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創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

eXar-Xen――セカイの果てより来るモノ―― Act.11D

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匿名ユーザー

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 「破壊」のロストフェノメオン、そして名状し難き怪異。
 セカイを揺るがす2つの超越的存在の決戦の幕が下ろされた時、その遥けき彼方。遠き夜空の向こうにて、闇夜に溶け込むが如く冥い機影が中空に“佇んで”いた。

「――――やはりな。」

 爛々と、紅く赤く燃ゆる単眼を揺らめかせる機械仕掛けの黒き巨人――シュバイゼン――の内。
 そう極々当然そうに、淡々と呟く男がいた。

「幾ら“O”とて「影」でイグザゼンの、それもソートギガンティックに敵う筈があろうものか。だが――」

 重厚な巨人の存在が、水に落とした墨汁のように虚実の向こうへと消えていく。

「曲がりなりにも“O”が顕現した時点でこのセカイの命運は決まったようなもの。故に我等も、彼女達も、“ここ”での役目はこれで終わり……全ては滞りなく、須く移ろい――」

 その内で男は

「ただただ己が渇望のままに“O”へと至る、か。」


 人知れず、口の端を上げていた。



 揺れる。揺れる。
 右へ、左へ。絶え間無く。
 右には意識を。左には無意識を。
 二つを抱え、揺れる。揺れる。

 意識は無意識の海の内より浮上し、沈降し。
 故に在って無く、無くて在り。奇妙な平衡を保つのみ。

(――――)

 そんな中、俺はただ1冊の「書」を眺めていた。
 それは白き書。表紙も、ページも、一切が真っ白な――否。白に“塗り固められた”書。



 イグザの書。



 アリスと、俺が出会う理由になった書。
 怪異との戦いの元凶にもなった書。

(――――)

 俺はそれに惹き込まれるかの如く、理解も無く、感情も無く、思考も無く、ただただ一枚一枚白いページを捲り“読み進める”。

(――――っ)

 やがて、冥い無意識の闇の内に確固たる思考の灯が灯る。
 白き書の内の何かが俺にそうさせた。そうとしか思えず、そうとしか考えられない。

 捲られていたページは他のものと変わらずやはり白い。
 これでもかという位白い。ここまで白いものがあるか、という位には。
 故に、その白は不自然。
 故に、その白は必然。

 そして、気付く。
 この書は元来より白かったわけではない。
 元が何も書かれていなかったわけではない。
 ただただ“白く塗り潰されていた”のである。
 何者か、何事かによって――!

(――――ッ!!)

 その時、書に記述されていたモノ――とある“セカイ”ならぬ“世界”の白く塗り潰された明日のカタチ――が濁流となって俺の思考を押し流す。

 垣間見る。
 明日へ繋がる“総て”を断たれた明日無き世界の切なる願いを。
 大いなる“総て”に蹂躙された光亡き世界の正しき怒りを。
 救えなかった命を。
 辿り着けなかった未来を。
 成しえなかった勝利を。

やがて全ては“総て”の侵攻により過去へと至る。
ただそれが宿命とばかりに虚ろの闇へと消えていく。

(…………!)

 だが――世界が正しく“死”へ向かう、そんな絶対的終末の中――たった2人、抗う者達がいた。

 悉くが異次元の劫火に焼き尽くされ、黒く、白く塗り潰されようと、互いを離すまいとひしと寄り添う彼らは尚も抗い、その瞳に狂おしいほどに強き想いを宿し、猛々しいほどに命を燃やす。
 彼らは周囲にて燃え狂う異次元の劫火をも涼しげに、口元には不敵な笑みを浮かべ、その影に白銀を揺らめかす。

 やがて朽ち往く世界の天ならざる天より、冥き地平の彼方より、色亡き闇の底より、この世ならざる“悪意”が殺到した。
 赤、灰、白、黒の超越的存在――この世ならざる理に律され、禍々しくあると同時にこれ以上無く神々しくすらある幾千幾億幾兆もの脅威の大軍勢は、そのたった2人を葬り去る為だけに仕向けられたモノ。
 例え一体存在するだけでもセカイの存在を危うくするに足りる脅威をここまで仕向ける道理は、彼らをこの上無く恐れている故に他ならない。

 その大いなる理を目の当たりにした彼らは、尚も不敵な笑みを崩さず、更に硬く手を取り合い――――そして、全身全霊。世界をも引き裂かんばかりの覇気をもって吼えた。



――――イグザゼンッ!!マテリアラァァァァァァァイズッッッ!!!



