(かくしてパティシエは厨房にいる)
更新日:2022/09/17 Sat 23:58:05
更新日:2022/09/17 Sat 23:58:05
宝石が輝きを無くした時、気が付けば懐かしく、安心を覚える場所にいた。オウマがトキの本屋だ。
「戻ったわよ!」
フロートの声に、皆が一斉に振り返る。
「アンコォォォォオオオオ!!!」
猛獣の鳴き声かと思ったが、それはアイベリーの物だった。
「わわ!」
アイベリーにハグされ、驚きの声をあげる。
「良かったぁ!本当に戻ってきたんだよな?良かったぁ!」
「そ、そう、ですよ。恥ずかしながら、戻って参りまし……」
アンコは後ろに倒れた。
アイベリーが体重をかけすぎたせいで、転んだのだ。
「アイベリーさん……」
「にひひ、ごめん。嬉しくて」
アイベリーが手を差し出す。アンコはその手を恐る恐る取った。
「アイベリーお姉ちゃん……」
ピオーネが呆れて声をかける。
「良かった……また会えて……」
淡雪の心の底から安心したような声を背に、メローナは帰ってきた妹に声をかけた。
「お疲れさま、フロートちゃん」
「ふふ、私にかかればこんなものよ。ああヤスカタ、靴を返すわ」
フロートは嬉しそうに胸を張ってから、履いていた靴を脱いだ。
その靴を受け取って、ヤスカタは言う。
「ありがとう……心配していたけど、大丈夫だったみたいね。良かったわ」
本屋がしみじみとした雰囲気に染まったところで、メローナは残してきたホールの子達を思い出し、ハッとした。
「それじゃあ、一度皆の所に戻りましょう。皆きっと、心配しているわ」
「は~い!!!」
本屋にいた従業員が各々返事をする中、アンコは一人離れてそれを見ていた。
「………」
アンコは声を絞り出す。
「ここから………」
そしてまた自嘲気味に笑うのだった。
「ここから独りなのね……」
「戻ったわよ!」
フロートの声に、皆が一斉に振り返る。
「アンコォォォォオオオオ!!!」
猛獣の鳴き声かと思ったが、それはアイベリーの物だった。
「わわ!」
アイベリーにハグされ、驚きの声をあげる。
「良かったぁ!本当に戻ってきたんだよな?良かったぁ!」
「そ、そう、ですよ。恥ずかしながら、戻って参りまし……」
アンコは後ろに倒れた。
アイベリーが体重をかけすぎたせいで、転んだのだ。
「アイベリーさん……」
「にひひ、ごめん。嬉しくて」
アイベリーが手を差し出す。アンコはその手を恐る恐る取った。
「アイベリーお姉ちゃん……」
ピオーネが呆れて声をかける。
「良かった……また会えて……」
淡雪の心の底から安心したような声を背に、メローナは帰ってきた妹に声をかけた。
「お疲れさま、フロートちゃん」
「ふふ、私にかかればこんなものよ。ああヤスカタ、靴を返すわ」
フロートは嬉しそうに胸を張ってから、履いていた靴を脱いだ。
その靴を受け取って、ヤスカタは言う。
「ありがとう……心配していたけど、大丈夫だったみたいね。良かったわ」
本屋がしみじみとした雰囲気に染まったところで、メローナは残してきたホールの子達を思い出し、ハッとした。
「それじゃあ、一度皆の所に戻りましょう。皆きっと、心配しているわ」
「は~い!!!」
本屋にいた従業員が各々返事をする中、アンコは一人離れてそれを見ていた。
「………」
アンコは声を絞り出す。
「ここから………」
そしてまた自嘲気味に笑うのだった。
「ここから独りなのね……」
「皆!アンコが帰ってきたわよ!」
「おお~!」
フロートの凛々しい声とアンコの姿に、ホールの子供達は皆歓声を上げた。
「フロートちゃんのお陰よ♪今日は人一倍、頑張ってくれたの♪」
「す、凄いです!フロート姉さん!」
メローナの話す言葉に、シトロンは目を輝かせた。
「そんなに褒めないでちょうだい。て、照れ臭いのよ」
