『メイガス』
これはとある一族の繁栄と衰退を書き記したものである。
その一族は代々、一つの技術を口伝で血縁者に伝承を行っていた。
それは剣糸術と呼ばれる技能だった。
十指でそれぞれにつけた糸を操る。
術者の意思で自由自在に動く糸は遠くにある人形を他者に気づかせないように動かしたり、糸を用いて自分の体を持ち上げてまるで空を飛んでいるように見えたりといったようなモノであった。
何も知らない人間から見ればそれはまさに魔法だった。
彼らはそれを扱い一つの劇団を作り上げる。
劇団「幻想館」。
剣糸術を用いて行わる演目の数々は幻想的であり妖艶であり多くの人々を魅了し、大きな人気を呼ぶことになった。
この高い人気が王都にまで届き、ついには国からメイガスという魔法を扱う者という意味を持つ芸名が送られた。
おそらく、これがこの一族の絶頂期であっただろう。
ある日、幻想館に一人の男が現れる。
その男は鋼騎士だった。
鋼騎士とは機械の鎧『鋼機』に乗り妖魔や国に害する者と戦うモノのことだ。
男は言った。
その技能を民を守る為に使ってみる気は無いか?と…。
つまりは鋼騎士への勧誘であった。
メイガス達は驚いた。
男は見抜いていたのだ、自分たちの剣糸術が単なる芸能では無いと…。
そう剣糸術は芸能では無い。
一族に代々伝えられる行き過ぎた護身戦闘術だ。
戦乱の中、武器すら与えられなかった人間たちが生き残る為にはどうすればいいかという中で編み出された技能。
戦後、彼らにその技能が戦いに必要とされなくなってから、彼らが芸として使用してきたが、剣糸術はその気になれば、音もたたず証拠も残さず糸だけで対象を殺害する事が出来る。
それだけの能力を持った技能だった。
ゆえに門外不出とされ、一族以外の誰もその技能を扱うことを許さなかったのだ。
鋼騎士の男は誠実だった。
もし単なる国の利益の為にその技能を欲しがっているのならばメイガス達は即座にその男を叩きだしていただろう。
だが男はこう言ったのだ。
その技能はきっと魔から人間たちを護る事が出来る、あなた方の力が必要だと…窮地にあるこの国を救うために力を貸してほしいと…。
男の瞳に嘘は無かった。
そう言って、男は何度も頭を下げ懇願した。
当時、イングラに上陸してきた妖魔の群れが問題となっており、それを鋼機によって討伐していたのだが、王国の鋼機は共和国の鋼獣と比べると大きく劣り、対妖魔の能力も低く情勢は酷いものだった。
それを少しでも改善されるようにと男は働いていたのだ。
当時、創案されていたワイヤーシステムは鋼機に中距離間における応用の利いた駆動を可能とさせ、そして半永久的に使用可能な中距離武器として注目されていた。
これがあれば、鋼機の戦術、戦略的価値が大きく変わる事になるのだが、正式採用が出来るレベルの兵装にはならず、開発は難航を極めていた。
だが、メイガスが持つ剣糸の技能のノウハウさえあれば、ワイヤーシステムの完成に大きな一歩を踏みだす事が出来るのではないか?と男は踏んでいたのだ。
それゆえに男は真摯にそれを頼み込んだのだ。
それを理解したが故にメイガス達はその是非の議論を行う事になる。
メイガス達の中では意見がその話を受けるかうけないかで真っ二つに割れた。
正義感の強いメイガスは人を護る為に使えるのならば、それはそれでいいのでは無いかと申し入れを受けいれる事に賛成した。
それは剣糸術と呼ばれる技能だった。
十指でそれぞれにつけた糸を操る。
術者の意思で自由自在に動く糸は遠くにある人形を他者に気づかせないように動かしたり、糸を用いて自分の体を持ち上げてまるで空を飛んでいるように見えたりといったようなモノであった。
何も知らない人間から見ればそれはまさに魔法だった。
彼らはそれを扱い一つの劇団を作り上げる。
劇団「幻想館」。
剣糸術を用いて行わる演目の数々は幻想的であり妖艶であり多くの人々を魅了し、大きな人気を呼ぶことになった。