 異次元の劫火をも打ち払う閃光の内に現れたのは、超越的悪意の大瀑布の如き猛攻に真っ向から対峙する、威風堂々。超然にして雄々しき白銀の理論神。
 大理石の神殿を連想させる巨躯。背には闇を切り裂く金色の剣の如き翼を幾枚も持つその勇姿は、紛れも無く、疑いの余地も無く

もはや在り得ざる筈の、失われた筈の、本来ある筈の無い――世界の“希望”だった。


「――――!!!」

 意味は、多分無い。
 ただ反射的に、頭を巡らす暇も無く、その半身を飛び起こしただけ。

俺に何があった?今のは何だ?今何処にいる?

 ……まぁ目が醒めたのなら混乱ついでにそんな思考をするのがモアベターなんだろうが、今回の場合ちょっと違った。

「!!」
「なぁ!?」

 激突。頭と何か――多分頭――が。
 そりゃもう痛い。とっても痛い。
 何事かと痛みを堪えて頭を抑えつつ周囲を見渡すと、すぐ近くに俺と同じように痛そうに頭を抑える人影が1つ。

「いったーい……もう、何なのよ……って」

「「…………え?」」

 長い栗色の髪に健康的な肌の色。物凄く見覚えのあるその姿。忘れようも無いその姿。間違い無く、紛れも無く――お互い信じられないといった風に目を合わし、僅かな、だが嫌に長く感じる静寂の後。

「ベ「ディぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっ!!!」

 感動の再会はベルの猛ラッシュより開始される事となった。

「もう!一体どうしたらそうなるのよ!外でおっきなロボットでケンカしてたと思ったらアリスちゃんに担ぎこまれて半日ぐらい寝込むとかっ!!助けに来てくれたのは嬉しいけど、それ以上に心配かけてどうするのよ!!」
「ベ、ベル……」
「それに助けに来るのならもっと早く来なさいよ!この3日間寂しくて悲しくて心細くて仕方なかったんだから!!もうずっとこのままなんじゃないかなんて思うぐらい!夜だって8時間ぐらいしか寝られなかったんだからねっっ!!」
「それすっごく健康的……つーか締めんな。くるし……ぎ、ぎぶ……」
「とにかく寂しくて悲しくて辛くてもう……うぅ…………グス」

 堰を切ったように襲い来る言葉の猛襲に加え、一時は死ねぇ!とか言い出すんじゃないかと思うぐらい締めてこられて主に背骨やあばら辺りの心配をせざるを得ない状況だったが、あっという間にその勢いは失せてゆき、抱きついたまま泣き出してしまった。
 思わずどうしたものかとしばし考えるも、そんな言葉も上手くない俺に出来る事はあまり多くない。結局やれる事といえば

「あー……えーと……うん、悪かったな。寂しい思いさせちまって……」
「でも、でも、きっと、きっと……ディーなら……きっとディーなら、助けに来てくれるって信じてた……あたしを、みんなを……!」
「…………」

 ただ謝る事ぐらいだ。それに今、この状況じゃ言葉はそれほど重要でもない。
 わんわんと泣きじゃくるベルに贖罪の方法はこれぐらいと優しく頭を撫で、ひしと抱き締める。
 これで少しでも、痛みを、辛さを、寂しさを、和らげる事が出来れば――そう考え、そう思い、そう願い、俺はただ静かに胸の内に抱き留めるだけだった……


「――以上が事のあらましだ。」
「……なるほど、な。」

 手に持った配給品らしいコンビーフをフォークで弄びながら、向かいに座ったアリスの言葉に相槌を打つ。

 時はあれからしばし後の事。
 先程姿が見えなかったアリスはどうやら食料を調達していたらしく、帰ってきたときには両脇に結構な量の缶詰を初めとする保存食の類を抱えていた。
 それらを頬張りながら、俺達はアリスの言葉に耳を傾けていた。

 アリスが言うにはこうだ。
 俺が意識を失った後、アリスは俺を抱えてソートアーマーの状態でその場を離脱。
 とりあえず一息つける場所を探していた所、すぐ近くに聳える巨大な建物――ドルサルタワー――より自分のものに限りなく近い感触……のようなものを感じ取り、とりあえずその元に向かってみればベルがいたという事らしい。何故そんな物を――というと

