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創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

2-part1

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 童が泣いている。
 その童の周りにあるのは数多の死体。
 頭を砕かれた死体。
 腕を潰された死体。
 頭から下が無い死体。
 腸を引きずり出された死体。
 頭から脳髄が引き出された死体。
 死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体、死体。
 見渡す限りの死体の山。
 原型を留めていない死体も多く、もはやそれが元はどのような人間だったのかもわからない。
 ただ、その死体から流れ出る血が辺り一面を染め血の海と化している。
 そこら中に臓物が散乱しており、血で満たされたその地は誰が見てもそこは地獄にしか見えなかった。
 ただその中心で童の泣き声が響いていた。

















 ―シャドウミラージュ 第2話― 「飛翔する鋼」




「あ~熱い。」
 荒野を走るトレーラーの中、そこには男が二人いた。
 一人は銀髪で黒い瞳の男。
 もう一人は黒髪で蒼眼の男だ。
 実はこのトレーラーとある事件に関わった際に強烈な衝撃を受け冷房機能が故障してしまったのだ。
 その為に車内の温度は40℃近くになっており、まさに地獄だった。
 銀髪の男は無言でそれに耐えているのだが。
 黒髪の男はとでも我慢できないとでも言うように…。
「熱い~死ぬ~俺様生まれてから最大の危機だ~、氷よこせ~。」
 銀髪はその言葉を聞き飽きたとでも言うように…。
「セイム、お願いだから、静かにしてくれ、暑いのに苛々させられたら俺が事故る。」
「そんなこと言ったってな、クーガちゃんよぉ…この暑さは異常だぜ…。」
「仕方ないじゃないか、故障しちまったもんは…。」
「大体な、妖魔に向かって修理したての車で突撃かますか?普通…」
「んなこと言われてもなぁ……」
 あの時はそれ以外の方法を取る時間の猶予が無かった。
 鋼機を動かしてから向かっていたら間違いなく彼女の救援に間に合わなかっただろう。
 だが捕まるなんてへまをしなければそんな事をする必要すらなかったのも事実であって…。
 言い訳しようにもする事が出来ない…。
「まあ、いいけどさ、そういう突撃野郎は嫌いってわけでもないし…。」
「なんだよ、突撃野郎って!まるで俺が無謀みたいじゃないか。」
「どう考えても無謀の塊だろ、大体、相手に近接武器一つで戦う奴始めてみたぜ。」 
「そんな事言われてもな……今の俺の機体にはあの刀しか装備されてないんだよ…。」
 ちょっと落ち込む、俺としてもあれほどのダメージを受けるのは予想外だった。
 せっかく最新の技術を用いて生まれ変わった相棒が最初の戦いであんなにダメージを受ける事になったのだ。
「ありゃりゃ、マジで気にしてたか…これは失敬、しかし今時、近接戦主体とは変わった機体だな。」
 頭をポンと叩いてセイムは言う。
「俺自体が遠距離戦というか射撃が苦手なんだ…だからとことん近接戦闘に特化させた機体にと頼んで作ってもらった。」
「ん?という事はあの機体は遠距離用の兵器を装備する予定は無いのか?」
「ああ、一応、補給があれば各種グレネードは搭載する予定だけれど他は予定してないな。」
 とセイムが呟く。
「となるとかなり戦いの幅が狭まれるな…。」
「そこは腕でフォローというところかな、中距離用の武装にワイヤークローがあるが、正直な話、翼種あたりが出てくるとかなり辛い。」
 翼種というのはその名の通り翼をもった妖魔の事だ、空中戦を得意とし、近接的な攻撃手段しか持たない俺の機体には天敵となる。
 攻撃手段は無い事もないのだが――
「思いっきり極地仕様だなぁ、DらしいといえばDらしいが、『奴』が好きそうな機体だ。」
「その代わり、地上戦においては現行最強の機体という触れ込みも貰ったよ。あのアシュラを超える自信もあると開発陣は言ってる。」
「へぇー、ちょっと見た感じでは接近戦特化の機体としか思わなかったがやはりDたる所以どおり隠し玉があるってわけか…。」
「それは秘密って所かな……結局は俺の腕次第なんだけどな、ところで『奴』って誰だ?」
 セイムはそう聞いた俺を見て、くくっと少し笑ってから…。
「まあ、それはイアナーラについてのお楽しみだ。」
 俺達はイアナーラと呼ばれる、廃れた町(ロストシティ)に向かっている。
 かつて妖魔の襲撃を受けて滅んだ町だ。
 今回、俺の所属することになった王国直属の特殊部隊シャドウミラージュの任務はその町の妖魔からの奪還とその一帯に生息している妖魔の一掃だ。
 一掃とは言ったが、別にそこにいる妖魔を全て殺すというわけではない。ここで妖魔たちに痛手を負わせ人間達に手を出すとただでは済まないという事を妖魔たちに強く印象付けるのだ。
 俺達が妖魔への抑止力となる事、それがシャドウミラージュ部隊の今回の任務の目的だと俺は出発前に説明を受けた。
「ところでセイム、イアナーラの奪還は既に終了したんだよな?」
 俺の記憶が正しければ、合流する頃にはイアナーラを拠点として奪還している予定だった筈だ。
「まあな、その際、俺様の可愛い娘ちゃんが怪我しちまったけどな…。」
「女性スタッフが怪我したのか?」
 俺のその発言にセイムはチチチと指を振り。
「俺様の鋼機のことだよ、イアナーラ奪還戦において過度に酷使したせいか制御系にトラブルが起きちまってな、現在点検修理中だ。」
「だからあんたは暇だったというわけか…。」
「そういう事、まあもう修理は終了してるだろうな」
「んで、即、俺の機体の修理に入るわけか、整備スタッフにはなんというか申し訳ないな。」
 あの二体の泥種との戦いで俺の相棒が負ったダメージは軽いとはいえないものだった。
 虚を突かれて、背部にあったブースターを破壊されたのは緊急時の対応力を削がれる大きなダメージだった。
 他の面でもいろいろなケアが必要な面が出ており、パーツ交換でなんとかなるという域で抑えられたのは奇跡に近い。
「お前には即戦力期待してたんだけどなぁ……。」
 とセイムはぼやく。
 確かに色々ダメージを受けてしまっている今のスラッシュゲイルでは足手まといになりかねない。
 そのような機体はいるだけ邪魔なのだ。
「言わないでくれ、俺だって気にしてるんだ。」
 そういって落ち込んでいる俺を見て、セイムは言う。
「まあ、いいさ、アレはアレで一つの道だ。それにあの妖魔は下位ではあったが賢かった、そういう意味では強敵ではあったとは思うよ。」
 セイムなりのフォローなのだろうか。
 なんか論点をすり替えて慰めようとしてくれているようだが、ちょっと逆効果だとも思う。
 そんな風に色々考えていた時、空を見てセイムが言った。
「しかし、この暑さはどうにかならないもんかな。」
 こうして話題はループに入る。