この高い人気が王都にまで届き、ついには国からメイガスという魔法を扱う者という意味を持つ芸名が送られた。
おそらく、これがこの一族の絶頂期であっただろう。
ある日、幻想館に一人の男が現れる。
その男は鋼騎士だった。
鋼騎士とは機械の鎧『鋼機』に乗り妖魔や国に害する者と戦うモノのことだ。
男は言った。
その技能を民を守る為に使ってみる気は無いか?と…。
つまりは鋼騎士への勧誘であった。
メイガス達は驚いた。
男は見抜いていたのだ、自分たちの剣糸術が単なる芸能では無いと…。
そう剣糸術は芸能では無い。
一族に代々伝えられる行き過ぎた護身戦闘術だ。
戦乱の中、武器すら与えられなかった人間たちが生き残る為にはどうすればいいかという中で編み出された技能。
戦後、彼らにその技能が戦いに必要とされなくなってから、彼らが芸として使用してきたが、剣糸術はその気になれば、音もたたず証拠も残さず糸だけで対象を殺害する事が出来る。
それだけの能力を持った技能だった。
ゆえに門外不出とされ、一族以外の誰もその技能を扱うことを許さなかったのだ。
鋼騎士の男は誠実だった。
もし単なる国の利益の為にその技能を欲しがっているのならばメイガス達は即座にその男を叩きだしていただろう。
だが男はこう言ったのだ。
その技能はきっと魔から人間たちを護る事が出来る、あなた方の力が必要だと…窮地にあるこの国を救うために力を貸してほしいと…。
男の瞳に嘘は無かった。
そう言って、男は何度も頭を下げ懇願した。
当時、イングラに上陸してきた妖魔の群れが問題となっており、それを鋼機によって討伐していたのだが、王国の鋼機は共和国の鋼獣と比べると大きく劣り、対妖魔の能力も低く情勢は酷いものだった。
それを少しでも改善されるようにと男は働いていたのだ。
当時、創案されていたワイヤーシステムは鋼機に中距離間における応用の利いた駆動を可能とさせ、そして半永久的に使用可能な中距離武器として注目されていた。
これがあれば、鋼機の戦術、戦略的価値が大きく変わる事になるのだが、正式採用が出来るレベルの兵装にはならず、開発は難航を極めていた。
だが、メイガスが持つ剣糸の技能のノウハウさえあれば、ワイヤーシステムの完成に大きな一歩を踏みだす事が出来るのではないか?と男は踏んでいたのだ。
それゆえに男は真摯にそれを頼み込んだのだ。
それを理解したが故にメイガス達はその是非の議論を行う事になる。
メイガス達の中では意見がその話を受けるかうけないかで真っ二つに割れた。
正義感の強いメイガスは人を護る為に使えるのならば、それはそれでいいのでは無いかと申し入れを受けいれる事に賛成した。
その反面、現実主義者なメイガスは自分たちの技術が悪用される日が来るのを恐れ受け入れることを反対した。
そしてそのまま意見は真っ二つに割れ、結論が出る事は無かった…と思われていた時、一つの事件が起こる。
「幻想館」が運営していた劇場が妖魔の襲撃を受けたのだ。
その襲撃で劇場は燃え、「幻想館」の人気役者であった、メリーベル・メイガスは命を落とした。
メリーベル・メイガスは鋼線を操る技術が劇団でも最も上手く、指を何時動かして糸を操作したのかわからないような自然さで演劇をしていたそうだ。
何度か、雑誌に取り上げられた事もあるので国営ライブラリーのデータバンクを検索すればその名前の情報は今でも見る事が出来るかもしれない。
それゆえに彼女のファンは多く、この死は大きく嘆かれる事になった。
そして幻想館は劇場と花形役者を失った事で大きな痛手を持つことになってしまう。
だが、問題はそれだけではなかったのだ。
劇場はイングラ王国の首都イングラにあった。
当然ながら、首都イングラは対妖魔への防衛に最も力を入れられている場所でもあった…。
そう、つまりは妖魔がイングラの警戒網に引っかからず首都内に現れる事などありえない(・・・・・)事なのである。
どうして、どうやって妖魔が首都に入ってくる事が出来たのか…?
