Evil Rays Sing After……
作者:◆wHsYL8cZCc
投稿日時:2010/12/29(水) 03:07:17
投稿日時:2010/12/29(水) 03:07:17
閃光。そして、膨張していく空気。
あまりの高エネルギーは分子の動きを活発にさせ、やがては電離させてしまう。いわゆるプラズマ化。固体、液体、気体に続く、物質の第四の形態となった空気は、一直線に光の軌跡を空に描いた。そこを貫くのは超高エネルギーの電磁波。あらゆる物を透過し、焼き貫く。
爆発音がした。膨張した空気が超音速で押し出され、衝撃波を発生させたのだ。
それが過ぎ去ると、光の残滓となった空気が熱だけを湛えたまま、周囲の電磁波を陽炎のように揺らした。
そこに居た一人の少女は、高らかに笑ってみせた。
あまりの高エネルギーは分子の動きを活発にさせ、やがては電離させてしまう。いわゆるプラズマ化。固体、液体、気体に続く、物質の第四の形態となった空気は、一直線に光の軌跡を空に描いた。そこを貫くのは超高エネルギーの電磁波。あらゆる物を透過し、焼き貫く。
爆発音がした。膨張した空気が超音速で押し出され、衝撃波を発生させたのだ。
それが過ぎ去ると、光の残滓となった空気が熱だけを湛えたまま、周囲の電磁波を陽炎のように揺らした。
そこに居た一人の少女は、高らかに笑ってみせた。
「あははははは! よけるばかりじゃボクには勝てないよ! 無限桃花……? あははははは!」
また閃光が走った。今度は水平に放たれたそれは、通り道とその周囲にある物を瞬時に燃え上がらせた。
あまりに高いエネルギーがある為に、あらゆる物質に強烈に干渉し、それらの形態を崩壊させて行く。
七色に輝く光線は、強烈な電磁波の束。
工学的に言えばレーザーと呼ばれる状態の光。そのスペクトルはγ線とX線。つまり放射線に分類される、超高エネルギーのレーザー兵器。
あまりに高いエネルギーがある為に、あらゆる物質に強烈に干渉し、それらの形態を崩壊させて行く。
七色に輝く光線は、強烈な電磁波の束。
工学的に言えばレーザーと呼ばれる状態の光。そのスペクトルはγ線とX線。つまり放射線に分類される、超高エネルギーのレーザー兵器。
「ボクの名前は虹。虹の寄生。ほら早く無限桃花。じゃないとこの森全部燃えちゃうよ? はは。あはははははははは!」
また閃光が走る。
その少女、虹寄生が立つ森の一角は、また一瞬で炎を纏う。色鮮やかで、そして恐ろしい光に焼かれて行く―――
その少女、虹寄生が立つ森の一角は、また一瞬で炎を纏う。色鮮やかで、そして恐ろしい光に焼かれて行く―――
※ ※ ※
『こちらフレイル1。作戦空域に到達。……酷い有様だ。木々が燃えている!』
《了解フレイル1。目標を捜索。発見次第報告せよ》
『フレイル1。了解』
《了解フレイル1。目標を捜索。発見次第報告せよ》
『フレイル1。了解』
青い影が飛んでいた。
夜の空を舞う、グラスファイバーとチタンで出来た鳥。F2支援戦闘機。対艦、対地攻撃能力に優れ、空戦も対応出来るマルチロール戦闘機。
制式な愛称は無いが、一部ではヴァイパー・ゼロと呼ばれる機体だった。ヴァイパーはF2の原型となったF16戦闘機の非公式の愛称。ゼロとは、あの零式艦上戦艦、ゼロ戦から。それらを混ぜて、ヴァイパー・ゼロと呼ばれているのだ。
スクランブル発進の命令を受け、今は燃え上がる樹海の上空を時速八百キロで飛んでいた。
夜の空を舞う、グラスファイバーとチタンで出来た鳥。F2支援戦闘機。対艦、対地攻撃能力に優れ、空戦も対応出来るマルチロール戦闘機。
