創作発表板 ロボット物SS総合スレ まとめ@wiki

「意味」 終篇

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sousakurobo

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――と、まずい事になったね。ここまで彼が真理にたどり着くなんて。それに彼女もこのままじゃあ為す術も無い
ん? あぁ、失礼。先ほど、ロボットと人の歴史について語った者だ。ちょっとした事情で一回引っ込んでしまいすまない
さて、何処まで話したかな? そうそう、「博士」が過激派のリーダーに脅迫された所だね。それで「博士」はどうしたかと言うと……
流したんだ。その凶悪なウイルスをね。堪え切れなかったんだ。目の前で、「博士」の親族が、無関係の人間が殺されていくのを
連中はこの時点でただのアンチ団体の枠を超していたんだ。アンドロイドによる、アンドロイドの為の社会を――それが連中の唯一つの願い

そしてそのリーダーが、今の彼女の前に立ちふさがる「博士」が始めて開発したアンドロイド――いわば初号、FN-00AJK1、アダムだ
アダムは驚くべき事に反1NE派の人間達を扇動し、同じアンドロイド達にも、人間達に反抗しようと吹き込んだ。そう、1NEに使ったウイルスを使ってね
世界がロボットと人間達の戦争によって火畑になるのも時間の問題だった。いや、あっという間だったね。本当にあっけないくらい、人は――
その混乱の中、未曾有の混乱の首謀者として、「博士」は人からも、ロボットからも、もちろんアンドロイド達にも追われる様になった
長い長い逃亡生活の果てに、心身ともに衰弱した博士は、ある国のある地域のある屋敷に住む老人に出会った。その老人は、「博士」にこう頼んだ

自分はもうすぐ死の床に着く。君の腕前を見込んで、ある交換条件を申したい
――私の娘のアンドロイドを作ってくれ。もし作ってくれたら、君にこの屋敷と、私が手入れしている花畑を譲ろう
「博士」はそれを快く承知した。どんな職業かは知らないけど、かなりの大富豪であったその老人の手際もあって、一週間も経たずに依頼のアンドロイドは完成した
そのアンドロイドの名は――イヴ。そう、今絶体絶命の危機にいる、あの彼女の名だ。アダムの呼び名は決して比喩ではなかったんだ
話を戻そう。老人は「博士」の作り出したイヴの出来に涙を浮かべるほど喜んだ。そして老人は屋敷のほかに、「博士」に自らの資産を託そうとした

だが、意外な事に「博士」はそれを拒否した。その代わりに一つ、老人に条件を足した
イヴに花畑の管理と自分の整備方法を教えて欲しい。その際の貴方の呼ばれ方は、「博士」でと
老人は首を傾げながらも、どちらの条件も承諾した。老人が「博士」としてがイヴに様々な事――もちろん人類の行く末も話している間
でだ、そのあと「博士」はどうしたかと言うと、傍らの1NEに自らの人格を模した人工知能を備え付け、来るべき時までに作動しないようにした

もうお分かりかな、僕の正体が。ただ、事情があって僕自身表に出る事は出来ないんだ。けど、もうすぐ僕が僕自身として出てくる必要がある
その為には、彼女の行動に掛けるしかない。奇跡が起こる事を……

モニターには、「博士」が手入れし、私が管理していた花畑が映し出されている。自然に私の視線はモニターを凝視していた
1NEはぼんやりとライトを光らせたが、そのままうっすらと光を消して動かなくなった。……嘘だろ、このまま……このまま壊れるなんて
どうして……どうして君はこんな事が平然と行えるんだ。怒りを通り越し、悲しみが私の胸を伝う
「何だ? そう怒るなよ。コイツは屋敷の中で埃を被っていた所を、俺が助けてやったんだ
 ロボットには何の感情も沸かんが、雑用程度には仕えると思ってな。俺って優しいだろ?」
「だから……だからって暴力を振るっていいのか? 私には……私には理解できない、したくもない」

切実だった。目の前で弱き存在が虐げられるのは堪えられない。だが――無力だ。私一人では
瞬間、青年型の手下が私の後ろに回りこむと、鮮やかな手口で、1NEを見取っていた私の手首を掴んで私を地面に押さえつけた
はらりと布切れが取れて、上半身があらわになる。こんな連中に私の体を見られると考えると頭の中がおかしくなりそうだ
青年型がひゅうと口笛を吹いた。どこまで私を侮蔑し、蔑めば気が済むのか――この男は