原因はわからなかった。
だからこそ人々は考えたのだ…もしかすると幻想館の人間が劇の見世物にする為に妖魔を首都に引き入れたので無いか?と…。
噂は瞬く間に広がった。
それはなんの根拠も無いものであったが、可能性があるというだけで群衆は幻想館を非難し、中傷した。
いつも満員だったその劇は人が入らなくなり、やじ馬が増え、公演する度に劇を荒らされた。
これがイングラ王国で最も栄華を極めたといわれた演劇の雄、幻想館のその栄華からの転落の始まりである。
メイガス達はこれを否定する為に一つの決断を下す。
王国への剣糸の技術の提供である。
つまりはワイヤーシステムの開発に協力を申し出たのだ。
もはや有無を言わせられる状況ではなかった。
失った信用を取り戻す為には自分たちが妖魔を招きいれたのでは無いという証がなんとしても必要だったのだ。
国がその協力を大々的に取り上げ宣伝する事を条件に契約は成立した。
つまりはメイガス達はこれにより妖魔との関係が無い事を証明しようとしたのだ。
それから幻想館はワイヤーシステムの鋼機搭載における様々な考案を行った。
そしてそれはワイヤーシステムの完成という形で実る事になる。
彼らの名誉もこれで護られる筈だった。
だが、そこで司法局は技術提供を終えた彼らにその場で捕らえ、そして妖魔を都市に引き入れた罪で起訴した。
何故、今…。
開発に関わった人間たちはそれを疑問に思いメイガス達の擁護に回った。
だが、それも実らずメイガス達はメイガスという字を剥奪される事になる。
今にして思えばそれは不自然だった。
いくら噂が立ったとはいえ、そんな簡単に都市内に妖魔を連れ込めるわけが無い。
何よりも彼らは自分たちの大事にしていた人間を失っている。
では何故、そのような噂を有無を言わせないような速度で広まったのか・・・。
単なる噂話からの派生にしてはあまりに度が過ぎている。
誰かが、そう、誰かが彼らを陥れたのではないか?
その後も少しの間、細々と演劇を行っていたのそうだが、周囲の人間の目は冷たく、わざわざ劇場にまで入って野次を飛ばすものまでいたようだ。
そうしてイングラに居場所を無くした彼らは闇に消えていった。
その失意は計り知れるものではないだろう。
そして、彼らをこちらに引きいれてしまった私は罪人だろう。
私はまたここで過ちを犯しているのだ。
幻想館の花形、メリーベル・メイガスには齢8歳の娘がいたそうだ。
まだ、年端もゆかぬ子供ながらその糸繰りは天才的であの母親を超える程の才能の持ち主だったらしい。
彼女の事を思うと心が痛くなる。
私が彼らの技能の本質に気づいてしまったが故に招いた事態だ。
これは私の懺悔である。
だが、せめて、せめてもの償いの為に私は今、彼女がどこで何をしているのかが知りたい。
そしてそのまま意見は真っ二つに割れ、結論が出る事は無かった…と思われていた時、一つの事件が起こる。
「幻想館」が運営していた劇場が妖魔の襲撃を受けたのだ。
その襲撃で劇場は燃え、「幻想館」の人気役者であった、メリーベル・メイガスは命を落とした。
メリーベル・メイガスは鋼線を操る技術が劇団でも最も上手く、指を何時動かして糸を操作したのかわからないような自然さで演劇をしていたそうだ。
何度か、雑誌に取り上げられた事もあるので国営ライブラリーのデータバンクを検索すればその名前の情報は今でも見る事が出来るかもしれない。
それゆえに彼女のファンは多く、この死は大きく嘆かれる事になった。
そして幻想館は劇場と花形役者を失った事で大きな痛手を持つことになってしまう。
だが、問題はそれだけではなかったのだ。
劇場はイングラ王国の首都イングラにあった。
当然ながら、首都イングラは対妖魔への防衛に最も力を入れられている場所でもあった…。
そう、つまりは妖魔がイングラの警戒網に引っかからず首都内に現れる事などありえない(・・・・・)事なのである。
どうして、どうやって妖魔が首都に入ってくる事が出来たのか…?
