参戦する前の彼女からすれば興味を引く存在だ。
 これほど気配が消せる相手をと出会うことは早々にない。
 さぞ名のある相手であると同時に見抜けない程、彼女は愚かではない。
 傘は使い物にならなくなった。最悪鈍器として使えるが銃としては完全に壊れた。
 ロットンは使い物にならない、敵は前後にいる。異能肉の状況は最悪と言ってもいい。
 降参? 無理だ。少なくとも蒼紫は生かすつもりがないのは目を見て理解できる。
 ならば残されているRABBIT―224式拳銃を連射して、追加の支給品を得るだけだ。

「テメエと心中なんぞする気はねえぜ…… ブリューナク! 俺に攻撃だ!」

 蒼紫に対応して銃口がそれた瞬間ブリューナクへ命令を出す。
 銃口を向けられてる以上、見限られたというのは明らかだ。
 龍に指示を出すと、ロットンとラガッツォをもろとも凍らせる氷のブレス。
 何か対策でもあるのかと思ったどうかは別として、此処で氷漬けになればアウト。
 やむを得ずロットンを蹴り飛ばして距離を取るが、回避は互いに間に合わなかった。
 躱しきれずラガッツォは左足、ロットンは左腕が氷漬けになって荒野に転がる。
 腕が折れて使い物にならないロットンにとってはギプス代わりにちょうどよくもあったが。

「こんな何処かもわかんねえ場所で死ぬよりはマシだよ……来い!」

 ブリューナクと呼ばれた龍は高度を落とし、ロットンの前に立つ。
 体格は相応に大きい上に左腕は氷漬けとは言え骨折で悲鳴を上げる。
 それでも腐ってもデュエリスト。何とか乗ることに成功してこの場を離脱。

「相乗り、させてもらいますわ。」

 さっきまで見限る気満々だったと言うのに、
 我が物顔で搭乗しながら、近づくラガッツォと蒼紫に弾丸を振りまく。
 出会ったばかりで連携が取れない二人では銃弾の雨を突破するのは困難で、
 乱射してる分命中率が下がってるため被弾がまともに期待できない程度しかない。
 その隙に空高く舞い、誰にも届かなくなったところでどこかへと飛んで行く。
 追跡はあの巨躯をみれば逃げる方角は分かる。だが今は追ってる場合ではない。
 蒼紫もラガッツォも、相手の出方をうかがわざるを得ないからだ

「このペットがいるなら、何故さっき使わなかったのかしら?」

 ブリューナクの背に乗ってるなら、ロットンの額に銃口を突きつける。
 さっきというのは夏油とひよのと夏油のことだ。この龍を使えば、
 二人相手に使っていればいくら宝具と化した車でも逃がすことはなかったはず。
 ついでに、銃弾が大してきかなさそうな龍と言うのも彼女にとっては心証を悪くする。
 元々ビジネスパートナーみたいなもので、自分が圧倒的に格上でロットンは使い捨ての駒だ。
 自分へのいざというときの対抗策を隠し持っていたというところに彼女は不満があった。

「使ったら12時間も使用できねえんだ、たかが二人相手に使えるかよ。」

 強い分、相応の制限時間もある。
 こうして高所を飛んでいるものの、これも時期に消える。
 別の場所でロシュオがゼットンが消えたように、長時間の使役は不可能だ。
 だからとっておきの感覚で残していた。元々デュエリストである彼にとって、
 支給されたカードがどれだけ強力であったのかがよく分かったのもあるが。

「まあ、今回は不問といたしますわ。ところで、
 これと同じような生物を使役してた子供は何処に?」

「さてな。北なのは分かるが、生きてるかは知らねえよ。」


 彼にも分かりかねるとはいったい何をしたのか。
 何かしらまだ隠しているようではあるが使われても困る。
 それに、まだ裏切る気配はないようなので保留として置いた。

(まったく、死ぬかと思ったぜ。あのガキとのデュエルは。)

 腕は折られるわ氷漬けにされるわと悲惨な目にあったが、
 幸い見知ったカードのお陰で運よく生き延びれたし、追撃も免れた。
 まだ自分の運は尽きてはいない。そう思いながら折れた腕をどうするかを考える。
 このままでは最悪壊死してしまう危険性もはらんでいるから。





 ラガッツォと異能肉が戦っていた間、
 リコとロットンの追走も終わりを迎えそうになっていた。

(ガキの癖になんで振り切れねえんだよ!! どんな体力してんだ!?)