純粋な妹の眼差しに、顔を隠してもニヤけているのがバレバレなフロート。
「しかし驚いたよ、突然小鳥ちゃんの身体が消えてしまうんだもの」
そう言ったのは、アンコの身体を守っていたピネだった。
「おそらく……魂がこの世に戻ってきたから……だと思う」
ピオーネが解説しようと口を開いたが、長く難しい話になると察したフルーチェが割って入った。
「なんかよう分からんけど、皆無事で良かったなぁ!なあ、アンコ!」
「そう……ですね」
アンコは曖昧に頷く事しか出来なかった。
「それじゃあ、アンコちゃんが戻ってきたお祝いにパーティをしないかい?」
ジュジィの言葉に、くゆりも反応する。
「わぁ~!パーティ!今日はくゆりもご馳走作るよ~!楽しくしよう!店の修繕は明日にシヨ!」
「甘いもの……パーティ……Zzz」
「あたしも……炭酸の……ジュース作る……」
淡雪とろくばんも同意する。
アンコは、この楽しい空間を壊したくなかった。
「……」
だからこそ、しなければならない事も合った。
「アンコ?」
心配そうに呼び掛けたマリネッタを合図に、アンコは皆に告げる。
「私は……皆さんと一緒にいられません……」
アンコの言葉に、皆が静まる。それが嫌で、言葉を続けた。
「皆さんに酷いことを言ってしまったし……オウマがトキもボロボロにしてしまった……」
アンコは溜め息をついて、締め括ろうとする。
「今日限り辞めて、どこかに消えます。それがいい……」
ビタン!と言う音が静かな部屋に響く。
叩いた相手は、マリネッタだった。
「マリネッタさん……」
頬を押さえながら呟くアンコに、マリネッタは低い声で告げる。
「それは駄目よ。許さないわ。それこそもう赦せない」
その瞳には、静かな怒りが灯っていた。
「あんたが悪く思っているなら、それこそ、あんたも手伝うべきよ」
マリネッタは広間を指差す。大好きな場所が、アンコの目に映った。
「オウマがトキの修繕にしろ、皆への詫びにしろ……このまま消えるなんて、絶対だめ」
「せやなぁ……」
皆の中から進み出てきたのは、フルーチェだった。
「うち、バカだからあんまよく分かんないけどさ、アンコはそのままで良いと思うよ。あれがもし素だったなら、それをちょっと出してもいいやん。だから、もう一回、皆でやろう?」
「でも……私の中には……」
「おうアンコ!さっきぶり!」
俯き、目を伏せるアンコに、廊下きらやって来たのじゃロリ猫が声をかけた。
「あ、のじゃロリ猫。今頃帰ってきて……」
「にゃっはっは!ちょっとした用事じゃ!」
いつも通り小言を言うフロートをいなし、のじゃロリ猫は続ける。
「お前が言う"その事"ならばわしが片付けておいたぞ」
「え?」
「まあ、これは後でメローナ達にも話すことじゃから、今はいいとして……そんな事よりアンコよ」
(そんな事……?)
皆が疑問に思ったが、黙っておく事にした。のじゃロリ猫はまた話を続けた。
「お前、無理しとるじゃろ」
「…………」
確信を突くような事を言われて、アンコはたじろく。
のじゃロリ猫はその様子を見てニヤリとした。
「だから消えようとしてる。でもなぁ、ここにはお前が消えると悲しむやつが沢山おるぞ」
アンコは信じられないような目をする。のじゃロリ猫は本当だともと頷いた。
「メローナは好物が食えんくなるし、ピネは師匠がいなくなる。フロートは頼れる妹分がいなくなるし、わしも酒のつまみがたらふく食えんくなってちと困る」
(ええ……)
最後の言葉に、皆空気を読みつつ、声を出さずにツッこんだ。
皆の気持ちを知ってか知らずか、のじゃロリ猫は続けた。
「なあ、アンコ。お主の胸に聞いてみよ。お主は、ここに残るのが本当に辛いのか?嫌なのか?自分を出せばいいんじゃよ。もし間違った事をしたら、わしが責任をもって止める。どうじゃ?これでも嫌か?嫌ならば好きにすればいい……」