制式な愛称は無いが、一部ではヴァイパー・ゼロと呼ばれる機体だった。ヴァイパーはF2の原型となったF16戦闘機の非公式の愛称。ゼロとは、あの零式艦上戦艦、ゼロ戦から。それらを混ぜて、ヴァイパー・ゼロと呼ばれているのだ。
スクランブル発進の命令を受け、今は燃え上がる樹海の上空を時速八百キロで飛んでいた。
命令の内容は一つである。
指示された作戦目標に対して、遠距離から支援攻撃せよ。
しかし、指示された目標が、パイロットには信じられなかった。そして、それを直接目撃した今、今度は己の目が信じられなくなっていた。
指示された作戦目標に対して、遠距離から支援攻撃せよ。
しかし、指示された目標が、パイロットには信じられなかった。そして、それを直接目撃した今、今度は己の目が信じられなくなっていた。
『ウソだろ……?』
《どうした?》
『攻撃目標を目視。……姿までは小さすぎて確認出来ないが、光線を放つ奴が居る』
《光線か。上がってきた報告と一致する。そいつが目標だ》
『信じられない。映画見てる気分だ。ビームが森を焼き払ってる!』
《基地司令部よりフレイル1へ。攻撃許可。地上の目標を爆撃せよ》
『的が小さすぎる! ロックオンも出来ない。当てられるとは……』
《問題ない。森ごと吹っ飛ばせ》
『構わないのか?』
《そうだ。スネークアイの使用許可は出ている》
『まさか国内で爆撃任務なんて……』
《どうした?》
『攻撃目標を目視。……姿までは小さすぎて確認出来ないが、光線を放つ奴が居る』
《光線か。上がってきた報告と一致する。そいつが目標だ》
『信じられない。映画見てる気分だ。ビームが森を焼き払ってる!』
《基地司令部よりフレイル1へ。攻撃許可。地上の目標を爆撃せよ》
『的が小さすぎる! ロックオンも出来ない。当てられるとは……』
《問題ない。森ごと吹っ飛ばせ》
『構わないのか?』
《そうだ。スネークアイの使用許可は出ている》
『まさか国内で爆撃任務なんて……』
閃光。パイロットの目が一瞬眩む。地上に居る何者かが、F2を狙って来たのだ。
さすがに高速で飛び回る機体に当てるのは難しいらしい。かなりギリギリではあるが、戦闘機動を取ると見事に外れて行った。
さすがに高速で飛び回る機体に当てるのは難しいらしい。かなりギリギリではあるが、戦闘機動を取ると見事に外れて行った。
『攻撃された! これでは目標を捉えられない!』
《だいたいで構わない。それでいいと聞いている》
『聞いている? 誰に!?』
《地上の友軍にだ》
《だいたいで構わない。それでいいと聞いている》
『聞いている? 誰に!?』
《地上の友軍にだ》
※ ※ ※
「むぅ。当たんないや。面倒だなぁ飛行機って。あんなに速いなんてずるいよ。ボク達より速いじゃん」
地上からF2を撃墜しようとレーザーを放つ虹寄生は苛立っていた。
そのビームは文字通り光速度で飛翔する不可避の攻撃ではあるが、それを放つ者が当てられるかは別なのだ。
見越し射撃の達人ならば既に終わっていただろうが、虹はそうでは無かった。その上に、複雑な戦闘機動を取られては、先を読むのは難しいらしい。
そのビームは文字通り光速度で飛翔する不可避の攻撃ではあるが、それを放つ者が当てられるかは別なのだ。
見越し射撃の達人ならば既に終わっていただろうが、虹はそうでは無かった。その上に、複雑な戦闘機動を取られては、先を読むのは難しいらしい。
「なんかヒラヒラうざったい奴」
「そっちに構う余裕あるわけ?」
「え? あ、そうだったね! まずは君を殺さなきゃ。無限桃花」