 全力で逃げるロットンを、リコとマスカーニャは追いかける。
 ポケモントレーナーである以上並の人間よりも運動神経は十分にある。
 時おりはついでで調達した石をなげられるが、それはマスカーニャが処理していく。
 おかげでペースを崩すことなく、彼女との距離は詰められつつあった。

(今度の人は多分強いわけじゃない。勝てると言えば勝てるかもだけど……)

 とは言え、殺人を容認できるかどうかは懐疑的だった。
 必死に逃げてる様子を見ると、フィジカルは人並みなのだと。
 だから乗る、乗らないどちらのスタンスでも強者に従う以外生きる道がなかった。
 彼女に従ってるだけだったなら、一緒に協力しあえるのではないかと。
 洗脳に近いが、六英雄がエクスプローラーズに無理やり操られたときのように。

(クソッ、あの女に文字通り手札を見せなきゃいけねえのは癪だが仕方がねえ!)

 支給品を全部見せろとか、そういう強制こそ受けてないものの、
 間違いなく目立ってしまうであろうそれに、何かしらの追及はあるかもしれない。
 だがこの状況で異能肉の助けもないのではいずれ追いつかれてしまうのは確実だ。
 何かしらの追及は免れないとしても、今使わなければ殺されかねない。
 それだけは避けるべく、カードを掲げる。

「来い! 氷結界の龍ブリューナク!」

 カードが光輝き、マスカーニャがリコを抱えて岩陰に隠れる。
 何をしたのか分からない以上、フラッシュのような光に当たることがアウトの懸念もあった。
 光が収束した後、ロットンの背後にはレックウザのような長いドラゴンが出現し、
 それに圧倒されそうになるがそういったポケモンとも出会ってきてるので今更だ。

「やれブリューナク!」

「マスカーニャ! 避けて!」

 直線状に放たれた口からビームを二人して右へ飛んで回避。
 シンプルな攻撃だったため避けることはそう難しいことではなかったが、
 避けたというのに凄まじい冷気を発しており、本来出たであろう冷汗すら出ない。

(やっぱり、見た目通りのドラゴン・氷タイプと考えた方がいいかも……)

 草タイプを有するマスカーニャにとって苦手であり、
 しかもドラゴンタイプとなれば此方の威力も半減される。
 タイプ相性は圧倒的に不利。まともな正面勝負では勝てない。
 懐に入れば巨躯の都合立ち回りが難儀だと考えるものの、すぐに思考をやめた。
 これはポケモンバトルではない。命の奪い合いであることを。

(ポケモンバトルだったら論外な行為だけど、行くしかない!)

「マスカーニャ! あの人に向かってアクロバット!」

 マスカーニャが走り出すと同時に、リコも動き出す。
 二人とも揃ってブリューナクではなくロットン自身へとめがけて走る。
 本来ならあってはならない、トレーナーそのものへの攻撃の指示。
 外道な戦術だと分かっている。しかし、彼を止めるにはこれしかない。

(チッ、もう気づきやがった!)

 接近してきたブリューナクのブレスは強力なものだ。
 一方で、巨躯であるため細かい指示については手間がかかるし、
 今氷漬けを指示すれば、自分も巻き添えになりかねない距離まで詰められた。
 ブリューナクに乗って逃げる? 否、そんな隙をマスカーニャが見逃すはずがない。
 では異能肉の時のように頭を下げる? 後で確実に異能肉に殺されるし、
 連れの男も間違いなく堅気の人間じゃない顔つきだ。助かる見込みがない。
 アクロバットは華麗に顔の側面に直撃し、軽く吹き飛ばされ転がるロットン。

「……負けたらこっちは終わりなんだよ!! ブリューナク、効果だ!」

 痛みに堪えながら、突如としてロットンはスマホを取り出す。
 取り出したスマホが消滅すると同時に、ブリューナクが屈んで二人にブレスを放つ。
 氷のような冷たさはあるが、今度のは寒さよりも、威力がけた違いの物になっている。
 二人ともまともに立つことはおろか、その場にとどまることもできないまま、足が宙に浮いてしまう。
 そのまま空中へと追いやられるようにリコ達は飛んでいく。