「熱い~。」
 セイムがまだ嘆いている、まあ、なんだ…確かに今日の熱さはいつもと比べても異常ではあるのだけれど…
「熱い言うのやめてくれよ…。」
 そんな事を連呼されるとこっちの気まで滅入ってくる。
 俺だって必死に気にしない事でなんとかその熱さを忘れようとしているのだ。
「んな、こといわれてもなぁ…あ、そうだ!お前の鋼機乗っけてくれ!あれなら冷房は付いてるだろう?」
「嫌だね、というかD型には厳重なセキュリティーがかけられていて登録している人間が動かさないと起動すらしない。そんな事ぐらい、あんただって、知ってるんだろ?」
「シュナ~、新入りが俺様を苛めるよ~。」
 俺が当たり前の返答をするとセイムは遠くを見てそう言った。
 この男と出会ってから三日ぐらいだが本当に俺の先輩に当たる人間なんだろうか…と既に10回ぐらい思わされている。
 だが、この男自分の先輩に当たる人間であり、既に一つ借りを作ってしまっている。
 そんなわけであんまり苦情は言おうにも言えない。
 ところでだ―
「誰だ?シュナって…。」
 名前の響きからして女だろうか?
「俺様の彼女だ。」
 そうセイムは即答する。
「あんた、彼女がいたのか…。」
 正直、驚いた。
「さっき、言った鋼機の事だって、まったくからかいがいがありそうな性格してるなぁ。」
「うるせー。」
 なんか一本取られたみたいな感覚に襲われて妙に悔しかった。
「そういや、お前さん結構男前な顔をしてるが、彼女とかいないのか?」
 ふとそんな事を聞いてきた。
「いない。」
 俺は一瞬変な顔が頭をよぎったが、それを流して俺は即答した。
 彼女は俺の彼女なんていうような軽い存在でも無いし、別にそういう間柄でも無いだろう。
「へぇー意外だな。」
「彼女がいないことがか?」
「それもそうだが、お前がそれでそれだけ強いという事だ・・・。」
「よしてくれ、俺が強いなんて過大評価もいいところだ、実際せっかくの新型をもう壊しちまった。」
「いや、お前は強いよ、自分の何かに確固とした信念のようなモノを持っているように感じる、それがどんなものかは知らんがそんなものが無ければあんなに他人に身を裂いてやる事なんて出来ないだろうさ。」
「ミムの事か?」
「ああ、あの女もそうだった、お前とはまったく係わりの無い女だったが、ちょっとの時間語り合っただけでお前は簡単にそいつの為に権限を使ってまで彼女を守ることを決めた、普通の人間はそんな事はしないだろうな、ただ一つそれをするには必要なモノがある。」
 もし王名もちで名誉騎士という位が無ければそんなもの一笑されて、誰も受けなかっただろう。
 ある種、身分というものの持つ力を嫌っている癖にその力のお陰であの場を切り抜けることができたのだ、それを自己嫌悪する。
「それは、なんだ?」
 真剣みを増した声でセイムは言う。
「それはな――――」
 その時、ピピピと計器が鳴った。
「おっと、こいつぁ……。」
 運転席の前方にあるレーダーを見てセイムが言う。
 高速で移動する赤い点がレーダーに映っていた。
「ああ、全くを持って運が無いな。」
 点は生物反応を示す、だが人間に時速100kmを超える速度で移動出来る能力は無い。
 これは妖魔が近くにいる、反応は一つではなく複数の群体でいることを示していた。




