ガール・ミーツ・魚ール
作者:◆KazZxBP5Rc
投稿日時:2011/06/16(木) 06:45:32.14
投稿日時:2011/06/16(木) 06:45:32.14
これは、さすらいの女侍・無限桃花が海に来た時のお話です。
「うーん、絶好の釣り日和でござるね。」
桃花は近くの村で借りてきた釣竿とバケツを足元に下ろし、大きく伸びをしました。
「では、早速昼食の調達に移るとするでござるか。」
そう言って、彼女は桟橋の端に腰を据えました。
桃花は近くの村で借りてきた釣竿とバケツを足元に下ろし、大きく伸びをしました。
「では、早速昼食の調達に移るとするでござるか。」
そう言って、彼女は桟橋の端に腰を据えました。
三十分後。
「釣れないでござる……。」
そろそろ腹の虫も鳴き出しそうです。
気晴らしにポイントを変えようか、そう桃花が思った時のことです。
「おっ、来た来た! でござる!」
折れそうなくらいのしなり具合を発揮する竿に、桃花は興奮しました。
大物の予感です。
「おとなしく……捕まるで……ござるよっ!」
桃花の巧みなリール捌きによって、哀れな獲物はどんどんと岸に近づいてきました。
そして――
「釣れないでござる……。」
そろそろ腹の虫も鳴き出しそうです。
気晴らしにポイントを変えようか、そう桃花が思った時のことです。
「おっ、来た来た! でござる!」
折れそうなくらいのしなり具合を発揮する竿に、桃花は興奮しました。
大物の予感です。
「おとなしく……捕まるで……ござるよっ!」
桃花の巧みなリール捌きによって、哀れな獲物はどんどんと岸に近づいてきました。
そして――
「あ、えーっと……こん……にちは?」
現れたのは不思議な少女でした。
彼女の下半身は魚でした。
こう表現すると、大抵の人がおとぎ話に出てくるような人魚姫を想像するかと思われますが、
彼女の場合、「腰から魚が生えている」と表現した方が適切でしょうか。
もしくは「魚の背から少女の上半身が生えている」と表現した方が適切でしょうか。
とにかく、彼女が変なイキモノであることはお分かり頂けると思います。
「はじめまして、私、串娘と言います。」
あっけにとられていた桃花でしたが、どうやら少女が自己紹介しているらしいということに気付くと、
はっと我に返り、こちらも名乗り返しました。
「……拙者、無限桃花と申す者でござる。」
現れたのは不思議な少女でした。
彼女の下半身は魚でした。
こう表現すると、大抵の人がおとぎ話に出てくるような人魚姫を想像するかと思われますが、
彼女の場合、「腰から魚が生えている」と表現した方が適切でしょうか。
もしくは「魚の背から少女の上半身が生えている」と表現した方が適切でしょうか。
とにかく、彼女が変なイキモノであることはお分かり頂けると思います。
「はじめまして、私、串娘と言います。」
あっけにとられていた桃花でしたが、どうやら少女が自己紹介しているらしいということに気付くと、
はっと我に返り、こちらも名乗り返しました。
「……拙者、無限桃花と申す者でござる。」
「ごめんなさい。下の顔、食べ物見つけると本能で追いかけちゃって、私じゃ制御できないんです。」
串娘は頭のおだんごをいじりながら恥ずかしそうに言いました。
一方の桃花はどこからどうツッコんだらよいのか分からず、黙っていました。が、
(ムッ、この気配……!)
宿敵・寄生の気配を感じ取り、シリアスモードに切り替わります。
「どうしたんですか?」
串娘も桃花の様子が変わったのに気付き、問いかけます。
しかし、実はそんな串娘の背後、桃花から死角の位置に、黒く薄く細長いモノが既に迫っていたのです。
串娘は頭のおだんごをいじりながら恥ずかしそうに言いました。
一方の桃花はどこからどうツッコんだらよいのか分からず、黙っていました。が、
(ムッ、この気配……!)
宿敵・寄生の気配を感じ取り、シリアスモードに切り替わります。
「どうしたんですか?」
串娘も桃花の様子が変わったのに気付き、問いかけます。
しかし、実はそんな串娘の背後、桃花から死角の位置に、黒く薄く細長いモノが既に迫っていたのです。
「きゃああああああああ!!」
「しまった!」
悲鳴を上げた串娘に、桃花は駆け寄ろうとしましたが、時既に遅し。
串娘のボディブローが、桃花を吹っ飛ばします。
「ぎゃはははは! 俺様は魚薄鰻(ぎょうすう)寄生!
水陸に名立たる格闘家二人の娘の体、最高だぜぇ!」
桃花はすぐに体勢を立て直し、刀を引き抜きます。
「おやぁ? そいつでこの罪の無ぇ娘の命を俺様ごと刈り取ろうってのか?」
「心配無用でござる。この刀はお前達寄生のみを斬ることができるのでござるよ。」
「けっ! 都合のいいこって!」
一瞬のうちに桃花は魚薄鰻に肉薄し、一閃。
その瞬間、海に水しぶきが上がり、串娘の姿は既に無くなっていました。
「……逃がさぬでござるよ。」
「しまった!」
悲鳴を上げた串娘に、桃花は駆け寄ろうとしましたが、時既に遅し。
串娘のボディブローが、桃花を吹っ飛ばします。
「ぎゃはははは! 俺様は魚薄鰻(ぎょうすう)寄生!