「恐らくこれのせいだな。」

 と、取り出して見せたのは見知った青白い短刀――イグザダガー。
 以前の盗賊騒ぎの際、ベルそのものに極々一部ながらイグザゼンの“式”が転写されてしまっていたらしく、その影響が出たとの事。それが身体に害を及ぼす心配はないようなので、その点では偶然に感謝するべきか。

「はむ、んぐ……っと、まさかホントにイグザゼンの装備だったとはね……お陰で助かったけど……」

で、ベルに俺を預けた後、アリスはペーネ達を地上まで運び、あの怪異よりもぎ取った輪転炉の残骸近くまで送ったらしい。

「そういえば、あのレェンってのどうなったんだ?もしかして……」
「怪異に魅入られたのが50年前だったな? その後完全に怪異に主導権を握られていた事から察するに、恐らく50年前取り込まれる――“セカイの楔”となる直前の姿に戻っている筈だ。死にはしていない。」
「そっか……そりゃよかった……」

 アリスの返答にホッと胸をなで下ろす。
 なら後は時間が解決してくれる事だろう。俺達の出る幕は無い。

「けど、ホントに外は大変な事になってたのね。怪電波でみんな怪物にされていたなんて……」

 席を立ち、所々罅割れて風通しがよくなった一面を覆うガラスに手を掛け街を見下ろす。
 ドルサルタワーを取り巻く悉くの建物が崩落し、未だ黒煙が所々より伸びるペンタピアの街並み。これをやったのが自分達だって聞いたら彼らは一体どんな顔をするだろう……

「怪異の軍勢はアクアリングやスチームヒルを始め、ペンタピア連合のジャンクヤード全域で現れたそうだ。」
「んだと!?……リョウはあいつの事だし大丈夫だろうが、ウチがちょっと心配だな。」
「まぁ、あの騒動でもう3分の1ぐらい吹っ飛んじゃってるし……そう考えれば、あとの残りが吹っ飛んでてもショックは少ないんじゃないかな?」
「……その発想は無かったわ。」
「何事もポジポジが肝心要。諦めない限り試合続行なのよ?」

 そうニッっと笑ってあっけらかんに言ってのける。
 泣いたり笑ったり忙しいが、その姿はまさにベルが帰ってきたという安心感にも繋がり、おのずと自分の頬も緩まる。

「あとはバールさえ戻ってきてくれりゃ……」
「そうね……アリスちゃん、バールもここにいるのよね?」
「ああ、間違いない。ただ、先程も言った通りそこへ至る道程が、な。」
「……で、俺の出番ってわけか。」
「そういう事だ。準備が出来次第すぐにでも出発したいわけだが。」
「腹ごしらえも済んだし、目もきっちり覚めた。いつでも行けるぜ。」

 空き缶をテーブルに置き、改めて立ち上がる。
 英気は十分養えた。どう役立つのかは良く分からないが、バールを助ける為に俺が必要なら幾らでも頑張ってやるさ。そう心に思い、俺はベルを連れアリスの後を追い部屋を後にした。


 等間隔でノブの無いドアが並ぶ、何処までも続く長い廊下。
 俺達から見て右側へと緩くカーブし、軽い傾斜のついたそれは、多分螺旋を描いて地下へと続いているのだろう。

「……気持ち悪いわね。」

 ぽつりと、ベルが呟く。
 ベルがいた部屋より続く、埃1つ無く、壁も天井も真っ白で、生活臭も人の気配も一切無い――俺達の靴音のみが響く、不気味な程に静まりかえったここは、否が応でも人の不安を掻き立ててくれる。

「……ああ。」
「結構な距離歩いたと思うけど……こんなとこじゃ距離の感覚も失せちゃうわね。」

 何処までも無機質で、何処までも同じ光景が続く、何処か狂気すら感じるこの空間。
 1人では絶対に来たくないな……気が触れる事請け合いである。

「……ここだ。」

 やがて、先頭を歩いていたアリスが立ち止まる。
 そこにあったのは他の並んでいるものと変わらないドア――見た目からの印象では“四角い切り込み”と言った方が正しく伝わるかもしれない――があるのみ。彼女はそれに静かに手を触れつつ、俺達に語りかけた。