アンコは最後まで黙って聞いて、皆の方を見て、問いかけるように呟いた。
「……私、ここにいても……いいんですか?」
「勿論よ、アンコちゃん。ずっとずっと、いていいのよ。私達は、あんな事ではあなたを嫌いにならない。あなたは大切な、従業員さんなんだから」
「私、私……」
メローナの言葉に、アンコは涙を流しながら言う。
「皆と一緒にいたいです……」
アンコは自分の心を皆に吐露する。嘘偽りの無い本心だった。
「皆と一緒にいたい……!もう一度、働かせて下さい……ここで!この喫茶で……!」
「おお~!」
フロートの凛々しい声とアンコの姿に、ホールの子供達は皆歓声を上げた。
「フロートちゃんのお陰よ♪今日は人一倍、頑張ってくれたの♪」
「す、凄いです!フロート姉さん!」
メローナの話す言葉に、シトロンは目を輝かせた。
「そんなに褒めないでちょうだい。て、照れ臭いのよ」
純粋な妹の眼差しに、顔を隠してもニヤけているのがバレバレなフロート。
「しかし驚いたよ、突然小鳥ちゃんの身体が消えてしまうんだもの」
そう言ったのは、アンコの身体を守っていたピネだった。
「おそらく……魂がこの世に戻ってきたから……だと思う」
ピオーネが解説しようと口を開いたが、長く難しい話になると察したフルーチェが割って入った。
「なんかよう分からんけど、皆無事で良かったなぁ!なあ、アンコ!」
「そう……ですね」
アンコは曖昧に頷く事しか出来なかった。
「それじゃあ、アンコちゃんが戻ってきたお祝いにパーティをしないかい?」
ジュジィの言葉に、くゆりも反応する。
「わぁ~!パーティ!今日はくゆりもご馳走作るよ~!楽しくしよう!店の修繕は明日にシヨ!」
「甘いもの……パーティ……Zzz」
「あたしも……炭酸の……ジュース作る……」
淡雪とろくばんも同意する。
アンコは、この楽しい空間を壊したくなかった。
「……」
だからこそ、しなければならない事も合った。
「アンコ?」
心配そうに呼び掛けたマリネッタを合図に、アンコは皆に告げる。
「私は……皆さんと一緒にいられません……」
アンコの言葉に、皆が静まる。それが嫌で、言葉を続けた。
「皆さんに酷いことを言ってしまったし……オウマがトキもボロボロにしてしまった……」
アンコは溜め息をついて、締め括ろうとする。
「今日限り辞めて、どこかに消えます。それがいい……」
ビタン!と言う音が静かな部屋に響く。
叩いた相手は、マリネッタだった。
「マリネッタさん……」
頬を押さえながら呟くアンコに、マリネッタは低い声で告げる。
「それは駄目よ。許さないわ。それこそもう赦せない」
その瞳には、静かな怒りが灯っていた。
「あんたが悪く思っているなら、それこそ、あんたも手伝うべきよ」
マリネッタは広間を指差す。大好きな場所が、アンコの目に映った。
「オウマがトキの修繕にしろ、皆への詫びにしろ……このまま消えるなんて、絶対だめ」
「せやなぁ……」
皆の中から進み出てきたのは、フルーチェだった。
「うち、バカだからあんまよく分かんないけどさ、アンコはそのままで良いと思うよ。あれがもし素だったなら、それをちょっと出してもいいやん。だから、もう一回、皆でやろう?」
「でも……私の中には……」
「おうアンコ!さっきぶり!」
俯き、目を伏せるアンコに、廊下きらやって来たのじゃロリ猫が声をかけた。
「あ、のじゃロリ猫。今頃帰ってきて……」
「にゃっはっは!ちょっとした用事じゃ!」
いつも通り小言を言うフロートをいなし、のじゃロリ猫は続ける。
「お前が言う"その事"ならばわしが片付けておいたぞ」
「え?」
「まあ、これは後でメローナ達にも話すことじゃから、今はいいとして……そんな事よりアンコよ」
(そんな事……?)