「そうね」
「そっちに構う余裕あるわけ?」
「え? あ、そうだったね! まずは君を殺さなきゃ。無限桃花」
「そうね」
桃花と呼ばれた者は虹に対し、一瞬で肉薄する。最初は手ぶらだったが、一瞬で黒い刀が握られていた。
「それが村正だね。ボク達と同じ力が込められた刀……」
「よく知ってるじゃん。今から八つ裂きにしてあげる」
「よく知ってるじゃん。今から八つ裂きにしてあげる」
斬撃の速度は速かった。僅か一瞬で、複数回の攻撃を繰り出す。それこそ、稲妻のような高速で。
それを受ける虹寄生もまた、神憑りな速度を持ってそれを回避していく。
それを受ける虹寄生もまた、神憑りな速度を持ってそれを回避していく。
「すばしっこい奴!」
大きく踏み込む、今度は通常とは違う斬撃。村正から放たれる黒い稲妻が周囲を包む。そして刀身が稲妻そのものへと変化して行く。
「え? なにそれ……?」
「吹っ飛べ!」
「吹っ飛べ!」
稲妻と化した村正は横一文字に構えられ、そして振られた。
水平方向を薙ぎ払い、砕き、焼き払う。彼女にとっては必殺の一撃の一つ。かつてその技を持って、天蓋を砕き雲すら割った事もあった。
かつての宿敵の腕をも奪った、まさに必殺技。
水平方向を薙ぎ払い、砕き、焼き払う。彼女にとっては必殺の一撃の一つ。かつてその技を持って、天蓋を砕き雲すら割った事もあった。
かつての宿敵の腕をも奪った、まさに必殺技。
「うわわ! これは凄いや! やば――」
爆発。虹が電磁放射線による攻撃を主とするならば、その一撃もまた、電子による粒子ビーム攻撃であった。
他の分子と衝突し、エネルギーを放出して四散していく。
黒い稲妻が嘗めるように木々を薙ぎ倒し、燃やしていく。深い森の一角であったその場所は、殺伐とした焼け野原となっていく。
他の分子と衝突し、エネルギーを放出して四散していく。
黒い稲妻が嘗めるように木々を薙ぎ倒し、燃やしていく。深い森の一角であったその場所は、殺伐とした焼け野原となっていく。
「ああもう! かわされた!」
攻撃失敗。虹は持ち前の速度を武器に、身をかわしていた。
直後、また閃光が走る。
レーザーの速度はかわせる領域とは遥かに掛け離れた速度を誇る。放たれてからでは不可避。ならば、放たれる前にかわすしかない。彼女は瞬時に判断し、速やかに移動する。放たれたレーザーは虚しく空を切り裂き、熱と光の残滓が漂うだけ。
直後、また閃光が走る。
レーザーの速度はかわせる領域とは遥かに掛け離れた速度を誇る。放たれてからでは不可避。ならば、放たれる前にかわすしかない。彼女は瞬時に判断し、速やかに移動する。放たれたレーザーは虚しく空を切り裂き、熱と光の残滓が漂うだけ。
互いに一撃必殺の攻撃を持っていた。それを撃ち合うのは、一人の少女、虹寄生と名乗る怪物と、もう一人。
「無限桃花め!」
「ふん」
「ボクの光を簡単にかわすなんて屈辱だよ。なんて奴!」
「妖怪とか人間に寄生したならまだしも、電磁波に寄生しちゃうと頭まで電波になっちゃうわけ?」
「なんだと!」
「私は無限桃花じゃない」
「ふん」
「ボクの光を簡単にかわすなんて屈辱だよ。なんて奴!」
「妖怪とか人間に寄生したならまだしも、電磁波に寄生しちゃうと頭まで電波になっちゃうわけ?」
「なんだと!」
「私は無限桃花じゃない」
また稲妻。さらに激しさを増し、彼女の身体を包んで行く。
「思い出させてあげる。私が誰か……」
ふわりと、彼女の身体は宙に浮く。
異様な光景と言えるだろうか。稲妻を纏う女が、赤い目を光らせ、そして――