「どうだ?見えるか?」
 セイムが俺に向かって大声で言ってきた。
 俺は電子双眼鏡で遠方を覗きながら、妖魔の数と種類を確認する。
「ああ、獣種が4に翼種が…1、いや2体確認した、しかしなんでこんな所に群が出てくる。」
「恐らくは隊長達が戦ってる奴らから漏れて出てきたんだろう、住処を荒らされた事で気が立ってるはずだ!」
「にしても数が多いぞ、このジャンクみたいな車じゃあと2分もしない内に追いつかれてしまう…。」
「ちっ、まったく本当に運がねえな!」
 セイムが舌打ちをした。
 このトレーラーに兵装と呼べるようなものは色々破壊された俺のスラッシュゲイルだけだ。
 完全な状態であればスラッシュゲイルを出せば倒せない事は無いが、先の闘いのダメージが大きくまともな機動が出来るかどうかさえ怪しい。
 そんな状況で妖魔の群れを相手にする事は勝算の無い戦いをするという事に他ならない事だった。
 とはいえ気を立てた奴らは俺達を見逃してくれないだろう…
 そして俺達を殺した後標的になるのはイアナーラで俺達を待ってる人達だ。
「セイム!」
「なんだ!」
「ここからイアナーラに行って、お前の鋼機を取って戻ってくるのに何分ぐらいかかる!」
「このまま進めばイアナーラまで10分ぐらいだな……まさかお前…。」
 セイムは俺の方を向いて…
「なら、スラッシュゲイルを降ろせば8分でつける筈だ!」
 トレーラーの速度は重い荷物が載っているが為に落ちる事になる。
 ならその荷物を降ろせば早くなるのは道理である。
「馬鹿かお前は!万全の状態ならともかくスクラップ寸前のあの機体であの量の妖魔と戦うってのか!!」
 無謀だと言いたいのだろう、だがこれ以外の方法を思いつかないし、考えてる余裕も無い。 
「別に全部を倒さないといけないってじゃないんだ、俺と相棒なら20分ぐらいの時間なら稼いで見せるさ。」
 勢いで言った。
 だが出来ると思った。
 いや、やるしかないと思った。
「ふざけんな!そんな事して生きて帰れるとでも思ってんのか!」
「んな事いったってやるしかないだろ!!」
 セイムの発言は当然の回答だが、そんな口論してる時間すら惜しい。
 トレーラーから機体を下ろす事は急務なのだ。
 やらなければならない、そうやらなけれなならないのだ。
 セイムはそんな俺を見て…。
「わかったよ、まったく、お前、一度言い出したら聞かないタイプだな…損するぞ~その性格。」
「もう数え切れないぐらいしてるさ。」
 その返答にセイムはくくっと笑って。
「わかった、20分なんて時間はいらねえ15分だけ持たせろ、そうすれば必ず俺様がなんとかしてやる。」
 15分、普通に考えるならそれすらも出来るかどうかは怪しいところだろう、腕の良い騎士に操縦させたって3分もてば奇跡といったところだ。
 クーガの乗るD型と言われる鋼機は通常の鋼機の8機分の働きをすると言われているが、先の戦いでクーガのD型はかなりのダメージを受けていた。
 つまり成功する確率は限りなく0に近い、そうこれは無茶を頼みこまれているのだ。
「15分…。」
 俺はかみ締めるようにその言葉を反芻した…。
「出来るな?」
 そういってセイムは俺に確かめてくる。
 こんな時の返答は一つしかない。
「余裕だ。」





【2-2へ続く】

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