「ッ……まだ、大丈夫!」

「運が良ければどっかに激突して落下せずに済むぜ。運がよけりゃな。」

 そうつぶやくと同時に、耐え切れずリコの身体は浮いてそのまま飛んでいく。
 氷結界の龍ブリューナクは、体躯の割にモンスターとしてのステータスとしては控えめだ。
 しかしその強さはステータスではなく、能力にある。
 手札を一枚消費することでフィールドのカードを手札に戻す効果を持つ。
 無論、これはデュエルではない。当然この世界のルールに手札の概念はない。
 あるのは参加者共通のデイパックと支給品だ。支給品を手札として見立て、
 試しにスマホを犠牲にしたが効果は適用された。となれば残るはリコがどうなるか。
 その結果は強風による吹き飛ばし。これにロットンは笑みを浮かべた。この龍は大当たりだ。
 支給品の回収は困難だが、空に浮かんだ島で吹き飛ばされれば死ぬという可能性は十分にある。
 仮に殺せずとも敵を強制的に戦線離脱させられる。強力な参加者がいても逃げることが可能。
 そんな可能性を秘めていたのでなるべく使いたくはなかったが、
 このままでは子供相手に敗北してしまう。そうなれば異能肉にも見限られる。
 それだけは避けなければならず、エリアから飛ばすか落とす目論見だ。
 支給品を回収できないのがこの戦術の痛いところではあるが、場所次第では無類の発揮が可能だ。

「さてと、召喚した以上向こうにもばれているから加勢しねえとな。」

 まだまだ厄介な状況は続いているようで、
 ブリューナクで加勢にしに行ったわけだが、結果は見ての通りだ。

「……で、逃がしたと言うの?」

 子供相手に翻弄されて、隠してたであろうカードを切った。
 しかも戻ってみればあっけなく人質に取られていたのもあり、
 侮蔑と呆れる以外に彼女の顔から読み取れるものはない。
 元々ないに等しかったロットンの株はかなり暴落している。

「ま、今はこうsおいおい、俺の生命線はアンタなんだぜ? 結果的にそうなっちまったけどよ、
 俺はリアリストだ。タイマンをしてやるほど、正々堂々する気はないもんだからな。」

「……まあ、醜態を晒した以上、今回に限り目を瞑りましょう。次はないと思いなさい。」

 あれだけ優位に立てていたのに、一人の男の乱入で何もかもが台無しだ。
 この屈辱を乗り越えるには、彼に対してリベンジしなければ、納得はできないだろう。
 封印されし氷結界の龍を乗り物とする、知る人が見れば卒倒ものの行為。
 そんなことは露知らず二人は龍に乗りながらどこかへと飛んでいく。

【F-8/黎明/1日目】

【ロットン@遊戯王5D’s】
[状態]:左腕骨折、左腕凍結、異能肉に対する恐怖と警戒(中)
[装備]:氷結界の龍ブリューナク@遊戯王OCG
[道具]:基本支給品一式(スマホなし)、不明支給品×1~2
[思考・状況]:なんとしても生き残る
1:当分はこのおっかない女(異能肉)に従う。こいつよりましなのがいればそっちに裏切る
2:鬼柳なんのことなんざ考えてる暇はねえよ。
3:クラッシュタウンへ向かう。
4:ガキ(リコ)はどうなったかねぇ。くたばってればいいが。
[備考]
※参戦時期は坑道でダイナマイトを爆破させ、崖に落ちる遊星と鬼柳を見届けた直後

【異能肉@十二大戦】
[状態]:苛立ち
[装備]:RABBIT―224式拳銃@ブルーアーカイブ
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~4(自身×0~1飯豊朔太郎の分が×1~3)
[思考・状況]:優勝して願いを叶える
1:当分はこの男(ロットン)を従者としてこき使う
2:十二大戦ではないようだけれど⋯⋯
3:クラッシュタウンへ向かう。
4:あの剣士(蒼紫)とは決着をつけたい。
5:弾薬……これが?
[備考]
※参戦時期は十二大戦参戦前。
※異能「湯水の如く(ノンリロード)」により所有する重火器の弾数制限は異能肉がそれを所有している限り無制限です





「悪いがテメエはどっちだ? こっちは乗るつもりはねえが。」

 戦闘が終われば、次に相対するのは互いに目つきの悪い二人。
 ピリピリとした感覚。相手は戦闘でもしたのかみすぼらしい状態に見えるが、
 その眼差しについては鷹のようにそのまま人を射貫くようなまなざしだ。
 敵であるならば相当強いことは肌で感じ取れる。銃をなますの如く切り落とした。
 相当な得物だ。占星武器(ホロスコープ)でもあれだけの業物は見たことがない。