けど頭の片隅にふと、気になる事があった。私は作られてから一度もガレージの隣である屋敷に入った事が無かった
それに1NEの存在も、それ以前に私は外の世界がどうなっているのか全く知らないんだ。知りたい――本当に人類が全滅したのかを確かめたい
……何を考えているんだ、私は。こんな状況でそんな事を考えたって仕方ないじゃないか。そういう事を考えるのは、この状況を脱してからだ
そう言えば……目の前の男に口を聞くのも嫌だが、ここは下手に出るしかあるまい

「ごめんなさい……妙な事はしないわ。だから」
自分の中では背いっぱいのか弱い声で青年型に聞いた。青年型が私に首だけを向ける
「だからこの手を離して貰えない……かな。あと、よければ一体ここがどこかを教えてもらえたら……」
流石に馴れ馴れしいか、青年型の背後に居た手下がさっと前に出た。が、青年型が左手をかざし、下げらせた
同時に私を押さえていた手下が私の手首から手を離す。その場から離れながら、はだけていた布切れをもう一度羽織る

「離してやれ。彼女はキーだ。これからの新世界を切り開く為のな」
そういうには今までの扱いが荒すぎるのでは? と言えばまた機嫌を損ねるだろうから黙っておく
カチャカチャと軍靴(恐らく)を鳴らして、青年型が私の前を闊歩し、ふっと止まる。そして言った
「この場所は我々、アンドロイドの拠点であり、新世界の首都となる、ニューヨークの真下の地下だ」
ニューヨーク……確かアメリカと言う巨大国家の地名だと聞いた事がある。わざわざそんな大層な所まで私を運び出すとは……

ふとモニターに目を向ける。未だに花畑に動きは無いが、もし何かしたら、その時こそ私の怒りの臨界点が突破する
右も左も手下が囲っていて、身は自由なものの、下手な動きは出来ない。私には彼らに対して一騎当千できる様な力も無い
どうすれば良い……どうすれば。1NEは機能停止しているのか、横たわって微動だにしない。つまり万事休すなのか、おいおい
「そうだ、俺の名前を教えてなかったな。俺の名はアダム。最も最初に作られたアンドロイドであり、最も優れたアンドロイドだ」
自信満々の口調で、青年型、いや、アダムはそう私に言った。正直青年型と呼ぶのも疲れたので助かる。感謝は絶対しないが

と、アダムは悠々と中央の白いイスに座ると、背後のモニターを一瞥して、私の方に向き直った
「新世界の誕生の前に、ここまでの経緯を教えてあげよう。本当に苦労したんだぜ」
背を曲げて、両手を絡ませながら、アダムはとうとうと、今までの過程を説明し始めた
その話に私は――驚嘆した。そして信じたくない真実を嫌でも知る事となった。それが本当に――真実と断定するが術が無くとも

薄々気づいていると思うが、奴、いや「博士」に、全世界の俺達アンドロイド以外のロボットにウイルスを撒かさせたのはこの俺さ
気づいちまったんだよ。所詮人間達にとって、俺達は道具以上の役割は果たせない。どれだけ尽くそうと――朽ちれば棄てられる
奴は必死で、俺に対して説得し続けたサ。俺達は共存できる。お互い理解し合えるとな
俺も最初は信じていたよ。「博士」の言葉をな。だが俺には信じる事はできなかった。そして自分の目で見たんだ

裏の――と言っても、ここで暮らし続けた君にはピンと来ないだろうが、機能を果たせなくなったアンドロイド達の末路は悲惨だった
ある者は性欲のはけ口に使われ、ある者は新兵器の的に、ある者は――ち、反吐が出る。つまりだ、俺の中で人間に対する認識が180度変わっちまったんだ
そして気づけば俺は銃を手に取り――「博士」の下から逃げ出していた。それからは簡単さ。俺は1NEに批判的な連中に接触した
自らを表した俺に、連中は意外にも好意的な反応を示した。それほど、1NEやそこらのロボットが気に食わなかったんだろう。どっちみち屑だけどな