「この扉には一種のプロテクトが施されているようでな。どうも私と、ベルと、ディーの3人分のライフデータが揃わねば開かないらしい。まるで「皆揃ってから来い」とでも言いたいようだ。」
「……らいふでーた?」
「やるべき事は扉に手を添える事だけ。そう複雑な動作を求めているわけではない。」
「まーた何でそんな事を……」
「まぁそれで開くならやっちゃいましょうよ。」

 確かにそうだなと返し、手の平をドアに置いてみる。

「…………」

 冷たくも無く、暖かくも無く――触感自体もあってないような奇妙な感覚。
 これは本当にそこにあるのか?見えていても、触れていてもそうは思えない。

「……では、行くぞ。」


――――eXar-Xen might access.


 揺らぐ現実の壁。
 薄れる虚実の境界。

 目の前にあった筈の白いドアは忽然と、煙の如く失せ消えていった。

「バール!」
「バール!いるんでしょ!?」

 覗いて叫ぶその内は闇。
 ある種怖いほどに明るい外の光は、しかしまるで忌み嫌うかのように部屋の中には入っていかない。ただ、中が完全に見えないわけでもなく薄らと何かの影が揺らいで見える。

「バール……?」
「違う……っ!」

 ベルの呼び声に思わず口に出た否定の言葉。
 そう、違うのだ。決定的な証拠などは一切無いが、それでもこれだけは分かる。


――“あれ”はバールじゃない。


「ええ、ご想像の通りで。」

 部屋の中央に置かれた椅子よりゆらりと立ち上がり、こちらを見下げる190ぐらいはあるかという長身の男。薄い青の混じった黒髪に、スーツを着こなし、整った顔立ちに鼻眼鏡を付け、穏やかな笑みを浮かべるその姿は、行った事は無いが高級ホテルやレストラン等にいてもおかしくない印象を与えてくる。
 だが、その全身より際立つある種の“違和感”――励起獣等の怪物が持つモノと同種――がこいつを世界の敵、世界外の存在だと認識させる。

「てめぇは……!?」
「私の名はヌース。以後、お見知り置きを。」
「ヌース……バールを何処へやった。」

 そう警戒心を露わに言いつつ、俺達を庇うようにアリスが前へ出る。
 俺が気付くぐらいだ。アリスだってこいつが真っ当な奴じゃ無い事ぐらい気付いているのだろう。

「バール様は既にここにはいらっしゃいませんよ。あの方にはまだ成すべき事が残されていますのでね。」
「彼はこのセカイの住人だ。浚うのなら望み通り私だけを浚え。他の者達を巻き込むな……!」

 怒りを込め、アリスが語尾を強く言う。
 それに対しヌースと名乗った男はククッと小さく笑った後、呆れたように語りだした。

「……おやおや、どうやら何も知らないと見える。私達が意味も無く貴方方を浚ったり、攻撃を行ったり、こうやって相対する事があるわけ無いじゃないですか。」
「意味があると?」
「ええ、大有りです。我らが“Xen(ゼン)”の望むままに。」


――――ggad-Xen might access.


「――!?」
「うぉっとととっ!!」
「な、何!? なんなの!?」

 全てを揺るがす震動。同時に背後に開かれた出口が「消えた」。
 瞬く間に闇に包まれる一室。だが次の瞬間何処からとも無く淡い光が迸る。そこに広がるモノは、既にあの部屋ではなかった。

「セカイが、切り離された……?」

 何時に無く動揺した面持ちで周囲を見渡すアリス。
 周囲に煌く白い点々は星々のようでいて、どうにも異なる雰囲気を持つ。
 それらは360度あらゆる方向よりこちらを照らし、何処か浮遊感すら感じる。

「そう、我が「超越機構」のロストフェノメオン「ギガドゼン」によってね。」
「ロストフェノメオン……!」

 イグザゼンは確か「破壊」のロストフェノメオンといった筈。
 という事はこいつもイグザゼンと同質の力を……!?