「ちょっとちょっと! 待ちなさいよ!」

 男たちが静かに睨み合いを続けてると、
 岩陰から空気を破壊するように蒼紫の前に立つ咲季。
 『なんか怖いもの知らずなガキが出てきたな』と内心で思う。

「さっきのあれ、もうちょっと言い方はないわけ!?
 あんな言葉一つでわたしが行かない理由がないじゃない!
 確連相ぐらいまともにしなさいよ!」

「かくれんぼう……? 遊びのつもりで来たのか?」

「ちーがーうー! 確認、連絡、相談!」

 1900年辺りで原型となる報連相ができている。
 それ以前の時代を生きている蒼紫に略称は当然通用しない。

「そういう意味か。」

 一番の若手ではあるが、それならば般若が顔の都合変装による諜報活動が得意だ。
 幼い操の相手をしてた奴ならば、咲季についても言いくるめたりする光景は想像しやすい。
 次に気を付けるのは、その辺りだろうかと内心の片隅程度に気を付けておくことにした。
 そんな光景を眺めていると、毒気を抜かれてしまいラガッツォは後頭部を軽く掻いていく。

「一先ず敵ってわけじゃないみたいだが……っと、そうだった。
 この辺に紺色の髪の子供を見なかったか? 俺の連れなんだが、
 もう一人の男を倒すように頼んでから姿が見当たらねえんだよ。
 こっちは立ち止まってる暇なんざねえから、早めに見つけておきてえ。」

 戦闘は終わっても一向に彼女の姿を見せにない。
 殺された可能性はない。殺したなら男の方が謎の生物(マスカーニャ)も奪ってるはずだ。
 だから少なくとも彼女は生きてはいるはずだ。最悪、龍によって氷漬けにされているから、
 ロットンは支給品を奪えずじまいで、置いて行った可能性も一応懸念してはいるが。
 断る理由もなく三人で周囲を探すが、姿はどこにも見受けられずラガッツォは疑問を持つ。
 一体どこへ消えたのか。血痕と言った痕跡も何も見つけられないままだ。
 凍った地面などはあれど、吹き飛ばされてエリアを移動してしまったとか、
 それに辿り着けるだけの材料を、残った三人が把握できるはずもなかった。

(まさか、あいつか?)

 原因があるとするならばあの氷の龍だ。
 氷の龍が何かを知らない三人にとってあれは未知数だが、
 そんなもの相手の男がそういう特殊な力を持ってたりもする。

「……仕方がねえ。見つからない上にこれ以上時間をかけられない。」

「ちょっと待ちなさいよ。貴方、一応初対面でも仲間だったんでしょ?
 まだほんの数分しか捜索してない割に、打ち切りにするのは早すぎるわ。」

「今、俺達は今やべえ男に追われてる状況だ。此処に居残ってるのはまずいんだよ。
 あの嬢ちゃんには悪いと思うが、龍が目立ったせいでこっちに来る可能性も上がっている。」

 リコには悪いが、このまま居座っているとイグニスが迫ってくるのは確実。
 もしどこかで生きてるなら、彼女は幼い割にしっかりと戦況を見極めていた。
 イグニスみたいな敵に出会うことさえなければ、一人でも何とかできるだろうと。
 咲季としては反対ではあったが、ただ相手は見捨てたいから見捨てるわけではない、
 事情があることは察せられたので話を聞いてから判断するべきだと。

「……その人、そんなに強いの?」

「そっちは見てねえわけだからと分かんねえっつーのはあるだろうが、
 始まって早々、つまり一番体力に余裕があった時点で三人で応戦して、
 殿を青髪の嬢ちゃんに任せて逃げる以外の選択肢はなくなった……で伝わるか?」

 歯を食いしばり、苦い表情でラガッツォは顛末をかいつまんで話した。
 本来ならもっと話すべきだろう部分もあるが、いつ来るか分からない相手を前に、
 焦りが見受けられる。さっきまで咲季の登場で毒気を抜かれたように話していた彼が、
 今までと違った姿を見せる。それほどまでに相手は強いというのを感じ取ることができた。

「蒼紫さんはどう見る? わたしはもう少し探してあげたいのだけれど。」

「今のままでで挑めばまず勝てないだろうな。」

 銃を持ってるとはいえ元が一般人の咲季。
 今はまだ大丈夫なレベルだが足を負傷をしてる蒼紫。
 逃げた先でも戦う羽目になり、疲労が蓄積したラガッツォ。
 何者かは不明だが迎え撃つ、と言う考えは彼からも出てくることはなかった。

「……認めたくないけれど、今は逃げるしかないようね。」

 伝聞であるため本来の実力は未知数の存在。
 だからと言って、甘く見て挑める相手でもないのは十分伝わった。
 こと戦闘においては手練れである二人が出した結論が一致している。
 彼女が無事この場から逃げてるあることを願いながら、移動を始めた二人を追う。