その後、俺は「博士」の自宅を、もっとも過激な思想を持つ輩と共に襲撃した、ここからは話さなくても良いな
で、どうやって君の居場所――いや、「博士」の隠れ場を見つけたかというとな――「博士」が直々に俺に連絡してきたんだよ
俺は最初半信半疑だったが、その「博士」と名乗る男の話を聞くにつれて、信憑性が沸き、実行に移したのさ
「博士」はまず俺に対し、全てのアンドロイドだけを破壊するコンピューターウイルスを開発したとの言った
そしてそのウイルスを詰めたカプセルをある国――ここだな。のある土地の花畑に埋めたと続けた

ここだけ聞くといかれた狂言だろ? だがその後の一言が、俺の半疑を確信に変えた
そのコンピューターウイルスが適用されるアンドロイドの形式番号を次々と言い続けたんだ
それも世界中に居るアンドロイドの派生型である100種類ものオリジナル番号をな。もちろんその中には俺も入っているんだがね
俺が確信を抱いたのはここさ。たとえ末端の形式番号は言えても、フルの形式番号を言える人間は一握りも居ない。いや、一人さ。「博士」しか居ない
だが妙だとは思わないか? どうして敵となった俺達に、わざわざ形勢逆転するための切り札を渡そうとするのか

そう聞くと、「博士」はこう返した。もう諦めた。誰もいなくなった世界の行く末は、君たちが担えってな
俺はここに勝利を感じた。浅はかな思考かと思うか? 違うね。「博士」は悟ってたのさ。もう俺達に逆らえる術など無いってね
俺達は早速、「博士」の語った場所へと急行した。ずいぶんと閑散とした田舎だったが、そんな事はどうでもいい
「博士」の言葉どおり、そこには花畑があった。そして――君が居たんだ。どうしてだ? どうしてこんな場所に人が?

君は覚えていないだろうが、俺はずいぶんと君と会話したんだよ。何故ここに居るのか、そして君は何者なのかと
しかし君は俺に対し、一切興味を抱こうとはせず、毎日黙々と花畑を管理し続けていた。まるでそれ以外の事が出来ないように
ここで時間を潰すわけにもいかない、コレは罠なのか――? と思ったが、違う。俺は気づいた。この少女、いや、君は……
「博士」が隠したカプセルを開ける為の――鍵じゃないかとね。そして俺は賭けに出た
君の後を追い、君がガレージで休止し、充電している時にちょちょいと脳髄を弄らせてもらった

やはり、君にはそれ以外の行動が出来ぬように、強力なプロテクトが掛けられていたんだ
他人とは話さない、花園の花を枯らさない様にする、ガレージと花畑以外の場所には近づかない……他にもね
君が休止している間、少しづつ、少しづつ、俺はプロテクトを解除するために忍び込んでは弄った。自分の組織をも放置してな
そして昨日だ、やっと君は俺に反応を示してくれた。本当に嬉しかったよ。顔には出ないけどね

「私が……そのカプセルの……鍵?」
思わず口に出して、私はアダムの台詞を反芻する。この無力な私が鍵だって? この世界を変えるほどの?
俄かには信じられない、というか全く理解できない。正直、その部分以降は何も聞いてなかった
でも突然すぎる。こんな場所までつれてこられた上に、そんな事を告げられても――だ

アダムは白いイスから降りると、四つん這いになっている私の顔を右手でくいっとあげた
今の私はどんな顔をしているのだろうか。不安やら悲しみやら恐怖やらで酷い顔をしている気がする
アダムの目を見れない。本当ならこんな目にあわせたことに対する恨みで、睨み付けたいのだが――出来ない
何でだろう。私はこの最低で自己中心的で、尚且つ非情で――物悲しい男に、同情しているのか?

「本当に……」
私の口から自然に、言葉が出てくる。アダムが小さく眉を潜めたが、むしろ私の方が驚いている
「本当に……それでいいの? それで……貴方は救われるの?」
私自身、自分が何を言っているのかが分からない。けれど、このままでは――いけないと思った

「救われる……か。救われないさ。もう」
アダムの口調が先ほどの高圧的な態度から、一転、最初にあったときの柔らかなものになっていた
すっと、アダムの手が私の顔から離れる。何でだろう。アダムが後ろを向いて、モニターを見つめ、言った