原因はわからなかった。
だからこそ人々は考えたのだ…もしかすると幻想館の人間が劇の見世物にする為に妖魔を首都に引き入れたので無いか?と…。
噂は瞬く間に広がった。
それはなんの根拠も無いものであったが、可能性があるというだけで群衆は幻想館を非難し、中傷した。
いつも満員だったその劇は人が入らなくなり、やじ馬が増え、公演する度に劇を荒らされた。
これがイングラ王国で最も栄華を極めたといわれた演劇の雄、幻想館のその栄華からの転落の始まりである。
メイガス達はこれを否定する為に一つの決断を下す。
王国への剣糸の技術の提供である。
つまりはワイヤーシステムの開発に協力を申し出たのだ。
もはや有無を言わせられる状況ではなかった。
失った信用を取り戻す為には自分たちが妖魔を招きいれたのでは無いという証がなんとしても必要だったのだ。
国がその協力を大々的に取り上げ宣伝する事を条件に契約は成立した。
つまりはメイガス達はこれにより妖魔との関係が無い事を証明しようとしたのだ。
それから幻想館はワイヤーシステムの鋼機搭載における様々な考案を行った。
そしてそれはワイヤーシステムの完成という形で実る事になる。
彼らの名誉もこれで護られる筈だった。
だが、そこで司法局は技術提供を終えた彼らにその場で捕らえ、そして妖魔を都市に引き入れた罪で起訴した。
何故、今…。
開発に関わった人間たちはそれを疑問に思いメイガス達の擁護に回った。
だが、それも実らずメイガス達はメイガスという字を剥奪される事になる。
今にして思えばそれは不自然だった。
いくら噂が立ったとはいえ、そんな簡単に都市内に妖魔を連れ込めるわけが無い。
何よりも彼らは自分たちの大事にしていた人間を失っている。
では何故、そのような噂を有無を言わせないような速度で広まったのか・・・。
単なる噂話からの派生にしてはあまりに度が過ぎている。
誰かが、そう、誰かが彼らを陥れたのではないか?
その後も少しの間、細々と演劇を行っていたのそうだが、周囲の人間の目は冷たく、わざわざ劇場にまで入って野次を飛ばすものまでいたようだ。
そうしてイングラに居場所を無くした彼らは闇に消えていった。
その失意は計り知れるものではないだろう。
そして、彼らをこちらに引きいれてしまった私は罪人だろう。
私はまたここで過ちを犯しているのだ。
幻想館の花形、メリーベル・メイガスには齢8歳の娘がいたそうだ。
まだ、年端もゆかぬ子供ながらその糸繰りは天才的であの母親を超える程の才能の持ち主だったらしい。
彼女の事を思うと心が痛くなる。
私が彼らの技能の本質に気づいてしまったが故に招いた事態だ。
これは私の懺悔である。
だが、せめて、せめてもの償いの為に私は今、彼女がどこで何をしているのかが知りたい。
真求者 ブラッドレイ・クライス
この手記はブラッドレイ・クライスが行方不明になった後、彼の部屋にて発見された手帳に記されていたものである。
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