【F-8/黎明/1日目】
【ラガッツォ@グランブルーファンタジー】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(中)、左足凍結
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2(義手が武器扱いの為1減少)
[思考・状況]
基本方針:殺し合いをする気はねえ。
1:ベリアル、噂しか聞いたことねえがやべえな。
2:あいつ(イグニス)を此処で倒さねえと後がやべえ。頼むぜ嬢ちゃん(メーア)。
3:知り合いはいるのかねぇ……親父がいるとかねえよな。
4:とりあえず目の前の連中と協力関係を結びたい
5:足の氷溶かさねえとな。
[備考]
※参戦時期はNight Pareidoliaエピローグ。フェルディナンドが願う前。
※放送をほとんど聞いていません。

【四乃森蒼紫@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-】
[状態]:右足首捻挫(処置済み)、疲労(小)、ずぶ濡れ
[装備]:斬刀・鈍@刀語、木剣@Fate/Grand Order
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2(刀剣類はナシ)
[思考・状況]:修羅となる。
1:修羅となるために行動する。
2:治療の借りを咲季に返す。
[備考]
※参戦時期は京都編から。
※コートがなくなりました。

【花海咲季@学園アイドルマスター】
[状態]:全身に擦り傷、疲労(大)、ずぶ濡れ
[装備]:オモチャの兵隊(トイソルジャー)@とある魔術の禁書目録
[道具]:基本支給品一式、救急セット@現実
[思考]:殺し合いをやめさせる。
1:蒼紫と協力して殺し合いを止める。
2:遠野ハンナに会ったら今度こそ救いたい。
3:手毬やことねの捜索をしたい。
[備考]
※参戦時期は初星コミュ4章15話終了時点から。
※髪留めとブレザーがなくなりました。髪型は下ろしている状態です。




 一方、飛ばされたリコはと言うと、北の空へと弾丸のように飛んでいく。
 緩やかに落下してきてはいるが、この威力では先に地面のない場所に放り出されるか、
 何かに拘束で激突して死んでしまうという、絶望的な二択しか残されていなかった。
 だからわずかな時間で彼女も覚悟を決めるしかない。

「マスカーニャ……わ、私の背後にトリックフラワー!」

 空中でボールからマスカーニャを出し、抱きかかえながらの指示。
 通常ならありえない指示に当然マスカーニャも驚くが、時間がないのは理解できた。
 嫌がる素振りを見せたが、リコがそれ以上に危険な状況にあると判断すると、
 彼女の言う通り背後で爆発させることで、強引に勢いを落として動く方角を地面にする。
 更に先にマスカーニャが落下し、そこにリコが落ちてくるところをお姫様抱っこの要領で着地。
 何とか生きることができてほっとすることは成功した。

「イタタタ……ありがとう、マスカーニャ。」

 流石に自分のポケモンの技をもろに受けるのは初めてだ。
 背中はビリビリと痛みを発してるが、致命傷ではない。
 問題があるとすればただ一つ。此処がどこか分からないことだった。
 ラガッツォもメーアも、誰もいない森の中でさまようこととなる。

【B-8/黎明/1日目】

【リコ@ポケットモンスター(2023)】
[状態]:精神的不安(中)、背中にダメージ(中)
[装備]:マスカーニャ&マスカーニャのモンスターボール@ポケットモンスター(2023)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2
[思考・状況]
基本方針:殺し合いはしない。
1:あの人(イグニス)を止める! でもどうしよう
2:ライジングボルテッカーズのメンバーを探したい。
3:エクスプローラーズもいるのかな……
4:あの人(ラガッツォ)大丈夫かな……

[備考]
※参戦時期は126話、オレンジアカデミーに向かう途中。
※放送をほとんど聞いていません。




※ロベルタの傘@ブラック・ラグーンはF-8に両断されて放置されてます。


【氷結界の龍ブリューナク@遊戯王OCG】
ロットンに支給。
シンクロ・効果モンスター
星6/水属性/海竜族/攻2300/守1400
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
自分の手札を任意の枚数墓地へ捨てて発動する。
その後、フィールド上に存在するカードを、墓地に送った枚数分だけ持ち主の手札に戻す。
食料などが入ってる基本支給品は、スマホなど一部のみコストに可能。
なお、ゴールドレアの為エラッタ後ではない。そのため効果のターン制限も効果に使用できる枚数制限もない。
召喚したら十分程度で消える。使用回数は12時間ごとに一回回復する。

036:いざ尋常に─── 投下順 038:Story of IRIS
時系列順
027:いつまでどこまでなんて ロットン
027:いつまでどこまでなんて 異能肉
007:ブルータルゴッド ラガッツォ
007:ブルータルゴッド リコ
008:雨上がりのアイリス(後編) 四乃森蒼紫
008:雨上がりのアイリス(後編) 花海咲季

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最終更新:2026年08月14日 00:48