「無いんだよ。鍵なんて。ずっと君の脳内を弄くってたけど、そんなもの」

呆然としている私を一瞥すると、アダムは淡々と説明しだした。周りではアダムの手下がアダムの言葉にざわついている
「どうやら、君の脳髄を弄くっている時に感染してしまったみたいなんだ。参ったよ
 君が発症しているそのむやみに信じ込まされると言うのかな――そのウイルスがね
 俺が君を数十年弄っていた間、犯されていたみたいだ。気づいたのは昨日さ。君には悪いが、花畑を荒らさせてもらった」

な、何ですと! ともう元気よく言えるほどの活力は正直無い。というか事態が全く持って飲み込めない
すっと、アダムがコートから何かを取り出した。――封筒? なんで封筒なんて。と、アダムがモニターを眺めながら
「あれは数日前に、君がガレージに戻った際に隠し撮りした映像さ。よく見てもらえれば分かると思う
 花畑を掘り返して出てきた物は、俺達を殲滅する為のカプセルなんかじゃない。ただのブリキ缶だった
 その中に入っていたのがコレだ。「博士」が、いや、「博士」と名乗っていた男が君に当てた手紙のようだ」
そう言いながら、私にその手紙を渡した。「博士」と名乗っていた男? それじゃあ、私が「博士」と呼んでいた人物は……
と思考し出そうとした瞬間、一斉に鋭い金属音が鳴った。アダムの手下達が――アダムに向けて銃を向けている

「私達を……私達をここまで導いておいて、その結果はコレか! アダム!」
私の手首を掴んでいた、じっと見ると大柄の手下が、居切りよくそう、アダムに叫んだ
アダムはじっとして前を見据えている。裏切りと言うのか、こういうのは
言い知れぬ緊張感が、場の雰囲気を支配している。私はただ、蛇に睨まれたかえるの如く、その場で固まっている

「あぁそうだ。お前たちを利用し続けた結果がコレさ。だが――ここに至るまで俺についてきたのはお前たちの意思だろ?」
アダムが抑揚の無い声で、銃を向け続けている手下達にそう言った。このままでは私も蜂の巣になりかねない
けれど、今の私にはそんな漠然とした恐怖よりも、ある疑問の方が頭の中を回っていた
その疑問を口に出すべきか、否か――迷っていたら後悔しそうだ。そう思った時、自然と言葉が口から出ていた

「一つだけ、一つだけ聞かせて。アダム」
私の声に、アダムは正面を向いていた視線を小さく私に向けた。詰まらない様に、私はゆっくりと言葉を進める
「私が「博士」と呼んでいた人物は……貴方が「博士」と呼んでいる人物とは……違うのね?」
考えていた言葉を雑然と並べただけだが、アダムは理解してくれるのだろうか。すると、アダムは小さく頷き

「そうだ。君が「博士」と呼んでいた人物は、俺が知っている「博士」ではなかった。その手紙を呼んでもらえれば分かるだろう」
私は渡された封筒を見てみた。白色のシンプルな基調であるこの封筒の中に、私を巡る謎の全てがあるのかしれない
けれど――私の疑問はそれだけでない。もっと単純で、かつ不可解な事だ
もう物怖じはしない。今度はアダムにしっかりと目線を合わせ、はっきりとした声で聞いた

「けどどうして、どうして私にこの手紙を渡したの? 分からないわ。貴方の事が」
ふっと、アダムの口元が緩んだ。笑っているのか。それにしても先ほどのサディステックな人物とは思えない笑みだ
「どうしてだろうなぁ。最後ぐらい善人ぶりたかったのかも。俺にも分からない」
そう言ってアダムは苦笑した。そのアダムの表情が妙に滑稽で、私もつられて笑っていた

「貴様ー!」
太い叫び声がして振り向くと、大柄の手下が痺れを切らしたのか、ついにアダムに向かって銃を撃った
私は声も出せず、その行く末を――途端、大柄の額に、小さな穴が開いた。恐らく銃弾によって空けられた穴だろう
正面に向き直ると、アダムが右腕を横に伸ばしていた。手の甲から薄く煙が出ている。跳ね返したのか、あの銃弾を
プスプスと音を立てて、大柄が仰向けのまま動かない。大柄の末路に、周りの手下達の様子がおかしい。おろおろしている