皆が疑問に思ったが、黙っておく事にした。のじゃロリ猫はまた話を続けた。
「お前、無理しとるじゃろ」
「…………」
確信を突くような事を言われて、アンコはたじろく。
のじゃロリ猫はその様子を見てニヤリとした。
「だから消えようとしてる。でもなぁ、ここにはお前が消えると悲しむやつが沢山おるぞ」
アンコは信じられないような目をする。のじゃロリ猫は本当だともと頷いた。
「メローナは好物が食えんくなるし、ピネは師匠がいなくなる。フロートは頼れる妹分がいなくなるし、わしも酒のつまみがたらふく食えんくなってちと困る」
(ええ……)
最後の言葉に、皆空気を読みつつ、声を出さずにツッこんだ。
皆の気持ちを知ってか知らずか、のじゃロリ猫は続けた。
「なあ、アンコ。お主の胸に聞いてみよ。お主は、ここに残るのが本当に辛いのか?嫌なのか?自分を出せばいいんじゃよ。もし間違った事をしたら、わしが責任をもって止める。どうじゃ?これでも嫌か?嫌ならば好きにすればいい……」
アンコは最後まで黙って聞いて、皆の方を見て、問いかけるように呟いた。
「……私、ここにいても……いいんですか?」
「勿論よ、アンコちゃん。ずっとずっと、いていいのよ。私達は、あんな事ではあなたを嫌いにならない。あなたは大切な、従業員さんなんだから」
「私、私……」
メローナの言葉に、アンコは涙を流しながら言う。
「皆と一緒にいたいです……」
アンコは自分の心を皆に吐露する。嘘偽りの無い本心だった。
「皆と一緒にいたい……!もう一度、働かせて下さい……ここで!この喫茶で……!」
それから数日後……。
アンコは再び、喫茶オウマがトキのパティシエとして働いていた。
「ショートケーキ、出来上がりました!」
「お、うまそうじゃな、わしにもおーくれ!」
のじゃロリ猫がニコニコしながら手を伸ばす。
アンコは慌ててお皿をかかえ上げた。
「のじゃロリ猫さん!駄目です!これはお客さんのですよ!」
「えぇ~!ケチ~!一口だけ!一口だけチョーダイ!」
「ダメです!!!」
アンコの態度に、のじゃロリ猫はふてくされた。
「猫パイセン!」
「ふぎゃあ!」
アンコに絡んでいたのじゃロリ猫の頭に、強烈な一撃が走った。
かかと落としだ。
「アンコを困らせんなよ!」
「いったぁ!コラァ!チョコ!師匠に向かって何すんじゃ!」
「今日は真面目に働く気分なんです~!」
チョコと呼ばれたその少女は、手をヒラヒラさせながら答えた。
「こらぁ!真面目に働きなさい!!!」
フロートが入ってきて、のじゃロリ猫をせき立てた。
「世知辛いのじゃ~!」
そんな二人を横目で眺めてから、チョコがアンコに話しかけた。
「ところでアンコ!」
「何?チョコ」
ニヤニヤして言う。
「フロートとは最近どうなの?」
「ば!そんなんじゃ!」
アンコは顔を真っ赤にして否定したが、黄泉の世界に迎えに現れた日以来、アンコがフロートを気にしているのを、チョコは知っている。
「早くあなたも仕事してきなさい!」
「へ~い」
アンコとチョコは、そうして自分の仕事に戻った。
アンコは厨房に、チョコは外回りへ。
今日もオウマがトキは平和だ。きっと明日も平和なのだろう。
アンコが巻き起こした騒動は、こうして終わりを迎えたのだった。
アンコは再び、喫茶オウマがトキのパティシエとして働いていた。
「ショートケーキ、出来上がりました!」
「お、うまそうじゃな、わしにもおーくれ!」
のじゃロリ猫がニコニコしながら手を伸ばす。
アンコは慌ててお皿をかかえ上げた。
「のじゃロリ猫さん!駄目です!これはお客さんのですよ!」
「えぇ~!ケチ~!一口だけ!一口だけチョーダイ!」
「ダメです!!!」
アンコの態度に、のじゃロリ猫はふてくされた。
「猫パイセン!」
「ふぎゃあ!」
アンコに絡んでいたのじゃロリ猫の頭に、強烈な一撃が走った。
かかと落としだ。
「アンコを困らせんなよ!」
「いったぁ!コラァ!チョコ!師匠に向かって何すんじゃ!」
「今日は真面目に働く気分なんです~!」
チョコと呼ばれたその少女は、手をヒラヒラさせながら答えた。
「こらぁ!真面目に働きなさい!!!」
フロートが入ってきて、のじゃロリ猫をせき立てた。
「世知辛いのじゃ~!」
そんな二人を横目で眺めてから、チョコがアンコに話しかけた。
「ところでアンコ!」
「何?チョコ」
ニヤニヤして言う。
「フロートとは最近どうなの?」
「ば!そんなんじゃ!」
アンコは顔を真っ赤にして否定したが、黄泉の世界に迎えに現れた日以来、アンコがフロートを気にしているのを、チョコは知っている。
「早くあなたも仕事してきなさい!」
「へ~い」
アンコとチョコは、そうして自分の仕事に戻った。
アンコは厨房に、チョコは外回りへ。
今日もオウマがトキは平和だ。きっと明日も平和なのだろう。
アンコが巻き起こした騒動は、こうして終わりを迎えたのだった。