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完全無敵王我皇 予告

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匿名ユーザー

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多くの人間でごった返す都会の暗部、誰も通らぬ淀んだ高架下でその男は佇む。
着崩しており、だらしなくはみ出ているワイシャツが目に付く、黒いスーツの上にフード付きのジャケットという奇妙なファッションのその男。
深く被ったフードからは表情も、それ以前にどんな形相なのかも伺えない。その部分だけが真っ暗闇の様だ。
と、男に近づいてくる、人物。

人物は恐る恐る、男へと近づいていく。男には人物に気付いている様子は無い。

と、男は人物に気付いたのか、フードに手を掛けるとタメる様にゆっくりと、後ろに落としていく。

人物を真正面に見据えた男は、言う。


「待っていたよ。もう準備は出来ているんだろう?」


「なら早速埋めようか。君の心にぽっかりと開いた――――暗く悲しき心の欠片を」





―――――――――――――予告――――――――――――――――



生気を感じさせない夜が明けていき、白日に晒されていく商店街。
至る所――――シャッターや道路、壁面に広がる、乱暴で暴力的で凄惨な破壊の傷痕。
凹ます、潰す、壊す、叩く、正に無茶苦茶と言った感じで商店街を傷つけ、傷跡を刻みつけた犯人の姿は、何処にも無い。

薄汚れた白い手袋を嵌め、刑事は首を捻りながら、大きく凸凹に歪められているシャッターに触れる。
その後ろで怪訝な表情を浮かべている新人刑事。忙しなく動き、少しでも証拠を探す科学調査班。刑事は更にその歪みに近づく。
どんな武器を使えばここまで――――まるで半月の様な綺麗な局面を描いてシャッターを歪められるのか。
刑事は振り向き、新人に問う。

「お前、どう思う? これ」
「正直に答えていいですか? ……人間の犯行とは思えません」 
「お前もそう思うか。奇遇だな、俺もそう思う。これじゃあまるで……」


「ゴリラだとか、そういうのが暴れてたみたいだ」


所変わり。

「遅刻遅刻!」

スカートを翻しながら慌ただしく坂道を駆けている、ベリーショートの少女。
進学校らしい、洗練されたデザインが目を引く制服も、全力疾走している為だろう激しく乱れており品良く見えない。
右手に持った上手い具合に焦げている食パンを時折食べながら、少女は目的地である学校へと疾走する。
再び食パンを食べようと視線を下に向けた時。


「―――――危なぁ―――――――い!」


ターザンの如きけたたましい咆哮を上げながら、何者かが自転車に乗ってこちらへと走ってくる。
その距離は推測で50メートルほど。避けようと思えば避けられるが、少女は生憎運動神経があまり良くない。
咄嗟に逃げようと思うが自転車が既にそこまで迫――――った瞬間。


「とうっ!」

どんな魔法か、その自転車が少女にぶつかる寸前で前輪を上げると後輪を押し上げて、宙へと、飛んだ。

少女の上空をスローモーションの様にゆったりと飛行する自転車。咥えていたパンを呆然と、口から落とす少女。

数秒すると自転車が持ち主ごと地面に激突した。ぐしゃりとひしゃげる音がして自転車の前面が潰れながらガチャンと倒れる。
自転車から投げ出された持ち主がクルクルと回りながらピタリと制止する。
うつ伏せで顔を背けている持ち主に、少女は状況が全く理解できていないながらも、持ち主へと近づく。
そしてしゃがんで、異様に高くなっている脈拍を抑えながら、声を掛ける。

「あ、あの……大丈夫、ですか?」


すると持ち主はピクッ、と動くと頭を擦りながらよっこらしょと起き上がり、少女にサムズアップしながら言った。


「超大丈夫!」




昼間でも薄暗く、無機質な灰色が圧迫感を催させる取調室。僅かに窓から太陽が射しこみ、男の顔を照らす。
目の前の強面な刑事に怯えているのか、男はキョドキョドと目を泳がせておりその両手を固く握り締めている。
額と両手から滲んでいる汗。男はオドオドとしながらも、情けない形相を浮かべながら刑事を見上げる。
刑事は調書をパラパラと捲りながら、男に質問した。

「それでだ、お前がほざいている商店街を壊して回った犯人とやらだが……」

男は無意識に、ゴクリと息を飲んだ。

「証拠は何も出ねえが、確かにお前が言う通り商店街は荒らされてたよ」
「ホントか!?」

刑事の言葉を聞いた瞬間、男が椅子を後方へと落とす程に勢い良く立ち上がった。
しかし威勢良く立ち上がったわりに膝は震えており、尚且つ汗を垂れ流してビクついているという、奇妙な姿でだが。
男はリアクションも示さず冷静に見上げている刑事に向かって、キョドリながら二言を放つ。


「ほ、ホント、ホントに見たんだよ! シャッターとかどう……道路とか抉ってるデカイ男を!」
「あぁ、どうやったかは知らんが道路のコンクリがぐちゃぐちゃにされてた。粘土でも弄くるみたいにな」