「行け、もう君には何の用もない。どうせ外の世界に出たところで、スクラップにされるのがオチだろうけどな」
アダムが冷淡な口調に戻り、そう言った。私は――私はどうすれば――違う、迷う事なんて何も無い
私の体は私の思考より早く動くと、アダムの左手を握っていた。アダムが困惑するような表情を浮かべた
「貴方も――貴方も一緒に逃げるのよ! それで……それで自分の罪を償いなさい! 自分自身で!」 
何を言っているのか何てもう私は考えない。私はこの男に――アダムにどうしても伝えたかった

「なんだよ、どういう意味だよ、それ」
私の行動と発言に、アダムは表情を崩さず真顔で聞いた。私だって分からない。けれど
けれどこのまま、貴方が壊されるだけで、全てが丸く収まるなんて私は思えない。だから――
「良いから逃げるのよ! 早く!」

「に、逃がすわけにいくか! 構えろ!」
他の手下達が、まごつきながらも私達に銃を構えた。アダムが動いてくれないと、私もここで終わる事になる
けれどアダムは一向に動こうとしない。本当にここで朽ちる気なの? そんなの、そんなの絶対に嫌
だけど、貴方をこのままここで終わらせるのはもっと嫌だ。あぁ、もう、どうしてこう私は物事を上手く運べないのか

「――分かったよ」
「え?」
瞬間、ふわりと私の体が浮かぶと、アダムが私の体を両腕で抱きかかえた
全く予想していなかったアダムの行動に、私はただただ身を委ねるしかなかった。本当に情けない
けど、アダムが私の主張を聞いてくれたのは嬉しい。本当に聞いてくれてのこの行動かは分からないけど
と、うわっ! 私を抱きかかえたまま、アダムは真っ直ぐに出口へと走っていく。後ろから手下達が銃を撃っているが、全く当たらない 

「まさか君に説教されるとはね。どうやらお……いや、僕も用済みという事かな」
暗がりの廊下を走りながら、アダムがふっと、寂しそうに呟いた。……用済み? 用済みってどういう意味?
しかし何時まで経っても廊下から出口に抜けない。永遠に感じるような――
何だろう……無性にエネルギーが……気づけばアダムの腕の中で、私は目を閉じていた
疲労感か? 全くロボットのクセに情け・・・…ない……

――と、ここで詰まった。まずい、せっかくここまで進んだのに
ここまで良い感じに話が進んだのに、どうする、どうするんだ、俺!
「そろそろ・・・・・・映画は完成しそうですかな?」
背後からくぐもった声が聞こえ、俺は1NEを方向転換させた。そこにはイヴが「博士」と認識していた――
いや、「博士」の依頼主役を演じた大御所俳優のベルネが立っていた

「も、もうすぐクライマックスですよ! 敵本拠地から脱出しましたし、イヴが人間らしく成長したし!」
1NEに搭載されているスピーカー部分から、俺はベルネにそう返答した
ベルネ氏には製作金をかなり援助してもらっている末、メディアからはかなり期待を寄せられているんだ、頓挫なんて出来るわけが無い
だけど……だけど駄目だ、この後の展開が全く思い浮かばない

「そうですか。それでは期待させてもらいましょう、監督」
ベルネ氏がそう言ってスタジオから出て行った。ほっと胸を撫で下ろす・・・・・・が
ベルネ氏と入れ変わりに、「イヴ」役の女性俳優であるフェスナと「アダム」役であるメルスが入ってきた
「ちょっとべたべた触らないで下さる? まぁアクション映画出身の貴方には、繊細な演技は難しいかもしれないけど」
フェスナが皮肉たっぷりにそう言うと、メルスがムッとした口調で返した
「君がもう少し上手く演技してくれれば、僕だって文句は言わないよ。正直気持ち悪いんだよ、君は」

その後はもう聞いてられないほどの、罵詈雑言の嵐だ
俺は耐え切れずスピーカーを切った。それもこれも、突然脚本家が失踪したせいだ
もし脚本家が逃げていなかったら、このまま「アダム」と「イヴ」が新たな世界で愛を育む……と言う筋書きだったのに
一応新たな脚本家は召集したが、そいつらがまぁ遅筆な事。このままじゃあ映画完成まで10年は掛かってしまう

「……ホントに世界がアンドロイドばかりだったらなぁ」
デスクに突っ伏し、「博士」である俺は今の現状を呟いた


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