水陸に名立たる格闘家二人の娘の体、最高だぜぇ!」
桃花はすぐに体勢を立て直し、刀を引き抜きます。
「おやぁ? そいつでこの罪の無ぇ娘の命を俺様ごと刈り取ろうってのか?」
「心配無用でござる。この刀はお前達寄生のみを斬ることができるのでござるよ。」
「けっ! 都合のいいこって!」
一瞬のうちに桃花は魚薄鰻に肉薄し、一閃。
その瞬間、海に水しぶきが上がり、串娘の姿は既に無くなっていました。
「……逃がさぬでござるよ。」
海の中の魚薄鰻は無傷でした。
「水ん中は俺様にとってホームグラウンドよ。それにこの娘の力も十分発揮できるしな。」
魚薄鰻は余裕の笑みを浮かべます。
そこへ、大きな音がしました。
見上げると、桃花が勢いよく飛び込んできたのが目に入ります。
「水中で息もできない人間風情が。俺様の力、見せてやる!」
「水ん中は俺様にとってホームグラウンドよ。それにこの娘の力も十分発揮できるしな。」
魚薄鰻は余裕の笑みを浮かべます。
そこへ、大きな音がしました。
見上げると、桃花が勢いよく飛び込んできたのが目に入ります。
「水中で息もできない人間風情が。俺様の力、見せてやる!」
(何をやっているでござるか?)
桃花が様子を観察していると、魚薄鰻は突然水中をくるくると旋回しはじめました。
(もう少し近づいて……はっ!)
気付いた時には、桃花の目の前に巨大な渦ができていました。
桃花はなすすべもなく渦の中心、つまり魚薄鰻の元に引き込まれてゆきます。
「いらっしゃいませー、お客様、っと!」
魚薄鰻の渾身のパンチを受けた桃花は、肺に残ったわずかな酸素も吐き出させられました。
「待ってろよ、すぐ楽にしてやるぜ。」
水中を吹っ飛ぶ桃花に、魚薄鰻が追い打ちを掛けようと追ってきました。
桃花が様子を観察していると、魚薄鰻は突然水中をくるくると旋回しはじめました。
(もう少し近づいて……はっ!)
気付いた時には、桃花の目の前に巨大な渦ができていました。
桃花はなすすべもなく渦の中心、つまり魚薄鰻の元に引き込まれてゆきます。
「いらっしゃいませー、お客様、っと!」
魚薄鰻の渾身のパンチを受けた桃花は、肺に残ったわずかな酸素も吐き出させられました。
「待ってろよ、すぐ楽にしてやるぜ。」
水中を吹っ飛ぶ桃花に、魚薄鰻が追い打ちを掛けようと追ってきました。
桃花の意識はもうろうとしていました。
もはやこれまでか。そう思った瞬間、桃花の目には、腰に提げたままだった餌袋が映りました。
(これでござる!)
もはやこれまでか。そう思った瞬間、桃花の目には、腰に提げたままだった餌袋が映りました。
(これでござる!)
「あぁん?」
魚薄鰻は桃花の奇妙な行動に首をかしげました。
「今更何をしたって無駄だぜ。それとも死を目前にとち狂ったか?」
桃花は餌袋の中身を水中にばらまいていたのです。
「さて、どうやって殺してやろうか……っておい! そっちじゃねえ!」
何ということでしょう。
串娘の体は、魚薄鰻の意思に反して、桃花の撒いた餌の方を一直線に目指していました。
(串娘に聞いてたことが役に立ったでござる。)
向こうから勝手に突っ込んで来てくれるので、力は要りません。
桃花は刀の切っ先を魚薄鰻の進路上に掲げました。
「くそっ、こんなことで、こんなことでっ! ぐおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
寄生の断末魔を聞き届けながら、桃花の意識は海の底へ深く沈んでいきました。
魚薄鰻は桃花の奇妙な行動に首をかしげました。
「今更何をしたって無駄だぜ。それとも死を目前にとち狂ったか?」
桃花は餌袋の中身を水中にばらまいていたのです。
「さて、どうやって殺してやろうか……っておい! そっちじゃねえ!」
何ということでしょう。
串娘の体は、魚薄鰻の意思に反して、桃花の撒いた餌の方を一直線に目指していました。
(串娘に聞いてたことが役に立ったでござる。)
向こうから勝手に突っ込んで来てくれるので、力は要りません。
桃花は刀の切っ先を魚薄鰻の進路上に掲げました。
「くそっ、こんなことで、こんなことでっ! ぐおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
寄生の断末魔を聞き届けながら、桃花の意識は海の底へ深く沈んでいきました。
桃花が目を覚ましたのは桟橋の上でした。
海の向こう側に夕日が沈んでゆくのが見えます。
「夢……だったのでござろうか。」
辺りには串娘の姿はありませんでした。
そもそも、あんなイキモノが本当にいたのでしょうか。怪しいものです。
しかしどちらにしろ、もう済んだことです。
桃花は頭を思いっきり振り、もやもやした気分を振り払いました。
「さて、今夜は焼き魚でござる。」
桃花は釣竿と魚が一杯に入ったバケツを手に、桟橋を後にしました。
海の向こう側に夕日が沈んでゆくのが見えます。
「夢……だったのでござろうか。」
辺りには串娘の姿はありませんでした。
そもそも、あんなイキモノが本当にいたのでしょうか。怪しいものです。
しかしどちらにしろ、もう済んだことです。
桃花は頭を思いっきり振り、もやもやした気分を振り払いました。
「さて、今夜は焼き魚でござる。」
桃花は釣竿と魚が一杯に入ったバケツを手に、桟橋を後にしました。
おわり