「信用してやる、お前の証言は狂言じゃ無かったって事だ」

刑事がそう言うと、男の頬が緩む。落ち着いたのか、ガチガチに緊張したのが解れていく。
が、刑事はそこで言葉を止めずに鋭い目線を男へと向ける。次に放たれた言葉は――――。

「だがお前は逮捕だ。証言には感謝するが、お前の窃盗はチャラにはならん」

時が止まったかのごとく、男の表情が硬くなる。分かりやすい位に顔色が青白く変色していく。
どうしてそうなると喚きだす、が取調室に入ってきた同僚達に抱えられて無理やり部屋から追い出されていった。
置いてあるライターを手に取り、煙草を一本取り出して火を付ける。と、ライターの横に置かれた携帯電話が着信を伝える。
携帯を拾い上げ、刑事は素早い動作で開き通話ボタンを押した。

「もしもし、室田、俺だ」

「お疲れ様です、木乃さん。何か見つかりました?」

「いや、全然だ。奴は何か吐いたか?」

「いえ、毎度の如く小煩いだけです。あ、けど有力な情報になるかは分かりませんがこう言っていました」

「デカイ――――男と」




都会。

誰も彼もが何らかの目的とそれを成す原動力となる欲望を秘め蠢めいている中。
人々を見下す、否、人を人と見ず、巣穴で行列を作る蟻を見るかのような冷酷で人間らしさを感じさせない見下ろしている、一人の眼鏡を掛けた男。
高層ビルの窓越しから見える、交差点を行き来している人々は本当に蟻が群がっている様に見える。
男は人々を見降ろしたまま、口火を切る。

「進んでいるのか」

男のその言葉に、奥のロングソファーにどっしりと腰掛けた――――あのフードを被った男が答える。

「それなり。今日も一人引っ掛けた」

「貴様が何を考えているかは知らぬが、時間はそれほどないぞ」

「大丈夫だよ」

フード男はそう言いながら体勢を変える。両手を組み合わせると顔の前へと持ってきて、言う。

「欲望は貴方が期待する通り、これから大きなビジネスになる。今はまだ小さいな芽でも、いずれきっと大きな華が咲く」

「枯れぬ保証は?」

「絶対に無いよ。何故なら」


「僕の華を枯らそうとする害虫は、僕の手で刈り取るからさ」


都内でも有数と言われる進学校、露模区私立真師ヶ原高校。
学問、スポーツ、風紀、それら全てにおいて高水準と言われるこの学校のある教室で事件は起きている。
生徒達がひそひそと声を潜めて会話し、一部の生徒が興味がある為か、静かに教壇を見据えている。
教壇では老教師がカツカツと、黒板に文字を書き終えると振り向いた。

「それでは転校生を紹介する。今日から君達の学友となる……」

老教師がその名を呼ぼうとするよりも早く、その青年は自らの名前を高らかに宣言した。


「俺の名前は完崎全一! 呼ぶ時は完崎君でも完崎さんでも全一でも全ちゃんでも全さんでも何でも良い!」

いきなりすぎるフランクな発言に、目を丸くする生徒達。続けて全一は指を差して天井へと向けると、言い放った。


「いきなりだけど俺は――――この学校の全てに於いて一位になる!」


「何……言っちゃってるの……!?」

一体何があったのか、新品である制服を所々擦り切らしてボロボロにさせ……。
尚且つ顔に多くの絆創膏を貼り付けている、何もかもが不審すぎる転校生、全一のその宣言を聞いたベリーショートの少女、哉子は顔を引きつらせてそう呟いた。
一方全一は一点の曇りも無い、済みきった瞳を輝かせながら天井に指を向け続ける。

彼の奇怪すぎる行動に、一部の生徒達が反応を示す。


「新手の頭おかしい人か……?」


「遅咲き高校デビューだとしたら大成功ね」


「理解不能、奇々怪々」


「niceboy……気に入った」


「キモい……けどイケメン……どうしよう、凄く困る……」



「面白そうな人だね。どう思う、哉子?」

「え?」


「それにしても驚いたよ」

柔和で安心感を感じさせる、それでいてなよなよした印象は無く男らしさと清潔さを兼ね備えている整った顔立ちの青年が、遅めの朝食である焼きそばパンをほうばる善一に話しかける。

「君みたいなタイプの人はウチの学校にはいないからさ」

焼きそばパンを豪快にごくりと飲み込み、全一は答える。

「そうか? まぁ、宜しく頼むわ。あんたは……」
「北上院。北上院武」
「北上院か、珍しい名前だな……っと」

そこで全一はニヤリとすると、仲間と一緒に談話している哉子の方を向いて呼び掛けた。

「朝はありがとな!」

ビクッと肩を震わせ、ゆっくりと哉子が全一の方を向く。サムズアップしている、全一。


「君、哉子と知り合いなのかい?」

武が軽く驚いていると、全一は大きく頷いて答える。


「朝に色々あってな。ちょっと心配掛けさせちまった。って哉子?」
「彼女は朝倉哉子。俺の幼馴染なんだ」

「そっか! じゃあ朝倉と合わせて宜しくな! 北上院!」


「私は宜しくしたくないんだけど……」


ごちゃごちゃとした雑多な雰囲気と男臭く汗臭い匂いが充満している警察署署内。
そこに位置する刑事課、ホワイトボードに張られた、大きく広げられた市内の地図に赤いサインペンで次々と×印が書き込まれていく。
全ての×印が書き終わりサインペンが置かれると、刑事課に所属する刑事の一人、木乃が地図を見、言った。