「もっとも、アリス様の擁する最大最狂のロストフェノメオンたるイグザゼンと比べればその力の差は歴然。私の得意とするのは、こういった小細工ですがね。」
「何故こんな事を……!」
「いえいえ、大した事はないのですが――貴方方にも知っていただきたくて、ね。このセカイの“正体”を。」

 得意げに微笑を浮かべ、何処からとも無く取り出した黒いステッキを中空に“打ち付ける”。同時に空間が揺らぎ、奴の背後よりバカみたいに巨大な“何か”が現れた。

「壁……?」
「惜しいですね。ある意味本質は射ていますが……少し離れて見てみましょうか。」

 夢見心地なベルへ言葉を返し、もう一度ステッキを打ち付ける。
 すると瞬時に視点は移動し、その“壁”を遠く見下ろす場所へと至った。

「これは……船……?」
「ええ、それもセカイを旅する超巨大な箱船といったところですかね。」

 あまりにも巨大な二等辺三角形の形状を持つ白亜の船体は、近くで見ればまるで壁。
 その船体より無数の魚の鰭を思わせる塔をせり上がらせ、雨霰と光弾を乱れ撃つ。垂直方向にも光の柱を無数に撃ち出し、何者かと戦闘を行っているようだった。

「――!?」

 その“何者か”。
 何処からとも無く現れ、まるで象に集る蟻のように船へと襲い来る脅威の群れ。
 赤、灰、白、黒、……何処か狂えた姿に見る者を圧倒する神気を湛えたその姿。イグザゼンに近い――だがそれをも上回る力を内包したそれらは、熾烈極まる猛攻を開始した。

「酷い……」

 脅威の軍勢と白亜の船。その戦闘は、到底”戦闘”と呼べる代物ではなかった。
 まさに蹂躪。まさに殺戮。
 1機として攻撃を受けるものは無く、されど船体には無数の大穴を次々に穿たれ、黒煙を上げ連鎖的に爆発していく。塔も次々に圧し折られ、見る間に砲撃の量も減少していく。

「……哀れなものですね。人の知る叡智の粋を結集した船とて、“O(オー)”に抗えばこうも容易く屠られるのですから……ま、人としてはよくやった方ですかな。」

 目細に呟くヌースの前。やがて船は力尽きたかのように部品を四散させながらゆっくりと堕ちていく。
 その先にあるのは白い光。眩いばかりに光る何か。

「……あれがこのセカイ、か。」
「って事はあの船が……?」
「察しが早くて助かります。そう、あの船こそがこの大地の基礎となったもの。虚無の軍勢に討ち滅ぼされるも、堕ちた先では朽ち果てつつも数え切れぬほどの命を支える――中々悪い話ではないですな。」

 瞬く間に船は消え、周囲はまたも闇と点々とした無数の光に覆われる。
 まるで初めから何も無かったかのように。

「ヌースと言ったな。何故私達にあのようなモノを見せた?」
「……そ、そーよ!そんな事よりバールを返しなさいよ!」

 今、まさにそこで起きていたかのような臨場感溢れる迫力に圧倒されつつも、アリスもベルも怒気を含んで奴に返す。俺だって疑問に思っていたところだ。確かに衝撃的だがこんなモノ、今見せる必要は無いだろうに。

「今のビジョンに映し出されていたモノは船だけでは無かったでしょう……セカイを食らう者共――始祖にして終焉たる“O(オー)”に仕えし“虚無の軍勢”。貴方方が対峙した“O‐Regression”――あれがその者共の尖兵だったとすれば?」
「――――!?」

 だったとすれば――
 “O(オー)”、そして“虚無の軍勢”。聞き慣れない言葉が続くが、俺の脳裏には言い様の無い、悪い予感が不気味に過ぎる。俺は、知っている……? こいつらを……

「――――」
「アリス様は既に検討は付いていると思いますが……」
「だったらどうする。」
「いえいえ、どうもしませんよ。貴方方の自由意志を尊重するのが我らの主義。」

 敵意――というより殺気を露わにヌースを睨むアリス。

「その先にあるモノがお前達の望みのセカイ、とやらか。」
「さて? ――ともかく、自らが望むように歩んでみてください。私達はそうする貴方方を特等席にて暖かく見守るとしましょう――貴方方のおじい様と共に、ね?」
「ッ!?」

 刹那、吹き荒む鉄風。
 突如として吹き荒れる鉄線の暴風が奴を中心に闇の全てを絡め取り、漏れなく連れ去っていく。そして

「……去った、か。」

 残ったものは、俺達3人と部屋の中央に変わらず放置された古びた木製の椅子ひとつ。
 ただ……冥い闇の残滓が、焼け付いた鉄の臭いが、そして何より圧倒的に巨大な存在の気配が、いつまでも、何処までも――黒く、黒く、染み付いていた。

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