異様な光景と言えるだろうか。稲妻を纏う女が、赤い目を光らせ、そして――
「悪く思わないでよ。あんたが妙に強いから。こっちだってマジになる」
漆黒の衣。長い尾を引いた黒い流星のような姿。真っ黒な稲妻を纏うそれは、地獄からはい出てきた魔物のような。邪悪な姿。
闇の天神。
闇の天神。
「それは……!」
「思い出した? あんた誰に向かって偉そうな事言ってたか」
「ウソだ! 死んだんじゃないの!? 無限桃花に殺されたって……」
「そうね。確かに。……姉さんにやられた」
「なんで!? なんでボク達の敵に!?」
「後始末って所よ」
「そんな……!? 影糾!」
「私はもう影糾じゃない。さようなら」
「思い出した? あんた誰に向かって偉そうな事言ってたか」
「ウソだ! 死んだんじゃないの!? 無限桃花に殺されたって……」
「そうね。確かに。……姉さんにやられた」
「なんで!? なんでボク達の敵に!?」
「後始末って所よ」
「そんな……!? 影糾!」
「私はもう影糾じゃない。さようなら」
虹寄生を見下ろし、彼女――無限彼方は剣を掲げる。最後の一撃を放つ為に。
かつて、桃花もそれを最大の攻撃とした、稲妻の龍を呼び出す呪文。
かつて、桃花もそれを最大の攻撃とした、稲妻の龍を呼び出す呪文。
「ウソだッ!!」
「諦めて。逃げ場は無いから」
「嫌だ嫌だ! 影糾! そんなの嫌だよ!」
「……私はもう影糾じゃない。姉さんでも……無限桃花でも無い」
「嫌だよ! こんなの酷いよ!」
「解ってる。はぐれの生き残りが何の為に戦うか。ごめんなさい。」
「嫌だよ! あんまりだよ!」
「……来たれ龍!」
「酷いよ! ボク達はずっと……影糾の敵討ちしたくて頑張ってたのに……!」
「爆ぜよ天!」
「せっかく見付けた敵が影糾だなんて! こんなのってないよ!」
「諦めて。逃げ場は無いから」
「嫌だ嫌だ! 影糾! そんなの嫌だよ!」
「……私はもう影糾じゃない。姉さんでも……無限桃花でも無い」
「嫌だよ! こんなの酷いよ!」
「解ってる。はぐれの生き残りが何の為に戦うか。ごめんなさい。」
「嫌だよ! あんまりだよ!」
「……来たれ龍!」
「酷いよ! ボク達はずっと……影糾の敵討ちしたくて頑張ってたのに……!」
「爆ぜよ天!」
「せっかく見付けた敵が影糾だなんて! こんなのってないよ!」
龍は、そのまま虹を飲み込んで行った。残ったのは、ただ一人。
※ ※ ※
《基地司令部からフレイル1へ。状況報告せよ》
『こちらフレイル1。……俺は夢でも見てるのか……?』
《どうした?》
『化け物が現れた。爆発して地面を吹っ飛ばして、消えた……』
《了解。爆弾を一個投下しろ。あくまで爆弾による被害として処理する》
『何を言っている……? あの化け物はなんだ? あの黒い龍は……』
《フレイル1。それは知らせる訳には行かない。速やかに作戦行動を行い、帰還せよ》
『……あれが噂の寄生って奴か……』
《その発言は危険だフレイル1。それを口にする事は許さん》
『……了解。フレイル1、一個投下……』
『こちらフレイル1。……俺は夢でも見てるのか……?』
《どうした?》
『化け物が現れた。爆発して地面を吹っ飛ばして、消えた……』
《了解。爆弾を一個投下しろ。あくまで爆弾による被害として処理する》
『何を言っている……? あの化け物はなんだ? あの黒い龍は……』
《フレイル1。それは知らせる訳には行かない。速やかに作戦行動を行い、帰還せよ》
『……あれが噂の寄生って奴か……』
《その発言は危険だフレイル1。それを口にする事は許さん》
『……了解。フレイル1、一個投下……』