「商店街だけじゃないんだな。その周りでホシは犯行を重ねてやがる」
「それだけではありません」

木乃に付き添っていた新人刑事、高根が手帖を広げながら、室田に報告する。

「目撃証言から犯行が起きている時間帯は常に深夜、それも2~3時に発生しています」
「つう事は……当り前だが人目に付かない様にストレスを発散してやがるって事だ、そいつは」
「恐らく……」

「……あれ、室田さん。ちょっと」

じっと地図を眺めていた、窃盗犯を取り調べしていた強面の刑事、室田が何かに気付き、室田に声を掛けた。

「どうした、室田?」

「犯行現場を良く見てください。……どことなく犯人の行動範囲が分かりますよ」
「何?」

室田の発言に、木乃が地図に近づいてじっと見る。数分すると、木乃はポツリとつぶやいた。



「……確かここ、高校だったよな。名は……」
「真師ヶ原です、進学校の」



色んな意味で今日は疲れた、と哉子は胸を撫で下ろす。
あまりにも不可思議すぎる朝の出会いから、まさかの完崎全一という滅茶苦茶な男の転校。
それでいて昔から物怖じせず、誰とでも仲良くしてしまう武が全一と仲良くなってしまったという事に哉子は酷く荷が重くなる。
悪い奴ではなさそうだが、完崎という人は色々とおかしい。何がおかしいって、何もかもがおかしい。
転校前の学校は聞いた事も無い学校だし、自分から過去を話そうとしないし、何よりあんな宣言を素面で出来るなんて頭がおかし過ぎる。

……ホントにあんなのと一緒に学園生活を送らなきゃいけないのか。

……止めた。今はこれからする部活に集中しよう。あの変な人とは絶対に距離を置く様にしよう。武にもそう言おう。


「……あ、道具忘れた」



今日は何と言う不幸なのだろうか。
遅刻しそうだから急いでいたからだろう、大事なラケットを忘れてくるなんて。
先輩に言っておいたから一応大丈夫だけど、早くラケットを家から取って来ないと。



≪……待て≫


後ろから誰かの声が聞こえる。風邪でも引いているのか、やけにくぐもった低い声で誰かが呼び掛けてくる。
悪いけど止まってる暇は無い。一刻も早く家に戻らないと。



≪待て!≫


「何よ!」


「木乃さん!」


「どうした!」



「い、今……」




「何だよ、あの化け物は!」

「嘘……何、アレ……」


突如として現れた巨大な「それ」に、生徒達が驚嘆と恐怖の声を上げる。
しかして誰も動こうとしない。非現実でかつ、訳の分からない「それ」に、誰もが圧倒され飲まれていた。
教師達が必死に避難を呼びかけるが、生徒達は呆然としてその声が聞こえていない。

と――――「それ」の掌に誰かが掴まれている。その人物は――――。


「か……哉子!?」
「驚愕……!」

「北上院! どこにいく!」
「皆の避難を頼む、祐一!」

反射的に学校を飛び出して、武が「それ」へと向かっていく。
しかしどう考えても「それ」の大きさは規格外染みており、武がどうこう出来るとは思えない。
だが武は足を止めない。幼馴染が危機に直面している――――そのたった一つの理由が、武を突き動かす。

「哉子を――――離せっ!」



「――――また俺から奪う気か、ズィーロ」


屋上。今まで姿が見えなかった転校生――――全一がそう呟きながら助走を取り――――疾走する。

そして柵に足を掛けて、屋上から飛び――――降りる。


「ハートリバイス――――フルトランス」



「もう俺は誰も――――何も、失いたくない」


「ズィーロ、俺の欠損は――――手前には埋めさせねぇ!」



校庭に降臨する、もう一体の巨人。

しかしその巨人は「それ」の様な醜悪な姿はしていない。

その巨人の姿は――――武士。まごう事無き、武士。



≪何者だ……貴様≫



『自らの欠損を負により埋めし愚か者。貴様のその罪――――俺の剣が断罪する』


『正義見参! 天上天下――――唯我独尊!』





『完全無敵! オウガ……オ―――!」



『やろうぜ、化け物』





                                  天上天下鋼神機

                                  完全無敵王我皇




                                  来年 連載開始 








「やっと、目覚めてくれたんだね。お兄ちゃん」







「でも――――お兄ちゃんの華は、また枯れるよ」


「僕の、唇でね」

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